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仕事効率化(DX)2026.06.20

電子帳簿保存法2026|個人事業主が何をすればいいか要件と対応を解説

結論から言えば、個人事業主が電子帳簿保存法で「絶対にやらなければならない」のは1つだけ。メールやネットでやり取りした請求書・領収書などの「電子取引データ」を、印刷した紙ではなくデータのまま、改ざん防止と検索ができる形で保存することです。2024年1月から完全義務化されており、2026年の今は税務調査でこの保存状況が本格的にチェックされる局面に入っています。一方で、前々年の売上高が5,000万円以下の多くの個人事業主には、検索要件が大幅に緩和される救済措置が用意されています。本記事では「結局、何をすればいいのか」を、要件・具体的なファイル名のつけ方・チェックリストまで現場目線で解説します。

まず全体像|電子帳簿保存法の3区分と個人事業主に「義務」なのはどれか

電子帳簿保存法(電帳法)は、税法上保存が必要な帳簿・書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。中身は大きく3つの区分に分かれていて、それぞれ「義務」か「任意」かが異なります。ここを最初に切り分けると、無駄な対応に時間を取られずに済みます。

区分

対象

対応

①電子帳簿等保存

会計ソフトで作成した帳簿・決算書をデータのまま保存

任意

②スキャナ保存

紙で受け取った請求書・領収書をスキャンして電子化

任意

③電子取引データ保存

メール・Web等でデータでやり取りした取引情報をデータのまま保存

義務

このうち①と②はあくまで「紙の保存をデータに置き換えてもよい」という選択肢であり、対応しなくても罰則はありません。会計ソフトを使っていなくても、これまで通り紙の帳簿・紙の領収書で保管していれば問題ないということです。一方、③の電子取引データ保存だけは法人・個人事業主を問わず義務です。所得税の確定申告をしているすべての個人事業主が対象になります。

実務でよくある誤解が「会計をクラウド化しないと電帳法違反になる」というものですが、これは間違いです。義務化されたのは③だけ。①②に手を出すかどうかは、あくまで効率化のための任意判断です。国税庁「電子帳簿保存法 適用要件【基本的事項】」でも、この3区分は明確に区別されています。

「電子取引」とは何か|個人事業主が見落としやすい対象

電子取引とは、取引情報(注文書・契約書・請求書・領収書・見積書などに通常記載される事項)を電子データでやり取りする取引のことです。「相手とデータでやり取りした取引の証憑」と覚えると分かりやすいでしょう。具体的には次のようなものが該当します。

  • 取引先からメールに添付されて届いた請求書・領収書のPDF
  • Amazon・楽天など通販サイトからダウンロードした領収書・購入明細
  • クラウドサービス(ソフトのサブスク、サーバー代など)の利用料の電子明細
  • クレジットカードや電子マネー、QRコード決済の利用明細データ
  • 請求書発行サービスやEDIを通じて受け取った取引データ

ここで重要なのは、「データで受け取ったものは、印刷して紙で保存するだけでは要件を満たさない」という点です。2024年1月以降、データで受け取った請求書を紙に印刷してファイリングし、元のデータを消してしまうのはNG。元の電子データそのものを残す必要があります。逆に、最初から紙で郵送されてきた請求書は「電子取引」ではないので、これまで通り紙で保管すればOKです。受け取った形(データか紙か)で保存方法が決まる、と整理してください。

電子取引データ保存で具体的に何をすればいい?|2つの要件

電子取引データの保存に求められる要件は、大きく「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つです。それぞれ何をすればいいかをかみ砕いて説明します。

真実性の確保(改ざん防止)

保存したデータが後から改ざん・削除されていないことを担保する措置です。次の4つのうち、いずれか1つを満たせば足ります。

  1. タイムスタンプが付された後にデータを受け取る
  2. 受け取った後、速やかにタイムスタンプを付す
  3. 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで保存する
  4. 改ざん防止に関する「事務処理規程」を定めて運用する

