Mihata
AI活用2026.09.04

AI記事 差し戻し 修正回数の決め方|無償の線引き

AI記事の制作を発注するとき、見積書には「修正3回まで」のように回数だけが書かれていることがよくあります。ところが実際に揉めるのは回数ではありません。「これは修正に数えるのか」という、種類の話です。

事実が間違っていたので直してもらう。構成が指示と違ったので組み直してもらう。読んでみたら思っていたトーンと違ったので変えてもらう。この3つは発注側の体感では同じ「差し戻し」ですが、責任の所在も、無償にすべきかどうかも、まったく別物です。ここを分けずに回数だけ決めると、本当に直してほしいときに回数を使い切っているという状態になります。

この記事では、差し戻しを4種類に分けて、どちらの責任か・無償か・回数に数えるかを表にしました。発注側にも受注側にも使える線引きとして書いています。

「修正3回まで」だけでは足りない理由

回数制限は、受注側が無限の手戻りを避けるための仕組みです。それ自体は健全で、これが無い契約のほうがむしろ長続きしません。問題は、回数という単一の物差しが原因の違いを消してしまうことにあります。

たとえば、納品された記事に事実誤りがあったとします。これは仕様を満たしていない状態であって、追加の要望ではありません。にもかかわらず1回分としてカウントされると、発注側は「指摘すると損をする」という妙な立場に置かれます。結果、細かい誤りを見逃したまま公開してしまう。AI記事でこれが起きると、後から効いてきます。

逆のパターンもあります。発注側が「もう少し柔らかい感じで」と3回言い直した場合、これは受注側の落ち度ではありません。最初にトーンを言語化できていなかった発注側の宿題です。ここを無償で押し切ると、受注側は次から見積もりを厚くするしかなくなります。

つまり回数の前に、差し戻しを種類で分けることが先です。分けてしまえば、回数はむしろ少なくて済みます。

差し戻しの4分類:責任・無償・回数カウントの判断表

実務でよく出る差し戻しは、だいたい次の4つに収まります。「どちらの責任か」は責任追及のためではなく、次に同じことを起こさないために誰が何を直すかを決めるための欄だと考えてください。

種類

具体例

どちらの責任か

無償か

回数に数えるか

事実誤り

制度名・数値・固有名詞が違う/出典が実在しない/古い情報のまま

受注側(仕様未達)

無償

数えない

構成のズレ

合意した見出し構成と違う/指定した必須項目が抜けている/文字数が大きく外れている

受注側(指示との相違)

無償

数えない

トーンの好み

硬い/柔らかい/です・ます/専門用語の量/一人称の扱い

発注側(仕様が未定義なら)

初回のみ無償が現実的

数える

キーワードの取り違え

指定KWで書かれていない/検索意図が別物/既存記事と食い合っている

指示の粒度による

要切り分け

切り分け後に判断

4つ目だけ歯切れが悪いのは、実際に曖昧だからです。次の節で切り分け方を書きます。

事実誤りを回数に数えない、と決めておく

これは発注側の我がままではなく、成果物の定義の問題です。事実が違う記事は、そもそも納品されたと言えません。契約書や発注書に「事実誤りおよび指示との相違の訂正は、無償修正の回数に含めない」と一行入れておくだけで、後の会話がすべて楽になります。

ただし、発注側にも義務が発生します。何をもって事実とするかの一次ソースを、発注側が持っている場合は先に渡すことです。自社の実績数値、料金体系、社内用語の定義。これらは外部から調べようがないので、渡していないものを「事実誤り」と呼ぶのは無理があります。ファクトチェックの分担そのものはAI記事のファクトチェックで詳しく整理しています。

構成のズレは「合意した構成案」があるかで決まる

構成のズレを無償にできるのは、比べる対象があるときだけです。見出し案を先に出してもらい、発注側が承認する工程が入っていれば、そこからの逸脱は明確に受注側の直しになります。この工程が無いまま完成原稿だけが来る発注は、構成の差し戻しが全部「好みの変更」に見えてしまい、揉めます。

逆に言えば、構成承認の工程を入れるだけで差し戻しの総量は目に見えて減ります。原稿ができてから構成を直すのは、双方にとっていちばん高くつく直し方です。

トーンの好みは、仕様として先に固める

いちばん揉めるのがここです。トーンは主観なので、後出しでいくらでも変わります。「なんか違う」と言われた受注側は直しようがなく、ここで関係が悪くなります。

対策はシンプルで、発注前に自社の既存記事を2〜3本、良い例として渡すことです。ゼロから言語化する必要はありません。加えて次の4つだけ決めておくと、たいていのズレは消えます。

  • 文末(です・ます/だ・である)と、一人称の表記
  • 読者の想定知識レベル(同業者向けか、まったくの初心者向けか)
  • 避けたい表現(誇張、断定、煽り、絵文字、体言止めの多用など)
  • 専門用語を使ってよいか、使うなら初出で説明するか

ここまで決めた上でなお出るトーンの差し戻しは、発注側の判断が変わったということなので、回数に数えるのが公平です。初回だけ無償にして、2回目以降は回数を消費する、という運用が現実的でしょう。

キーワードの取り違えは、指示の粒度で切り分ける

「このキーワードで書いてください」とだけ渡した場合と、検索意図・想定読者・競合記事との差別化ポイントまで渡した場合では、責任の重さが変わります。切り分けの基準は次のとおりです。

  • 指定KWが本文・見出しに入っていない → 受注側(仕様未達・無償)
  • KWは入っているが検索意図が別物(例:比較意図の語に事例紹介を書いた) → キーワード設計を誰がやる契約かで決まる
  • 自社の既存記事と食い合った → 既存記事一覧を渡していなければ発注側

