「あと10分だけ」が30分になる。声をかけると不機嫌になる。取り上げると翌日また同じことでもめる——子どものゲーム時間は、どの家庭でもいちばん揉めやすいテーマです。うまくいっている家庭とそうでない家庭の差は、時間の長さそのものより「誰がどう決めたか」と「どうやって終わらせるか」にあります。
結論から言うと、ゲーム時間のルールは「親が決めて言い渡す」のではなく、子どもと一緒に決めて紙に書き、終わらせる合図はタイマー(機械)に任せるのが、いちばんもめません。時間の目安としては、香川県の条例が1日60分(学校の休業日は90分)という数字を挙げていますが、これは条例上の目安であって、医学的に定まった基準ではありません。実態としては、こども家庭庁の令和6年度調査で、青少年の平日1日あたりのインターネット利用時間は平均約5時間2分(機器の合計)と報告されています。
この記事では、公的な資料で確認できる時間の目安、もめないルールの決め方6つ、タイマーの具体的な置き方と運用、よくある失敗3つの直し方、そしてそのまま書き写して使える「わが家のルール」のひな形までを一本にまとめます。
ゲーム時間は1日何分が目安か(公的な資料で確認できること)
「何分が正解か」を科学的に決めた公的な基準は、日本にはありません。ただし、参照できる数字はいくつかあります。ひとつが、2020年4月に施行された香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(令和2年3月24日条例第24号)です。第18条第2項は、保護者に対して次の内容を「目安とする」と定めています。
- コンピュータゲームの利用は1日60分まで、学校等の休業日は90分までを上限とすること
- スマートフォン等の使用(家族との連絡や学習に必要な検索等を除く)は、義務教育修了前の子どもは午後9時まで、それ以外の子どもは午後10時までにやめること
誤解されやすいのですが、この条例に罰則はありません。条文を通して読むと、罰金や過料を定めた規定は存在せず、あくまで家庭でのルールづくりを促す努力義務の形になっています。そしてこの60分・90分という数字は、医学的な根拠から算出された安全基準ではなく、条例が置いた目安です。「60分を超えたら健康を害する」といった読み方はできません。この点は正直に押さえておいてください。
むしろ同じ条文で見落とされがちなのが第18条第1項のほうで、こちらは「子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行う」と書かれています。時間の数字より先に、話し合ってつくる・定期的に見直す、という手順のほうが本体だということです。
実際の子どもの利用時間はどのくらいか
目安と現実のギャップも押さえておきましょう。こども家庭庁の令和6年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」(2025年3月公表)によると、インターネットを利用していると回答した青少年の平日1日あたりの平均利用時間は、利用機器の合計で約5時間2分。学校種別では小学生(10歳以上)が約3時間44分、中学生が約5時間2分、高校生が約6時間19分です。目的別では「趣味・娯楽」が最も長く、約3時間1分でした。
「ゲームをする」と答えた割合は、中学生で86.7%、小学生(10歳以上)で86.6%。0〜9歳の低年齢層でも63.2%が該当し、この層の平均利用時間は約2時間9分(うち趣味・娯楽が約1時間42分)です。つまり条例の60分という目安と、実際の利用時間はかなり離れているのが現状です。いきなり60分に着地させようとすると衝突しか生まないので、現状から少しずつ寄せる設計のほうが現実的です。
同じ調査では、家庭のルールについても数字が出ています。低年齢層の子どもの保護者では81.6%が「ルールを決めている」と回答した一方、学校種が上がるにつれて「決めていない」が増え、子ども側と保護者側の「ルールがあるかどうか」の認識のギャップも拡大傾向にあると報告されています。親は決めたつもりでも、子どもはルールだと思っていない。この食い違いこそが、毎回のもめごとの正体であることが少なくありません。
年齢別の目安(出発点としての早見表)
