2026年9月8日のOffice更新でエクセルの貼り付けが効かなくなった問題は、2026年10月4日時点で修正済みです。MicrosoftはKB5002914のサポート記事に「この問題は2026年9月16日のExcel 2016向け更新(KB5002665)で修正された」と明記しました。Office LTSC 2021はビルド14334.20918、Office LTSC 2024は17932.21000、Office 2019は10417.20211が、それぞれ9月中旬以降に公開された最新ビルドです。やることは1つで、Excelの「ファイル」→「アカウント」から更新を適用し、ビルド番号が下の表の線を超えているかを見るだけです。この記事では、版ごとの修正ビルドの一覧、自分のビルドでの判定、更新しても直らないときの行き先までを順に説明します。
現在の状況:2026年10月4日時点で修正済み
結論から書きます。直っています。9月8日に配られた更新で症状が出た版には、9月16日〜21日のあいだに修正後のビルドが出ています。版ごとに番号と公開日が違うので、表で並べます。日付と番号はすべてMicrosoftの公式な更新履歴ページで確認したものです。
使っている版 | 症状が出た更新・ビルド(9月8日) | 修正後の版 | 公開日 |
|---|---|---|---|
Excel 2016(MSIベース) | KB5002914 | KB5002665 | 2026年9月16日 |
Office LTSC 2021(ボリュームライセンス) | 2108・ビルド14334.20906 | 2108・ビルド14334.20918 | 2026年9月16日 |
Office LTSC 2024(ボリュームライセンス) | 2408・ビルド17932.20976 | 2408・ビルド17932.21000 | 2026年9月17日 |
Office 2019(ボリュームライセンス) | 1808・ビルド10417.20207 | 1808・ビルド10417.20211 | 2026年9月21日 |
Microsoft 365・小売版のOffice 2021/2024(クイック実行) | 該当する更新番号なし | 2609・ビルド20430.20118(現在のチャネルの最新) | 2026年9月30日 |
出所は版ごとに分かれています。KB5002665が修正であることはKB5002665のサポート記事に「This update fixes the known issue in KB5002914 that causes certain paste operations to fail silently」と書かれています。LTSC 2021・2024・2019の各ビルドと公開日はOffice LTSC 2021の更新履歴、Office LTSC 2024の更新履歴、Office 2019の更新履歴で確認できます。
正直に書くと、ここには確度の差があります。Microsoftが「KB5002914の既知の問題を修正した」と明文で書いているのは、Excel 2016向けのKB5002665だけです。LTSC 2021・2024・2019については、9月8日より後に新しいビルドが出ている事実は公式の更新履歴で確認できますが、更新履歴のページ自体は「この不具合を直した」とは書いていません。LTSC 2024の17932.21000を修正ビルドとして挙げているのは、Microsoft Q&Aのモデレーター回答です。したがって「新しいビルドに上げれば直る見込みが高い」までが現時点で言える範囲で、上げたうえで実際に貼り付けを試して確かめる、という順番が確実です。
なお10月の月例セキュリティ更新は、本日時点ではまだ出ていません。公式のMicrosoft 365 Appsの更新履歴で最新として並んでいるのは9月30日公開のものまでです。この記事の表も、新しい月例更新が出た時点で見直す前提で読んでください。
自分のビルド番号で「直っている版か」を判定する
更新プログラムの番号ではなく、ビルド番号で見るのが確実です。クイック実行版には個別のKB番号が付かないため、番号で探しても見つからないことがあります(これは後述します)。手順は3ステップです。
- Excelを開き、「ファイル」→「アカウント」を選ぶ。
- 「製品情報」の下にある製品名(例: Microsoft Office LTSC Standard 2021)を読む。
