レンタルサーバーから「ディスク容量が上限に近づいています」というメールが届いた。あるいは、サイトは見えているのに問い合わせメールだけが届かなくなった。容量がいっぱいというのは、放っておくと静かに取引先からの連絡を落としていく種類の障害です。
先に結論:最初に死ぬのはサイトではなくメール
容量がいっぱいになったとき、実務でいちばん先に被害が出るのはサイトの表示ではなくメールの受信です。そしてメールは、消えた分を後から取り戻せません。エックスサーバーの公式FAQも「メールボックスの容量超過により受信できなかったメールは、エラーメールとして送付元に返送されるため、受信側であとから確認することはできません」と明記しています(エックスサーバー公式FAQ)。
いっぽうサイト側は、すでにアップロード済みのファイルが消えるわけではないので、表示は当分そのまま動き続けることが多いです。だから「サイトが見えているから大丈夫」と判断してしまい、その間に受信できなかったメールだけが積み上がります。まずやるべきは、サイトの掃除ではなくメールボックスを空けることです。
何が止まるのか:止まり方の違いを押さえる
容量超過は「全部が一斉に止まる」のではなく、機能ごとに違う止まり方をします。ここを分けて理解しておくと、今どの段階にいるのかが判断できます。
対象 | どう止まるか | 取り返しがつくか |
|---|---|---|
メール受信 | 受信が拒否され、送信元にエラーメールが返る | つかない(送信元に再送を頼むしかない) |
サイト表示 | 既存ページは表示され続けることが多い。画像の新規アップロードや更新が失敗する | つく |
管理画面の操作 | ログインはできるが、保存・アップロード・更新が途中で失敗する | つく |
データベース(DB) | 書き込みができず、問い合わせ内容の保存や記事の保存が失敗する | 場合によりつかない(記録が残らない) |
自動バックアップ | 取得に失敗して、気づかないまま「戻せる場所」が無くなる | つかない(過去分が期限切れで消える) |
いちばん怖いのは最後の2つです。フォームからの問い合わせが保存されない、復旧の頼りだったバックアップが取れていない。この2つは容量を空けるより先に手当てが必要です。
まず何を確認するか:3つの容量は別勘定
サーバー管理画面(エックスサーバーならサーバーパネル、ロリポップ!ならユーザー専用ページ)のディスク使用量を開いて、内訳を見ます。ここで多くの方がつまずくのが、ファイル容量・メール容量・データベース容量は別勘定で、合計が契約容量に効くという点です。
ロリポップ!の公式料金ページには、容量は「ファイル容量、メール容量、データベース容量の合算値」であり、さらにプランごとにファイル容量として使える上限が別に定められていると書かれています(例:スタンダードは総容量450GBのうちファイル容量400GBまで。2026年9月時点。ロリポップ!ご利用料金)。つまりサイトのファイルをいくら削っても、メールが膨らんでいれば総量は減りません。
確認するのは次の3か所です。順番も大事で、上から見ていくと原因にいちばん早く当たります。
- メールアカウントごとの使用量(どのアドレスが何GB使っているか)
- Web領域の使用量(どのディレクトリが重いか。とくに wp-content/uploads と backup 系のフォルダ)
- データベースの容量(MySQL の一覧に各DBのサイズが出ます)
容量を食っている犯人トップ5
現場で見ていると、原因はほぼこの5つに収まります。上から順に、リスクが低くて効果が大きい順です。
① メールボックスの溜め込み
いちばん多い原因です。メールソフトが「サーバーにメッセージのコピーを残す」設定になっていると、パソコンで受信してもサーバー側のメールは削除されず溜まり続けます。エックスサーバーはこの設定を無効にするか「○日後に削除する」を有効にするよう案内しており、メールアカウントの容量は1〜20,000MB(20GB)の範囲で変更できます(エックスサーバー公式FAQ)。
見るのは「受信箱」だけでは足りません。送信済み・迷惑メール・ごみ箱が本体という会社はかなりあります。なおサーバー上のメールを削除すると、他の端末でIMAP受信していた場合はそちらからも消えます。削除前に、必要な期間分をパソコン側へ落としておくのが安全です。
メールがそもそも受信できない状態が続いているなら、容量以外の原因も混ざっているかもしれません。切り分けは独自ドメインのメールが受信できない原因と確認手順で整理しています。
② 自動バックアップの世代
プラグインやサーバー機能のバックアップが、同じサーバーの中に何世代も貯まっているケースです。ここは世代数を減らすのが、いちばんリスクなく容量が空く場所です。サイトの中身を消さずに、数GB単位で空くことがあります。
