筋トレのセット間に「何秒休むか」を決めていないと、同じメニューでも積み上がる総負荷量(ボリューム)が毎回変わります。レストを測る道具は必要ですが、そのためだけにジムでアプリを入れ直すのも面倒です。この記事では、目的別のレスト時間の目安を一次資料で確認したうえで、ブラウザだけで完結するレストタイマーの作り方までをまとめます。
結論:セット間レストは「目的」で決める。60/90/180秒を使い分ける
先に答えを書きます。米国スポーツ医学会(ACSM)のポジションステートメント Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults(2009)は、セット間のレストを目的と種目ごとに分けて推奨しています。ざっくり言えば「重い種目ほど長く、軽くて高回数の種目ほど短く」です。
目的 | セット間レストの目安 | 回せるタイマー |
|---|---|---|
最大筋力(スクワット・ベンチ等のコア種目/高重量) | 2〜3分以上(3〜5分でもよい) | 180秒 |
筋肥大(6〜12RM の中重量) | おおむね90秒〜2分(最低でも60秒以上) | 90秒 |
補助種目・単関節種目(中〜やや高強度) | 1〜2分 | 60〜120秒 |
筋持久力(15回以上の高回数) | 1〜2分(10〜15回の中回数なら1分未満) | 60〜90秒 |
パワー(爆発的に挙げる種目) | 3〜5分 | 180〜300秒 |
実務的には、60秒・90秒・180秒の3本を用意しておけば、ほとんどのメニューは回せます。種目ごとに細かく秒数を刻むより、「重い日は180秒、いつもの中重量は90秒、追い込み種目は60秒」と3択に絞ったほうが、ジムで迷わず実行できます。
なお、ここに挙げた数字はあくまで一般成人のトレーニングに関する推奨の幅であり、個人の体力・持病・服薬状況によって適切な休息は変わります。体調に不安がある場合は、医師やトレーナーなど専門家の判断を優先してください。
なぜその秒数なのか:一次資料で根拠を確認する
最大筋力を狙うなら2〜3分以上(レップ数が落ちないから)
ACSM は、最大筋力の向上を狙うコア種目について「少なくとも2〜3分のレストを取ることを推奨する」と明記しています(補助種目は1〜2分でも足りるとしています)。理由は単純で、レストが短いと次のセットで挙げられる回数が落ち、結果としてその日のトレーニング総量が減るからです。
同ポジションステートメントは、既存研究を踏まえて「3〜5分のレストは、30秒〜2分のレストよりもパフォーマンス低下が小さい」「長期の介入研究の多くで、長いレスト(2〜5分)は短いレスト(30〜40秒)より大きな筋力向上を示した」とも整理しています。
Sports Medicine 誌のレビュー(de Salles ら、2009年、35件の研究をレビュー)も同じ方向で、1RM の50〜90%の負荷で行う場合、セット間3〜5分のレストのほうが複数セットを通じて多くのレップ数をこなせたと報告しています。慢性的な適応としても、3〜5分のレストが絶対的筋力の伸びで有利だったとしています。
筋肥大は「短いほど効く」説が後退した
ここが最も誤解されやすい部分です。かつては「筋肥大には30〜60秒の短いレスト」が定番でした。先述の de Salles らのレビューも2009年時点では、成長ホルモンの急性分泌を根拠に30〜60秒を挙げています。
しかしその後の介入研究で、この前提は揺らぎました。Journal of Strength and Conditioning Research(2016年)に掲載された Schoenfeld らの研究は、トレーニング経験のある男性21名を、レスト1分群と3分群に分け、他の変数をすべて揃えて8週間追跡しています。結果は、3分群のほうがスクワットとベンチプレスの1RM、および大腿前面の筋厚で有意に大きく増加しました。
2024年に Frontiers in Sports and Active Living に掲載されたベイズ流メタアナリシス(無作為化比較試験9件・19測定)も、長めのレストにわずかな優位(標準化平均差でおよそ0.13〜0.17)を認めつつ、90秒を超えて休んでも筋肥大の差はほとんど見られないと結論づけています。
つまり現時点の整理としては、「筋肥大なら90秒前後を下限にしておけば十分で、それより短く削る積極的な理由は乏しい」となります。ACSM が筋肥大に1〜2分を挙げているのとも矛盾しません。
短いレストでも筋力は伸びる。ただし「最大化」には長さが要る
Sports Medicine 誌の系統的レビュー(Grgic ら、2018年、23件・計491名)は、60秒未満の短いレストでも確かな筋力向上は得られるとしたうえで、トレーニング経験者が筋力の伸びを最大化するには2分超のレストが必要そうだと述べています。未経験者については60〜120秒で足りるとしています。
この「初心者は短くても伸びる/経験者ほど長さが効く」という差は、レストタイマーの設計にそのまま使えます。始めたばかりなら60〜90秒で回して時間効率を取り、扱う重量が伸びてきたらコア種目だけ180秒に延ばす、という運用です。
筋持久力を狙う日は逆に短く保つ