以下は、上記の条例の目安と実態調査を踏まえ、家庭で決めるときの出発点として整理したものです。医学的な推奨時間ではなく、話し合いのたたき台としてお使いください。子どもの睡眠時間・宿題・習い事の量によって、適切な長さは変わります。
年齢層 | 平日の目安 | 休日の目安 | 決め方のポイント |
|---|---|---|---|
未就学(〜6歳) | 20〜30分 | 30〜40分 | 数字より「1回分」で区切る。時計が読めないので残り時間は見える形で示す |
小学校低学年 | 30〜60分 | 60〜90分 | 宿題・翌日の準備を終えてから。終わりの時刻を親子で口に出して確認する |
小学校高学年 | 60分前後 | 90分前後 | 1週間の合計で管理する形に移行し始める。オンライン対戦は区切りを事前に相談 |
中学生 | 60〜90分 | 120分前後 | 時間管理を本人に渡し、就寝時刻と提出物だけを親の条件にする |
高学年以降は、1日単位より1週間の総量で決めるほうが運用しやすくなります。「平日は1日60分、土日は合わせて3時間まで、使い切ったら終わり」という形にすると、子ども自身が配分を考えるようになり、毎日の交渉が減ります。
もめないルールの決め方6つ
ルールが機能するかどうかは、内容よりも決め方で決まります。実務でも同じですが、当事者が決定に関わっていない取り決めは守られません。
① 親が決めずに、一緒に決めて紙に書く
「1日60分ね」と言い渡した瞬間、それは親が押し付けた制限になり、破ることが子どもにとっての抵抗の手段になります。時間・時刻・例外の3点を子どもに提案させて、親が条件を足す順番にしてください。決まったら紙に書いて、テレビやゲーム機の近くに貼ります。書いて貼るのは形式的な儀式ではなく、前述の「親子の認識のギャップ」を物理的に潰すためです。「そんなの決めてない」と言われたときに、指をさせるものがあるかどうかで揉め方が変わります。
② 平日と休日でルールを分ける
平日と休日を同じ長さにすると、平日がきつすぎるか、休日が緩すぎるかのどちらかになります。香川県の条例も平日60分・休業日90分と分けています。休日は長めに取る代わりに、開始時刻を決めておく(朝9時前は始めない等)と、1日がゲームから始まる形を避けられます。
③「あと何分」ではなく「終わりの時刻」で約束する
これが最も効きます。「あと30分」は、いつ始まったかの解釈で必ず揉めます。「18時30分におしまい」と時刻で約束すれば、争点が消えます。開始が遅れたぶん終わりも遅れる、という交渉も発生しません。時計が読めない年齢の場合は、残り時間が面積で減っていくタイプの表示を使って「この色がなくなったら終わり」と言い換えます。型の選び方は子ども向けの視覚支援タイマーを無料でそろえる方法に詳しくまとめています。
④ 切りのいいところで終われる区切りを、先に織り込む
実は、もめる原因の多くは時間の長さではなく「切られ方」です。セーブできないタイミング、対戦の途中、あと1面でクリアという場面で止められれば、大人でも腹が立ちます。ここは子どもの言い分に理があるので、ルール側で吸収してください。具体的には次のどちらかです。
- 終了5分前に予告を入れる:「あと5分」で区切りに向かわせる。予告なしの終了はしない
- 「タイマーが鳴ったら、そのステージ/その試合が終わったところまで」と最初に決める。延長の上限(5分まで等)も同時に決めておく
オンライン対戦や協力プレイは、途中で抜けると他人に迷惑がかかる種類のゲームもあります。「何分のゲームなのか」を親が把握しておくと、区切りの設計がぐっと現実的になります。
⑤ 守れなかったときの扱いを、先に決めておく
破ったあとに親が怒りながら罰を決めると、その場の感情で重さが変わり、子どもは「運が悪かった」と受け取ります。ルールを決めるときに、守れなかった場合の扱いまでセットで書いておくのが鉄則です。「翌日は30分減らす」「その週の休日分から引く」など、事前に合意した機械的な処理にします。取り上げ・没収は効果が一時的で反発が大きいため、最終手段に回すのが無難です。
⑥ 見直す日を最初に決めておく
一度決めたルールを永久に守らせようとすると、成長に合わなくなって形骸化します。香川県の条例も「ルールづくり及びその見直し」と書いています。「毎月1日に見直す」「テストが終わったら相談する」のように、交渉の窓口を定期的に開けると、日々の「今日だけ延ばして」が減ります。
