「AIでスライドを作る」ツールは増えましたが、日本語の営業資料や社内資料を実際に作らせてみると、そのまま提出できる状態では出てきません。この記事では主要なAIスライド生成ツールを2026年8月時点の公式情報で比較し、どこまで任せられて、どこから人が直すことになるのかを整理します。料金や機能は各公式サイトを当日確認したものだけを載せ、確認できなかった項目は「未確認」と明記しています。
結論:日本語の資料でAIスライド生成を使うなら、選ぶ基準は3つだけ
AIでスライドを作るツールは2026年時点で数十種類あります。ただし日本語の営業資料・社内資料という前提に絞ると、判断軸は「①日本語のまま構成が破綻しないか」「②PowerPoint(.pptx)で編集可能な状態に書き出せるか」「③自社のテンプレート・トンマナに寄せられるか」の3つに収束します。逆に言えば、テンプレートの数やデザインの見栄えは決め手になりません。
実務上いちばん重要なのは②です。AIが作るのは「たたき台」であり、社外に出す資料は必ず人が直します。書き出した .pptx がテキストボックスや図形として編集できず画像に潰れていると、修正のたびに元ツールへ戻る必要が出て、かえって時間が増えます。
そしてもう1つ、この分野を選ぶうえで無視できない事実があります。AIスライド生成はサービスの入れ替わりが激しい領域です。20万人規模で使われた「Tome」のスライド機能は2025年4月30日に終了しており、本日(2026年8月8日)時点で tome.app にアクセスするとHTTP 404が返ります。特定ツールに資料の原本を置ききらない設計が、実務上の保険になります。
AIスライド生成ツール比較表(2026年8月時点)
下の表は、各ツールの公式サイト・公式ヘルプを本日確認して埋めたものです。公式ページの自動取得がボット対策でブロックされ、当日中に一次情報を確認できなかった項目は「未確認」と明記しています(推測値は載せません)。
ツール | 提供元 | 日本語UI | PowerPoint(.pptx)書き出し | 料金(本日、公式で確認できた範囲) |
|---|---|---|---|---|
イルシル | 日本 | ◯(日本語前提の設計) | ◯(有料プラン。PDF・PPTX・PNG) | フリー 無料/パーソナル 1,848円(税込・月)/パーソナルプラス 5,500円(税込・1人・年間契約)/法人 応相談 |
Gamma | 米国 | ◯(日本語出力に対応) | ◯(PowerPoint/PDF書き出しあり) | クレジット制。金額は本日公式ページを取得できず未確認 |
Microsoft 365 Copilot(PowerPoint) | 米国 | ◯ | ◎(PowerPointそのもの) | 3,778円/ユーザー/月(月間契約)、2,698円/ユーザー/月相当(年払い・2026年9月30日までのキャンペーン価格) |
Google スライド × Gemini | 米国 | ◯ | △(Googleスライドから.pptx書き出し) | Google Workspace Standard 1,600円/ユーザー/月、Plus 2,500円/同(通常価格) |
Beautiful.ai | 米国 | ×(英語UI) | ◯(Editable PowerPoint export) | Pro 12ドル/月(年払い)、Team 40ドル/ユーザー/月(年払い) |
Canva(AIプレゼン機能) | 豪州 | ◯ | ◯ | 本日公式料金ページを取得できず未確認 |
Tome | 米国 | — | — | 提供終了(スライド機能は2025年4月30日で終了) |
主要ツールの実力と、向いている場面
イルシル:日本語の資料作成に最初から寄せてある
日本製のスライド生成AIで、テキストを入れると構成からデザインまで生成します。公式サイトによればテンプレートは3,000種類以上、出力はPDF・PPTX・PNGに対応します。プラン別のAIデザイン生成枚数はフリー3枚/月、パーソナル40枚/月、パーソナルプラス200枚/月(1人あたり)、法人500枚/月と明記されています。
選定時に見落としやすい制約が2つあります。1つは対応ブラウザで、公式FAQに「Google Chrome、Microsoft Edgeに対応しています。Safariを使用しての閲覧時は予期せぬ不具合が起こる可能性が高く、現状対応しておりません」とあります。Macでの利用が中心の組織は事前に確認してください。もう1つは外部データ出力(PDF・PowerPoint)が有料プランの機能である点です。無料で試して「そのまま業務に乗せる」判断をする場合、ここで詰まります。
Gamma:構成の展開が速い。ただし料金は公式で要確認
プロンプトから資料・ドキュメント・Webページを一気に生成できるツールで、日本語出力にも対応しています。課金はクレジット制で、生成のたびにクレジットを消費する方式です。今回、公式の料金ページはボット対策により機械的に取得できなかったため、本記事では金額を記載しません。導入検討時は必ず公式ページで現行価格を確認してください。
