AIネイティブCRMの料金は、「1ユーザーいくら」の席料金と、「AIが動いた分」の従量課金の二階建てになっているのが現在の主流です。公開価格から試算すると、20名で本格運用した場合に月20万円台に届くケースもあります。カタログの月額単価だけを見て社内稟議を通すと、後から差額の説明に追われることになります。
この記事では、公開されている価格をそのまま使って5名・20名での月額を計算し、見落としやすい費用と、人数に依存しない固定額へ切り替える選択肢までを整理します。為替が絡む部分は1ドル=150円と仮定して換算し、実際のレートで上下することを前提に読んでください。
AIネイティブCRMの料金は「席 × AI利用量」の二階建て
従来のCRMはユーザー数さえ決まれば月額が決まりました。AIネイティブCRMではそこにAIの実行量が加わるため、同じ人数でも使い方次第で請求額が変わります。まず、公開されている一次情報を並べます。
席(シート)課金の実額
Attioの公式料金ページでは、Plusが1ユーザー月額 $35(年払い、月払いは $44)、Proが $79(同 $99)、Enterpriseは個別見積もりとなっています。日本製のFrictioは公式サイトに料金の記載がなく問い合わせ制で、比較サイトのITトレンドでは参考価格として月額10,000円〜と紹介されています。
AI利用量(クレジット)の実額
AI側の課金は製品によって単位が違います。公開されている数値は次のとおりです。
製品 | AI課金の単位 | 公開価格 |
|---|---|---|
Attio | シートクレジット+ワークスペースクレジット | Proは1ユーザー1,000/ワークスペース10,000が付属。追加10,000クレジットで月 $150(年払い $120) |
Salesforce Agentforce | Flex Credits(アクション単位) | 10万クレジットで6万円。1アクション20クレジット=約12円 |
HubSpot Breeze | HubSpotクレジット | 1クレジット $0.010。1,000クレジットのパックが $10。Customer Agentは会話1件の自動解決で50クレジット($0.50) |
単価だけを見ると安く感じますが、これは回数で効いてくる費用です。1日20件のアクションでも月400件、複数のワークフローを常時回せば数千件に達します。
実額試算:5名と20名で月いくらになるか
ここからは具体的に計算します。前提は「Attio Proを年払い、AIワークフローを本格運用して追加クレジットを月10,000分購入」というよくある構成です。
項目 | 5名 | 20名 |
|---|---|---|
席料金($79 × 人数) | $395/月(約59,000円) | $1,580/月(約237,000円) |
追加クレジット(10,000/月) | $120/月(約18,000円) | $120/月(約18,000円) |
月額合計 | 約77,000円 | 約255,000円 |
年額 | 約92万円 | 約306万円 |
Plusプラン($35)で抑えれば5名で約26,000円/月まで下がりますが、付属クレジットはシート500・ワークスペース1,500と少なくなるため、AIを主力として使うほど追加購入が発生します。安いプランを選ぶと従量分が増え、高いプランを選ぶと席料金が増える——この綱引きが、AI時代のCRM料金の実像です。
Agentforce型(アクション課金)の場合
Salesforce Agentforceのように「1アクション約12円」で積み上がる方式は、少量なら極めて安く見えます。月400アクションなら4,800円です。一方、メール文面の自動生成・レコード更新・調査を組み合わせたワークフローを1商談あたり10アクションで回し、月500商談を処理すれば5,000アクション=月6万円になります。アクション数の見積もりを外すと、10倍単位でずれるのがこの方式の怖さです。
見落としやすい5つの費用
実務で見積もりを詰めるとき、以下は最初の提示に含まれていないことがよくあります。事前に確認しておくと安全です。
# | 費用 | 内容 |
|---|---|---|
1 | 初期設計・データ移行 | 既存の顧客リストや案件データの整形。項目設計を伴う場合は工数が読みにくい |
2 | 年払い前提の割引 | 公開されている安い単価は年払い価格。月払いにすると2〜3割上がる |
3 | 連携・アドオン | 既存CRMとの双方向同期や外部ツール連携が上位プラン限定のことがある |
4 | 録音・文字起こしの保管 | 会話キャプチャ型では音声データの保存期間と保管場所が別条件になる場合がある |
5 | 解約時のデータ持ち出し | 費用ではなく機会損失。エクスポート形式が限られると乗り換え自体が難しくなる |
「人数課金」が中小企業に効いてくる理由
席課金の本当の負担は、金額そのものよりも「誰にアカウントを配らないか」を考えなければならなくなることです。1席が月1万円前後になると、事務担当や兼務のパート、月に数回しか見ない役員にまで配るのは躊躇します。
結果として何が起きるか。入力や確認をする人がアカウントを持っていないため、その人の情報だけ管理表に載らなくなります。せっかくAIが自動で顧客データを組み立てても、受注後の対応履歴や請求の状況が別のスプレッドシートに残る——という分断が起きます。CRMが「営業だけのもの」になり、会社全体の管理台帳にならない構造的な原因はここにあります。
また、人が増えるほど費用が線形に増えるため、採用や繁忙期の増員がそのままシステムコストの増加になります。10名から20名になれば、席料金も倍です。
もうひとつの選び方:人数に依存しない固定額にする