- 「Excelのバージョン情報」でバージョンとビルド番号(16.0.xxxxx.yyyyy 形式)を控える。
見る場所は公式の使用しているOfficeのバージョンを確認する方法のとおりです。控えた番号を次の表に当てます。
アカウント画面で見えるビルド | 判定 | 次にやること |
|---|---|---|
14334.20918 以上(LTSC 2021) | 修正後 | これで直っていなければ別の原因。切り分けへ進む |
14334.20906/14334.20914(LTSC 2021) | 未修正 | 更新を適用する |
17932.21000 以上(LTSC 2024) | 修正後 | 同上 |
17932.20976/17932.20996(LTSC 2024) | 未修正 | 更新を適用する |
10417.20211 以上(Office 2019) | 修正後 | 同上 |
10417.20207/10417.20208(Office 2019) | 未修正 | 更新を適用する |
20430.xxxxx(バージョン2609) | クイック実行版の最新系列 | この系列に影響の公式記載はない。別の原因を見る |
更新の当て方は「ファイル」→「アカウント」→「更新オプション」→「今すぐ更新」です。ボリュームライセンスで情報システム部門が配布を管理している環境では、この操作がグレーアウトしていることがあります。その場合は自分で上げられないので、控えたビルド番号と上の表を添えて管理者に依頼するのが最短です。
9月12日に出た中間ビルド(LTSC 2021なら14334.20914)では症状が続いたという報告がMicrosoft Q&Aのスレッドに残っています。「9月8日より後だから直っているはず」ではなく、上の表の番号そのものと突き合わせてください。
まず切り分ける:2〜3分で「更新が原因か」を判定する
エクセルで貼り付けができない原因は今回の不具合だけではありません。修正ビルドに上げても直らなかった場合も含めて、先に3つ見るだけでほぼ判定できます。どれも読み取りだけの操作で、ブックの中身は壊しません。
手順1:症状が「無反応」かどうかを見る
公式の記述がかなり具体的なので、ここが最大の手がかりになります。原文では、貼り付け操作が無反応のまま失敗する(the paste operation might fail silently)とされ、利用者が貼り付けを試してもコピー元の選択が残り、貼り付け先は変更されないまま、ビープ音やエラーメッセージのような失敗を知らせるものが一切出ないと書かれています。
- 適当なセルに文字を入れ、Ctrl+Cでコピーする。
- 別のセルを選んでCtrl+Vを押す。
- コピー元の点線の枠が消えずに残り、貼り付け先が空のままかを見る。
- エラーダイアログもビープ音も出ないかを確かめる。
ここで何らかのエラーメッセージが出ているなら、今回の既知の問題とは症状の記述が合いません。メッセージの文言をそのまま手がかりに別の原因を探すほうが早いです。
手順2:自分のExcelの版とビルドを見る
ここを飛ばすと話が噛み合いません。KB5002914という更新プログラム番号は、MSI(インストーラー)ベースのExcel 2016だけに配られるもので、公式記事にもOffice 2016のクイック実行版には適用されないと書かれています。一方で既知の問題として挙がっている影響範囲はExcel 2024・2021・2019・2016です。つまり「KB5002914が入っていないのに症状が出る」は矛盾ではありません。判定は前章の表で行ってください。
手順3:症状の出はじめと更新の適用日を突き合わせる
症状が出はじめた日が2026年9月8日より前なら、今回の不具合ではありません。逆に9月8日〜9月16日のあいだに出はじめて、修正ビルドに上げた時点で止まったのであれば、今回のものだったと見ていいです。日付が曖昧なときは、控えたビルド番号が公式の更新履歴でいつ公開されたものかを見れば、適用時期の目安が取れます。
見えている症状 | もっとも疑わしい原因 | 飛ぶ先 |
|---|---|---|
Ctrl+Vが無反応。エラーも音も出ない | 2026年9月の更新の既知の問題(修正済み) | 現在の状況・ビルド判定の章 |
修正ビルドに上げても無反応のまま | 別の原因。クリップボードの競合や保護 | 更新を当てても直らないときの章 |
シートのコピーでエラー文が出る | 切り分けが必要(公式未確認の報告あり) | 関連記事 |
