Mihata
仕事効率化(DX)2026.07.28

AIで36協定を管理|特別条項の上限と更新漏れを防ぐ【2026】

「36協定の有効期間が切れているのに気づかず、時間外労働をさせてしまっていた」「特別条項の月100時間未満・複数月平均80時間以内という上限を、誰も日々チェックできていない」——36協定(サブロク協定)の管理は、締結・届出・上限の遵守・毎年の更新と工程が多く、中小企業の労務担当者がひとりで抱えると抜け漏れが起きやすい業務です。この記事では、36協定の管理でつまずきやすい点と、それをAIやアプリで仕組み化して更新漏れや上限超過を防ぐ具体的な方法を、締結・届出という「人が担う判断」との線引きも含めて解説します。

先に結論です。36協定とは、法定労働時間を超える時間外労働や休日労働をさせるために、労働者の過半数代表と締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出る労使協定です(労働基準法第36条)。管理の要点は3つ——①有効期間(原則1年)ごとに毎年届け出て失効させない、②特別条項の時間外上限(年720時間以下・単月100時間未満・複数月平均80時間以内・月45時間超は年6回まで)を超えさせない、③これらを属人的な記憶ではなく仕組みで監視することです。AIとスプレッドシートを組み合わせれば、有効期間の更新アラート・上限接近の検知・協定届の下書きまでを自動化できます。ただし、締結の合意形成と労働基準監督署への届出そのものは人が担う——この線引きが安全な運用の前提です。

36協定とは?時間外労働の上限をまず整理する

36協定は、労働者に法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超える時間外労働や法定休日の労働をさせる場合に、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)と締結し、事業場を管轄する労働基準監督署長へ届け出ることで、その範囲内の時間外・休日労働を適法にする労使協定です。締結しただけでは足りず、届出をして初めて効力を持つ点が実務での落とし穴になりやすいところです。

時間外労働には原則の限度時間があり、月45時間・年360時間の範囲内で定めるのが基本です(労働基準法第36条第3項・厚生労働省)。この原則を超えて働かせる必要がある臨時的なケースに備えて設けるのが、次の特別条項です。

特別条項で認められる時間外労働の絶対的上限

臨時的に特別の事情がある場合に限り、特別条項付きの36協定を結べば原則の限度時間を超えて定められます。ただし、超えてはならない絶対的な上限が法律で決まっています。中小企業も含め、2020年4月から罰則付きで適用されています(大企業は2019年4月から)。

区分

上限

カウント対象

原則(限度時間)

月45時間・年360時間

時間外労働

特別条項:年間

720時間以下

時間外労働(休日労働は含まない)

特別条項:単月

100時間未満

時間外労働+休日労働の合計

特別条項:複数月

2〜6か月のいずれの平均も80時間以内

時間外労働+休日労働の合計

特別条項:回数

月45時間を超えられるのは年6回まで

時間外労働

ポイントは、単月100時間未満と複数月平均80時間以内は「時間外労働+休日労働の合計」で見る一方、年720時間は時間外労働のみで判定する点です(時間外労働の上限規制 わかりやすい解説・厚生労働省)。カウント対象がずれるため、勤怠を手集計していると見落としが起きやすく、ここがAIによる自動監視が効く領域です。

36協定の管理でミスが起きる3つの落とし穴

36協定でトラブルになる原因は、現場では次の3つに集約されます。仕組みで対策する前に、どこでつまずくのかを押さえておきます。

  • 更新漏れ(失効):有効期間は原則1年で、満了すると効力を失います。毎年の再締結・再届出を忘れ、36協定がないまま時間外労働をさせてしまうと、それ自体が労働基準法違反になります(36協定の届出を忘れていませんか・福井労働局)。
  • 上限超過:単月・複数月平均・年間・回数と判定軸が複数あり、しかもカウント対象(休日労働を含むか)が異なります。月末になって初めて超過に気づく、という後手の管理になりがちです。
  • 属人化:起算日・満了日・各人の残業累計が担当者の頭やバラバラの表にしかなく、担当者が不在・交代すると一気に破綻します。

3つとも根は同じで、「期限と上限が一元管理されず、締切前に自動で気づける仕組みがない」ことに行き着きます。逆にいえば、期限と上限をデータで持ち、締切前にアラートを出すだけで、ミスの大半は防げます。

AIで36協定を管理する4つの使いどころ

36協定の管理は、AIが得意な「日付の計算」「累計の監視」「文章の下書き」「データの突き合わせ」が多く、自動化の効果が出やすい業務です。使いどころは大きく4つあります。

有効期間の更新漏れを自動アラートで防ぐ

最も効果が大きいのが、更新期限の自動管理です。Googleスプレッドシートに事業場ごとの起算日を入れておけば、満了日(起算日から1年)を自動計算し、GAS(Google Apps Script)で「あと30日で36協定が満了します。再締結と労基署への届出の準備を」と担当者へ通知する仕組みを、追加費用ほぼゼロで作れます。実務では、複数の事業場で起算日が異なるケースが失効の温床になるため、事業場を横断して満了日を一覧化しておくと安全です。

時間外労働の上限をリアルタイムで監視する

勤怠データを取り込み、社員ごとに「今月の時間外+休日労働の累計」「直近2〜6か月の平均」「年間の時間外累計」「月45時間超の回数」を自動計算し、上限に近づいた人を早期に警告する使い方です。たとえば単月80時間に達した時点で注意、95時間で警告——のように閾値を段階化しておくと、月末に慌てて調整する後手の管理から抜け出せます。判定ロジックが複雑(休日労働を含む・含まないの違い)なため、集計をAI・スクリプトに固定させる価値が高い領域です。

