OpenAI が 2026年9月22日に発表した GPT-6 Sol / GPT-6 Luna の料金は、GPT-5.6 のプロモーション価格と比べて一律50%引きです。Sol は入力 $2 / 出力 $10(100万トークンあたり)、Luna は入力 $0.10 / 出力 $0.50。さらにキャッシュされた入力トークンの読み込みは90%引きになるため、同じ前置きを何度も送るエージェント用途では実効単価がもう一段下がります。
この記事では単価表の転記で終わらせず、自社の月間トークン数から月額を出す試算式と、チャットボット・社内エージェント・コーディングエージェントの3ケースの概算を載せます。数字を自分のワークロードに当てはめて判断できる状態を目指します。
GPT-6 Sol / Luna の料金:値下げ前後の比較
公式発表の料金は以下の通りです(すべて100万トークンあたり・米ドル)。比較対象は GPT-5.6 のプロモーション価格です。
モデル | 入力(旧) | 入力(新) | 出力(旧) | 出力(新) | 下げ幅 |
|---|---|---|---|---|---|
GPT-6 Sol | $4 | $2 | $20 | $10 | -50% |
GPT-6 Luna | $0.20 | $0.10 | $1.20 | $0.50 | -50%(出力は-58%) |
加えて、キャッシュ入力トークンの読み込みが90%引きになります。つまり Sol でキャッシュに当たった入力は実質 $0.20 / 1M、Luna は $0.01 / 1M の扱いです。値引きの本体はこちらだと考えたほうが、実務の金額感には近くなります。
なお GPT-6 ファミリーの立ち位置としては、OpenAI 自身が「最高の結果と妥協のない体験が要るときは GPT-6 Astra が引き続き全方位で最良」と明記しています。Sol / Luna はコスト効率側のラインナップ拡張です。両者の使い分けはGPT-6 Sol と Astra のどちらを使うかの判断軸で整理しています。
キャッシュ90%引きが効くのは、どんな使い方か
キャッシュ割引は「同じ入力の先頭部分(prefix)を繰り返し送る」形でしか効きません。逆に言えば、次のような使い方では強く効きます。
- エージェント:システムプロンプト・ツール定義・社内ドキュメントなど長い前置きを毎ターン送り直す形。前置きが固定なので prefix が毎回一致する
- 長い会話:ターンが進むほど過去ログが入力に積み上がるが、その積み上がった部分の大半は前ターンと同一
- バッチ処理:共通の指示 + 差分データだけを変える形
今回の発表で実務的に大きいのは、割引率よりもキャッシュが壊れにくくなった点です。公式は、(1) 既定でキャッシュヒット率そのものを改善した、(2) reasoning effort やツールの有効/無効を切り替えてもキャッシュが壊れない、(3) 明示的なブレークポイントで prefix を自分で制御できる、と説明しています。Prompt Caching のダッシュボードと診断ツールも提供され、ヒット率を測りながら詰められるようになりました。
実務では「effort を上げ下げしたらキャッシュが全部飛んだ」「ツールを1つ足しただけでヒット率が落ちた」という形で見積もりが崩れるのが一番痛いところでした。ここが壊れなくなったという仕様変更は、試算の前提を立てやすくします。GitHub は数か月で、新規に処理が必要なプロンプトトークンの割合が50%超減ったと報告しています。
2026年9月22日の「Better prompt caching for GPT-6」で、この仕組みの条件が明文化されました。割引はキャッシュ済み入力トークンに最大90%、再利用できる共通 prefix の窓は30分で、GPT-6 ファミリーでは既定でヒット率が上がる改良版が動いています。つまり上の単価表は「30分以内に同じ前置きが再訪される頻度」でそのまま上下します。夜間バッチのように間隔が空く処理では毎回がキャッシュ書き込み(通常入力の1.25倍)になり、割引どころか割高になり得る点は注意してください。
どこで prefix が壊れているかは、cache_miss の理由を reason で返す診断ツールで特定できます。ヒット率を上げる手順と、入力2万トークン×1日500回の社内アシスタントで月額がいくら変わるかの試算はGPT-6 のプロンプトキャッシュで入力代を90%削る手順にまとめました。