9月8日より前から貼り付かない | 保護・結合セル・シート名重複など | 関連記事 |
ファイルが「〜のコピー」として増える | OneDriveの同期の競合 | 関連記事 |
操作そのものが重くて反応が遅い | ブックの肥大化・再計算 | 関連記事 |
更新ひとつで社内の作業が一斉に止まってしまうのは、業務の表を1本のファイルだけに預けていることの裏返しでもあります。Mihataでは入力と集計をスプレッドシート上で社内アプリのように分けて持つご支援もしておりまして、記事の途中で恐縮ですが、よろしければ合わせてご覧いただけたら嬉しいです。
公式に確認できていることと、まだ確認できていないこと
出所と確度を分けて並べます。まずMicrosoftのサポート記事と更新履歴で確認できる事実だけです。
項目 | 公式記事に書かれている内容 |
|---|---|
公開日 | KB5002914は2026年9月8日 |
KB5002914の対象 | MSIベースのExcel 2016。Office 2016のクイック実行版は対象外 |
既知の問題の影響範囲 | Excel 2024・2021・2019・2016 |
症状 | 貼り付けが無反応で失敗。コピー元の選択が残り、貼り付け先は変わらず、音もエラーも出ない |
ステータス | 修正済み。2026年9月16日のExcel 2016向け更新(KB5002665)で修正されたと明記 |
回避策 | 形式を選択して貼り付けで、数式/数式と数値の書式/値/値と数値の書式/リンクのいずれかを使う |
一方で、次の3つは公式には確認できていません。断定を避けて書いておきます。
- LTSC 2021・2024・2019の新ビルドが「この不具合の修正」であるという明文の記載。更新履歴にはビルド番号と公開日しか載っていません。
- Microsoft 365 Apps(現在のチャネル/月次エンタープライズ/半期)が影響を受けたかどうか。KB5002914の対象はMSI版と明記されており、クイック実行版への影響についての公式記載は見つかりませんでした。
- シートの右クリックからのコピーで「このシートをコピーできませんでした」というメッセージが出る症状が、今回の既知の問題と同一かどうか。これはMicrosoft Q&Aの投稿に複数集まっている利用者報告で、Microsoftが公式に認めた症状ではありません。
すぐ更新できないときの回し方
情報システム部門の検証待ちで、修正ビルドをすぐに当てられないこともあります。そのあいだの回し方です。
回避策1:形式を選択して貼り付けに切り替える
これが公式に挙げられている回避策です。Ctrl+Vという1操作を、2操作に置き換えるだけと考えてください。
- コピー元を選んでCtrl+Cでコピーする。
- 貼り付け先のセルを右クリックし、「形式を選択して貼り付け」を選ぶ(「ホーム」タブの貼り付けアイコンの下向き矢印からも開けます)。
- ダイアログで「値」または「値と数値の書式」を選ぶ。数式ごと持っていきたい場合は「数式」を選ぶ。
- OKを押し、貼り付け先が変わったことを目で確かめる。
どのオプションが何を持っていくかは貼り付けのオプションと形式を選択して貼り付けの解説にまとまっています。書式ごと丸ごと複製したい場面では選べる選択肢が限られるため、罫線や色は貼り付けたあとに手で整える前提で段取りを組んでおくと、手戻りが減ります。
回避策2:貼り付け回数そのものを減らす
回避策1は1回あたり数秒の追加で済みますが、何百回も繰り返すなら別の手を打ったほうが早いです。貼り付けに頼らずに済む操作へ寄せます。
- シートやブックをまるごと複製する。既存ファイルをエクスプローラー側でコピーしてから中身を書き換えれば、セルの貼り付けは発生しません。
- 数式で参照する。他シートの値を持ってくるだけなら、貼り付けではなく参照式で引いたほうが更新も追従します。
- 一時的にExcel for the webで作業する。ブラウザ版で正常に動くという報告があります。OneDriveやSharePointに置いたブックであれば、その作業だけブラウザで済ませる手があります。
- 入力の集約はフォームなど別の入口に寄せる。人が転記している工程は、そもそも貼り付けが発生しない形に変えられることが多いです。
「KB5002914が見つからない」ときの考え方