Microsoft 365 Copilot:既存のWord資料が原稿になる
PowerPoint内のCopilotは、プロンプトからの新規作成に加えて、既存のWord文書を参照してスライド化できます。公式サポートには「プレゼンテーション作成は、指定したプロンプトを使用するか、ファイルを参照して作成プロセスを開始します」と記載があります。すでに提案書や仕様書がWordで存在する組織では、ゼロから書かせるより精度が出ます。
実務上の注意点も公式FAQに書かれています。「一度にサポートされる出力言語は 1 つだけです」とあり、日英併記の資料を一発で作らせる用途には向きません。また参照元のWord文書は24MB未満が推奨とされています。料金は月間契約で3,778円/ユーザー/月、年払いは2026年9月30日までのキャンペーンで2,698円/ユーザー/月相当です。
Google スライド × Gemini:Workspaceを使っているなら追加コストが読みやすい
Google Workspaceの上位プランにはGeminiのAIアシスタント機能が含まれます。公式の料金ページでは、Standard(1,600円/ユーザー/月)の機能として「Gmail、Google ドキュメント、Google Meet などの Gemini AI アシスタント」が挙げられ、Starter(800円/ユーザー/月)は「Gmail の Gemini AI アシスタント」までと区別されています。Googleスライド側のGemini機能(画像生成など)はヘルプセンターに解説があります。
ただしプランごとにどの機能まで含まれるかは改定が多い領域です。契約前に、自社が使いたい機能(スライド生成なのか画像生成なのか)が対象プランに入っているかを、その時点の公式料金ページで確認するのが確実です。
Beautiful.ai:レイアウトが自動で整う。UIは英語
スライドの型(テンプレート)が賢く、要素を足すとレイアウトが自動調整されるのが特徴です。公式料金ページではPro 12ドル/月(年払い)、Team 40ドル/ユーザー/月(年払い、月払いは50ドル)とされ、「Editable PowerPoint export」が明記されています。UIは英語のみのため、社内展開の教育コストは見込んでおく必要があります。
Tome:スライド機能は終了済み(比較記事に残っていることがある)
2023年前後の「AIスライド生成ツールおすすめ」系の記事には、いまだにTomeが載っています。しかしスライド製品は2025年4月30日に終了しており、本日時点で tome.app は404を返します。ツール選定で古いまとめ記事を参照するときは、必ず各公式サイトが現在も生きているかを自分で開いて確かめてください。この分野は、記事より先にサービスがなくなります。
実際に日本語スライドを組んでわかった、AI出力が「そのまま使えない」4つの場所
ここからは、Mihataが自社のPowerPoint生成(社内でテンプレート化した.pptx量産の仕組み)を運用するなかで、日本語資料が崩れる箇所として繰り返し踏んできたポイントです。AIスライド生成ツールの出力を手直しするときも、壊れるのはだいたい同じ場所です。
1. 和文フォントの指定が抜けて、開く環境で別フォントに化ける
PowerPointのファイル形式(Office Open XML)は、欧文フォントと和文フォント(東アジア用フォント)を別々に持っています。生成物側で欧文フォントしか指定されていないと、日本語部分はテーマ既定のフォントで描画され、開く端末によって見え方が変わります。Mihataの生成パイプラインでは配布用ファイルに和文フォントを明示指定していますが、それでも「そのフォントを持っていない端末で開くと代替フォントに置き換わる」問題は残ります。AI生成のスライドを社外に出す前に、必ず別の端末で1回開く。これだけで事故の大半は防げます。
2. 日本語は文字が入りすぎる。箱からあふれる前提で作る
和文フォントは欧文に比べて1文字あたりの描画幅が広く、英語向けに設計されたテンプレートに日本語を流し込むと、見出しが2行になり、箇条書きが枠外にはみ出します。実務では、可変長のテキストには自動縮小(シュリンク)を効かせたうえで、1行あたりの文字数の上限をテンプレート側で決めてしまうのが早い解決策です。AI側のプロンプトで「見出しは20文字以内、本文は1行40文字以内」と指定しておくと、手直し量が体感で大きく減ります。
3. 図解は「箱と矢印」までしか出てこない
現時点のAIスライド生成が得意なのは、テキストの構造化とレイアウトです。一方で「なぜこの矢印がこの向きなのか」「どこが本記事の主張の核なのか」といった意味の重みづけは出力に反映されません。結果として、きれいだが何も言っていない図が量産されます。図解は、AIに骨組みを作らせて、強調(色・太さ・配置)だけ人が入れる分業が現実的です。この点は動画生成でも構図が同じで、AI動画生成ツールの比較で整理した「AIが強い工程と人が残る工程」の切り分けと合わせて読むと判断しやすくなります。