タイマーは「親の代わりに終わりを告げる係」
ルールを決めたら、次は運用です。ここでタイマーを入れる意味はひとつで、終わりを告げる役を人から機械に移すことにあります。親が「終わり」と言うと、子どもは親と交渉します。タイマーが鳴れば、交渉相手がいません。この役割分担ができているかどうかで、同じルールでも摩擦がまったく変わります。
- スタートは子ども自身に押させる:自分で押した約束は守りやすく、「勝手に始まっていた」という言い訳も消えます
- 残り時間が見える場所に置く:テレビやモニターの横など、プレイ中に視界の端に入る位置に。見えないタイマーは「急に鳴った」と感じさせます
- 終了5分前の予告を置く:本編のタイマーとは別に、5分短いタイマーをもう1本並べて動かすと、予告と終了を自動化できます
- 子どもの手の届かない位置に置く:手元にあると止められます。プレイに使う端末とは別の端末で出すのが基本です
最後の点が地味に重要です。ゲーム機やタブレットの中のタイマーは、子どもが自分で止められてしまいます。別の画面に、親も子も見える形で出しておくことで、「止めた/止めていない」の争いがそもそも起きません。
私たちは、この用途にそのまま使える無料のWebタイマーを公開しています。記事の途中で恐縮ですが、目的にかなり近いものだと思うので、よろしければ見ていってください。ブラウザで開くだけで、インストールも登録も不要です。残り時間を画面いっぱいに大きく表示でき、時間の設定はプリセット・ステッパー・キーパッドの3通り。複数のタイマーを同時に動かせるので、「60分の本編」と「55分で鳴る5分前予告」を並べて置けます。終了時はアラーム音とブラウザ通知で知らせ、画面のスリープを抑える設定もあるので、置きっぱなしでも暗くなりません。

親のスマホを子どもに貸す必要がないのも、この形の利点です。家に余っている古いタブレットや、家族共用のPCのブラウザで開けば、それがそのままタイマー専用機になります。画面いっぱいに映す手順は全画面で大きく映せる無料のWebタイマーに、残り時間を面積で見せる円グラフ型の考え方は残り時間が見える円グラフ型タイマーの選び方にまとめています。
よくある失敗3つと、その直し方
親が延長を許してしまう
いちばん多い失敗です。1回でも「今日は特別ね」と延長すると、ルールは「交渉すれば伸びるもの」に変わり、翌日からの粘りが強くなります。とはいえ、絶対に例外を作らない運用も現実的ではありません。直し方は例外を禁止するのではなく、例外を制度にすることです。「延長チケットは週1回まで、使う前に申告する」のように、回数と手続きを決めて紙に書きます。これで「その場の粘り勝ち」がなくなり、子ども側も計画的に使うようになります。
兄弟で条件が違う
年齢が違えば適切な長さも違うのに、同じ画面の前に並んで座っていると、下の子には不公平にしか見えません。ここは「年齢で違う」ことを最初に明言し、上がる時期も示しておくのが効きます。「小3になったら平日45分に増える」と先に見せてしまえば、いまの差は「順番待ち」として受け入れやすくなります。あわせて、下の子が先に終わったあと、上の子の残り時間をひとりで見せ続けないこと。終わった側に次の行き先(おやつ・お風呂・別の遊び)を用意しておくと切り替わります。
宿題との順番で毎回もめる
「宿題が終わったらゲーム」は理屈としては正しいのですが、終わる時刻が読めないので、毎日交渉が発生します。順番ではなく時刻で切るほうが安定します。「17時から18時は宿題の時間、18時30分からゲーム」のように、両方に時刻の枠を与えてしまう。宿題が終わらなくても18時30分には止める代わりに、ゲームの終わりも動かさない、というのが運用のコツです。宿題側にもタイマーを使って区切ると、ずるずる続いて結局ゲーム時間が削られる、という不満も減ります。集中の続かなさが課題になってきたら、タイマーで集中の区切りをつくる使い方も参考になります。
そのまま書き写せる「わが家のゲームのルール」ひな形
紙に書くときのひな形です。空欄を親子で埋めて、ゲーム機の近くに貼ってください。項目を増やしすぎないのがコツで、6行に収めると守れる範囲に収まります。
