受付の電話が鳴り止まない。診療中に手が止まる。だから「Web予約を入れたい」——ただ、患者さんの年齢層を考えると本当に電話が減るのか、踏み切れない。小規模なクリニック・歯科医院・整体院でよく聞く悩みです。
先に結論を書きます。問題は電話予約そのものではなく、「電話でしか予約できない・電話でしか答えが分からない」状態です。Web予約は電話をゼロにする道具ではありません。電話の総量を減らして、電話でしか解けない用件に受付の時間を戻す道具です。そしてもうひとつ、順番が大事です。予約システムを入れる前に、サイトの情報整備だけで消える電話がかなりの割合を占めます。
なお「高齢の患者さんが多いから無理」という懸念については、総務省の調査で60〜69歳のインターネット利用率は90.4%、70〜79歳は69.8%(令和6年通信利用動向調査・2024年)という数字が出ています。詳しくは後半で扱います。
電話が悪いのではなく「電話でしか予約できない状態」が受付を止めている
電話予約には、Webにはない強みがあります。症状の緊急度を声で判断できる、初診の不安をその場でほぐせる、複雑な事情を聞き取れる。これは残すべき価値です。
問題は、それ以外の用件まで同じ1本の回線に集まっていることです。受付の電話が「診療時間を確認したいだけの人」で埋まっている間、目の前の患者さんの会計が止まり、緊急度の高い電話が話し中になります。電話の本数ではなく、電話の中身が偏っていることが本当の負担です。
ですから目指す状態は「電話ゼロ」ではありません。受付が電話に出たときに、それが出るべき電話であること。これが現実的なゴールです。
まず、電話が鳴る理由を用件別に分解する
いきなりツールを選ぶ前に、1週間だけでいいので受付で「何の電話だったか」を正の字で数えてみてください。手書きのメモで十分です。用件は、だいたい次の6つに分かれます。
用件 | 電話が鳴る理由 | Webで受けられるか | 先に効く打ち手 |
|---|---|---|---|
新規(初診)の予約 | Web予約の受け皿がない/不安があり相談したい | △(多くは受けられるが、相談は電話に残る) | Web予約+初診案内ページ |
再診の予約 | 次回の枠を取る手段が電話しかない | ◎ | Web予約(次回予約を院内で取る運用も有効) |
変更・キャンセル | 自分で取り消せないので電話するしかない | ◎ | Web予約のマイページから変更・取消 |
診療時間・休診日の確認 | サイトに書いていない/古い/探せない | ◎(そもそも電話が発生しない) | サイトの情報整備 |
持ち物・費用・保険の確認 | 初診時に何が要るか書かれていない | ◎(同上) | 初診の持ち物・費用の目安ページ |
道順・駐車場 | 地図がない/駐車場の台数と場所が不明 | ◎(同上) | 地図の埋め込み+駐車場の写真と台数 |
この表で強調したいのは下の3行です。診療時間・持ち物・駐車場を聞くための電話は、予約システムを入れなくても、サイトに書くだけで消えます。しかも費用はほぼゼロで、今日から着手できます。
実務でよくあるのは「サイトには書いてあるのに電話が来る」ケースです。これは書いていないのと同じで、原因はたいてい次のどれかです。
- スマートフォンで開くと、診療時間の表が横にはみ出して読めない
- 年末年始や学会での臨時休診が更新されておらず、患者さんが信用していない
- 「初診の方へ」の情報がPDFの中にあり、スマートフォンでは開く気にならない
- 地図が埋め込まれておらず、住所のテキストしかない(Googleマップの埋め込みが表示されない原因と直し方も参考になります)
導入の順番は3段。予約システムは2番目でいい
順番を間違えると、予約システムを入れたのに電話が減らない、という結果になります。次の3段で進めてください。
第1段:サイトの情報整備(費用ほぼゼロ・即日〜1週間)
最低限、次の5つがスマートフォンで3タップ以内に読める状態にします。
- 診療時間と休診日(曜日ごとの表+臨時休診のお知らせ欄。トップページに置く)
- 初診の持ち物(保険証・マイナンバーカード、医療証、お薬手帳、紹介状、他院の検査結果など、自院で実際に必要なものだけ)
- 費用の目安(保険診療の3割負担でおおよそいくらか、自費メニューは金額を明示。断定できない範囲は「診療内容により変わります」と正直に書く)
- 駐車場(台数・場所・提携駐車場の有無。入口の写真が1枚あると電話が減ります)
- アクセス(地図の埋め込み+最寄り駅からの徒歩分数)