コントロールパネルの「インストールされた更新プログラム」やWindows Updateの履歴を探してもKB5002914が出てこない、という状態はよくあります。ほとんどの場合、異常ではありません。理由は2つに分かれます。
見つからない理由 | どう確認するか |
|---|---|
クイック実行版を使っている(Microsoft 365、LTSC、小売版のOffice 2021/2024など)。この配布方式には個別のKB番号が付かない | KB番号を探すのをやめて、「ファイル」→「アカウント」のビルド番号で見る |
MSI版のExcel 2016だが、まだ適用されていない/別の更新で上書きされている | KB5002665(9月16日公開)が入っているかを見る。入っていればKB5002914は不要 |
クイック実行版は「更新プログラムを1本ずつ足していく」仕組みではなく、その時点の全体をまとめた新しいビルドに置き換わる仕組みです。だから更新プログラムの一覧にはOfficeの更新がほとんど出てきません。Officeの状態を言い表す唯一の番号はバージョンとビルドで、サポートに問い合わせるときも、情報システム部門に相談するときも、この番号で話が通ります。
自分の版がどちらなのかは製品名で見分けられます。「Microsoft 365 Apps」「Office LTSC」「Office Home & Business」といった名前が出ていればクイック実行版です。インストーラーで入れた単体のExcel 2016は、MSI版である可能性が高くなります。
KB5002914をアンインストールして戻すべきか
修正ビルドが出ている今、原則として戻す必要はありません。戻す側のリスクのほうが大きくなりました。KB5002914はリモートコード実行などの脆弱性に対処するセキュリティ更新なので、外せばその穴が開いたまま業務を続けることになります。会社のPCであれば、自分で判断せず情報システム担当や管理者に相談してください。
そのうえで、手段が版によって違う点だけは押さえておく価値があります。ここを知らないまま「アンインストール」を探し続けると時間を失います。
版 | 個別の更新を外せるか | 戻す手段 |
|---|---|---|
MSIベースのExcel 2016 | 外せる(KB番号が付いているため) | 適用経路(Windows Update/WSUS/配布ツール)ごとに影響範囲が変わるので管理者の領域 |
クイック実行版(Microsoft 365・LTSC・小売版) | 外せない。個別更新という単位が存在しない | Office全体を以前のバージョンへロールバックする(下記の手順) |
クイック実行版で「戻す」は、更新を1つ消すことではなくOffice全体を前のビルドに入れ替えることです。MicrosoftのOfficeの以前のバージョンに戻す方法は、クイック実行版のみを対象としており、MSIバージョンのOfficeには適用されないと明記されています。手順の骨格は次のとおりです。
- 戻したい一つ前のバージョン番号(16.0.xxxxx.yyyyy 形式)を更新履歴で調べて控える。
- 「ファイル」→「Officeアカウント」→「更新オプション」から更新を無効にして、戻したビルドが再度上書きされないようにする。
- Office展開ツール(setup.exe)とConfiguration.xmlを用意し、控えたバージョン番号を指定して構成を適用する。
- 確認が終わったら更新を再度有効に戻す。
リスクは3つあります。1つ目は、更新を無効にしている間は以降のセキュリティ修正も届かなくなることです。2つ目は、戻す操作にOffice展開ツールが必要で、PC1台ずつ手でやる作業ではないことです。3つ目は、コミュニティでよく出回るOfficeC2RClient.exeを使う方法は上記の公式記事に記載がないため、業務PCで採る手段としては勧められないことです。修正ビルドが出ている以上、戻すより上げるほうが短く安全です。
クイック実行版の更新サポート:チャネルの違いと、情シスが更新を止める方法
「クイック実行の更新サポート」で調べて辿り着く話の中心は、更新チャネルです。クイック実行版は全員が同じ日に同じビルドへ上がるわけではなく、更新チャネルという設定で届く時期が分かれています。今回のような事故のとき、どのチャネルにいるかで被害の出方が変わります。
チャネル | 新機能・更新の届き方 | 2026年9月時点の最新 |
|---|---|---|
現在のチャネル | 月に複数回。最も早く届く | 2609・ビルド20430.20118(9月30日) |