- 平日は( )分、休日は( )分まで。1週間の合計で管理する場合は「週( )時間まで」に置き換える
- 終わりの時刻は( 時 分)。始まりが遅れても、終わりは動かさない
- 終了( )分前に予告が鳴る。鳴ったら、その試合/そのステージが終わったところで止める
- タイマーは(置く場所)に置く。スタートは自分で押す
- 守れなかったときは( )。延長チケットは週( )回まで、使う前に申告する
- 見直しは毎月( )日。増やしたいときは、この日に相談する
4行目の「置く場所」は、プレイに使う端末とは別の端末にしてください。5行目の罰則は、重すぎるものを書かないほうが続きます。実際に運用してみて、破られてばかりなら罰が甘いのではなく時間の設定が実情と合っていないことが多いので、6行目の見直しで調整します。
まとめ
ゲーム時間のルールで押さえるのは、次の3点です。①一緒に決めて紙に書く ②「あと何分」ではなく終わりの時刻で約束する ③終わりを告げる役は、親ではなくタイマーに渡す。時間の数字(香川県の条例では1日60分・休業日90分)は出発点にすぎず、実態調査が示すとおり現実とは開きがあります。現状から少しずつ寄せ、月に一度見直すほうが長続きします。
なお、ゲームの利用時間と健康への影響については、断定できるほど確立した基準はありません。香川県の条例も前文で世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を疾病として位置づけたことに触れていますが、本記事は診断や治療の助言を行うものではありません。日常生活に支障が出ているように感じる場合は、学校の先生や、お住まいの地域の相談窓口・専門の医療機関にご相談ください。
Mihataでは、この記事で紹介したタイマーを含む無料の集中時計(全画面のWebアプリ)を公開しています。広告なし・登録なしで、ブラウザを開けばすぐ使えます。家庭でも、教室でも、費用をかけずにお試しいただけます。
業務の自動化やツールの導入についてのご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。
よくある質問
子どものゲームは1日何分までにすればいいですか?
医学的に確立した基準はありません。参照できる数字としては、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例が1日60分まで(学校の休業日は90分まで)を目安として挙げています。ただしこれは条例上の目安であり、健康への影響から算出された安全基準ではありません。こども家庭庁の令和6年度調査では青少年の平日のインターネット利用時間が平均約5時間2分と報告されており、現実とはかなり開きがあります。現状の時間から少しずつ短くし、月に一度見直す進め方が現実的です。
香川県の条例を守らないと罰則がありますか?
ありません。条文を通して読むと罰金や過料を定めた規定はなく、保護者が子どもと話し合ってルールをつくり、見直すことを促す内容になっています。60分・90分という数字も「目安とする」という書き方です。
時間が来ても子どもがゲームをやめず、毎回けんかになります。
終わりを告げる役を、親からタイマーに移してください。親が「終わり」と言うと子どもは親と交渉しますが、タイマーが鳴れば交渉相手がいません。あわせて、終了5分前に予告を入れること、「鳴ったらその試合が終わったところまで」のように区切りを先に決めておくことで、切られ方への不満がかなり減ります。
タイマーを子どもが勝手に止めてしまいます。
プレイに使う端末の中でタイマーを動かしていると、子どもの手で止められます。家に余っている古いタブレットや家族共用のPCなど、別の端末のブラウザでタイマーを出し、子どもの手が届かない位置に置いてください。画面には見えていて、操作はできない、という状態がいちばん揉めません。
兄弟で時間に差をつけてもいいですか?
年齢が違えば適切な長さも違うので、差をつけて問題ございません。ただし「年齢で違うこと」と「何歳になったら増えるか」を最初に明言してください。先に見通しを示すと、いまの差が順番待ちとして受け入れられやすくなります。先に終わった子には、おやつやお風呂など次の行き先を用意しておくと切り替わります。