「毎月の保守費用を払っているけれど、今年はまだ1回も修正を頼んでいない」「月1万円でも年間12万円。これは妥当なのか分からない」。ホームページの保守費用について、こうした相談をいただくことが増えました。
結論:「高い」の正体は金額ではなく、中身が書かれていないこと
先に結論を書きます。保守費用が高いと感じるとき、問題は金額の大きさではなく、契約書に「何に対して払っているのか」が書かれていないことです。対応範囲・対応時間・含まれる作業量・含まれないものの4点が書かれていなければ、その金額が高いのか安いのか、原理的に判断できません。比べる基準が存在しないからです。
もう一つ、金額の内訳として知っておきたい事実があります。保守費用のうち、ドメインとサーバーとSSLという実費の部分は、公開価格で足し上げても年間2〜5万円台に収まることが多いのです。たとえばレンタルサーバーのエックスサーバー「スタンダード」は12か月一括で月1,100円(税込・2026年10月2日時点)、ムームードメインの .com の更新料は年1,728円(同)、SSLはLet's Encryptなら無料。合計すると年15,000円前後です。月1万円=年12万円の保守費用のうち、実費はその1〜2割にすぎません。
では残りの8〜9割は何かというと、「何も起きなかった月」にも発生している、人の待機と点検の費用です。ここが納得できるかどうかが、保守契約を続けるか見直すかの分かれ目になります。この記事では、まず契約書の4点チェックで妥当性を判断できる状態を作り、費目を実費と手間に分解し、そのうえで「交渉して続ける/減額プランへ落とす/自社で引き取る/別の会社へ乗り換える」の4択をサイトの条件ごとに振り分けます。
なお、Mihataもホームページ制作と保守を受けている側の会社です。自社に都合のよい結論に寄せないよう、「自社で引き取る」「保守を切る」という選択肢も対等に書きます。他社の保守契約を貶める意図もありません。ここで渡したいのは評価ではなく、確かめ方と、聞き方です。
保守契約書の4点チェック:これが無いと金額は判断できない
手元の保守契約書、または見積書・申込書を開いてください。次の4点が書かれているかを確認します。1つでも空欄なら、金額の交渉より先にその空欄を埋める会話をするべきです。
① 対応範囲:何を直してくれるのか
「サイトの保守」という一語では範囲が決まりません。実務で揉めるのは、たとえば次のような線引きです。WordPress本体とプラグインの更新は入るか。更新で表示が崩れたときの修復は入るか。サーバーの障害切り分けは入るか。サイトが改ざんされたときの復旧は入るか。問い合わせフォームが届かなくなったときの調査は入るか。
とくに「障害の原因が自社の作ったものではなかったとき」の扱いは明記されていないことが多い部分です。プラグインの作者側の不具合、サーバー会社側の仕様変更、ブラウザの更新による表示差。これらは制作会社に責任がないぶん「範囲外」とされがちですが、お客様から見れば「サイトが壊れている」という同じ事象です。どちらが見るのかを決めておかないと、壊れた当日に初めて交渉が始まります。
② 対応時間:いつ連絡がつき、いつまでに着手するのか
保守費用の金額差が最も大きく出るのがここです。平日9時〜18時の受付で、着手は翌営業日、というのが一般的な水準です。これを「24時間365日・1時間以内に一次回答」にすると、当番を置かなければ守れないので金額は何倍にもなります。逆に、年に数回しか依頼しない使い方なら、翌営業日着手で十分なことがほとんどです。
確認したいのは3つ。受付の窓口(メールかチャットか電話か)、受付時間、そして一次回答までの目安時間です。「できるだけ早く対応します」は約束になっていないので、妥当性の判断材料になりません。なお、ここで厳しい条件を要求すると金額は上がります。自社に必要な水準を先に決めてから聞くほうが、交渉はまとまります。
③ 含まれる作業量:月に何件・何時間までか
「軽微な修正は無償」という書き方は、軽微の定義がないため機能しません。実務で使える書き方は、月あたりの件数か時間の上限です。「テキストの差し替えは月3件まで」「作業は月1時間まで、超過分は1時間あたり○円」のような形です。
この欄があると、2つのことが同時に分かります。1つは、自社の使い方に対して契約が大きすぎる(または小さすぎる)かどうか。年に2件しか依頼していないのに月3件分を買っているなら、減額プランの相談が成立します。もう1つは、超過したときの値段です。上限も超過単価も書かれていないと、依頼するたびに金額が分からないので、結果として依頼しなくなります。「高いのに使っていない」の原因が、実はこの不透明さにあることも珍しくありません。
④ 含まれないもの:ここが一番効く
4点のうち、金額の妥当性判断に最も効くのが「含まれないもの」です。よく外れているのは、デザインの変更、ページの新規追加、機能の追加開発、他社システムとの連携、SEOの施策、原稿の執筆、写真の撮影・加工、サーバーの移設、ドメインの管理代行。これらが含まれないのであれば、保守費用は「現状を維持するための費用」だと確定します。
この確定が重要なのは、「毎月払っているのだから、少しくらい作ってくれるはず」という期待と、「維持費なので作るのは別料金」という認識のズレが、不満の正体であることが多いからです。ズレていた場合、取る手は値下げ交渉ではありません。維持の契約を小さくして、作る分は都度見積にする、という組み替えです。
月額に何が含まれているかの読み解き方は、ホームページの月額費用の内訳を自分で調べる手順でさらに細かく追いかけています。請求書の名目から実費と手間を切り分ける作業を、1項目ずつ順に進める内容です。
