Google ドライブで大きいファイルをダウンロードしようとすると、「ウイルス スキャンを実行できません」という警告が出て手が止まることがあります。見た瞬間に「このファイルは感染しているのか」と身構えますが、意味はほぼ逆です。結論から書きます。
結論:ウイルスが見つかったという意味ではない
このメッセージは「ウイルスを検出した」ではなく、「Google が検査できなかった」という告知です。Google ドライブ ヘルプは、フィッシングやマルウェアの自動スキャンについて「スキャンには 100 MB の上限があるほか、ファイル形式によってはスキャンできないことがあります」と明記しています(英語原文は “There's a 100MB scanning limit and some file types can't be scanned.”)。
つまり 100 MB を超えるファイルは、安全かどうかを Google が判定できないまま手元に渡されます。同じヘルプは「このメッセージが表示された場合は、ファイルを開く前に安全性をご確認ください」とだけ書いており、ダウンロードそのものを禁じてはいません。警告の実体は「検査を飛ばしたので、ここから先は受け取る側で確かめてください」という引き継ぎです。
保管の上限と検査の上限がずれている点も押さえておくと、納得しやすくなります。ドライブは「その他すべてのファイル」を 5 TB まで保管できますが、ウイルス検査は 100 MB まで。置けるサイズと検査されるサイズには約 5 万倍の開きがあり、業務でやりとりする動画・設計データ・会計のバックアップはほぼ全部が「検査されない側」に入ります。頻繁に見かける警告なのは、ファイルが怪しいからではなく、この線引きのせいです。
このまま進める手順と、やってはいけない判断
警告のダイアログには、たいてい「ダウンロード」と「キャンセル」の 2 択が出ます。進めるときの順番は次のとおりです。
- 送り主と文脈を確認する。心当たりのない共有リンク、差出人不明のメールに貼られたリンクであれば、ここで止める。サイズの話とは無関係に、出どころが怪しいものは開かない。
- ファイル名と拡張子を見る。見積書のはずなのに 「.exe」/「.scr」/「.js」、あるいは「請求書.pdf.zip」のような二重拡張子になっていれば、サイズ以前の問題として扱う。
- それでも必要ならダウンロードを選び、手元のウイルス対策ソフトでスキャンしてから開く。Google が検査を飛ばした穴は、端末側の検査で埋めるのが筋です。
- どうしても端末に落としたくない場合は、送り主に 100 MB 未満へ分割して送り直してもらう。分割後は Google 側の検査が働きます。
逆に、実務でよく見かける「やってはいけない判断」を挙げます。
- 社内の人からの共有だから安全、と決める。アカウントが乗っ取られていれば共有元は社内に見えます。
- 毎回出るから、と文面を読まずに通す。慣れてしまうと、本当にマルウェアが検出されてアクセスがブロックされた別のメッセージも同じ扱いで流してしまいます。
- ZIP の中身を確認せずに全部展開する。アーカイブはドライブがプレビューできる形式ですが、検査されたかどうかは別の話です。
- 警告を消すために拡張機能やツールを入れる。警告は仕様であり、消す対象ではありません。
なお Google は、組織外から共有されたファイルについてはフィッシングやマルウェアの自動検査を行い、検出された場合はアクセスをブロックします。「スキャンを実行できません」は、その手前で「検査が成立しなかった」と言っているだけです。ブロックされているのか、検査されていないだけなのか。この 2 つを混同しないことが、いちばん大事な見分けです。
とはいえ、分割して送り直してもらう対応は相手の手間を増やすだけで、同じ警告は来月また出ます。現場で多いのは、月次の実績や現場写真を 1 本の大きなファイルにまとめ、担当者が毎回アップロードして共有リンクを配り、受け取る側から「開けません」と戻ってくる流れです。止まっているのはファイルではなく、受け渡しの手順そのものです。
