「AIを内製化したいが、AI人材を採用すべきか、いまの社員を育てるべきか」——中小企業でよく詰まる分岐です。求人を出しても応募が来ない、来ても年収が合わない、という話もよく伺います。
この記事は、採用と育成のどちらを選ぶべきかの判断基準と、多くの中小企業にとって現実解になる3つ目の選択肢を整理します。結論から言うと、中小企業で採用から入るのは最後の手段です。
結論:中小企業は「採用」より先に「現場の人+外部の伴走」で埋まる
AI人材の採用が難しいのは、市場に人がいないからだけではありません。採用しても、その人に任せる業務の定義が社内に無いことのほうが問題になります。入社後に「で、何をすればいいですか」となり、数か月で辞める——中小企業で最も損失の大きい失敗の形です。
IPAが2026年4〜6月に国内企業1,799社へ実施した調査(DX動向2026)では、DXを推進する人材の「量」について「やや不足」「大幅に不足」の合計が85.5%で、2024年度・2023年度とほぼ同水準のまま動いていません。数年にわたって解消していない不足を、自社の採用活動だけで埋められると考えるのは現実的ではないというのが、この数字の読み方です。
採用が現実的でない3つの理由
- 母集団が形成できない。AI関連人材はどの企業も採りたい層で、給与水準は大手・IT企業が基準になります。中小企業が同じ土俵で競っても応募は集まりません。
- 評価できる人が社内にいない。面接でスキルを見極められる人がいない状態で採用すると、当たり外れが完全に運になります。
- 1人採っても続かない。相談相手も評価者もいない環境に1人だけ置くと、成長の実感が持てず離職します。AI人材の「1人目採用」がとくに難しいのはこの構造のためです。
育成で足りる範囲・足りない範囲
役割 | 育成で足りるか | 理由 |
業務でAIツールを使いこなす人 | 足りる | 必要なのは業務知識+操作の慣れ。現場の人のほうが向いている |
どの業務にAIを当てるか決める人 | 足りる(要時間) | 技術より業務の棚卸し力。既存社員のほうが有利 |
社内データを整えて参照できる形にする人 | 条件つき | 表計算と業務の理解があれば届く範囲。基盤構築までは外部の手が要る |
モデルやシステムを作り込む人 | 足りない | 採用か外注。中小企業が内製で抱える必然性は低い |
IPAの調査でも、AI関連人材の不足感が他と比べて減っているのは「AIに理解がある経営・マネジメント層」と「AIツールを活用して、自社の事業に活かせる従業員」で、逆に「現場の知見と基礎的AI知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員」「データマネジメントの知見があり、社内で企画、推進できる人材」は不足したままとされています。つまり使う人は育ってきたが、設計する人が足りていないという構図です。
3つ目の選択肢:伴走型(外注と内製の中間)
採用でも育成でもない現実解が、設計だけ外に出し、運用は自社で持つ形です。具体的には次のような分担になります。
- 外部が持つ:どの業務から始めるかの切り出し、データの置き方の設計、最初の仕組みづくり、詰まったときの相談先
- 自社が持つ:日々の運用、業務ルールの判断、社内への展開、データの入力と更新
この形が効くのは、いちばん採用が難しい「設計する人」だけを外から借りられるからです。同時に、現場の担当者は伴走の過程で設計の考え方を覚えるので、育成としても機能します。逆に丸ごと外注にすると、社内には何も残りません。
内製と外注の費用構造の違いは社内AIは内製か外注か、SaaSをやめて自前で持つ判断は脱SaaS・内製化は現実的か?で整理しています。研修から入る場合の設計は生成AIの社内研修は何から?を参照してください。
判断の順番
- まず「設計する人」が要るのか確認する。既存ツールの導入だけで済むなら、採用も外注も不要です。
- 要るなら、社内で1年かけて育てられる人がいるか見る。候補は情報システム部門ではなく、業務をいちばん理解している現場の人です。
- 候補がいないなら、伴走型で外から借りる。この段階で採用に踏み切らないのは、任せる業務の定義がまだ無いからです。
- 運用が1年回って、任せる業務が言語化できたら採用を検討する。ここまで来て初めて、求人票が書けるようになります。
順番を飛ばして先に採用すると、1で述べた「入社後に任せる業務が無い」状態を自分で作ることになります。
まとめ
AI人材は、中小企業では採用より先に「現場の人を育てる+設計だけ外から借りる」で埋まります。DX推進人材の不足は85.5%と数年間動いておらず、採用市場で解決する前提を置くのは危険です。まず要るのが「設計する人」なのかを確かめ、順番どおりに進めてください。
Mihataでは、設計と最初の仕組みづくりを担いながら、運用は貴社に残す形でAI導入をご支援しています。社内に担当を置けない段階からのご相談も可能です。
よくある質問
AI人材は採用と育成のどちらが先ですか?
中小企業では育成が先です。採用は、運用が1年回って任せる業務が言語化できてからにするのが安全です。定義が無い状態で採用すると入社後に任せる仕事が無く、早期離職につながります。
育成の候補は誰にすべきですか?
情報システム部門よりも、業務をいちばん理解している現場の人が向いています。必要なのは技術力より業務の棚卸し力だからです。
外注と伴走型は何が違いますか?
丸ごと外注は運用まで外部が持つため社内に何も残りません。伴走型は設計と最初の仕組みづくりだけを外部が持ち、運用と判断は自社が持つ形なので、進めながら社内に知見が残ります。
AI人材の不足はいずれ解消しますか?
IPAの調査ではDX推進人材の量の不足感が85.5%で、2023年度・2024年度とほぼ同水準のまま推移しています。短期に解消する前提で計画を立てるのは避けたほうが安全です。