Mihata
仕事効率化(DX)2026.06.16

インボイス制度2026年10月のポイント|小規模事業者が今やるべき対応【保存版】

2026年10月、インボイス制度の経過措置が大きく変わります。免税事業者などからの仕入れにかかる「8割控除」は2026年9月30日で終わり、2026年10月1日以後に開始する課税期間からは「7割控除」に縮小されます。さらに令和8年度税制改正で経過措置の終了が2年延長され、控除割合は80%→70%→50%→30%→0%へと段階的に下がる新スケジュールに再設計されました。一方、小規模事業者の負担を軽くしてきた「2割特例」は2026年9月末で原則終了し、個人事業者向けに「3割特例」が新設されます。本記事では、国税庁の公式情報をもとに2026年10月時点で何が変わるのかを整理し、小規模事業者・免税事業者が今やるべき対応を具体的にまとめます。

結論:2026年10月に変わるのは「経過措置の控除割合」と「特例の世代交代」

まず全体像を押さえましょう。2026年10月の改正で実務に影響するのは、大きく次の3点です。仕入側・売上側のどちらの立場かで効いてくるポイントが違うため、自社がどこに当てはまるかを最初に確認してください。

  • 仕入税額控除の経過措置:8割控除が7割控除に縮小(2026年10月1日以後に開始する課税期間から)。免税事業者などインボイス未登録の相手から仕入れる側に効きます。
  • 2割特例の原則終了。インボイスを機に課税事業者になった小規模事業者の負担軽減措置が、2026年9月30日までの日の属する課税期間で終わります。
  • 3割特例の新設(個人事業者限定)。2割特例の終了後、令和9年分・令和10年分の申告で、一定の個人事業者は納付税額を売上税額の3割にできます。

制度名や割合が似ていて混乱しやすいので、本文では「仕入れる側の話(経過措置)」と「自分が納税する側の話(2割特例・3割特例)」を分けて読み進めてください。

2026年時点の経過措置スケジュール(80%→70%→50%→30%→0%)

インボイス制度では、適格請求書発行事業者「以外」の者(免税事業者・消費者・未登録の課税事業者)からの課税仕入れについて、本来は仕入税額控除ができません。ただし急激な負担増を避けるため、当初は一定割合を控除できる経過措置が設けられていました。

令和8年度税制改正で、この経過措置は当初の3段階から5段階へと細分化され、終了時期も2年延長されました。最大のポイントは、もともと80%から50%へ一気に下がる予定だった部分に「70%」の期間が新設されたことです。国税庁が公表している新スケジュールは以下のとおりです。

期間

控除できる割合

2023年10月1日~2026年9月30日

80%

2026年10月1日~2028年9月30日

70%

2028年10月1日~2030年9月30日

50%

2030年10月1日~2031年9月30日

30%

2031年10月1日以降

0%(控除不可)

正確には、新しい割合は2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。年の途中で改正日をまたぐ取引は、原則として商品の引渡しや役務提供があった日ごとに判定するため、9月中の仕入れは80%、10月以降は70%と分かれる点に注意が必要です。詳細は国税庁「令和8年度税制改正特集」で確認できます。

見落としやすい「1億円超」の新ルール

もう一つ実務で重要なのが、経過措置に上限が設けられた点です。2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、同一の免税事業者などからの経過措置対象の課税仕入れの合計額が、その年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える場合、超えた部分には経過措置を適用できません。特定の仕入先と多額の取引がある事業者は、自社が上限に触れないかを早めに試算しておくべきです。

免税事業者・小規模事業者の「2割特例」はどうなる?

ここからは、自分が消費税を納める側、特に「インボイスを機に免税事業者から課税事業者になった人」の話です。

2割特例は、売上にかかる消費税額の2割だけを納めればよいという負担軽減措置で、事前の届出も不要なため多くの小規模事業者が活用してきました。ただしこれは期間限定で、適用できるのは令和5年(2023年)10月1日から令和8年(2026年)9月30日までの日の属する各課税期間です。具体的には次のとおりです。

  • 個人事業者:2026年分まで。つまり2027年に行う2026年分の確定申告が最後の適用となります。
  • 法人:2026年9月30日が属する課税期間まで(その課税期間の申告が最後)。

現時点で、国税庁から2割特例そのものを延長する発表は出ていません。「ずっと2割で済む」と思い込んでいると、終了後に納税額が跳ね上がって驚くことになります。

新設される「3割特例」は個人事業者だけ

2割特例の終了後、激変緩和の第2段階として令和8年度税制改正で新設されたのが3割特例です。納付税額を売上税額の3割にできる措置ですが、適用範囲が絞られています。

項目

内容

対象者

個人事業者のみ(法人は対象外)