ただし条件が1つあります。同じサーバーの中にしかバックアップが無い状態で世代を消すのは危険なので、先に1世代をパソコンか外部ストレージへ落としてから消します。なお、サーバー側の自動バックアップにも保存期間があり、エックスサーバーは過去14日分(一部の古いサーバーは過去7日間)で、キャッシュディレクトリなど対象外のデータもあると公式に記載されています(エックスサーバー 自動バックアップ)。サーバー任せで足りているかは、自分の目で対象範囲を確認しておいてください。
③ 未圧縮の画像・動画
デジカメやスマホから出た1枚数MBの写真が、そのままアップロードされ続けている状態です。WordPress は1枚アップロードするごとにサイズ違いの画像を複数生成するため、元画像の重さがそのまま何倍かになって効きます。
ここでの判断は「消す」ではなく「縮める」です。記事に使っている画像を消すと本文が崩れて元に戻せませんが、同じファイル名のまま軽い画像に差し替えれば表示は変わらず容量だけ減ります。動画をサーバーに直接置いている場合は、YouTube などの外部に移すのが確実です。
④ ログファイル
アクセスログ、エラーログ、WordPress の debug.log。とくに debug.log は、一度デバッグを有効にしたまま放置すると単独で数GBまで育ちます。中身は過去の記録で、消してもサイトの動作には影響しません。消すより先に、出力を止める設定に戻すところまでやっておかないと同じことが起きます。
⑤ WordPress のリビジョン・キャッシュ・不要プラグイン
WordPress は記事を保存するたびに履歴(リビジョン)をデータベースに貯めます。公式ドキュメントによれば、リビジョンは posts テーブルに親記事の子として保存され、wp-config.php に define( 'WP_POST_REVISIONS', 3 ); と書けば保存数を制限でき、false で保存しないようにもできます(WordPress.org Revisions / wp-config.php)。自動保存は「1記事あたりユーザーごとに1つで、新しいものが古いものを上書きする」と明記されているので、こちらが無限に増えることはありません。
あわせて、ゴミ箱の保持日数も既定で30日です(EMPTY_TRASH_DAYS)。削除したつもりの記事や画像が1か月分残っている前提で数えてください。
消す前に必ずやること:消してよいもの、戻せないもの
事故になるのは容量超過そのものではなく「空けるために消したもの」です。Mihata で作業するときは、この表の左側から順に手を付けて、右側には原則として触りません。
消してよいもの(戻せる/影響が無い) | 消すと戻せないもの(触らない) |
|---|---|
debug.log・古いアクセスログ | サーバー上のメール本文(送信元に再送を頼むしかない) |
キャッシュプラグインが作ったキャッシュ | 唯一のバックアップファイル |
バックアップの古い世代(1世代を手元に残したうえで) | wp-content/uploads の画像(記事から参照されている) |
WordPress のゴミ箱の中身・リビジョン | データベースのテーブル(プラグインが使っている) |
使っていないテーマ・停止中のプラグイン | wp-config.php・.htaccess |
過去の制作会社が残した作業用フォルダ(中身を確認したうえで) | 中身が分からないフォルダ(確認するまで保留) |
作業の順序は、①1世代のバックアップを手元に取る → ②ログとキャッシュを消す → ③バックアップの古い世代を消す → ④メールを整理する、です。よくある壊し方は、容量が足りないせいでバックアップが途中で失敗し、その不完全なファイルを頼りに消してしまうパターンです。バックアップは取った後にファイルサイズを見て、明らかに小さければ失敗とみなすところまでを1セットにしてください。
また、管理画面に入れない・メンテナンス表示から戻らない状態でいじると復旧が長引きます。その症状が出ているならホームページのメンテナンス中表示が戻らない原因を先に読んでください。
増やす(プラン変更)か、移す(サーバー移転)か
掃除で足りないときの選択は2つです。判断軸はシンプルで、容量だけが足りないならプラン変更、容量以外にも不満があるなら移転です。表示速度、PHPのバージョン、管理画面の使いにくさ、そもそも誰が契約しているのか分からない——この辺りが混ざっているなら、掃除の延長ではなく移転として計画したほうが結果的に安く済みます。