ここまでで、確認系の電話が目に見えて減ります。まだ1円も予約システムに払っていない段階で、いちばん効く手です。
第2段:Web予約の受け皿を作る
情報整備が終わってから予約です。理由は単純で、情報が整っていないサイトにWeb予約を置いても、患者さんは「これで合っているのか」を確認するために結局電話するからです。
最初は受ける範囲を絞るのが安全です。たとえば「再診の予約と、予約の変更・キャンセルだけWebで受ける」「初診は電話のまま」から始める。再診と変更・キャンセルは、上の表でも◎が付いた、いちばんWebに向いた用件です。ここだけでも受付の負担はかなり変わります。
第3段:リマインド(無断キャンセル対策)
Web予約は、電話予約より「予約したこと自体を忘れる」リスクが上がります。人と会話していないぶん、記憶に残りにくいためです。だからリマインドは、Web予約を入れるならセットで必要と考えてください。詳しくは後述します。
Web予約の入れ方は大きく3通り
ここは、費用感と向き不向きで分けて考えます。汎用の予約システムと、電子カルテ連携の医療特化型は、同じ土俵で比較してはいけません。解決している問題が違うからです。
(1) 汎用の予約システムをホームページに埋め込む
業種を問わない予約システムを、自院のサイトに埋め込む方法です。無料プランから始められるものが多く、いちばん手が届きやすい選択肢です。
サービス | 無料プラン | 有料プランの目安 |
|---|---|---|
RESERVA | 0円(月間予約50件・顧客250件まで) | ブルー 3,850円/月(年払)〜 |
STORES 予約 | 0円(フリープラン) | スモール 9,790円/月(年間契約)〜 |
Airリザーブ | 0円(フリープラン) | ベーシック 5,500円/月(税込)〜 |
※料金は各社の公式ページで確認した2026年9月時点のものです。プラン内容は変更されることがあるため、申し込み前に必ず公式ページをご確認ください。
無料枠の考え方には注意が必要です。たとえばRESERVAのフリープランは月間予約50件までなので、1日3件のWeb予約が入ると月末には上限に届きます。「無料で始められる」と「無料で回り続ける」は別と考えて、有料プランに移る前提で選んだほうが後悔がありません。
各ツールの埋め込み方や無料で使える範囲の比較は、ホームページに予約システム・予約カレンダーを埋め込む方法と無料ツール5選で詳しくまとめています。ツール選びの段階なら、まずこちらを読むのが早道です。
向いているケース:整体院・接骨院・自費メニュー中心の歯科・小規模で電子カルテとの連携を求めていない院。
向かないケース:予約情報を電子カルテやレセコンへ自動で流したい院(そこは次の医療特化型の領域です)。
(2) 電子カルテ・レセコン連携の医療特化型
受付・問診・会計・カルテまでを患者情報でつなぐタイプです。予約が入ると直接カルテ側に反映されるため、受付での二重入力がなくなります。汎用ツールでは解決できない部分がここです。
たとえばエムスリーデジカルの「デジスマ診療」は、公式ページで初期費用0円・月額15,800円(税抜)と明示されており、Web予約に加えて自動受付・電子問診・自動精算・電子カルテ連携までを含みます。
GMOグループの「メディカル革命 byGMO」は電子カルテ・レセコン連携を掲げ、公式ページに「60機種以上の連携実績あり」と記載がありますが、「連携先機種により連携できる範囲が異なります」と明記されており、料金も公開されていません。この種のサービスは自院のカルテ・レセコンの機種によって可否と費用が変わるため、金額は問い合わせないと分かりません。
選ぶときの判断軸はひとつです。「予約枠を公開したいだけ」なのか、「受付の二重入力をなくしたい」のか。前者なら汎用ツールで足り、後者なら医療特化型でないと解決しません。ここを曖昧にしたまま相見積もりを取ると、金額だけを見て安いほうを選び、結局カルテへの手入力が残る、という結果になりがちです。
(3) Googleビジネスプロフィール・SNSからの予約導線
「〇〇 歯科」で検索した患者さんが最初に見るのは、多くの場合サイトではなくGoogleの検索結果に出るお店の情報欄です。ここに予約リンクを置けます。
Googleビジネスプロフィールのヘルプによれば、予約はビジネスプロフィールから「予約」を選び、対応するプロバイダを選択して設定します。同ヘルプには「Google経由で予約すると、プロバイダから料金が請求される場合があります」という注意書きと、自分で設定したカスタムリンクではパフォーマンスデータが利用できない旨の記載があります。