対象期間

令和9年分・令和10年分(2027年・2028年)の申告

主な要件

インボイス発行事業者の登録があり、基準期間の課税売上高が1,000万円以下

納付額

売上にかかる消費税額の30%

注意したいのは、法人が対象外であることです。これまで「インボイスを機に法人成りして消費税負担を抑える」というスキームを検討していた個人事業者は、3割特例が使えなくなる影響を含めて再計算する必要があります。安易な法人化はかえって不利になり得ます。

課税転換するか、しないか――小規模事業者の判断フレーム

免税事業者がインボイス登録(課税転換)すべきかは、取引先の構成で大きく変わります。実務で多いのは、次の3パターンに当てはめて考える方法です。

  • 取引先が一般消費者中心:相手はインボイスを必要としないため、登録せず免税のままが基本。課税転換は納税負担が増えるだけになりがちです。
  • 取引先が課税事業者(BtoB)中心:相手の控除割合が70%→50%と下がるほど、取引価格の引き下げ要請や取引見直しの圧力が強まります。登録して課税転換する判断が現実的になります。
  • 取引先が混在:主要顧客がインボイスを求めるかどうかを個別に確認し、売上構成比で判断します。

課税転換を選ぶ場合、納税額の計算方法は「本則課税」「簡易課税」「特例」から有利なものを選びます。簡易課税は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、事前に「簡易課税制度選択届出書」を提出することで使えます。みなし仕入率が業種ごとに決まっているため、設備投資や還付を見込む場合は本則課税が有利なこともあります。どれが得かは業種・売上規模・経費構成で変わるため、税理士に試算してもらうのが確実です。

請求書・経理まわりの実務負担とAI・OCRでの効率化

制度対応で見落とされがちなのが、日々の経理実務にかかる負担です。インボイス制度下では、受け取った請求書が適格請求書かどうかの確認、登録番号の有効性チェック、80%・70%といった経過措置の区分経理など、人手で行うとミスが起きやすい作業が増えています。2026年10月以降は控除割合が変わるため、仕入先ごと・取引日ごとに正しい割合を適用する事務がさらに煩雑になります。

現場で効いてくるのが、AI-OCR(光学文字認識)による請求書読み取りと会計データ化の自動化です。紙やPDFの請求書から日付・金額・登録番号を自動で抽出し、会計ソフトへ連携することで、入力ミスと確認工数を大きく減らせます。経過措置の区分や登録番号の照合といった「制度対応のための事務」こそ、自動化の効果が出やすい領域です。

ツールの選び方や具体的な業務削減効果は、中小企業向けのAI-OCR請求書読み取りツールを比較した記事と、AIで経理業務を自動化し作業時間を削減する方法をまとめた記事で詳しく解説しています。あわせて読むと、制度対応と効率化を一度に進めやすくなります。

今やるべき対応チェックリスト

2026年6月時点で、小規模事業者・免税事業者が確認しておくべき項目を整理しました。順番に潰していけば、10月の改正に慌てずに対応できます。

  1. 自社の立場を確認:免税事業者か、インボイス登録済みの課税事業者か。取引先に課税事業者がどれだけいるかを棚卸しする。
  2. 2割特例の「最後の適用」時期を把握:個人は2026年分まで、法人は2026年9月30日が属する課税期間まで。終了後の納税額を試算する。
  3. 3割特例の対象か確認:個人事業者で基準期間の課税売上高1,000万円以下なら、令和9年・令和10年分は3割特例が使える可能性がある。
  4. 仕入側は控除割合の変更を経理に反映:2026年10月以降の仕入れは70%控除。会計ソフトの区分設定と、1億円超ルールの該当有無を確認する。
  5. 本則課税・簡易課税・特例の有利判定:必要に応じて簡易課税制度選択届出書の提出期限を確認する。
  6. 請求書・経理フローの効率化を検討:区分経理や登録番号チェックの手間が増える前に、AI-OCRや会計自動化の導入を検討する。

正直に押さえたいデメリット・注意点

最後に、見落とすと損をしやすい注意点をまとめます。

  • 「特例があるから安心」ではない:2割特例は終わり、3割特例は個人事業者限定。法人や対象外の事業者は本則・簡易課税で計算する前提に切り替える必要があります。
  • 段階的な納税増は確実に来る:仕入側は控除割合が70%→50%→30%→0%と下がるため、免税事業者からの仕入れが多い事業者ほどコスト増が避けられません。
  • 制度判断は個別性が高い:本記事は2026年6月時点の国税庁公表情報に基づく一般的な整理です。最終的な有利判定や届出は、必ず最新の公式情報と顧問税理士に確認してください。

2026年10月の改正は「免税のまま様子見」を続けにくくする方向の変更です。制度対応と同時に、増える経理事務をどう減らすかをセットで考えておくと、コストと手間の両面で差がつきます。自社の状況に合わせた効率化の進め方を相談したい場合は、お気軽にお問い合わせください。

まずはお気軽にご相談ください

AI・IT・デザインに関するお悩みやご相談、お見積りのご依頼など、
どんなことでもお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