2026年9月時点の主要サーバーの容量は次のとおりです(いずれも公式の料金ページ)。エックスサーバーはスタンダード500GB・プレミアム600GB・ビジネス700GB(NVMe)(料金・仕様)。ロリポップ!はエコノミー120GB・ライト350GB・スタンダード450GB・ハイスピード700GB・エンタープライズ1.2TB(ご利用料金)。さくらのレンタルサーバはライト100GB・スタンダード300GB・ビジネス600GB・ビジネスプロ900GB(料金プラン)。容量も料金も改定されるので、契約前に必ず公式で確認してください。
プラン変更で注意したいのは、即時に切り替わるとは限らないことです。エックスサーバーの場合、上位プランへの変更は申請後すぐ適用されますが、下位プランへ戻すのは利用期限月の1日〜20日に申請して翌月1日から適用という扱いになります(プランの変更)。「とりあえず上げて、落ち着いたらすぐ戻す」は思ったほど自由に効きません。
移転を選ぶ場合、いちばん止めてはいけないのはやはりメールです。切り替えのタイミングを誤ると数時間から半日ぶんの受信が消えるので、手順はサーバー移転でメールが止まる原因と、止めない手順にまとめてあります。そもそも今のサーバーを誰が契約しているのか分からないという状態なら、ドメインとサーバーの管理会社がわからない時の調べ方から始めてください。
私たちはホームページの制作と、こういった保守・サーバーまわりの引き取りも行っています。記事の途中で恐縮ですが、社内に詳しい人がいないまま容量警告に付き合い続けている状態なら、よろしければ合わせてご覧いただけたら嬉しいです。
二度目を起こさない設計
容量は一度空けても、同じ運用のままなら同じ日数で戻ります。掃除のあとに設定まで変えておくと、次の警告は来ません。
- メール:POPの「サーバーにコピーを残す」を無効にするか、○日後に削除に変える。添付の大きいやりとりが多い部署は、メールアカウントごとの容量を先に割り振っておく。
- 画像:アップロード前に長辺1,600px程度へ縮める運用にする。更新担当が複数いるなら、圧縮を自動化する仕組みを入れたほうが確実です。
- ログ:debug.log の出力を止める。アクセスログの保存期間を管理画面で設定する。
- リビジョン:WP_POST_REVISIONS を3〜5に制限する。
- バックアップ:世代数を決め、保存先をサーバーの外(クラウドストレージ)にする。同じサーバー内に置く運用は、容量と復旧の両方で不利です。
- 監視:月に1回、ディスク使用量を見る日を決める。警告メールの宛先が退職者のアドレスになっていないかも、このとき確認します。
頼むとしたら誰に・何を頼むか
線引きはメールの整理は社内、サーバーとWordPress側は外が現実的です。どのメールが必要かを判断できるのは社内の人だけで、外注しても結局確認待ちになります。
外に頼むときは、依頼内容をこの3点に分けて伝えると見積もりが早く出ます。
- 今すぐ止血:容量を空けて、メールの受信と更新が通る状態に戻す
- 原因の特定:どこが何GB使っていたかの内訳を出してもらう(これが無いと再発します)
- 再発防止:バックアップの保存先変更、画像の圧縮、ログとリビジョンの設定
3番目を省くと、半年後に同じ依頼をもう一度出すことになります。逆に、問い合わせが止まっている最中なら1番だけを急いでもらうのが正しい順番です。
よくある質問
サーバーの容量がいっぱいになると、ホームページは消えますか?
すでにアップロード済みのファイルが消えることはありません。表示は当分そのまま続くことが多く、先に影響が出るのはメールの受信や、画像のアップロード・記事の保存といった新しい書き込みのほうです。
容量超過で受信できなかったメールは、後から届きますか?
届きません。エックスサーバーの公式FAQでは、容量超過で受信できなかったメールはエラーメールとして送信元に返送され、受信側で後から確認することはできないと案内されています。空けたうえで送信元に再送を依頼してください。
サイトのファイルを消したのに容量が減りません。なぜですか?
容量はファイル・メール・データベースの合算で数えられているためです。メールボックスに溜まっている分が大きいと、サイト側をいくら削っても総量は減りません。管理画面でメールアカウントごとの使用量を先に確認してください。
いちばん安全に容量を空けられるのはどこですか?
バックアップの古い世代とログファイル、キャッシュです。サイトの中身に触らずに減らせます。ただしバックアップは1世代をパソコンなど手元に落としてから、古い世代を消してください。
プランを上げれば、すぐ容量が増えますか?
上位プランへの変更は申請後すぐ適用される場合がありますが、下位プランへ戻す側は申請できる時期が決まっていることがあります。エックスサーバーでは利用期限月の1日から20日に申請し、翌月1日から適用という扱いです。