メールを送っても返信がない。電話をかけても留守番電話のまま。サイトの修正も止まったまま——ホームページの制作会社と連絡が取れなくなったとき、いちばん怖いのは「更新できないこと」ではありません。ドメインの更新が止まってサイトと会社のメールが同時に消えることです。
この記事では、まず結末を左右する1点(ドメインの登録者が誰になっているか)を確認する方法と、そこから先の5手順を整理します。あわせて、gTLD(.com / .net など)では移管用のコードを5日以内に渡す義務があり、料金の争いを理由に拒めないという、交渉の材料になるルールも紹介します。
先に確認する1点:ドメインの「登録者」は誰になっているか
すべてはここで決まります。制作会社が代行して取得したドメインは、次の2パターンに分かれます。
登録者(Registrant) | 状況 |
|---|---|
自社(貴社)名義 | ドメインは貴社のもの。連絡が取れなくても、移管の手続きで取り戻せる余地が大きい |
制作会社名義 | 法律上はその会社のドメイン。取り戻すには相手の協力か、譲渡の交渉が必要になる |
確認方法はドメインの種類で分かれます。
- .jp のドメイン:JPRSのWHOIS(whois.jprs.jp)で自社のドメイン名を検索すると、「登録者名」と「登録担当者」「[公開連絡窓口]」が表示されます。
- .com / .net などのgTLD:ICANNのLookup(lookup.icann.org)で検索します。個人情報保護のため登録者名が伏せられていることが多いですが、Registrar(登録している事業者)と有効期限、ステータスは読めます。
ここで「登録事業者は分かったが、そもそも誰が管理しているのか分からない」という状態なら、先にホームページのドメインとサーバーの管理会社がわからない時の調べ方3手順を読んでください。
やってはいけないこと:更新期限を放置する
連絡がつかない相手を待っている間に、ドメインの有効期限が来るのが最悪の展開です。期限切れはサイトが消えるだけでなく、独自ドメインのメールも同時に止まります。取引先からの発注メールも、問い合わせも、届かなくなります。
WHOISで有効期限(Expiration Date/有効期限)を必ず先に見てください。期限が近い、あるいはすでに切れている場合の復旧の考え方はドメイン更新忘れでサイトが消えた|復旧の期限と3つの原因にまとめています。
連絡が取れないときの5手順
手順1:記録が残る形で、期限を切って連絡する
電話は記録が残りません。メールで、「いつまでに」「何を」返してほしいかを箇条書きにして送ります。求めるのは次の4点です。
- ドメインの登録者名義と、移管に必要な情報(AuthCode/AuthInfoコード)
- サーバーの契約者・管理画面のログイン情報
- CMSの管理者アカウント
- デザインデータとソースコードの引き渡し
それでも反応がない場合、相手が事業を継続しているかを法人番号公表サイト(国税庁)や登記情報で確認しておくと、この先の判断が早くなります。
手順2:止まると困るものを、優先順位で並べる
全部を同時には取り戻せません。実務上の優先順位はこの順です。
- メール(独自ドメインのメールが止まると業務が止まる)
- ドメイン(失うと検索順位もリンクも積み上げがゼロに戻る)
- サイトの中身(最悪、作り直せる)
逆にいえば、サイトのデザインデータが返ってこないことは致命傷ではありません。ドメインとメールを押さえることに力を集中してください。
手順3:公開されているサイトを、いま保存しておく
公開中のページは誰でも閲覧できるので、テキストと画像はいまのうちに手元へ保存できます。掲載中の原稿・実績・写真が残っていれば、作り直しの費用と期間は大幅に縮みます。相手のサーバーが止まってからでは手遅れです。
手順4:ドメインを自社の管理下へ移す
gTLDと.jpで手順がまったく違います。次の2章で分けて説明します。
手順5:新しい受け皿を用意して載せ替える
移管が済んだら、新しいサーバーへサイトとメールを移します。順序を間違えるとメールが落ちるので、先に新サーバーでメールを受けられる状態を作り、最後にDNSを切り替えるのが安全です。
.com / .net などのgTLD:コードは5日以内に渡す義務がある
ここが交渉の武器になります。ICANNの移転ポリシーでは、登録者からの最初のリクエストから5暦日以内に、レジストラは移管に必要なAuthInfoコードを提供し、ClientTransferProhibited(移管禁止のロック)を解除しなければならないと定められています。
さらに重要なのが次の点です。登録者とレジストラのあいだに支払いに関する紛争があることを理由に、AuthInfoコードの提供やロックの解除を拒むことはできません。「未払いがあるからコードは出さない」という主張は、少なくともICANN認定レジストラに対しては通りません。
ただし、間に入っている制作会社はレジストラそのものではないことがほとんどです。登録者名義が貴社になっていれば、制作会社を飛ばしてレジストラに直接連絡できる——ここが分かれ目です。WHOISで表示されたRegistrarのサポート窓口に、登録者本人として問い合わせてください。
.jp ドメイン:AuthCodeと「意思確認」が必要になる
JPドメインの管理指定事業者の変更は、次の流れです。
- 登録者が、変更元の指定事業者からAuthCodeを取得する
- 変更先の指定事業者へ、指定事業者変更を申し込む
- JPRSから変更元の指定事業者へ意思確認の依頼が行われる
- 変更元から登録者へ意思確認が行われ、登録者が承認する
AuthCodeは、申請者が「登録者本人」または「登録者から権限を委任された人」であることを確認するために使われます。また指定事業者変更ロックが設定されている場合は、手続きの前に解除が必要です。