月額の試算式:自社の月間トークンから出す
月額はこの式で出せます。キャッシュヒット率を h(0〜1)とすると、
月額 = 月間入力トークン(百万) ×〔(1 − h) × 入力単価 + h × 入力単価 × 0.1〕 + 月間出力トークン(百万) × 出力単価
GPT-6 Sol なら入力単価 $2・出力単価 $10 なので、入力側の実効単価は h = 0 で $2.00、h = 0.7 で $0.74、h = 0.9 で $0.38 になります。ヒット率70%でも入力コストは6割強落ちる計算です。
月間トークンが分からない場合は、まず「1リクエストあたりの入力・出力トークン × 1日のリクエスト数 × 稼働日数」で粗く置きます。以下の3ケースはこの粗い置き方で作った仮定値であり、実際の消費量はプロンプト設計で大きく変わります。金額そのものではなく、ヒット率で総額がどう動くかを見てください。
ケース1:社内向けチャットボット(Sol)
仮定:入力 300百万トークン / 月、出力 30百万トークン / 月。
- h = 0%:300 × $2 = $600、30 × $10 = $300 → 合計 $900 / 月
- h = 70%:300 × $0.74 = $222、出力 $300 → 合計 $522 / 月(-42%)
出力の比率が高いワークロードなので、キャッシュの効きは相対的に小さくなります。同じ条件を Luna で回すと 300 × $0.10 + 30 × $0.50 = $45 / 月で、桁が1つ変わります。
ケース2:社内エージェントの常時稼働(Sol)
仮定:入力 2,000百万トークン / 月、出力 100百万トークン / 月。長い前置きを毎ターン送る形です。
- h = 0%:2,000 × $2 = $4,000、100 × $10 = $1,000 → 合計 $5,000 / 月
- h = 70%:2,000 × $0.74 = $1,480、出力 $1,000 → 合計 $2,480 / 月(-50%)
ケース3:コーディングエージェント(Sol)
仮定:入力 5,000百万トークン / 月、出力 300百万トークン / 月。コードベースを読ませるため入力が支配的です。
- h = 0%:5,000 × $2 = $10,000、300 × $10 = $3,000 → 合計 $13,000 / 月
- h = 70%:5,000 × $0.74 = $3,700、出力 $3,000 → 合計 $6,700 / 月(-48%)
入力が支配的なほどキャッシュ割引の効きが大きく、逆に出力中心の用途では単価そのものの50%減が主役になります。自社がどちらのタイプかを先に見極めると、投資すべき場所(プロンプト構造の固定化か、出力の短縮か)が決まります。
「自社の業務でどれくらいトークンを消費するのか、そもそも見当がつかない」という段階でご相談いただくことが実務では一番多いです。Mihata では AI 導入支援として、こうした試算づくりから月次の運用改善までを伴走しています。記事の途中で恐縮ですが、良いサービスだと思っておりますので、よろしければ合わせてご覧いただけたら嬉しいです。
コストあたりの性能:AutomationBench の比較
OpenAI が公表した AutomationBench 1.0.6(Zapier 実施)の結果は、1タスクあたりのコストと合わせて示されています。GPT-6 Sol (xhigh) の $0.27 / task を基準にすると次の通りです。
モデル(effort 条件) | スコア | Sol 比コスト |
|---|---|---|
GPT-6 Sol(xhigh) | 33.2% | 1.0倍($0.27/task) |
GPT-6 Astra(low) | 30.3% | 3.9倍 |
Claude Opus 5(max) | 26.9% | 11.1倍 |
Claude Fable 5.1 + Opus 5 フォールバック(max) | 31.4% | 8.9倍超 |