2つ目が曖昧になりやすいので、キーワード設計を含む契約なのかどうかは最初に確認しておいてください。外注先の役割分担の見方はAIブログ記事作成代行の比較にまとめています。

発注前に決めておく6項目

ここまでを、発注前のチェックリストに落とします。見積もりを受け取った段階で、この6つが書面のどこかに書かれているかを確認してください。

  1. 無償修正の回数——数字で(回数そのものは何回でもよい)
  2. 回数に含めないもの——事実誤り、指示との相違を明記
  3. 構成承認の工程があるか——見出し案の提出と承認のタイミング
  4. トーンの定義——参考記事、文末、読者レベル、避けたい表現
  5. 差し戻しの期限——納品後何営業日以内に指摘するか、無通知なら合格とみなすか
  6. 公開後の加筆・リライトの扱い——別費用か、月額に含むか

5番目を入れておくと、発注側の社内確認が遅れて受注側が動けない、という詰まり方も防げます。契約書側でどう条文にするかはSEO外注の契約書で確認する9条項にまとめました。

Mihataでも記事制作を受けており、事実誤りと指示との相違の訂正は回数に数えない形で運用しています。うまくいっていない部分も含めてAIブログ運用代行の進め方に書いているので、他社と並べて見比べる材料にしてください。

法律はどこまで守ってくれるか

線引きは基本的に契約で決めるものですが、条件によっては法律が下支えしてくれます。

ひとつは中小受託取引適正化法(通称:取適法。旧「下請代金支払遅延等防止法」=下請法)です。2026年1月1日に施行された改正で名称が変わりました。記事制作は情報成果物作成委託にあたり、委託事業者が資本金5千万円超または従業員100人超で、受注側がそれ以下であれば適用対象になります。公正取引委員会のリーフレットでは、禁止項目のひとつとして「不当な給付内容の変更、やり直し」——中小受託事業者に責任がないのに、発注の取消しや発注内容の変更を行ったり、無償でやり直しや追加作業をさせることが挙げられています。

つまり受注側に責任がない差し戻しを無償で押し付けることは、条件が揃えば法律上も問題になり得るということです。同じリーフレットでは、発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法)を書面または電子メールなどの電磁的方法で明示する義務も定められています。トーンや構成の要件を発注時に文字で渡すことは、実務上の合理性だけでなく、この義務とも噛み合います。

もうひとつは民法です。第637条は、請負の目的物が契約の内容に適合しない場合、注文者がその不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、追完請求・報酬減額・損害賠償・解除ができなくなると定めています。公開後に事実誤りを見つけたときの、外側の期限がここになります。契約書で検収期間を短く切っていても、この1年の枠組みは頭に入れておくと判断しやすくなります。

なお、AI記事だから品質基準が甘くてよい、ということはありません。Googleは制作方法ではなく品質を見るという立場を公式に示しており、生成AIなどのツールでユーザーに価値を加えないページを大量に作ることはスパムポリシーに触れうる、と説明しています。事実誤りを回数に数えないという線引きは、この意味でも発注側の自衛になります。

受注側から見ても、この線引きは損ではない

ここまで発注側の目線で書いてきましたが、種類で分ける運用は受注側にとっても有利です。無限の手戻りを防いでいるのは回数制限ではなく、「トーンの好みは回数を消費する」という合意のほうだからです。回数だけを盾にすると、事実誤りの指摘にまで回数を主張することになり、信頼を失います。

受注側から提案する場合は、見積書の備考に3行足すだけで済みます。事実誤り・指示との相違は無償かつ回数外、トーンの変更は初回無償・以降は回数消費、公開後の加筆は別見積り。これを最初に出す会社は、発注側から見ると揉め方を知っている会社に見えます。

よくある質問

よくある質問

無償修正は何回にするのが妥当ですか?

回数の相場を探すより、何を1回と数えるかを先に決めるほうが効きます。事実誤りと指示との相違の訂正を回数から外しておけば、残るのは好みの変更だけなので、少ない回数でも足ります。逆に全部まとめて数える契約は、回数が多くても不足します。

事実誤りの訂正も修正回数に含まれると言われました。

事実が違う記事は仕様を満たしていないので、追加要望とは性質が異なります。発注書や契約書に「事実誤りおよび指示との相違の訂正は無償修正の回数に含めない」と一行入れてもらうよう交渉してください。発注側が資本金5千万円超または従業員100人超などの条件に当たる場合、取適法の「不当な給付内容の変更、やり直し」の観点も関係してきます。

トーンが違うという差し戻しは無償にしてもらえますか?

トーンの仕様を渡していなかったのであれば、初回だけ無償、2回目以降は回数を消費する形が公平です。発注前に自社の既存記事を2〜3本、良い例として渡し、文末・読者レベル・避けたい表現・専門用語の扱いの4点を決めておくと、そもそも差し戻しが減ります。

差し戻しの期限は決めておくべきですか?

決めておいたほうがよいです。納品後何営業日以内に指摘するか、無通知なら合格とみなすかを書いておくと、社内確認の遅れで制作が止まることを防げます。なお民法第637条では、不適合を知った時から1年以内に通知しないと追完請求などができなくなると定められています。

構成のズレを無償で直してもらう条件は何ですか?

比べる対象、つまり事前に合意した見出し構成案があることです。構成の承認工程が無く完成原稿だけが来る発注では、構成の差し戻しが好みの変更と区別できません。見出し案の提出と承認を工程に入れてもらうのが先です。

見積書の備考に何を書くべきか迷っている段階でも、発注側・受注側どちらの立場でもご相談いただけます。

まずはお気軽にご相談ください

AI・IT・デザインに関するお悩みやご相談、お見積りのご依頼など、
どんなことでもお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