こうした「大きいファイルを人づてに配る」場面が社内で何度も起きているなら、ファイルそのものを渡すのをやめて、台帳と画面に置き換えるほうが早いことがあります。私たちはスプレッドシートを土台にした社内アプリ化もお手伝いしていますので、記事の途中で恐縮ですが、同じ悩みをお持ちでしたらよろしければ合わせてご覧いただけたら嬉しいです。
「スキャンできません」ではなく、管理者設定で止まっている型
ダウンロードできない原因は、スキャンの上限だけではありません。組織の Google Workspace を使っている場合、管理者側の設定で止まっている型が混ざります。文面と出るタイミングで切り分けられます。
DLP(データ保護ルール)でダウンロードが禁止されている
Google Workspace の管理者は、データ保護ルールでファイルのダウンロード・印刷・コピーを禁止できます。公式ヘルプには設定が 2 段あり、「コメント投稿者と閲覧者のみ」を選ぶと「ファイルに対する編集権限がない限り、ユーザーはダウンロード、印刷、コピーできなくなります」、「すべての共同編集者が対象」を選ぶと「ドキュメントのオーナーや共有ドライブ マネージャーを含む、すべてのユーザーがファイルのダウンロード、印刷、コピーできなくなります」と書かれています。この型はファイルサイズに関係なく起きるので、小さいファイルでもダウンロードできないなら、まずこちらを疑います。
共有の権限が「閲覧者」で、ダウンロードが無効にされている
ファイルの所有者が共有設定で「閲覧者と閲覧者(コメント可)に、ダウンロード、印刷、コピーのオプションを表示しない」を有効にしている場合も、メニューからダウンロードが消えます。こちらは管理者ではなくファイルの所有者が自分で掛けた鍵なので、所有者に連絡すればその場で外せます。
共有境界・外部共有のポリシーで弾かれている
データ保護ルールには共有境界の設定もあり、組織外への共有自体を止められます。この場合はダウンロードの手前で、ファイルを開くこと自体ができません。「アクセス権が必要です」に近い文面が出たら、スキャンの話ではなくポリシーの話です。
メッセージ別・原因と次の一手
見えている状態 | 原因 | 次の一手 |
|---|---|---|
ウイルス スキャンを実行できません(ダウンロードボタンは押せる) | 100 MB 超、またはスキャン非対応の形式 | 送り主と拡張子を確認し、端末側でスキャンしてから開く |
ウイルスが検出されたためブロックされた | Google が実際にマルウェアを検出 | 開かない。送り主に連絡する |
サイズが小さいのにダウンロード項目が無い | DLP のデータ保護ルール、または所有者のダウンロード無効設定 | 所有者に確認し、必要なら管理者へ例外を依頼する |
ファイル自体が開けない・アクセス権を求められる | 共有境界や外部共有のポリシー | 社内の管理者に共有先の範囲を確認する |
何度やっても途中で止まる | 回線・ブラウザ側の問題(警告とは別) | 別ブラウザやデスクトップ版ドライブで試す |
似たように「ドライブは動いているのに特定の操作だけ通らない」症状は他にもあります。リンクを渡したのに相手が開けない場合は共有リンクが開けないときの権限の見直し方、容量の表示が合わない場合は削除してもドライブの空き容量が増えない理由を先に読むと、原因の層が整理できます。
そもそも「大きいファイルを人づてに配る」運用の限界
警告の正体が分かっても、毎週だれかが同じ警告で止まっている状態は変わりません。ここは技術の問題ではなく運用の問題なので、時間で測ると判断がつきます。
使う算式はこれだけです。
- 年間コスト = 1 回の受け渡しにかかる時間 × 月の回数 × 12 × 時間単価
- 1 回の受け渡しにかかる時間 = 探す+アップロード+共有設定+相手の問い合わせ対応+開けない時の再送
仮に 1 回 20 分・月 15 回・時間単価 3,000 円で動かしてみます。20 分 ÷ 60 × 15 × 12 × 3,000 円 = 年 18 万円。受け渡しに関わる人が 2 人いれば倍になります。ここで使った 20 分・15 回・3,000 円は算式の動きを見せるための仮の係数で、実際の数字は自社の実績に置き換えてください。
判断線は、そのうえで次のように引いています。