協定届・労使協定の下書きをAIで作る

36協定届の様式は、月45時間超が見込まれない場合は様式第9号、特別条項を付ける場合は様式第9号の2を使います(主要様式ダウンロードコーナー・厚生労働省)。記載する事由・業務の種類・労働者数・対象期間・上限時間などの下書きは、生成AIに前年の内容や自社の実態を渡してたたき台を作らせると、ゼロから書くより早く整います。担当者は事実確認と自社ルールへの調整に集中でき、記載漏れも減らせます。ただし最終的な記載内容の確定・押印・届出は人が行います。

労働時間データの集計・突き合わせをAIで

複数の勤怠システムや打刻データがある場合、それらを突き合わせて「36協定で届け出た上限」と「実績」の差分を出す作業は、手作業だと時間がかかり誤りも起きます。データの正規化・突き合わせ・異常値の抽出はAIやスクリプトが得意で、届出内容と実態の乖離を早期に見つけられます。

ここまで読んで、「自社の場合、どのツールでどう組めばいいのか」と迷われたかもしれません。記事の途中で恐縮ですが、私たちMihataは、こうした36協定や労務管理の仕組みづくり——スプレッドシートとAIを組み合わせた期限アラートや残業上限モニターを、業務に合わせてオーダーメイドで構築する支援を行っております。良い仕組みだと思っておりますので、よろしければあわせてご覧いただけたら嬉しいです。

AIに任せてよいこと・人が担うこと

36協定の管理を自動化するうえで、最も大事なのが「どこまでAIに任せ、どこから人が判断するか」の線引きです。締結の合意形成や労働基準監督署への届出は、労使の意思と法的責任が伴う行為であり、AIに代行させるものではありません。AIは計算・監視・下書きで担当者を支え、判断と責任は人が持つ——この役割分担を明確にします。

領域

AI・アプリの役割

人が担う判断

有効期間

起算日から満了日を計算し、更新時期を事前アラート

更新(再締結)の意思決定

上限管理

勤怠データから上限接近を検知・警告

業務量・要員の調整判断

協定書・届出書

様式第9号/第9号の2の下書き作成

記載内容の確定・押印

締結

論点整理・説明文の下書き

過半数代表者の適正な選出と合意(締結)

届出

提出チェックリスト・リマインド

労働基準監督署への届出そのもの

もう一点、労務データは氏名・給与・労働時間といった個人情報を含みます。外部の一般向け生成AIに実データをそのまま入力するのは避け、入力前に匿名化する・学習に使わない設定や事業者向けプランを使う・社内で入力可否のルールを決める、といった配慮を前提に組み立てます。

36協定の管理を仕組みとして定着させるコツ

36協定の管理は、在職中の従業員に対する労務管理の一部です。退職時のオフボーディングとは工程が分かれるため、混同せずそれぞれを仕組み化するのが定着の近道です。退職側の手続きの流れは、退職手続きをAIで自動化する抜け漏れ防止チェックリストにまとめています。

36協定の管理を単独で終わらせず、勤怠・申請・通知など労務・総務の定型業務全体の中に位置づけると、共通の基盤(スプレッドシート+AI+通知)を使い回せて投資対効果が高まります。どの業務から自動化すべきかの全体像は、中小企業のバックオフィスをAIで効率化する業務別の自動化マップが参考になります。また、更新した36協定や新しい上限ルールを全社に確実に届けるには、AIで社内回覧・通知を仕組み化して既読管理まで行う方法と組み合わせると、周知漏れも防げます。まずは有効期間の一覧化と更新アラートという小さな一歩から始めるのが、現場で最も失敗しにくい進め方です。

よくある質問

36協定とは何ですか?届出は必要ですか?

36協定とは、法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超える時間外労働や、法定休日の労働をさせるために、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)と締結する労使協定です。労働基準法第36条に基づくためこう呼ばれます。締結しただけでは足りず、所轄の労働基準監督署へ届け出て初めて有効になります。届出をせずに時間外労働をさせると労働基準法違反になります。

36協定の特別条項の上限は何時間ですか?

臨時的な特別の事情がある場合に限り特別条項を定められますが、絶対的な上限があります。時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満、かつ2〜6か月のいずれの平均も80時間以内です。さらに、時間外労働が月45時間を超えられるのは年6回(6か月)までです。これらは労働基準法第36条第6項の規定で、超えると罰則の対象になります。

36協定の有効期間は?毎年届け出る必要がありますか?

36協定の有効期間は原則1年です。1月や4月を起算日として定めることが多く、期間が満了すると効力を失うため、毎年、労働基準監督署へ届け出て更新する必要があります。更新を忘れて有効な36協定がない状態で時間外労働をさせると労働基準法違反になります。起算日と満了日を管理し、更新時期を事前に把握しておくことが更新漏れ防止の基本です。

36協定の管理はどこまでAIに任せられますか?

AIやアプリに任せてよいのは、有効期間の満了日の計算と更新アラート、勤怠データからの上限接近の検知、協定届(様式第9号・第9号の2)の下書き作成、届出チェックリストの管理といった「計算・監視・下書き」の領域です。一方、過半数代表者の適正な選出と合意(締結)、記載内容の最終確定、労働基準監督署への届出そのものは人が担う判断であり、自動化の対象にはしません。AIは担当者の抜け漏れを減らす補助役と位置づけるのが安全です。

36協定の上限に違反するとどうなりますか?

時間外労働の上限規制(労働基準法第36条第6項)に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則(同法第119条第1号)の対象になり得ます。具体的には、36協定で定めた時間数にかかわらず、実際に時間外労働と休日労働の合計が単月100時間以上になった場合や、2〜6か月平均のいずれかで80時間を超えた場合が該当します。日々の労働時間を監視し、上限に達する前に手を打つ仕組みが重要です。

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