これは予約システムの代わりではなく、作った予約ページへの入口を1つ増やす作業です。第2段が終わってから10分でできるので、忘れずにやっておいてください。
入れたあと、実際に使われるようにする4つの小さな工夫
Web予約は「入れたのに使われない」ことがよくあります。患者さんが存在を知らないだけ、というのが最大の理由です。次の4つを同時にやると定着が早くなります。
- 診察券・お会計時の控えにWeb予約のURLとQRコードを印刷する:財布の中に入口が入っている状態を作る。印刷物の差し替えは1回で済み、以後ずっと効きます。
- 電話で予約を受けたときに、受付から一言添える:「次回からこちらのページでもお取りいただけます」と伝える。断る患者さんもいますが、伝えないと永久に電話のままです。
- 院内に1枚だけ掲示する:情報を詰め込まず、QRコードと「予約の変更・キャンセルもこちらから」の1行に絞る。
- 予約ページはサイトのトップから1タップで開く場所に置く:メニューの奥に入れない。スマートフォンで開いたとき、最初の画面に予約のボタンが見えている状態が理想です。
それから、電話予約を受けたぶんも同じカレンダーに入れることを最初に決めてください。紙の予約表とWeb予約が二重管理になると、ダブルブッキングが起きて受付の仕事はむしろ増えます。移行期に失敗する原因のほとんどがこれです。紙をやめる決断が難しければ、当面は「Webで受けた予約を紙へ転記する担当と時間帯を決める」だけでも事故は減ります。
「高齢の患者さんが多いから無理」への回答
いちばん多い懸念です。ここは感覚ではなく公的統計で見ます。総務省「令和7年版 情報通信白書」に掲載された年齢階層別インターネット利用率(令和6年通信利用動向調査・2024年の数値)は次のとおりです。
年齢階層 | インターネット利用率(2024年) |
|---|---|
50〜59歳 | 96.9% |
60〜69歳 | 90.4% |
70〜79歳 | 69.8% |
80歳以上 | 33.1% |
全体 | 85.6% |
読み取れることは3つあります。
- 60代はほぼネットを使っている(90.4%)。「高齢だから使えない」の対象は、実質的に70代後半以降です。
- 70代は約7割。全員ではありませんが、「誰も使えない」でもありません。
- 80歳以上は33.1%。ここは明確に電話・窓口を残す必要があります。
つまり正しい設計は「Web予約に一本化する」ではなく、Webで受けられる人にはWebで受け、電話の回線を80歳以上の患者さんと緊急の相談のために空けておくことです。目的が「電話をなくすこと」から「電話を必要な人のために空けること」に変われば、高齢の患者さんが多いことは導入しない理由になりません。
もうひとつ現場でよく効くのが、ご家族が代わりに予約する導線です。患者さん本人が70代・80代でも、同居のご家族や離れて暮らすお子さんがスマートフォンで予約するケースは珍しくありません。Web予約のページに「ご家族の方の代理予約も可能です」と一文添えるだけで、使われ方が変わります。
逆に、公平のために正直に書いておきます。Web予約を入れても、導入直後は電話が増えることがあります。「予約したはずだけど届いていますか」という確認の電話です。これは予約完了メールが届いていない、または迷惑メールに入っていることが原因のことが多く、予約直後の自動返信が確実に届くかを事前に確認しておけば防げます。メールが届かない原因の切り分けは問い合わせフォームのメールが届かないときの原因と対処にまとめています。
無断キャンセル対策は「前日リマインド」と「予約直後の確認」の2つだけ
凝った仕組みは要りません。効くのは次の2つです。
- 予約直後の確認メール(またはSMS・LINE):日時・持ち物・所要時間の目安・キャンセルの方法を書く。ここに「キャンセルはこのページから変更できます」と入れておくと、変更の電話も同時に減ります。
- 前日のリマインド:前日の夕方あたりに1通。届く手段は患者さんの層で選びます。メールを読まない層にはSMS、若い層にはLINEが届きやすい傾向があります。
あわせて、キャンセルのハードルを下げることも無断キャンセル対策になります。「電話でしか取り消せない」状態だと、気まずさから連絡せずに来院しない患者さんが出ます。Webから自分で取り消せるようにしたほうが、結果として空いた枠を他の患者さんに回せます。
予約を受けたあとの自動応答やリマインドの考え方は、業種は違いますが飲食店・サロンの予約をAI接客で取りこぼさない仕組みで扱った内容がそのまま応用できます。