4. 書き出した.pptxが「編集できるか」はツールごとに違う
同じ「PowerPoint書き出しに対応」でも、テキストボックスと図形として編集できる状態で出るツールと、スライドが実質的に画像として貼られた状態で出るツールがあります。後者だと、誤字ひとつ直すのに元ツールへ戻ることになります。トライアル中に必ず、書き出した.pptxをPowerPointで開き、文字をクリックして直接編集できるかを確認してください。比較表の機能一覧では判別できません。
今回、検証できていないこと(正直に開示します)
本記事の一次所見は、Mihataが自社で運用しているPowerPoint生成の実務から得たものです。各ツールの出力品質を今回まとめて再検証したわけではありません。とくにGammaとCanvaについては、当日中に公式の料金・機能を機械的に確認できなかったため、金額を記載していません。ツール個別の日本語出力の崩れ具合・図解の質については、比較のための横並び検証が未実施であり、この記事では断定していません。導入判断は、必ず自社の実資料でトライアルしてから行ってください。
用途別:どれを選ぶか
- 社内の共有資料・議事メモをスライド化したい:すでにMicrosoft 365かGoogle Workspaceを契約しているなら、まず標準機能(Copilot / Gemini)を試す。追加契約が要らず、情報の持ち出しも起きません。
- 営業資料・提案書のたたき台を大量に作りたい:日本語前提の設計と豊富なテンプレートを持つイルシル、または構成展開の速いGammaが候補。書き出した.pptxの編集可否をトライアルで必ず確認します。
- デザインの一貫性を最優先したい:レイアウト自動調整に強いBeautiful.aiが候補ですが、UIが英語である点は組織展開の障壁になります。
- 自社テンプレートに完全に合わせたい:既製ツールのテンプレートに寄せるのではなく、自社のひな形からスライドを生成する仕組みを内製するほうが結果的に早いケースがあります。
最後の選択肢について補足します。私たちも、資料の型が決まっている業務(定例報告・提案書・研修資料など)では、既製ツールに合わせるより自社テンプレートから直接生成する仕組みを組んだほうが手直しが減る、という結論に至りました。業務に合わせた独自AI開発のサービスでは、こうした「自社の型で出す」仕組みづくりもお手伝いしています。記事の途中で恐縮ですが、選択肢の1つとして知っていただけたら嬉しいです。
導入前に決めておくこと
ツールの比較よりも先に決めておくと失敗が減る論点が2つあります。1つは入力する情報の範囲です。未公開の売上や顧客名を含む資料を外部サービスに入れてよいかは、ツール選定より前に社内で線引きが必要です。もう1つは原本の置き場所です。Tomeの事例のとおり、サービスは終了します。完成物は必ず.pptxまたはPDFで自社のストレージに落とす運用にしておいてください。
AIスライド生成は、資料作成の時間を確実に削ります。ただし削れるのは「白紙から書き始める時間」であって、最後の3割の詰めは人の仕事として残ります。そこを見込んだうえで導入すると、期待外れになりません。
よくある質問
AIで作ったスライドはそのまま社外に出せますか?
おすすめしません。和文フォントが開く端末で置き換わる、日本語が枠からあふれる、図解の強調が入っていないといった手直しが必要な箇所が残ります。別の端末で1回開いて確認してから出してください。
PowerPointに書き出せると書いてあれば編集もできますか?
ツールによって異なります。テキストボックスや図形として編集できる状態で出るものと、実質的に画像として貼られた状態で出るものがあります。トライアル中に書き出した.pptxをPowerPointで開き、文字を直接編集できるか必ず確認してください。
無料で使えるAIスライド生成ツールはありますか?
イルシルにはフリープランがあり、AIデザイン生成は月3枚、作成できる資料は3個までです。ただしPDF・PowerPointの外部データ出力は有料プランの機能とされています。
Microsoft 365 Copilotで日英併記の資料は作れますか?
公式FAQに「一度にサポートされる出力言語は 1 つだけです」と記載があり、一度の生成で日英併記の資料を作る用途には向きません。言語ごとに分けて生成する必要があります。
Tomeはまだ使えますか?
使えません。スライド製品は2025年4月30日に終了し、2026年8月8日時点で tome.app はHTTP 404を返します。古い比較記事に掲載が残っているため、選定時は各公式サイトが現存するか自分で確認してください。
AIスライド生成ツールを使うと、資料作成はどれくらい速くなりますか?
横並びの検証は本記事では行っていないため、具体的な倍率は断定できません。確実に削れるのは白紙から構成を書き起こす工程で、最後の仕上げ(強調・表現の調整・事実確認)は人の作業として残ります。
あわせて、ローカルLLMは業務で使えるのかも参考にしてください。