この表を読むときの注記は必ず添えてください。両社のベンチマーク数値は、各社が自社に有利な effort 条件で測った値です。上の表では Sol が xhigh、Astra が low、Claude 勢が max と、条件がそろっていません。実際、同じ AutomationBench でも Anthropic 側の公表表では Claude Opus 5.5 が 40.0%、GPT-6 Astra が 41.4% と、まったく違う数字が並びます。どちらが上かを断定できる比較ではなく、「Sol は低い単価で同程度のタスク成功率に届きうる」という程度の読み方が妥当です。
OpenAI の表現も「Opus 5 (max) を9%のコストで上回る」という、コスト側に軸足を置いたものになっています。Agents' Last Exam では Sol (max) が 56.4% で Opus 5 の最高スコアを上回りコスト60%減、DeepSWE v1.1 では Sol (max) 68.8% が Claude Fable 5 の最高 69.9% と1.1ポイント差でコスト約80%減、OSWorld 2.0 offline では Sol (xhigh) 60.5% が Claude Opus 5 (medium) 60.3% とほぼ同じでコスト約80%減、といった具合です。なおコンピュータ操作そのものの最強は引き続き GPT-6 Astra だと公式が認めています。
Claude Opus 5.5 の $4 / $20 との比較
同じ2026年9月22日に Anthropic が発表した Claude Opus 5.5 は、入力 $4 / 出力 $20、キャッシュ読み $0.20(100万トークンあたり)です。GPT-6 Sol はちょうどその半額の単価にあたります。ただしキャッシュ読みはどちらも $0.20 で並ぶため、キャッシュヒット率が高いワークロードほど両者の差は縮み、出力が支配的なワークロードほど Sol の単価優位が効きます。Opus 5.5 側は単価-20%に加えて「消費トークン自体が減る」ことで Opus 5 比40%安くなると説明しており、単価だけで比べると実運用コストを読み違える点にも注意が必要です。内訳はClaude Opus 5.5 の料金とキャッシュ $0.20 の詳細で整理しています。
ローエンド帯まで含めて見るなら、入力 $0.75 のGemini 3.8 Flash の料金も比較対象に入ります。Luna の $0.10 はさらにその下です。
GPT-6 Luna はどこまで使えるか
Luna は入力 $0.10 / 出力 $0.50 と、Sol のさらに20分の1の単価です。それでいて DeepSWE v1.1 では max effort で 66.6% を記録しており、これは Claude Opus 5 / Fable 5 の medium 相当のスコアです。公式は Opus 5 比でコスト-93%、Fable 5 比で -96% と表現しています。AutomationBench でも Luna (high) は前世代比 +5.4ポイント・コスト-58%です。
実務での使いどころは、分類・抽出・要約・定型的な社内問い合わせ対応など「正確さは必要だが最難関の推論は要らない」層です。ファクト性については、Sol が前世代比でミスを約半分に減らし Astra 水準に接近、Luna は高 effort で GPT-5.6 Sol 相当を約100分の1のコストで達成した、と公式が説明しています。まず Luna で通して、落ちたケースだけ Sol に回す二段構えが、コスト面では最も効率的です。
なお提供範囲には制約があります。Sol / Luna は ChatGPT Work と Codex で本日から Plus / Pro / Business / Enterprise / Edu 向けに提供、Free と Go はデスクトップアプリで Luna のみ、そしてChat ではまだ利用できません。この点はGPT-6 Sol と Luna の使える場所で詳しく扱っています。API のモデル ID は gpt-6-sol / gpt-6-luna です。
既存のコードから切り替える手順そのものは、GPT-6 Astra API への移行手順とほぼ同じ形で進められます。月額の置き換え計算の例はGPT-6 Astra 料金の試算3ケースも参考になります。
まとめ
- GPT-6 Sol は入力 $2 / 出力 $10、Luna は入力 $0.10 / 出力 $0.50。GPT-5.6 のプロモ価格比で一律50%引き
