結論:保存料ゼロ、払うのは「最初に取り込むとき」だけ
Gemini API の File Search は、社内文書を取り込んで分割・索引まで自動で行い、質問に対して根拠つきで答えさせる仕組み(RAG)を、ベクトルデータベースを自前で用意せずに作れる機能です。ポイントは課金の形にあります。公式ドキュメントによれば、保存は無料・検索時の埋め込みも無料で、費用がかかるのは最初にファイルを索引する時の埋め込み料金と、通常のモデルの入出力トークンだけです。
この料金体系のおかげで、「社内文書を全部入れておくと毎月維持費がかかる」という従来のRAGの悩みが消えます。1万件入れても、置いておくだけなら0円です。
いくらかかるのか
項目 | 費用 |
|---|---|
ファイルの保存(ストア) | 無料 |
検索時の埋め込み生成 | 無料 |
索引時の埋め込み生成 | 埋め込みモデルの料金(テキストは |
検索でヒットした文書の本文 | 通常のコンテキストトークンとして課金 |
日本語1文字がおよそ1トークンとして、1,000文字の社内文書1万本=約1,000万トークンなら、初回索引の費用は1.5ドル程度。実務では、ここより「毎回の質問でヒットした本文がコンテキストに載る分」のほうが効いてきます。分割(チャンク)の粒度を粗くすると1回あたりの投入トークンが増えるので、精度とコストの両面で最初に詰めるべき設定です。
仕組みと3ステップ
File Search はキーワード一致ではなく意味で探すセマンティック検索です。取り込んだ文書は埋め込みに変換されて専用データベースに入り、質問側も埋め込みに変換して、意味の近い断片を引き当てます。
- File Search ストアを作る:埋め込みの入れ物。
fileSearchStoresに作成する。 - ファイルをアップロードして取り込む:
uploadToFileSearchStoreで1回の呼び出しにまとめられる。分割・埋め込み化・索引付けまで自動。 - File Search ツールを付けて質問する:
generateContentのツール設定で対象ストアを指定すると、そのストアを検索した結果を根拠に回答する。
見落としやすい保持期間の仕様
アップロードした元ファイル(File オブジェクト)は48時間で消えますが、ストアに取り込まれたデータは削除するまで残ります。埋め込みには TTL がなく、手動削除かモデルの提供終了まで保持されます。「元ファイルが消えた=検索できなくなった」ではないので、ここを取り違えて再アップロードを繰り返すと、余計な索引費用と重複ヒットを生みます。
逆に言えば、退職者の資料や失効した規程を消す作業は自分でやる必要があるということです。運用ルールを先に決めておくのが安全です。
私たちも社内ナレッジ検索の構築をお手伝いしています。記事の途中で恐縮ですが、こうした仕組みづくりのご相談も承っておりますので、よろしければあわせてご覧ください。
出典が出るから、社内で使える
File Search の回答には file_citation の注釈が付き、どのファイルのどこを根拠にしたかを取り出せます。PDF ではページ番号、画像や音声などのメディアに対する引用にも対応しています。
社内利用でAIが敬遠される最大の理由は「合っているか確かめられない」ことです。出典が出る構成にしておくと、担当者が原本を1クリックで開いて確認できるため、導入時の抵抗が目に見えて下がります。実務では、精度そのものより確認のしやすさが定着を決めます。
対応モデルと扱えるファイル
File Search が使えるモデルは、Gemini 3.8 Flash / 3.7 Flash / 3.6 Flash / 3.5 Flash / 3.5 Flash-Lite / 3.1 Flash-Lite / 3.1 Pro Preview / 3 Flash Preview です。最新の Gemini 3.8 Flash も対応済みなので、安いモデルで作って後から差し替える運用ができます。
ファイル形式は PDF、Word(.docx)、Excel(.xlsx)、PowerPoint(.pptx)、JSON、各種ソースコード、テキスト系など幅広く対応します。マルチモーダル File Search では埋め込みモデルを切り替えられ、テキストは gemini-embedding-001、画像を含む場合は gemini-embedding-2 が使われます。詳しくはGemini Embedding 2で画像・音声まで横断検索する方法で解説しています。
実務での落とし穴
- 「全部入れれば賢くなる」ではない:古い規程や失効した見積もりを混ぜると、それらしい嘘の根拠が出る。入れる前の棚卸しが本体。
- チャンク設定を既定のまま放置しない:細かすぎると文脈が切れ、粗すぎるとコストが膨らむ。手元の実データ20〜30問で当たりを見ながら決める。
- 権限の分離はストアで行う:全社員が同じストアを引くと、見えてはいけない資料が根拠として引用される。部署ごとにストアを分けるのが現実的。
- 無料枠のデータは学習に使われる:本番の社内文書を入れる前に有料ティアへ切り替える。
4つ目以外はすべて「AIの性能ではなく運用設計」の話です。RAG が期待どおりに動かない現場のほとんどは、モデルではなくこの4点のどれかでつまずいています。
自社で作るか、既製のツールを使うか
File Search は API なので、既存の社内システムやチャットに組み込む前提の選択肢です。「まず全社で使ってみたい」段階なら、Gemini のビジネス活用のような既製の環境から始めるほうが早いこともあります。判断軸は、検索結果を自社の業務フローに埋め込む必要があるかです。社内の申請システムや基幹システムと組み合わせたい場合は、API 側で作る価値が出ます。
企業向けの基盤としての位置づけはGemini Enterprise Agent Platform、情報の取り扱いは生成AI業務利用の情報漏洩対策もあわせてご覧ください。
社内文書の検索を形にしたい方へ
どの資料から入れるか、どう権限を分けるかまで含めて、小さく作って試すところからご一緒できます。お気軽にご相談ください。
よくある質問
Gemini APIのFile Searchは無料で使えますか?
保存料と検索時の埋め込み生成は無料です。費用がかかるのは最初にファイルを索引するときの埋め込み料金と、通常のモデルの入出力トークンです。
アップロードしたファイルはいつまで残りますか?
元のFileオブジェクトは48時間で削除されますが、File Searchストアに取り込まれたデータは自分で削除するまで残ります。埋め込みにはTTLがなく、手動削除かモデルの提供終了まで保持されます。
回答の根拠になった文書はわかりますか?
回答にはfile_citationの注釈が付き、どのファイルのどこを参照したかを取得できます。PDFのページ番号やメディアに対する引用にも対応しています。
どのモデルでFile Searchを使えますか?
Gemini 3.8 Flash、3.7 Flash、3.6 Flash、3.5 Flash、3.5 Flash-Lite、3.1 Flash-Lite、3.1 Pro Preview、3 Flash Previewが対応しています。
画像も検索対象にできますか?
マルチモーダルFile Searchで埋め込みモデルを切り替えられます。テキストはgemini-embedding-001、画像を含む場合はgemini-embedding-2が使われます。