月次エンタープライズ チャネル | 毎月1回、第2火曜に機能とセキュリティをまとめて | 2608・ビルド20326.20142(9月8日) |
半期エンタープライズ チャネル | 機能更新は半年に1回。間はセキュリティ修正のみ | 2608・ビルド20326.20140(9月8日) |
Office LTSC(2021/2024) | 機能更新なし。セキュリティと品質の修正のみ | 14334.20918/17932.21000 |
情報システム部門が更新を止める・遅らせる手段は、大きく3つです。いずれも全社一斉の事故を薄くするための打ち手で、恒久的に止めるものではありません。
- チャネルを分ける。全社を現在のチャネルに置くと、新しいビルドの不具合を全員で同時に踏みます。月次エンタープライズ チャネルに寄せ、一部の部署だけ現在のチャネルにしておくと、先に踏んだ部署の報告で判断できます。
- バージョンを固定する。Office展開ツールやグループポリシーで適用するビルドを指定すると、検証が終わるまで上げないという運用ができます。固定したまま忘れるとセキュリティ修正が止まるので、解除の期限を決めておくのが前提です。
- 更新前のビルド番号を記録しておく。戻す判断をするときに、直前のバージョン番号が分からないと手が打てません。「ファイル」→「アカウント」の値を月1回控えるだけで十分です。
LTSCを使っている場合、更新が自動で届かない設定になっていることも珍しくありません。今回も「修正ビルドは出ているのに、手元には降ってこない」という形になりやすい組み合わせです。上の判定表でビルド番号を確かめて、必要なら手で適用してください。
更新を当てても貼り付けできないときの行き先
修正ビルドに上げたのに症状が変わらない、あるいは9月8日より前から出ていたのであれば、原因は別にあります。症状ごとに読む記事を分けてあります。
シートの右クリックからのコピーができないだけであれば、シート名の重複やブックの保護など更新と無関係な原因が7つあります。エクセルでシートのコピーができない原因と対処から順に確認してください。開いたブックの上部に黄色い帯が出ていて、セルに手を入れられる状態になっていない場合は貼り付けも通りません。この見分け方は保護されたビューで編集できないときの切り分け表にまとめています。
ファイルが「〜のコピー」として増えているなら同期の競合なので、OneDriveで競合コピーが増えるときの見分け方が該当します。そもそも操作の反応自体が鈍く、貼り付けが通っていないように見えるだけというケースもあります。その場合はエクセルが重いときの原因の特定手順を先に読んでください。今回の件で「Excel依存そのものを見直したい」と感じたのであれば、判断材料をExcel運用を移行するときの費用と判断基準にまとめています。
同じ事故の影響を小さくする運用
今回の不具合そのものは自社では防げません。ただ「更新した全員が同時に止まり、しかも気づかない」状態は、運用側で薄くできます。今回いちばん厄介だったのは、エラーも音も出ないまま貼り付けが失敗していた点です。空のセルを見落としたまま集計が進めば、不具合そのものより損害が大きくなります。
- 月例更新の直後に、転記のある処理を1回だけ目で検算する。Officeの月例セキュリティ更新は毎月第2火曜に出ます。請求や勤怠のように止められない処理は、その週だけ合計値を前月と突き合わせる運用にしておくと、無反応で失敗する類の事故を拾えます。
- 業務が止まる表を1本のファイルに依存させない。ブラウザだけでも回せる経路を1つ持っておくと、デスクトップ版の不具合を受け流せます。今回もブラウザ版は正常に動くという報告がありました。
- 更新チャネルを分ける。前章のとおり、全社が同じ日に同じビルドへ上がる形は、事故のときに全員が止まります。
それでも、更新の不具合を毎回このように手当てするのは負担が大きいと感じられるかもしれません。人が貼り付けて回している工程が多いほど、こうした事故の影響は大きく出ます。入力と集計の置き場所を分けておくと、アプリ側の不調が業務全体を止めにくくなります。
更新を境に使えなくなった機能としては、マクロ付きの .xlsm が赤いバーで止まるケースもあります。こちらは不具合ではなく2022年からの既定の仕様変更なので、直し方も別です(エクセル xlsm でマクロが無効になりましたの解除)。
よくある質問
エクセルの貼り付けができない不具合は直りましたか?