- 年 10 万円を下回るなら、仕組みを作らない。都度の手渡しのままでよく、100 MB で分割するだけで足ります。
- 年 10〜30 万円なら、置き場を 1 か所に固める。共有ドライブにフォルダ構成と命名規則を決め、リンクを配る側を 1 人に寄せる。ここはツールを増やさずに効きます。
- 年 30 万円を超え、かつ「同じ種類のファイルを毎月配っている」なら、ファイルを渡すのをやめる。台帳(スプレッドシート)に行を 1 本作り、相手は画面で必要な分だけ見る形に変える。配るのが「データ」なら、そもそも 100 MB のファイルにする必要がありません。
3 番目が本題です。「ウイルス スキャンを実行できません」が頻繁に出る職場は、たいていファイルという形でデータを配っていることが原因です。月次の実績、現場写真、受注一覧。これらを 1 本の大きなファイルにまとめて配るから 100 MB を超え、検査を抜け、受け取る側で止まります。台帳と画面に置き換えると、サイズの問題も「開けない」の問い合わせも同時に消えます。保存場所の設計を見直すときは、ドライブで変更を保存できないと出るときの原因も合わせて確認しておくと、途中で詰まりません。
今回、公式で確認できなかったこと
正直に書いておきます。以下は Google の公式ヘルプでは裏が取れませんでした。断定している解説を見かけても、そのまま信じないほうがよい部分です。
- 日本語のダイアログの正確な文言。公式ヘルプは「ファイルのスキャンに失敗したというメッセージ」としか書いておらず、表示される文字列そのものは載っていません。文面はブラウザや時期で変わる可能性があります。
- スキャンできないファイル形式の一覧。「ファイル形式によってはスキャンできないことがあります」とあるだけで、具体的な形式は公開されていません。
- 100 MB が圧縮後か展開後かの基準。ZIP の中身が 100 MB を超える場合の扱いは明記されていません。
- Google Workspace のエディションによる差。データ保護ルールは一部のエディション限定ですが、スキャン上限そのものがエディションで変わるという記述は見つかりませんでした。
ここまでの切り分けで解決しない、あるいは「ファイルを配る運用そのものを変えたい」という段階であれば、現状の受け渡しの流れを伺ったうえで一緒に整理できます。お気軽にご相談ください。
よくある質問
「ウイルス スキャンを実行できません」はウイルスが見つかったという意味ですか?
違います。Google がスキャンできなかったという告知です。公式ヘルプにはスキャンに100MBの上限があり、ファイル形式によってはスキャンできないことがあると書かれています。実際にマルウェアが検出された場合は、警告ではなくアクセスがブロックされます。
警告が出てもダウンロードしてよいですか?
公式ヘルプはダウンロードを禁じておらず、開く前に安全性を確認するよう案内しています。送り主と文脈、ファイル名と拡張子を確認したうえでダウンロードし、手元のウイルス対策ソフトでスキャンしてから開くのが安全です。心当たりのない共有リンクなら開かないでください。
警告を出さないようにできますか?
警告は100MBを超えるファイルを検査できない仕様によるもので、設定で消すものではありません。送り主に100MB未満へ分割して送り直してもらえば、Google側の検査が働くため警告は出なくなります。
小さいファイルなのにダウンロードできません。原因は何ですか?
サイズではなく管理者設定か所有者の共有設定が原因の可能性が高いです。Google Workspaceのデータ保護ルールではダウンロード・印刷・コピーを禁止できますし、ファイルの所有者が閲覧者向けにダウンロードを無効にしていることもあります。所有者に確認し、必要なら管理者へ例外を依頼してください。
ファイルを配る運用を見直す判断線はどこですか?
1回の受け渡しにかかる時間×月の回数×12×時間単価で年間コストを出し、年10万円未満なら都度の手渡しのまま、年10〜30万円なら置き場を1か所に固める、年30万円超で同じ種類のファイルを毎月配っているなら台帳と画面に置き換える、という線で考えています。記事中の20分・月15回・3,000円は算式の動きを見せるための仮の係数です。