ACSM は局所筋持久力について、15〜20回以上の高回数セットなら1〜2分、10〜15回の中回数セットなら1分未満という短いレストを推奨しています。同じ文書の要旨では、軽〜中程度の負荷(1RMの40〜60%)で15回以上を行う筋持久力トレーニングについて「90秒未満の短いレスト」ともまとめられており、いずれにせよ筋力や筋肥大を狙う日より明確に短いという点は共通しています。サーキットトレーニングの場合は、次の種目へ移動するのに必要な時間がそのままレストになる、とも書かれています。
ここで重要なのは、同じ「筋トレ」でも狙う適応が違えばタイマーの秒数が真逆に動くという点です。だからこそ、1本の固定秒数ではなく複数の秒数を切り替えられる道具が要ります。
「セット間レスト」と「HIIT・タバタ」のタイマーは別物
タイマーを探すときに混ざりがちなのが、HIIT・タバタ用のインターバルタイマーです。両者は求める動きがはっきり違います。
セット間レストタイマー(この記事) | HIIT・タバタ用インターバルタイマー | |
|---|---|---|
回し方 | 1セット終わるたびに手で開始 | 運動と休憩を自動で交互に切替 |
典型的な設定 | 60秒/90秒/180秒を単発で | 20秒運動+10秒休憩×8セットなど |
運動側の時間 | 測らない(レップ数で決まる) | 測る(時間で区切る) |
向く種目 | ウェイトトレーニング全般 | 自重サーキット・有酸素インターバル |
ウェイトトレーニングは1セットにかかる時間が日によって変わるため、運動側まで自動で刻まれると逆に扱いづらくなります。セット間レストは「終わったら押す」手動運用が正解です。自動で交互に切り替えたい場合は、20秒運動/10秒休憩を自動で切り替えるHIIT・タバタ用タイマーの使い方のほうが目的に合います。
ジムで実際に使えるレストタイマーの条件
秒数が決まっても、ジムの現場では別の問題が出ます。実際にジムのフロアで片手で回すことを前提にすると、外せない条件は次の4つです。
1. 片手・ワンタップで開始できる
セットを終えた直後は、もう片方の手でダンベルやタオルを持っていることが多く、画面を見ながら数字を入力し直す余裕はありません。「60」「90」「180」を名前付きで保存しておき、タップ1回で走り出す形が現実的です。
2. 画面が勝手に消えない
スマホの自動ロックは30秒〜1分に設定している人が多く、180秒のレストだと途中で必ず画面が落ちます。残り時間を確認するたびにロック解除するのは現実的ではありません。ブラウザの Screen Wake Lock API に対応したツールなら、そのページを開いている間だけ画面が消えないようにできます(端末側の設定を変えずに済むのが利点です)。
3. 音が出せない環境でも気づける
ジムでイヤホンをしていない、あるいは音楽を流していて通知音が埋もれる、という状況は珍しくありません。音・バイブ・画面の光・ブラウザ通知のうち、少なくとも2つを併用できると取りこぼしが減ります。音を完全に切って視覚だけで管理したい場合は、音を鳴らさずに時間を管理する無音タイマーの使い方も参考になります。通知音を環境に合わせて選び分けたいなら、通知音を選べる無料Webタイマーの考え方が使えます。
4. 秒単位で作れて、複数を並べられる
多くのタイマーは「分」単位のプリセットしか持っていません。90秒や180秒を作るには時・分・秒で入力できる必要があります。また、スーパーセットや2種目を交互に回すときは、複数のタイマーを同時に走らせられるWebツールのほうが扱いやすくなります。
集中時計というブラウザで動く時計・タイマーを私たちも作って公開しています。記事の途中で自社の話を挟むのは気が引けるのですが、ここまで挙げた4条件(保存したプリセットのワンタップ開始・画面スリープ防止・音/バイブ/フラッシュ/ブラウザ通知の併用・秒単位の入力と複数同時実行)をひととおり満たしているので、よろしければ試してみてください。インストールも登録も不要です。
ブラウザでレストタイマーを3本用意する手順
集中時計を例に、60秒・90秒・180秒の3本を用意する手順です。所要時間は2分ほどで、作った内容はブラウザに保存されるので次回からはワンタップになります。
- タイマーを開く:ツールバーのタイマーを開き、上部の切替で「タイマー」を選びます(ポモドーロ/タイマー/ストップウォッチの3モードがあります)。
- 秒単位で時間を作る:入力方法を「時分秒」に切り替え、分を1、秒を30にして90秒を作ります。名前欄に「レスト90」と入れておくと後で見分けが付きます。
- マイタイマーに保存する:「現在の設定を保存」を押すと、マイタイマーに登録されます。同じ手順で「レスト60」「レスト180」も作っておきます。
- 通知の出し方を決める:終了時の通知で、通知音(12種から選択)・音量・ブラウザ通知・画面フラッシュ+バイブ・「止めるまで鳴らす」を環境に合わせて設定します。
- 画面スリープ防止をオンにする:設定から「画面スリープ防止」を有効にしておくと、開いている間は画面が自動で消えません。
