小規模事業者持続化補助金(以下、持続化補助金)は、条件を満たせばホームページ制作費を補助対象にできます。ただし、HP制作費が含まれる「ウェブサイト関連費」には、補助金交付申請額の4分の1(最大50万円)という上限があり、しかも単独では申請できないという独特のルールがあります。この線引きを知らないまま申請すると、「思ったより補助されなかった」という結果になりがちです。
この記事では、第19回公募の公式公募要領(第6版)で確認できた事実をもとに、HP制作費がどこまで対象になるのか、補助率・上限、申請の流れ、採択のコツまでを、中小事業者・個人事業主の目線で整理します。なお第19回の申請受付は2026年4月30日(木)で締切済みのため、今後の申請を検討する方に向けて、現在準備が進む第20回の最新動向もあわせて解説します。
第19回でホームページは補助対象になるのか(結論)
結論から言うと、ホームページ制作費は持続化補助金の「ウェブサイト関連費」として補助対象になります。第19回公募要領(第6版)でも、対象経費の例として「商品販売のためのウェブサイト作成や更新」が明記されています。販路開拓のためのECサイト構築や、効果・作業内容が明確なSEO対策、商品PR用の動画・画像制作なども対象に含まれます。
一方で、補助金の趣旨はあくまで「販路開拓(売上につながる取組)」の支援です。単なる会社案内の更新や、業務効率化だけを目的としたシステムは扱いが分かれます。HPを作ること自体ではなく、「そのHPで何を売り、どう集客するか」という計画が問われる点が、この補助金の本質です。
本記事の補助率・上限・対象経費の数値は、商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 第19回公募要領(第6版)で公表された内容に基づきます。回次や金額は改定されることがあるため、申請前に必ず最新版をご確認ください。
対象経費とHP制作の扱い(ウェブサイト関連費)
持続化補助金の対象経費は8区分(機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費)に分かれます。HP制作費は、この中の「ウェブサイト関連費」に該当します。公募要領では、ウェブサイト関連費を「販路開拓等を行うためのウェブサイトやECサイト、システム(オフライン含む)等の開発、構築、更新、改修、運用をするために要する経費」と定義しています。
注意したいのは、ウェブやデジタル系の費用はほぼすべてこのウェブサイト関連費に集約される点です。たとえば「広報費」に分類されそうな宣伝動画や画像でも、ウェブ・動画に関する費用は広報費ではなくウェブサイト関連費で計上するよう要領で指定されています。HP制作を中心に申請する場合、この区分の上限が事実上の天井になります。
対象になるもの・ならないもの
第19回公募要領に記載された、ウェブサイト関連費の対象・対象外の代表例を整理します。
対象になる経費の例 | 対象にならない経費の例 |
|---|
商品販売のためのウェブサイト作成・更新 | 販路開拓につながらない、単なる会社の営業活動用の広告 |
ECサイト・オフライン含むシステム開発、顧客管理システムの構築 | 販売を目的としたシステム・ソフトウェア開発 |
効果や作業内容が明確なウェブサイトのSEO対策 | 家庭用・一般事務用ソフトウェア |
商品・サービス宣伝のための画像、販売用の動画作成 | 補助事業期間内に公開に至らなかった動画・HP・LP |
インターネット広告・バナー広告、SNS広告・運用代行費 | すでに導入しているソフトウェアの更新料 |
ECモールのシステム利用料・商品登録作業費、電子パンフレット作成 | 有料配信する動画・有料講座用の教材制作費 |
特に見落としやすいのが、「補助事業期間内に公開に至らなかったHP・LP(ランディングページ)は対象外」という点です。発注して制作途中のまま期間が終わると、費用が補助されないリスクがあります。スケジュールには十分な余裕を持たせる必要があります。
補助率・上限額とウェブサイト関連費の上限
第19回(一般型 通常枠)の補助率と上限は次のとおりです。
項目 | 内容 |
|---|
補助上限額(通常枠) | 50万円 |
インボイス特例の上乗せ | +50万円(合計100万円) |