つまり、.jp は変更元(=連絡が取れない相手が契約している事業者)を経由する工程が残るぶん、gTLDより詰まりやすいということです。指定事業者が制作会社自身ではなく大手のレジストラであれば、そのレジストラに登録者として直接連絡する道があります。まずWHOISで指定事業者名を確認してください。
60日ルール:直近で何かをしていると、そもそも移管できない
手続きを始める前に、次に当てはまらないか確認します。ICANNの移転ポリシーでは、レジストラが移管申請を拒否できる理由として、ドメイン名の初回登録から60日以内であること、前回の移管から60日以内であることが挙げられています。また、登録者名義の変更が完了した後の60日間も他社への移管ができない扱いになります。
「制作会社に名義を自社へ変えてもらった直後に、別の会社へ移管しようとして弾かれる」というのは、この理由で起きます。名義変更と移管を同じ週にやろうとせず、順番と待機期間を織り込んで計画してください。
取り戻せないケースもある:独自CMSと月額パッケージ
制作会社の独自CMSで作られたサイトや、月額パッケージで「借りている」形のサイトは、契約が切れた時点でサイトそのものが残らない設計になっていることがあります。この場合、返ってくるのは原稿と写真だけで、サイトは作り直しになります。
悔しい話ですが、判断は早いほうが傷が浅く済みます。連絡が取れない相手を3か月待つより、ドメインとメールを守ったうえで作り直すほうが、結果的に安く早く終わることが多いのが実情です。
次に頼むときの契約で、必ず書いておく4つ
同じことを繰り返さないために、次の依頼では見積もりの段階でこの4点を確認してください。当社(Mihata)でも、聞かれる前にこちらから明文化しています。
- ドメインの登録者名義は貴社にする(管理を代行するだけ、と契約書に書く)
- サーバーの契約者も貴社にする(支払いはカード会社経由でも、契約名義は自社)
- 納品物とソースコード・デザインデータの所有権は貴社(解約時に引き渡す義務を明記)
- 解約時の引き継ぎ手順を、契約時点で決めておく(何を・いつまでに渡すか)
この4つが埋まらない会社は、金額の安さに関係なく警戒してよいと考えています。見積もり段階での確認項目はホームページ制作会社の見積比較 7つの着眼点に一覧でまとめています。
まとめ
- 最初に確認するのはドメインの登録者名義。自社名義なら、制作会社を飛ばしてレジストラと話せる。
- 守る優先順位は、メール → ドメイン → サイトの中身。デザインデータは後回しでよい。
- gTLDは、登録者の最初の請求から5暦日以内にAuthInfoコードを渡す義務があり、支払いの紛争を理由に拒めない。
- .jp は変更元の指定事業者を経由する意思確認があるぶん、詰まりやすい。
- 登録直後・移管直後・名義変更直後の60日間は移管できない。順番を計画に織り込む。
- 独自CMSや月額パッケージのサイトは、そもそも持ち出せないことがある。待つより作り直すほうが早い場合が多い。
よくある質問
制作会社と連絡が取れません。まず何を確認すべきですか?
ドメインの登録者(Registrant)が自社名義か、制作会社名義かを確認してください。自社名義であれば、制作会社を介さずに登録事業者(レジストラ)と直接やり取りして移管できる余地が大きく、制作会社名義であれば譲渡の交渉が必要になります。.jpはJPRSのWHOIS、.comなどのgTLDはICANN Lookupで確認できます。
未払いがあると、ドメインの移管を拒否されますか?
gTLDの場合、ICANNの移転ポリシーでは、登録者とレジストラのあいだに支払いに関する紛争があることを理由にAuthInfoコードの提供やClientTransferProhibitedの解除を拒むことはできないとされています。またレジストラは、登録者の最初のリクエストから5暦日以内にコードを提供する義務があります。ただしこれはICANN認定レジストラに対するルールで、間に入る制作会社との民事上の支払い義務が消えるわけではありません。
JPドメインの移管はgTLDと何が違いますか?
JPドメインの管理指定事業者の変更では、登録者が変更元の指定事業者からAuthCodeを取得し、変更先へ申し込んだあと、JPRSから変更元へ意思確認の依頼が行われ、登録者が承認する流れになります。変更元を経由する工程が残るため、連絡が取れない相手が絡むと詰まりやすいのが実情です。指定事業者変更ロックがかかっている場合は、事前に解除も必要です。
名義を自社に変えた直後に別の会社へ移管できますか?
できないことがあります。ICANNの移転ポリシーでは、初回登録から60日以内、前回の移管から60日以内が移管を拒否できる理由として挙げられており、登録者名義の変更が完了した後の60日間も他社への移管ができない扱いになります。名義変更と移管は同じ週にまとめず、待機期間を織り込んで計画してください。
サイトのデータが返ってこない場合、作り直すしかありませんか?
公開中のページのテキストと画像は、相手のサーバーが止まる前であれば手元に保存できます。原稿と写真が残っていれば作り直しの費用と期間は大きく縮みます。なお制作会社の独自CMSや月額パッケージで作られたサイトは、契約終了時にサイトそのものが残らない設計のことがあり、その場合は作り直しになります。
次に依頼するとき、契約で何を決めておけばよいですか?
ドメインの登録者名義を自社にすること、サーバーの契約名義も自社にすること、納品物とソースコード・デザインデータの所有権が自社にあること、解約時に何をいつまでに引き渡すかの手順、この4点を契約書に明記してください。見積もり段階で確認しておけば、同じ事態を防げます。