2026年9月8日のOffice更新を当てた直後からエクセルの貼り付けが効かなくなったなら、貼り付け先で「形式を選択して貼り付け」を開き、数式・値・リンクなどを選んで貼るのが、今日の仕事を止めないための1手です。これはMicrosoftがKB5002914のサポート記事で既知の問題として認め、回避策として挙げている5つの貼り付け方(数式/数式と数値の書式/値/値と数値の書式/リンク)そのものです。影響するのはExcel 2024・2021・2019・2016で、2026年9月18日時点で修正は出ておらず、公式のステータスは「調査中」です。この記事では、更新が原因かどうかの切り分けから、当面の回し方、版ごとに違う「戻す」手段の注意点までを順に説明します。
まず切り分ける:2〜3分で「更新が原因か」を判定する
エクセルで貼り付けができない原因は今回の不具合だけではありません。先に3つ見るだけで、今回のものかどうかはほぼ判定できます。どれも読み取りだけの操作で、ブックの中身は壊しません。
手順1:症状が「無反応」かどうかを見る
公式の記述がかなり具体的なので、ここが最大の手がかりになります。原文では、貼り付け操作が無反応のまま失敗する(the paste operation might fail silently)とされ、利用者が貼り付けを試してもコピー元の選択が残り、貼り付け先は変更されないまま、ビープ音やエラーメッセージのような失敗を知らせるものが一切出ないと書かれています。
- 適当なセルに文字を入れ、Ctrl+Cでコピーする。
- 別のセルを選んでCtrl+Vを押す。
- コピー元の点線の枠が消えずに残り、貼り付け先が空のままかを見る。
- エラーダイアログもビープ音も出ないかを確かめる。
ここで何らかのエラーメッセージが出ているなら、今回の既知の問題とは症状の記述が合いません。メッセージの文言をそのまま手がかりに別の原因を探すほうが早いです。
手順2:自分のExcelの版とビルドを見る
ここを飛ばすと話が噛み合いません。KB5002914という更新プログラム番号は、MSI(インストーラー)ベースのExcel 2016だけに配られるもので、公式記事にもOffice 2016のクイック実行版には適用されないと書かれています。一方で既知の問題として挙がっている影響範囲はExcel 2024・2021・2019・2016です。つまり「KB5002914が入っていないのに症状が出る」は矛盾ではありません。
- Excelを開き、「ファイル」→「アカウント」を選ぶ。
- 「製品情報」の下にある製品名(例: Microsoft Office LTSC Standard 2021)を読む。
- 「Excelのバージョン情報」でバージョンとビルド番号(16.0.xxxxx.yyyyy 形式)を控える。
- 製品名にMicrosoft 365やLTSCが付いていればクイック実行版、単体の永続ライセンスをインストーラーで入れた2016ならMSI版の可能性が高い。
確認場所は公式の使用しているOfficeのバージョンを確認する方法のとおりです。控えたビルド番号は、このあと管理者に相談するときにも、更新の履歴と突き合わせるときにも必要になります。
手順3:症状の出はじめと更新の適用日を突き合わせる
更新の公開日は2026年9月8日です。症状が出はじめた日がこれより前なら、今回の不具合ではありません。日付が曖昧なときは、クイック実行版であればMicrosoft 365 Appsの更新履歴で、控えたビルド番号がいつ公開されたものかを確認できます。
見えている症状 | もっとも疑わしい原因 | 飛ぶ先 |
|---|---|---|
Ctrl+Vが無反応。エラーも音も出ない | 2026年9月の更新の既知の問題 | 公式に確認できていること |
シートのコピーでエラー文が出る | 切り分けが必要(公式未確認の報告あり) | コミュニティの報告 |
9月8日より前から貼り付かない | 保護・結合セル・シート名重複など | 関連記事 |
ファイルが「〜のコピー」として増える | OneDriveの同期の競合 | 関連記事 |
操作そのものが重くて反応が遅い | ブックの肥大化・再計算 | 関連記事 |
公式に確認できていること(2026年9月18日時点)
ここから先は、出所と確度を分けて書きます。まずMicrosoftのサポート記事で確認できる事実だけを並べます。推測は含めていません。
項目 | 公式記事に書かれている内容 |
|---|---|
公開日 | 2026年9月8日 |
KB5002914の対象 | MSIベースのExcel 2016。Office 2016のクイック実行版は対象外 |
既知の問題の影響範囲 | Excel 2024・2021・2019・2016 |
症状 | 貼り付けが無反応で失敗。コピー元の選択が残り、貼り付け先は変わらず、音もエラーも出ない |
ステータス | 調査中。情報が出たら同記事に追記するとされている |