コストをかけたくない個人事業主にとって現実的なのは④です。国税庁がWordのひな形(「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」)を無料で公開しており、これをダウンロードして自分の屋号や運用ルールに合わせて整えるだけで要件を満たせます。タイムスタンプ用の有料サービスを契約する必要はありません。

可視性の確保(検索できる状態)

税務調査などの際に、必要なデータをすぐに探し出せる状態にしておく要件です。中身は2つあります。

  • 見読可能性:パソコン・ディスプレイ・プリンタなど、データを画面表示・印刷できる環境を備えておくこと(通常のPCがあればOK)。
  • 検索機能:「①取引年月日」「②取引金額」「③取引先」の3項目で検索できること。さらに、日付・金額は範囲指定でき、2つ以上の項目を組み合わせて検索できることが原則です。

「専用システムが必要なのでは」と身構える方が多いですが、後述するファイル名の工夫とフォルダ管理だけでも、この検索要件は十分に満たせます。

専用ソフトなしで検索要件を満たす|ファイル名の付け方

会計システムを導入せず、PCのフォルダで管理する場合の王道は「ファイル名に規則を持たせる」方法です。国税庁も認めているやり方で、ファイル名を次のルールでつけます。

【取引年月日】_【取引金額】_【取引先】

たとえば2026年6月20日に株式会社三畑から110,000円の請求書をデータで受け取った場合、ファイル名は次のようにします。

20260620_110000_三畑.pdf

この命名でファイルを1つのフォルダにまとめておけば、OSやエクセルの検索・並べ替えで「日付」「金額」「取引先」を指定して探せるため、検索要件を満たせます。さらにエクセルで「年月日・金額・取引先・ファイル名」の索引一覧表を作っておくと、複数条件の組み合わせ検索が確実になり、調査対応もスムーズです。ポイントは、運用を始める前にルールを1つに決めて、ブレずに統一すること。途中で命名規則が変わると検索性が一気に落ちます。

多くの個人事業主は検索要件が「不要」になる|売上高による緩和

ここが個人事業主にとって最大の朗報です。次のいずれかに当てはまる場合、上記の検索機能(ファイル名ルールなど)は不要になります。

  • 基準期間(前々年)の売上高が5,000万円以下である
  • 電子取引データを出力した書面を、取引年月日・取引先ごとに整理した状態で提示・提出できるようにしている

ただし、いずれの場合も「税務職員から電子取引データのダウンロードの求めに応じられる状態」にしておくことが条件です。個人事業主の基準期間は前々年(暦年・1月1日〜12月31日)の売上高で判定します。売上5,000万円以下の事業者は数多く、実務上は「検索機能まではガチガチに作り込まなくてよいが、データ自体はきちんと残し、求められたら出せるようにしておく」という対応で足りるケースが大半です。

注意したいのは、これは「保存しなくてよい」という意味では決してないこと。検索の作り込みが免除されるだけで、電子データを残す義務そのものは残ります。「うちは小規模だから関係ない」という油断が一番危険です。

対応が間に合わないときの救済|「相当の理由」がある場合の猶予措置

2024年1月からは、保存要件をすべて満たせない場合の恒久的な猶予措置も設けられています。これは「保存システムやワークフローの整備が間に合わない」「資金繰りや人手不足で対応できない」といった相当の理由があり、所轄税務署長がそれを認める場合に適用されます。事前申請は不要です。

この猶予措置の適用を受けるには、税務調査などの際に「①電子取引データのダウンロードの求め」と「②そのデータを印刷した書面の提示・提出の求め」の両方に応じられる状態にしておく必要があります。つまり、真実性・検索の要件を満たせていなくても、元データを消さずに残し、紙に出せるようにしておけば最低限セーフという設計です。とはいえ、これはあくまで救済策。恒久的に頼り切るのではなく、後述のツールを使って正規の要件を満たす運用へ移行していくのが安全です。