賃金引上げ特例の上乗せ | +150万円(合計200万円) |
両特例の上乗せ | +200万円(合計250万円) |
補助率 | 2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4) |
そしてHP制作で最も重要なのが、ウェブサイト関連費の独自ルールです。公募要領では、ウェブサイト関連費について次の2点が明記されています。
- ウェブサイト関連費のみによる申請はできない(必ずほかの経費と一緒に申請する)
- ウェブサイト関連費の申請額は、補助金交付申請額の4分の1(最大50万円)が上限
つまり、HP制作費だけで満額を取りに行くことはできません。具体的に計算してみます。
ケース | 補助金交付申請額 | ウェブサイト関連費の補助上限(1/4) |
|---|
通常枠のみ | 50万円 | 12.5万円 |
インボイス特例(合計100万円) | 100万円 | 25万円 |
両特例(合計250万円) | 250万円 | 50万円(上限) |
たとえば通常枠だけで申請する場合、補助金の総額が50万円でも、そのうちHP制作(ウェブサイト関連費)に充てられる補助は最大12.5万円までです。補助率2/3で逆算すると、対象になるHP制作費は約18.75万円分が上限の目安になります。HP制作費の全額が補助されるわけではない、という点は申請前に必ず押さえておきましょう。
なお、50万円(税抜き)以上の費用でHPを作成・更新した場合、そのウェブサイトは「処分制限財産」に該当し、取得から通常5年間は譲渡・廃棄などに制約がかかる点も覚えておくと安心です。
申請の流れ
持続化補助金は「申請して終わり」ではなく、商工会議所・商工会の関与と、採択後の実績報告までが一連の流れになります。第19回の標準的な手順は次のとおりです。
- 経営計画書・補助事業計画書の作成:販路開拓の取組内容と、HPで何を実現するかを具体的に記載します。
- 商工会議所・商工会へ相談し、事業支援計画書(様式4)の発行を依頼:この書類がないと申請できません。発行には締切があるため早めの相談が必須です。
- 電子申請システムから応募申請:必要書類を添えて受付期間内に申請します。
- 審査・採択発表:経営計画の内容などをもとに審査されます。
- 交付決定 → 補助事業の実施(HP制作・公開):交付決定後に発注・支払いを行うのが原則です。
- 実績報告 → 補助金の請求・受領:完了後に報告し、確定額が支払われます。
第19回の受付スケジュールは、申請受付が2026年3月6日(金)〜2026年4月30日(木)17:00、事業支援計画書(様式4)の発行受付締切が2026年4月16日(木)でした。すでに受付は終了しています。今後の申請を検討する場合は、後述する第20回以降の公募要領を確認してください。
個人事業主でも使えるか
持続化補助金は、商業・サービス業(宿泊・娯楽業を除く)で常時使用する従業員が5人以下など、業種ごとの小規模事業者の定義を満たせば、法人だけでなく個人事業主も対象になります(一定要件を満たす特定非営利活動法人も対象)。創業まもない個人事業主が、最初のホームページや予約・EC機能の整備に活用するケースは多く見られます。開業初期で売上の柱を作りたい段階の事業者にとって、相性のよい補助金といえます。
採択されるコツ
持続化補助金は、申請すれば必ず通る制度ではありません。審査で見られているのは「HPを作りたい」ではなく、「販路開拓につながる説得力のある計画かどうか」です。採択率を高めるための実務的なポイントを挙げます。
- HPを「目的」ではなく「手段」として書く:誰に・何を・どう売り、その結果いくらの売上増を見込むのか。HPはそのための販路開拓ツールとして位置づけます。
- 現状の課題と取組のつながりを明確にする:今なぜHPが必要なのか(来店頼みからの脱却、商圏拡大など)を、自社の弱みと結びつけて記述します。
- 数値目標を入れる:問い合わせ件数、EC売上、新規顧客数など、効果を測れる指標を盛り込むと計画の具体性が増します。
- 商工会議所・商工会の窓口を早めに使う:様式4の発行に加え、経営指導員から計画書のアドバイスを受けられます。
- 制作会社と計画段階から連携する:見積りの内訳(ウェブサイト関連費に該当する部分)や、補助事業期間内に公開できるスケジュールを事前にすり合わせておきます。