- キャッシュ入力の読み込みは90%引き(Sol で実質 $0.20 / 1M)。effort やツールの切り替えでキャッシュが壊れない仕様になった
- 月額は「入力百万トークン ×〔(1−h)×単価 + h×単価×0.1〕+ 出力百万トークン × 単価」で出す。入力支配型ほどキャッシュが効く
- ベンチ数値は各社が自社有利な effort 条件で測ったもの。断定せず、コスト比の目安として読む
自社のワークロードでどのモデルに寄せるべきか、月額がいくらになるかの見積もりづくりからご相談いただけます。
【2026年10月2日更新】GPT-6.1 Sol の登場と、GPT-6 Sol をめぐる当サイトの訂正
OpenAI は 2026年9月29日に GPT-6.1 Sol(gpt-6.1-sol)を提供開始しました。入力 $2・出力 $10 という単価は GPT-6 Sol と同額で、キャッシュ読み込みだけが $0.20 → $0.10 へ半額になっています。
あわせて公式側の変化を確認しました。料金ページの主要モデル表は、既定で gpt-6-astra / gpt-6.1-sol / gpt-6-luna の3行だけを表示する形になり、モデル一覧の推奨3枠も同じ並びに入れ替わりました。
訂正(2026年10月2日)。当サイトは当初ここに「gpt-6-sol は料金ページ内に1件も出てこなくなった」と書いていましたが、これは誤りでした。2026年10月2日に同じ料金ページを取り直したところ、gpt-6-sol の行は Standard・Batch・Flex・Fast の4つの料金タブすべてに存在し、単価も入力 $2 / キャッシュ読み $0.20 / キャッシュ書き $2.50 / 出力 $10 のままでした。既定表示が上位3行だけで、4行目以降が折りたたまれているために見えなかったものです。料金表は折りたたみを開いてから判定してください。
ただし GPT-6 Sol は廃止されていません。全モデル一覧には残っており、公式の Deprecations に停止日の行もありません(2026年10月2日に再確認)。さらに 2026年10月1日の廃止告知で、OpenAI 自身が gpt-5.1 と gpt-5.3-codex の推奨移行先として gpt-6-sol を指定しています(この2本の停止日は2027年4月1日)。「料金表の既定表示から外れたこと」を廃止の前兆と読むのは誤りで、実態は「推奨の先頭3枠から外れただけで、移行の受け皿としては公式が指名している」状態です。
移行時の注意は1点だけ押さえてください。GPT-6.1 Sol は reasoning.effort の none と minimal をサポートしません(GPT-6 Sol は使えました)。詳細は GPT-6.1 Sol の料金・性能まとめ、料金差の試算は GPT-6 Sol から 6.1 Sol へ移行したときの料金試算にあります。
よくある質問
GPT-6 Sol の料金はいくらですか?
100万トークンあたり入力 $2・出力 $10 です。GPT-5.6 のプロモーション価格(入力 $4・出力 $20)から一律50%引きになりました。キャッシュされた入力トークンの読み込みはさらに90%引きで、実質 $0.20 / 1M です。
GPT-6 Luna との価格差はどれくらいですか?
Luna は入力 $0.10・出力 $0.50 で、Sol の20分の1の単価です。DeepSWE v1.1 では max effort で 66.6% と Claude Opus 5 / Fable 5 の medium 相当のスコアを出しており、Opus 5 比でコスト-93%と公式が説明しています。
月額はどう試算すればよいですか?
「月間入力トークン(百万) ×〔(1−キャッシュヒット率)×入力単価 + キャッシュヒット率×入力単価×0.1〕+ 月間出力トークン(百万) × 出力単価」で計算します。Sol でヒット率70%なら入力の実効単価は $0.74 / 1M になります。
ベンチマークの数字はそのまま信じてよいですか?
そのままの比較には注意が必要です。両社のベンチは各社が自社に有利な effort 条件で測った値で、同じ AutomationBench でも OpenAI 側の表と Anthropic 側の表で数字が食い違います。優劣の断定ではなくコスト比の目安として読むのが妥当です。