紙保存との違い・よくある誤解の整理

実務で混乱しやすいポイントを、Q&A形式で整理します。

よくある誤解

正しい理解

データの請求書は印刷して紙で保管すればよい

NG。元の電子データのまま保存が必要(2024年1月〜)

紙でもらった領収書もスキャンしないと違反

誤り。紙でもらったものは紙保管でOK(スキャナ保存は任意)

会計ソフトを導入しないと電帳法に対応できない

誤り。フォルダ+ファイル名ルール+事務処理規程でも対応可能

売上が小さいから電帳法は関係ない

誤り。検索要件は緩和されるが、データ保存義務は全員にある

有料のタイムスタンプ契約が必須

誤り。無料の事務処理規程で真実性要件を満たせる

整理すると、最低ラインは「データで受け取った証憑のデータを消さずに、決められたフォルダに保存し、必要なら出力できる状態にしておく」こと。これだけでも多くの小規模事業者は要件をほぼ満たせます。

AI・クラウド会計での効率化と対応ツールの選び方

ここまでの手作業でも要件は満たせますが、取引量が増えると「ファイル名を毎回手で付ける」運用はすぐに破綻します。ある程度の件数を扱うなら、電帳法対応のクラウド会計ソフトや経費精算ツール、AI-OCRの導入が効率面で圧倒的に有利です。

対応ツールを選ぶときのチェックポイントは次の通りです。

  • JIIMA認証の有無:公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が電帳法の法的要件を満たすと認証したソフトには「JIIMA認証」マークが付きます。迷ったらまずこれを確認すると安全です。
  • 取引年月日・金額・取引先の自動読み取り:AI-OCRでPDFや画像から3項目を自動抽出し、検索インデックスを自動生成できるか。手入力の手間を最も削減できる部分です。
  • 訂正・削除履歴の自動記録:真実性要件を、規程運用ではなくシステム側で自動的に満たせるか。
  • 受領データの自動取り込み:メール添付や各種サービスからの請求書を、人手を介さず取り込めるか。
  • 料金と規模の釣り合い:個人事業主なら、まずは無料〜低価格プランのクラウド会計から始め、取引増に応じて拡張するのが現実的です。

クラウド会計の自動仕訳とAI-OCRを組み合わせれば、証憑の保存と記帳を同時に片付けられます。具体的な比較は中小企業向けAI-OCR×請求書読み取りツールの比較記事で、経理全体の自動化設計はAI経理自動化で業務時間を削減する方法で詳しく解説しています。ツール選定や運用の自動化に踏み込みたい場合は、自社の業務に合わせた設計が成否を分けます。

今すぐやることチェックリスト

難しく考えず、まずは次の順番で手を動かせば、個人事業主の電帳法対応は完了します。

  1. データで受け取った請求書・領収書を「電子取引」として認識する(メール添付PDF、通販の領収書ダウンロードなど)。
  2. 保存用フォルダを1つ決める(年ごと・取引先ごとなど、自分が探しやすい構成で)。
  3. ファイル名を「日付_金額_取引先」で統一する(例:20260620_110000_三畑.pdf)。
  4. 真実性の確保措置を選ぶ:国税庁の「事務処理規程」ひな形を入手して整える、または対応システムを使う。
  5. 前々年の売上高を確認する:5,000万円以下なら検索機能は不要(ダウンロードの求めには応じられるようにしておく)。
  6. 元データを絶対に消さない・上書きしないルールを徹底する
  7. 件数が多いならクラウド会計・AI-OCRの導入を検討する(JIIMA認証を確認)。

電帳法対応は「正しく理解すればやることは限られている」のに、情報が錯綜して必要以上に身構えてしまう典型例です。データを残し、探せるようにしておく。本質はこれだけです。そのうえで、記帳や請求まわりの作業負担そのものを減らしたいなら、AI・クラウドの力を借りてバックオフィス全体を効率化していくのが、これからの個人事業主の現実解になります。

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