ここで発想を変える選択肢があります。データは今使っているスプレッドシートに置いたまま、人が見る画面(アプリ)だけを作るという組み立て方です。AIの費用はすでに契約しているGoogle Workspaceの範囲に収まり、アプリ側は人数ではなく機能に対して費用が発生します。
Google Workspaceの料金は、Business Starterが1ユーザー月額800円、Standardが1,600円、Plusが2,500円(いずれも年間契約)で、Geminiの機能が含まれます。GoogleはさらにGeminiの機能を強化し続けており、2026年4月22日には自然言語の指示だけでスプレッドシート全体を構築・編集できることを発表しました。「Gemini で補完」による100セルのデータ拡充は手入力の9倍速とされています。つまりAIが賢くなった分は、追加のライセンス料なしにそのまま管理表に効いてきます。
3年間の総額で比べる
私たちが提供している「スプシ de 社内アプリ」の料金は、初期制作費25万円〜(テンプレート・セミオーダー)または50万円〜(オーダーメイド)、月額保守はライト9,800円・スタンダード19,800円(いずれも税別)です。保守は人数課金ではないため、利用人数が5名でも50名でも月額は変わりません。
20名で3年使った場合 | 席課金型のAIネイティブCRM(試算) | スプレッドシート軸のアプリ化 |
|---|---|---|
初期費用 | 0円〜(設計支援を頼めば別途) | 25万円〜 |
月額 | 約255,000円 | 19,800円(人数無制限) |
3年総額 | 約918万円 | 約96万円 |
21人目を追加したとき | 月額が約12,000円増える | 変わらない |
ただし、この表はそのまま優劣を意味しません。席課金型のAIネイティブCRMは、商談の録音・文字起こしから顧客データを自動生成する機能を含んでいます。スプレッドシート軸のアプリ化でも議事録URLからの自動入力などは実装できますが、通話の自動録音基盤まで丸ごと持つわけではありません。比べるべきは金額そのものではなく、「その差額に見合う自動化が自社に必要か」です。商談件数が月に数百件ある組織なら製品型の価値は十分にありますし、月20〜30件で、むしろ受注後の案件管理や在庫まで一元化したい会社なら、スプレッドシート軸のほうが合います。
記事の途中で恐縮ですが、料金を固定したい・営業以外の業務もまとめたいというご相談は実際に多くいただくところです。よろしければ実際の管理画面サンプルもご覧いただけたら嬉しいです。
どちらが得か、3つの問いで判断する
問い | Yesなら | Noなら |
|---|---|---|
商談の会話そのものが最大の情報源か | 製品型のAIネイティブCRM | スプレッドシート軸 |
今後2〜3年で利用人数が増えるか | 固定額モデルが有利 | 席課金でも読める |
営業以外(在庫・請求・勤怠など)も1か所で見たいか | スプレッドシート軸 | 製品型でも足りる |
製品の全体像や型ごとの違いはAIネイティブCRMの主要製品を3つの型に整理した記事で解説しています。既存の業務システムからの移行を検討中であれば、kintoneの乗り換え費用と代替案をまとめた記事も比較材料になります。商談メモの入力自動化そのものを先に試したい場合は、AI商談メモを議事録化してCRMへの転記まで自動化する手順が参考になります。
まとめ:見積もるべきは「人数」ではなく「AIの実行回数」
AIネイティブCRMの費用を読み違える原因は、ほぼ例外なくAIの実行回数を見積もっていないことにあります。稟議前に、月の商談件数・自動更新したいレコード数・自動生成したい文面の数を書き出し、公開されている単価を掛けてみてください。それだけで、提示された月額と実際の請求額の差はかなり小さくなります。
そのうえで、人数が増える見込みがある、あるいは営業以外の業務も同じ台帳で見たいという場合は、固定額のモデルも一度並べて比較する価値があります。現在お使いの管理表を拝見しながらの試算もお受けしています。
よくある質問
AIネイティブCRMの料金はユーザー単価だけで見積もれますか?
見積もれません。多くの製品が席(ユーザー)課金に加えてAIの実行量で課金します。Attioは追加10,000クレジットが月120ドル(年払い)、Salesforce Agentforceは10万クレジット6万円で1アクション20クレジット、HubSpotは1クレジット0.010ドルです。
20名で使うと月いくらくらいになりますか?
Attio Proを年払いで20名分(1ユーザー79ドル)契約し、追加クレジットを月10,000分購入すると、1ドル150円換算で月約255,000円、年間で約306万円の試算になります。プランや実際の利用量、為替で上下します。
見積もりに含まれていないことが多い費用は何ですか?
初期設計・データ移行、月払いにした場合の割増、上位プラン限定の連携機能、録音データの保管条件、そして解約時のデータ持ち出しの5点です。とくに公開価格は年払い前提のことが多く、月払いでは2〜3割上がります。
人数課金だと何が問題になりますか?
1席が月1万円前後になると、事務担当や兼務者、たまにしか見ない役員にアカウントを配りにくくなります。その結果その人たちの情報が管理表に載らず、受注後の履歴が別のスプレッドシートに残るという分断が起きます。
スプレッドシートを軸にすると料金はどうなりますか?
AIの費用は契約中のGoogle Workspace(Business Standardは1ユーザー月額1,600円・年間契約)の範囲に収まり、管理アプリ側は人数ではなく機能に対する費用になります。Mihataの場合は初期25万円〜、月額保守9,800円または19,800円(税別)で、人数が増えても月額は変わりません。