あとはセットが終わるたびに、マイタイマーの「レスト90」をタップするだけです。種目が変わったら「レスト180」に切り替えます。複数の時計を並べたいときは、一覧でタイマーをピン留めすると中央に大きく表示されます。
運用のコツ:レストは「守る」ものではなく「記録する」もの
現場でよくあるのは、タイマーを鳴らしたあとにスマホを触り続けて、結果的に180秒のつもりが5分になっているパターンです。これを防ぐには、タイマーを開始したら画面を伏せず、残り時間が見える位置に置いたままにするのが確実です。ブラウザのタブを裏に回すと、端末によってはカウントが間引かれる場合があるため、レスト中はそのタブを前面に出しておくほうが安全です。
また、レストを短く削っても総挙上量が落ちるだけで得はしません。時間を節約したいなら、レストを削るのではなく、拮抗する部位の種目を交互に行う(スーパーセット)ほうが、1セットあたりの回復時間を確保したまま滞在時間を圧縮できます。ACSM も、拮抗筋を組み合わせた種目配列に触れています。
Webタイマーと専用アプリ、どちらを選ぶか
どちらが優れているという話ではなく、「記録も一緒に取りたいか」で分かれます。
Webタイマー | 筋トレ記録アプリ内蔵のレストタイマー | |
|---|---|---|
導入 | URLを開くだけ。インストール不要 | アプリのインストールと初期設定が必要 |
強み | PCでもタブレットでも同じものが使える | セット記録と連動して自動で開始する |
向く人 | 記録は別で付けている/端末を選ばず使いたい | 重量・レップの記録まで一元化したい |
記録とレストをまとめたいなら、記録アプリ内蔵のレストタイマーが素直です。たとえば FiTin はセットを記録するとレストタイマーが自動で始まる作りになっています。
タイマー機能だけを純粋に使いたい場合は、秒数とセット数を入れて回すタイプの専用アプリも選択肢になります。
ブラウザで完結させたいなら、PC・スマホ・タブレットのどれでも同じURLを開けるWebタイマーが扱いやすくなります。端末を買い替えても設定を移す作業が要らず、ジムの共用タブレットやPCでも同じ手順で使えるのが実務上の利点です。
つまずきやすいポイント3つ
- 全種目を同じ秒数で回してしまう:コンパウンドの高重量と単関節の追い込み種目では、必要な回復時間が倍以上違います。最低でも「重い種目」と「それ以外」の2本は分けてください。
- 筋肥大を狙って30〜60秒まで削る:2016年以降の介入研究とメタアナリシスは、短く削る利点を支持していません。時間効率のために削るなら、その分だけ扱える重量やレップ数が落ちることを織り込んでおく必要があります。
- タイマーが鳴らないまま画面が消える:自動ロックとブラウザのバックグラウンド制御の両方が原因になります。画面スリープ防止をオンにし、バイブや画面フラッシュも併用しておくと取りこぼしが減ります。
まとめ
セット間レストは、目的に応じて最大筋力は2〜3分以上、筋肥大は90秒前後を下限、筋持久力は1分前後というのが、ACSM の推奨と査読論文から読み取れる現時点の目安です。そのうえで現場に必要なのは、この秒数を片手でワンタップ、画面を消さずに、音が出せなくても気づける形で回せる道具です。ブラウザのタイマーなら、端末を選ばず今すぐ用意できます。
私たちは普段、中小企業向けにホームページ制作やAI導入支援を行っていて、集中時計はその過程で作った無料ツールのひとつです。もし「自社の業務にもこういう小さな仕組みが欲しい」といったご相談があれば、お気軽にお声がけください。売り込みではなく、まず現状を伺うところから対応しています。
よくある質問
筋トレのセット間レストは何秒が目安ですか?
目的で変わります。ACSMの推奨では、最大筋力を狙うコア種目は2〜3分以上、筋肥大は1〜2分、筋持久力は1分前後の短めが目安です。実務上は60秒・90秒・180秒の3本を用意して使い分けると回しやすくなります。
筋肥大には短いレストのほうが良いのではないですか?
かつては30〜60秒が定番でしたが、その後の研究では支持されていません。2016年のSchoenfeldらの8週間の介入研究では、レスト3分群が1分群より筋力・筋厚の増加が大きく、2024年のメタアナリシスも長めのレストにわずかな優位を認めています。ただし90秒を超えると差はほとんど見られません。
HIIT・タバタ用のインターバルタイマーで代用できますか?
目的が違います。HIIT用は運動と休憩を自動で交互に切り替える設計で、ウェイトトレーニングのようにセット所要時間が変動する場合は扱いづらくなります。セット間レストは、1セット終わるたびに手で開始する単発タイマーのほうが適しています。
ジムでスマホの画面がすぐ消えてしまいます。どうすればいいですか?
Screen Wake Lock に対応したWebタイマーを使うと、そのページを開いている間だけ画面が消えないようにできます。端末の自動ロック設定そのものを変える必要がありません。集中時計では設定の「画面スリープ防止」で切り替えられます。
音を出せない場所でもタイマーの終了に気づけますか?
はい。通知音のほかに、画面フラッシュ+バイブ、ブラウザ通知を併用できます。音量を0にして視覚と振動だけで運用することもできます。