ホームページを公開したあと、更新・保守・改善を社内でやるか外注するか。実務での答えは「どちらか一方」ではなく、作業単位で切り分けて、判断が要らない定型作業だけを社内に残し、技術と責任が絡む作業を外に出すのが最も破綻しにくい形です。理由はシンプルで、運用の失敗は多くの場合スキル不足ではなく「担当者が本業に追われて手が止まること」から起きるからです。
背景としても、総務省の令和7年版 情報通信白書では、日本企業がデジタル化の課題として挙げた項目の第1位が「人材不足」で48.7%と、他国と比べて突出しています。人がいない前提で設計しないと、内製の計画はたいてい絵に描いた餅になります。
この記事では、運用に含まれる作業を洗い出したうえで、どれを社内に残しどれを外注するかの分担マトリクス、判断の5軸、費用の考え方までを整理します。なお「これから作る」段階で自作か発注かを迷っている方は、個人事業主がホームページを自作するか外注するかの判断を先に読んだほうが早いはずです。本記事は公開後の運用に絞ります。
そもそも「ホームページの運用」に何が含まれるか
「運用」と一言で言っても、中身はまったく性質の違う作業の集合です。ここを分けずに「運用を自社でやるか外注か」と考えるから、判断がぼやけます。実務では、次の5系統に分けると整理しやすくなります。
- 更新系:お知らせ・ブログ・実績・料金表・スタッフ紹介など、中身を差し替える作業。
- 保守系:サーバー・ドメインの契約管理、CMSやプラグインの更新、SSL証明書、バックアップ。
- セキュリティ系:脆弱性情報の把握、改ざん検知、被害時の復旧手順。
- 改善系:アクセス解析の確認、問い合わせが増えない原因の特定、導線やページの手直し。
- 集客系:SEO、記事の企画と執筆、広告やSNSとの連携。
このうち更新系だけが「誰でもできる寄り」で、残りは程度の差はあれ専門知識を要します。とくに保守系とセキュリティ系は、放置しても翌日には何も起きないのに、半年後にまとめて牙を剥くタイプの作業です。担当者の善意だけで支えると、まず続きません。
分担マトリクス:どの作業を社内に残し、どれを外に出すか
下の表は、Mihataが中小企業のサイトを引き継ぐときに実際に使っている整理です。「向き」は絶対ではなく、貴社の体制次第で動きます。判断の理由まで含めて見てください。
運用作業 | 向いている担い手 | そう考える理由 |
|---|---|---|
お知らせ・新着情報の投稿 | 社内 | 速報性が価値。外注すると往復で数日かかり鮮度が死ぬ。 |
料金・営業時間・スタッフの差し替え | 社内 | 正しい情報を持っているのが社内。判断が要らず、CMSで完結する。 |
写真の追加・入れ替え | 社内(撮影・選定)+外注(レイアウト調整) | 素材は現場が強い。レイアウトが崩れる領域だけ外に出す。 |
ブログ・コラムの執筆 | 社内が理想/外注も可 | 一次情報は社内にしかない。ただし「書き続けられるか」が最大の関門。 |
CMS・プラグインの更新 | 外注 | 更新は不具合を生むことがあり、戻せる人が要る。止めると危険度が上がる。 |
バックアップと復旧手順 | 外注 | 取ってあるかより「戻せるか」。検証まで含めると社内では手が足りない。 |
ドメイン・サーバーの契約管理 | 社内(名義)+外注(技術対応) | 名義と支払いは自社に置くのが鉄則。失効事故は代理店任せだと気づけない。 |
SSL・障害対応・表示速度 | 外注 | 発生頻度が低く、社内で技能を維持する意味が薄い。 |
アクセス解析の確認 | 社内(見る)+外注(読み解く) | 数字を眺めるだけなら社内で十分。打ち手に変える工程だけ専門性が要る。 |
デザイン・構造の変更、ページ新設 | 外注 | 崩れると全ページに波及する。部分最適な手直しが最も事故を呼ぶ。 |
SEO・改善施策の設計 | 外注(社内は意思決定) | 継続的な検証が必要で、片手間では判断材料が揃わない。 |
この表を眺めると、境界線がだいたい見えてきます。「間違えてもすぐ直せる作業」は社内、「間違えると誰かに迷惑がかかる作業」は外注。これが実務で最もぶれない分け方です。
迷ったときの判断5軸
1. 頻度:月に何回動くか
月4回以上動く作業は社内に置いたほうが速く、年に数回しか動かない作業は外注のほうが安く済みます。頻度が低い作業を社内に残すと、いざやるときに手順を思い出せず、結局その日一日が潰れます。現場で多いのは「年1回のドメイン更新で全員が固まる」パターンです。
2. 可逆性:失敗したときに戻せるか
文章の誤字はすぐ直せますが、CMSの更新失敗やサーバー設定の変更は、戻し方を知らないと復旧できません。IPAの安全なウェブサイトの運用管理に向けての20ヶ条でも、ソフトウェアの更新やログ・バックアップの管理、委託先との責任範囲の明確化が運用側の基本項目として挙げられています。戻せない作業を「なんとなく社内」に置くのが、いちばん高くつく選択です。
3. 担当者:名前が挙がるか、代わりがいるか
「総務の誰かがやります」で決まった運用は、ほぼ確実に止まります。担当者の名前が具体的に挙がり、かつその人が抜けたときの代役まで言えるかどうかで判断してください。1人しかいない場合、その作業は実質的に外注済みと同じリスク構造(属人化)を抱えています。
4. 時間単価:社内でやると本当に安いか
内製が安く見えるのは、社内工数を無料として計算しているからです。担当者の時間単価を3,000円と置いて、更新1件に90分かかっているなら、それは1件4,500円の作業です。月10件なら45,000円。外注の保守費と並べたとき、金額差はしばしば想定より小さくなります。