公式の回避策 | 形式を選択して貼り付けで、数式/数式と数値の書式/値/値と数値の書式/リンクのいずれかを使う |
重要なのは最後の2行です。公式記事にはロールバックやアンインストールの手順は一切書かれていません。書かれているのは貼り付け方を変えるという回避策だけです。そして修正時期も示されていないため、「近日直る」という前提で作業予定を組むのは避けたほうがよいと考えます。
コミュニティで報告されていること(公式未確認)
ここは確度が一段下がります。以下はMicrosoft Q&Aに投稿された利用者の報告で、Microsoftが公式に認めた症状ではありません。ただし実際に多くの人が検索してくる文言なので、参考として触れておきます。
- シートを右クリックしてコピーしようとすると「このシートをコピーできませんでした」という趣旨のメッセージが出る、という報告が2026年9月11日以降に複数集まっています。
- ブックの保護やシートの保護をかけていない新規ブックでも起きる、保存場所(ローカル・OneDrive・SharePoint)を問わず起きる、という報告があります。
- Excel for the web(ブラウザ版)では正常に動く、という報告があります。
- オートフィルも効かなくなった、という報告があります。
報告されている環境の一例として、Microsoft Office LTSC Standard 2021(バージョン2108・ビルド14334.20906)が挙がっています。これはクイック実行版で、KB5002914という番号の更新が入る製品ではありません。同じ時期の更新で、番号の違う経路でも似た症状が出ている可能性があるという程度の読み方が妥当です。
今日の仕事を止めないための回し方
修正を待つ間も表は動かさなければなりません。公式の回避策を軸に、現場で回る形に落とします。
回避策1:形式を選択して貼り付けに切り替える
これが公式に挙げられている唯一の回避策です。Ctrl+Vという1操作を、2操作に置き換えるだけと考えてください。
- コピー元を選んでCtrl+Cでコピーする。
- 貼り付け先のセルを右クリックし、「形式を選択して貼り付け」を選ぶ(「ホーム」タブの貼り付けアイコンの下向き矢印からも開けます)。
- ダイアログで「値」または「値と数値の書式」を選ぶ。数式ごと持っていきたい場合は「数式」を選ぶ。
- OKを押し、貼り付け先が変わったことを目で確かめる。
どのオプションが何を持っていくかは貼り付けのオプションと形式を選択して貼り付けの解説にまとまっています。書式ごと丸ごと複製したい場面では選べる選択肢が限られるため、罫線や色は貼り付けたあとに手で整える前提で段取りを組んでおくと、手戻りが減ります。
回避策2:作業の順番を変えて、貼り付け回数そのものを減らす
回避策1は1回あたり数秒の追加で済みますが、何百回も繰り返すなら別の手を打ったほうが早いです。貼り付けに頼らずに済む操作へ寄せます。
- シートやブックをまるごと複製する。既存ファイルをエクスプローラー側でコピーしてから中身を書き換えれば、セルの貼り付けは発生しません。
- 数式で参照する。他シートの値を持ってくるだけなら、貼り付けではなく参照式で引いたほうが更新も追従します。
- 一時的にExcel for the webで作業する。ブラウザ版は今回の更新の対象ではありません。OneDriveやSharePointに置いたブックであれば、その作業だけブラウザで済ませる手があります。
- 入力の集約はフォームなど別の入口に寄せる。人が転記している工程は、そもそも貼り付けが発生しない形に変えられることが多いです。
回避策3:どうしても戻すなら(版ごとに手段が違う)
正直に申し上げると、ここは慎重に扱うべき部分です。KB5002914はリモートコード実行などの脆弱性に対処するセキュリティ更新なので、外せばその穴が開いたまま業務を続けることになります。会社のPCであれば、自分で判断せず情報システム担当や管理者に相談してください。
そのうえで、公式に手順が示されている範囲を正確に書きます。MicrosoftのOfficeの以前のバージョンに戻す方法は、クイック実行版のみを対象としており、MSIバージョンのOfficeには適用されないと明記されています。手順の骨格は次のとおりです。
- 戻したい一つ前のバージョン番号(16.0.xxxxx.yyyyy 形式)を更新履歴で調べて控える。
- 「ファイル」→「Officeアカウント」→「更新オプション」から更新を無効にして、問題のあるビルドが再度入らないようにする。
- Office展開ツール(setup.exe)とConfiguration.xmlを用意し、控えたバージョン番号を指定して構成を適用する。
- 確認が終わったら更新を再度有効に戻す。