それでも電話に残る用件がある(残すのが正解です)
最後に、Webへ移してはいけない用件を挙げておきます。
- 症状の相談を含む問い合わせ:緊急度の判断が必要なものは、必ず人が声で受ける
- 当日の急な受診の可否:その日の混雑状況で答えが変わるため、電話のほうが速い
- 初診で不安が強い方:話して安心してもらう工程そのものに価値がある
- Webの操作が難しい患者さん:代替手段を必ず残す
電話番号を目立たない場所に隠すようなことはしないでください。「Webでも予約できます」と併記するだけで十分です。電話をなくしにいくと、受付の負担ではなく患者さんの信頼が減ります。
まず今週やること(3行のチェックリスト)
- 1. 受付で1週間、電話の用件を6分類で数える(新規/再診/変更・キャンセル/診療時間/持ち物・費用/道順・駐車場)
- 2. 上位に来た「確認系」の答えを、スマートフォンで読める形でサイトに書く(診療時間・休診日・初診の持ち物・費用の目安・駐車場)
- 3. 予約は「再診と変更・キャンセルだけ」から受ける前提で、汎用ツールか医療特化型かを1つに絞る
この順で進めれば、予約システムの契約前に効果の一部が出ますし、契約するときには「何を解決したいのか」がはっきりしています。サイト側の情報整備からまとめて手を入れる場合、公開までの段取りはホームページを最短2週間で公開するための準備チェックリストが参考になります。
Mihataでもクリニックや治療院のサイト制作・改修をお手伝いしていますが、最初のご相談で予約システムをすすめないことはよくあります。話を伺うと、診療時間と駐車場の書き方を直すだけで済むことが実際にあるためです。まずは自院の電話の中身を数えるところから始めてみてください。
よくある質問
Web予約を入れれば、クリニックの電話は減りますか?
減りますが、ゼロにはなりません。用件別にみると、再診の予約と変更・キャンセルはWebに移しやすく、症状の相談や当日の受診可否は電話に残ります。また診療時間・持ち物・費用・駐車場を聞くための電話は、予約システムではなくサイトに情報を書くだけで減ります。まず1週間、受付で電話の用件を数えてから打ち手を選ぶことをおすすめします。
高齢の患者さんが多くてもWeb予約は使われますか?
総務省の令和6年通信利用動向調査(2024年)では、年齢階層別インターネット利用率は60〜69歳が90.4%、70〜79歳が69.8%、80歳以上が33.1%でした。60代はほぼ利用しており、70代も約7割です。80歳以上は明確に電話・窓口を残す必要があるため、Web予約に一本化せず、電話の回線をその方々と緊急の相談のために空ける設計が現実的です。ご家族の代理予約を案内するのも有効です。
汎用の予約システムと医療特化型は、どちらを選べばよいですか?
解決したい問題で分かれます。予約枠を公開して受け付けたいだけなら汎用の予約システムで足ります。予約情報を電子カルテやレセコンへ流し、受付の二重入力をなくしたい場合は電子カルテ連携のある医療特化型が必要です。医療特化型は自院のカルテ・レセコンの機種によって連携範囲と費用が変わるため、汎用ツールと同じ土俵で金額比較しないでください。
予約システムの費用はどれくらいかかりますか?
2026年9月時点の公式ページでは、汎用ツールはRESERVAがフリープラン0円(月間予約50件・顧客250件まで)でブルー3,850円/月(年払)から、STORES 予約がフリープラン0円でスモール9,790円/月(年間契約)から、Airリザーブがフリープラン0円でベーシック5,500円/月(税込)からです。医療特化型ではデジスマ診療が初期費用0円・月額15,800円(税抜)と公表しています。料金は変更されることがあるため、申し込み前に公式ページをご確認ください。
無断キャンセルを減らすには何をすればよいですか?
予約直後の確認メール(またはSMS・LINE)と、前日のリマインドの2つが基本です。確認には日時・持ち物・所要時間の目安・キャンセル方法を書きます。あわせて、Webから患者さん自身が予約を取り消せるようにしてください。電話でしか取り消せない状態だと、気まずさから連絡せずに来院しない方が出ます。
Web予約を入れる前に、まず何から手をつけるべきですか?
サイトの情報整備です。診療時間と休診日、初診の持ち物、費用の目安、駐車場、アクセス(地図の埋め込み)の5つが、スマートフォンで3タップ以内に読める状態を作ってください。確認のための電話はこれだけで減りますし、費用もほぼかかりません。予約システムはその次の段階です。