直っています。Microsoftはサポート記事で、2026年9月16日のExcel 2016向け更新(KB5002665)でこの問題を修正したと明記しています。Office LTSC 2021はビルド14334.20918、Office LTSC 2024は17932.21000、Office 2019は10417.20211が、9月8日より後に公開された最新ビルドです。Excelの「ファイル」→「アカウント」から更新を適用し、ビルド番号がこの線を超えているかを確認してください。
自分のExcelが修正済みかどうかは、どこを見れば分かりますか?
更新プログラムの番号ではなく、ビルド番号で見てください。Excelを開き「ファイル」→「アカウント」→「Excelのバージョン情報」で、16.0.xxxxx.yyyyy 形式の番号を控えます。LTSC 2021なら14334.20918以上、LTSC 2024なら17932.21000以上、Office 2019なら10417.20211以上が修正後です。9月12日に出た中間ビルド(LTSC 2021の14334.20914など)では症状が続いたという報告があるため、日付ではなく番号そのものと突き合わせてください。
更新プログラムの一覧を探してもKB5002914が見つかりません。
ほとんどの場合、異常ではありません。KB5002914はMSI(インストーラー)ベースのExcel 2016だけに配られる番号で、Microsoft 365やOffice LTSC、小売版のOffice 2021・2024といったクイック実行版には個別のKB番号が付きません。クイック実行版はその時点の全体をまとめた新しいビルドに置き換わる仕組みなので、KB番号を探すのをやめて「ファイル」→「アカウント」のバージョンとビルド番号で状態を確認してください。
KB5002914をアンインストールして戻したほうがよいですか?
修正ビルドが出ている現在は、原則として戻す必要はありません。KB5002914はセキュリティ更新なので、外せばその更新が塞いだ脆弱性が再び開きます。またクイック実行版には個別更新という単位が存在せず、外すことはできません。戻す場合はOffice全体を以前のバージョンへロールバックする操作になり、公式の「Officeの以前のバージョンに戻す方法」はクイック実行版だけを対象としています。会社のPCであれば自分で判断せず、情報システム担当や管理者に相談してください。
情報システム部門として、同じ事故を避けるには何ができますか?
更新チャネルを分けるのが基本です。クイック実行版には現在のチャネル・月次エンタープライズ チャネル・半期エンタープライズ チャネルがあり、新しいビルドが届く時期を分けられます。全社を現在のチャネルに置くと、不具合を全員で同時に踏むことになります。あわせてOffice展開ツールやグループポリシーでバージョンを固定する運用も取れますが、固定したままにするとセキュリティ修正も止まるため、解除の期限を決めておく前提で使ってください。
修正ビルドに上げても貼り付けできません。
その場合は今回の不具合ではなく、別の原因が濃厚です。ブックの上部に黄色い帯が出ている保護されたビューの状態、シート名の重複、ブックやシートの保護、結合セル、参照先の不整合などが候補になります。更新の適用日より前から症状が出ているなら、なおさら別の原因です。症状ごとの切り分け手順をまとめた関連記事から確認してください。