補助金の対象範囲やHP制作費の見積り根拠については、補助金でホームページは作れる?対象になる条件でも詳しく整理しています。あわせて確認してみてください。
制作会社の選び方
補助金を活用してHPを作る場合、制作会社選びは採択後の実務に直結します。次の3点を満たす会社を選ぶと安心です。
- 補助金スケジュールに対応できる:交付決定後に着手し、補助事業期間内に「公開」まで完了できること。期間内に公開できないと対象外になります。
- 見積りの内訳を補助金区分に沿って出せる:どこまでがウェブサイト関連費かを明示できる会社だと、申請・報告がスムーズです。
- 公開後の集客・更新まで見据えている:採択のカギは販路開拓効果です。SEOや更新運用まで相談できる会社が望ましいです。
制作会社選びの全体的な観点は、補助金活用のIT・支援事業者の選び方も参考になります。なお、補助金の「無料」表現には注意点もあり、ホームページ制作費用と“無料”の落とし穴で実費の考え方を解説しています。
他の補助金(デジタル化・IT・AI導入)との違い
HP制作費を補助できる制度は持続化補助金だけではありません。目的に応じて、ほかの補助金との違いを理解しておくと選びやすくなります。
制度 | 主な目的 | HP制作との相性 |
|---|
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者の販路開拓 | HP・ECは「ウェブサイト関連費」で対象。ただし1/4・最大50万円の上限あり |
IT導入補助金 | ITツール・ソフトウェア導入による業務効率化 | 登録されたITツール(受発注・予約・ECパッケージ等)が中心。自由なHP制作は対象外のことが多い |
各自治体のデジタル化・HP制作補助 | 地域の事業者支援 | 自治体ごとに条件が大きく異なる。小規模事業者には使いやすい場合も |
ざっくり言えば、「販路開拓を目的に、自社仕様のHPやECを作りたい」なら持続化補助金、「決まったITツールやシステムを業務効率化のために導入したい」ならIT導入補助金が向いています。AI導入や業務効率化を狙う場合はIT導入補助金や自治体補助の方が合うこともあるため、目的を整理してから選ぶことが大切です。なお、補助金制度は年度や回次で内容が改定されるため、それぞれの最新公募要領で必ず確認してください。
よくある不採択理由
HP制作を絡めた申請でつまずきやすい代表的なパターンを挙げます。事前に避けることが採択への近道です。
- 販路開拓の視点が薄い:「古いHPを新しくしたい」だけで、売上にどうつながるかが書かれていない。
- 計画の具体性・数値目標が不足:ターゲットや効果指標があいまいで、審査員が成果をイメージできない。
- 経費区分の誤り:ウェブ関連費用を広報費などに入れてしまう。デジタル系はウェブサイト関連費に集約します。
- スケジュールが無理:補助事業期間内にHP公開まで終わらない計画。未公開だと対象外です。
- 様式4の発行が間に合わない:商工会議所・商工会への相談が遅く、申請に必要な書類が揃わない。
第20回(今後の申請)に向けて
第19回の受付はすでに終了していますが、第19回公募要領には「第20回:今春〜夏に公募要領の公開を予定」と記載されており、次回公募の準備が進んでいます。一般に持続化補助金は商工会議所・商工会への事前相談と様式4の発行が必須で、ここに時間がかかります。次回での申請を考えるなら、公募要領が公開される前から、HPの計画づくりと制作会社の選定を進めておくのが現実的です。
最新の回次・スケジュール・補助率は、必ず商工会議所地区の公式サイトや中小企業庁の公表情報でご確認ください。創業期で初期費用を抑えたい場合の選択肢は、創業期のホームページと初期費用の考え方も参考になります。
まとめ
持続化補助金(第19回)では、ホームページ制作費を「ウェブサイト関連費」として補助対象にできます。ただし、単独申請は不可、補助金交付申請額の4分の1(最大50万円)が上限という独自ルールがあり、HP制作費の全額が補助されるわけではありません。採択のカギは、HPを「販路開拓の手段」として具体的かつ数値で語れるかどうかです。
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