ここで注意点を2つ。1つ目は、この公式手順はOfficeC2RClient.exeを使う方法ではないことです。コミュニティの回答ではそのコマンドを使う案も出回っていますが、上記の公式記事には記載がないため、本記事では手順として書きません。2つ目は、MSI版のExcel 2016は上の記事の対象外である点です。MSI版で更新を外す判断は、適用経路(Windows Update/WSUS/配布ツール)ごとに影響範囲が変わるため、管理者の領域として扱ってください。
今回のように、表計算ソフト側の一つの更新で社内の作業が一斉に止まる状態は、仕組みの持ち方を見直すきっかけでもあります。Mihataでは、入力と集計をスプレッドシート上で社内アプリのように分けて持つ形をご提案しています。いまの運用のどこが更新に弱いかを見るだけでも、参考になれば幸いです。
更新が原因でなかった場合の行き先
切り分けの結果、9月8日より前から症状が出ていた、あるいはエラーメッセージが出ているのであれば、原因は別にあります。症状ごとに読む記事を分けてあります。
シートの右クリックからのコピーができないだけであれば、シート名の重複やブックの保護など更新と無関係な原因が7つあります。エクセルでシートのコピーができない原因と対処から順に確認してください。ファイルが「〜のコピー」として増えているなら同期の競合なので、OneDriveで競合コピーが増えるときの見分け方が該当します。
そもそも操作の反応自体が鈍く、貼り付けが通っていないように見えるだけというケースもあります。その場合はエクセルが重いときの原因の特定手順を先に読んでください。今回の件で「Excel依存そのものを見直したい」と感じたのであれば、判断材料をExcel運用を移行するときの費用と判断基準にまとめています。
再発を減らす運用
今回の不具合そのものは自社では防げません。ただ「更新した全員が同時に止まる」状態は、運用側で薄くできます。次の3つは、今日からでも決められるものです。
- 更新の適用タイミングを部署でずらす。クイック実行版には更新チャネルという仕組みがあり、新しいビルドが届く時期を分けられます(Microsoft 365 Appsの更新チャネルの概要)。全社が同じ日に同じビルドへ上がる形は、事故のときに全員が止まります。
- 業務が止まる表を1本のファイルに依存させない。請求や勤怠のように止められない処理は、ブラウザだけでも回せる経路を1つ持っておくと、デスクトップ版の不具合を受け流せます。
- 更新前のビルド番号を記録しておく。戻す判断をするときに、直前のバージョン番号が分からないと手が打てません。「ファイル」→「アカウント」の値を月1回控えるだけで十分です。
それでも、更新の不具合を毎回このように手当てするのは負担が大きいと感じられるかもしれません。人が貼り付けて回している工程が多いほど、こうした事故の影響は大きく出ます。入力と集計の置き場所を分けておくと、アプリ側の不調が業務全体を止めにくくなります。
よくある質問
エクセルの貼り付けができません。今日の作業を止めないには何をすればよいですか?
貼り付け先を右クリックして「形式を選択して貼り付け」を開き、数式、数式と数値の書式、値、値と数値の書式、リンクのいずれかを選んでください。この5つはMicrosoftが既知の問題の回避策として公式に挙げているものです。通常のCtrl+Vだけが失敗する状態なので、貼り付け方を変えれば作業自体は続けられます。
この不具合は直りましたか?いつ修正されますか?
2026年9月18日時点では修正されていません。Microsoftは公式のサポート記事で調査中であり、情報が出たら同記事に追記すると述べているだけで、修正時期は示されていません。復旧の見込みを前提に予定を組まず、回避策で回しながら公式記事の更新を待つのが安全です。
KB5002914を当てていないのに症状が出ます。おかしいですか?
おかしくありません。KB5002914そのものはMSI版のExcel 2016向けの更新ですが、公式に記載された既知の問題はExcel 2024、2021、2019、2016に影響するとされています。Microsoft 365やOffice 2021などのクイック実行版を使っている場合は、更新プログラムの番号ではなくバージョンとビルド番号で自分の状態を確認してください。
更新プログラムをアンインストールして戻せばよいのでは?
セキュリティ更新を外すと、その更新が塞いだ脆弱性が再び開きます。会社のPCであれば自分で判断せず、情報システム担当や管理者に相談してください。なお公式の「Officeの以前のバージョンに戻す方法」はクイック実行版だけを対象としており、MSI版には適用されないと明記されています。
更新とは関係なく、以前からシートのコピーができません。
その場合は今回の不具合ではなく、シート名の重複、ブックの保護、結合セル、参照先の不整合といった別の原因が濃厚です。更新の適用日より前から症状が出ているなら、一般的な原因を順に切り分ける手順をまとめた記事から確認してください。