5. 目的:更新したいのか、成果を出したいのか
「情報を最新に保ちたい」だけなら社内更新で十分です。一方「問い合わせを増やしたい」なら、更新の頻度ではなく設計と検証が要ります。目的が後者なのに更新作業の内製化を議論していると、労力の割に成果が動かない、という結末になりがちです。
費用の目安と、比べ方
保守・運用の外注費は、内容によって大きく振れます。金額そのものより「何が含まれているか」で比べるのが正解です。おおまかな相場感としては、サーバー・ドメイン管理と障害時の一次対応までなら月額数千円〜1万円台、CMS更新・バックアップ・軽微な修正まで含めると月額1万円台〜3万円台、コンテンツ制作やSEO改善まで入ると月額数万円〜十数万円という幅で語られることが多い領域です。ここは提供範囲が各社バラバラなので、幅で捉えてください。
比較のとき必ず確認したいのは次の4点です。(1) 修正対応の回数・時間の上限があるか。(2) 修正の定義(文章差し替えのみか、ページ追加も含むか)。(3) 障害時の対応時間帯と連絡手段。(4) 解約時にデータとアカウントを引き渡してもらえるか。とくに(4)を書面で確認していない契約は、あとから乗り換えたいときに詰まります。見積書の読み解き方そのものは、ホームページ見積の内訳でチェックすべき項目にまとめています。
Mihataでも、貴社の体制を伺ったうえで「ここは社内でやったほうが速いです」とお伝えすることがあります。丸ごと請け負うより、そのほうが結果的に長く続くためです。分担の整理からご相談いただけます。
社内で運用を持つなら、先に整えておく3つの前提
内製に寄せると決めた場合、次の3つが揃っていないと、数か月後に必ず行き詰まります。逆にここさえ押さえれば、更新系の内製は十分に現実的です。
- ドメインとサーバーの名義・管理画面を自社で握っていること。ここが制作会社名義のままだと、更新も移転も他社頼みになります。誰が管理しているか分からない状態なら、ドメインとサーバーの管理会社を自力で調べる手順から着手してください。
- 権限が分かれていること。全員が管理者権限を持つ運用は事故のもとです。投稿だけできる権限を作り、日常更新はそちらで行います。
- 手順が文章として残っていること。「前任者に聞かないと分からない」状態は、内製ではなく属人化です。スクリーンショット付きで10行あれば十分です。
よくある失敗パターン
最も多いのは「全部内製に切り替えたが、3か月で更新が止まった」という形です。最初の1か月は勢いがありますが、繁忙期に入ると更新は真っ先に後回しになります。止まったこと自体より、止まったまま半年放置され、プラグインが古いまま残ることのほうが実害が大きくなります。
次に多いのが「全部外注にしたが、細かい修正を頼みづらくて放置」です。1文字の直しでも依頼メールを書く必要があると、心理的なコストが勝ってしまいます。これは外注先の問題というより、日常更新まで外に出した設計の問題です。
3つ目は、外注先を替えたときにアカウントが引き継がれず、旧サイトのままアクセスできなくなるケースです。運用の担い手を変えるという判断は、必ずアカウントの棚卸しとセットで行ってください。契約前にIDの所有者を確認しておくだけで、大半は防げます。
まとめ:分担を決めることが「運用を決める」こと
自社か外注かは、二択の問題ではありません。日常更新は社内、技術と責任が絡む保守・改善は外注という分担を土台に、頻度・可逆性・担当者・時間単価・目的の5軸で個別に寄せていく。これが、続く運用体制のつくり方です。
そして分担を決めたら、必ず書き出して共有してください。誰が何を持っているか曖昧なまま走り出した運用は、担当者が替わった瞬間に振り出しに戻ります。運用の設計や現状の棚卸しでお困りでしたら、貴社の体制を伺ったうえで一緒に整理いたします。
よくある質問
ホームページの運用は自社と外注のどちらが安いですか?
作業によって変わります。社内工数を時間単価で換算すると、内製が想定ほど安くならないことは珍しくありません。担当者の時間単価3,000円で更新1件90分なら1件4,500円で、月10件なら45,000円相当です。日常更新は社内、保守や改善は外注という分担にすると、費用と手間のバランスを取りやすくなります。
どの作業を社内に残すべきですか?
間違えてもすぐ直せる作業を社内に残すのが基本です。お知らせの投稿、料金や営業時間の差し替え、写真の入れ替えなどが該当します。逆にCMSやプラグインの更新、バックアップと復旧、デザインや構造の変更は、失敗したときに戻せる人が必要なため外注が向いています。
保守を外注するときの費用相場はどのくらいですか?
提供範囲によって幅があります。サーバー・ドメイン管理と一次対応までなら月額数千円〜1万円台、CMS更新やバックアップ、軽微な修正まで含むと月額1万円台〜3万円台、コンテンツ制作やSEO改善まで入ると月額数万円〜十数万円という幅で語られることが多い領域です。金額より含まれる範囲で比較してください。
CMSの更新を止めておくとどうなりますか?
すぐに影響が出ないため放置されがちですが、時間が経つほど改ざんや情報漏えいのリスクが高まります。IPAの「安全なウェブサイトの運用管理に向けての20ヶ条」でも、ソフトウェアの更新やバックアップの管理、委託先との責任範囲の明確化が運用側の基本項目として示されています。
外注先を変える前に確認することはありますか?
ドメインとサーバーの名義、各種管理画面のIDが自社に紐づいているかを先に確認してください。制作会社名義のままだと引き継ぎで詰まります。契約書に解約時のデータ・アカウント引き渡しが明記されているかも併せて確認しておくと安全です。