保守費用を分解する:どれが実費で、どれが手間か
4点が確認できたら、次は費目の分解です。保守費用という1行に、性質のまったく違うものが混ざっています。性質が違うものを1つの金額で見ているから、妥当かどうかの感覚が持てません。
分け方は3つです。実費(他社に支払う原価で、定価が公開されている)、定期作業(毎月・毎年、誰かが手を動かす必要があるもの)、保険(何も起きなければ価値が目に見えないもの)。この3つに分けると、「使っていないのに高い」という感覚が、どの費目に対して起きているのかが特定できます。
費目 | 性質 | 金額の決まり方 | 使わない月の価値 |
|---|---|---|---|
ドメインの更新 | 実費 | 登録事業者の公開価格。年単位の固定 | 払わないと失効するので必須 |
レンタルサーバー | 実費 | プランごとの公開価格。契約期間で単価が変動 | 払わないと公開が止まるので必須 |
SSL証明書 | 実費(多くは無料) | サーバー付属の無料SSLなら0円。有料の企業認証型は年数万円 | 切れるとブラウザが警告を出すので必須 |
CMS・プラグイン・PHPのバージョン更新 | 定期作業 | 更新の頻度と、自動で済むか手動が要るかで変わる | 更新は毎月のように出るため、何もない月は少ない |
バックアップと復旧の備え | 保険 | 世代数・保管場所・復旧を誰がやるかで変わる | 事故が起きた月だけ価値が出る |
障害対応・問い合わせ窓口 | 保険 | 受付時間と一次回答の約束(SLA)で大きく変わる | 連絡しなかった月は価値が見えない |
原稿・画像の差し替え作業 | 定期作業 | 月あたりの件数・時間の上限と超過単価 | 依頼しなければ使い切らない(繰越の有無を確認) |
表示速度・検索順位の点検レポート | 定期作業 | レポートの頻度と深さ。自動生成か人の分析か | 読まないなら外せる候補 |
この表を自分の契約に当てはめると、「高い」と感じている対象が、たいてい下から3つめと4つめ(バックアップと障害窓口)に向いていることが分かります。年に1回しか修正を頼んでいない人にとって、使った実感があるのは差し替え作業の1件だけです。残りの11か月は、何も起きなかったので何も見えていません。
「年に1回しか頼んでいないのに高い」の正体は保険料
ここは正直に書きます。年1回しか依頼していないのに月額を払っているとき、払っているのは作業代ではなく、事故が起きたときに連絡できる相手がいる状態への費用です。これは保険と同じ構造なので、使わなかった年は損をしたように見えます。保険に不満が出るのはそういう性質によるもので、金額が不当だからとは限りません。
では、その保険は実際に何から守っているのか。2つあります。
脆弱性を放置したサイトが狙われる
情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威の4位に「システムの脆弱性を悪用した攻撃」が挙げられています(1位は「ランサム攻撃による被害」)。CMSで作られたサイトは、本体・プラグイン・PHPのいずれかに修正が出続けるため、更新を止めた時点から既知の穴を抱えたまま公開されている状態になります。
これが具体的に何を意味するかというと、「うちは小さい会社だから狙われない」が成り立たないということです。既知の脆弱性を探す動きは自動化されていて、サイトの規模や有名さを見てから来るわけではありません。改ざんされると、自社のサイトが知らないうちに別の攻撃の踏み台や誘導先として使われ、検索結果に警告が出ます。復旧費用は、平時の保守費用の数か月分から1年分になることが多いです。
この「更新を止めない」が実際にどれだけの手間なのかは、WordPressの公式仕様を見ると具体的に測れます。次の章で確認します。
壊れたときに戻せる状態かどうか
もう一つの保険はバックアップです。WordPress公式のバックアップの解説では、データベースとファイルの両方を対象にすること、そして「一般的には、最低3個のバックアップをそれぞれ別の場所、または別の形態に保存します」としています。さらに注意したいのが、同じページにあるこの指摘です。レンタルサーバー側のバックアップについて「そのバックアップからサイトのコピーをリクエストするには時間がかかるので、すばやい復元は無理です」と書かれています。
つまり「サーバーに自動バックアップが付いているから大丈夫」は、半分しか正しくありません。データは残っていても、そこから戻す作業を誰がやるのかが決まっていなければ、壊れた日に動ける人がいないという状態になります。保守費用のうち保険部分の実体は、この「戻せる人がいる」ことへの費用です。
実費はいくらか:ドメイン・サーバー・SSLの公開価格(2026年10月2日時点)
実費の部分は、どの会社も同じものを同じ場所から仕入れているので、公開価格で確かめられます。以下はいずれも各社の公式ページで確認した金額です。価格は改定されるため、必ず最新の公式ページで見てください。
ドメインの更新料
ムームードメインの公開価格(更新料・年額・税込、サービス維持調整費を含む/2026年10月2日時点)は次のとおりです。
ドメイン | 取得(初年度) | 更新(年額) | 備考 |
|---|---|---|---|
.com | 750円 | 1,728円 | 複数年契約が可能 |
.net | 1,848円 | 1,848円 | 複数年契約が可能 |
.jp | 990円 | 3,344円 | 1年契約のみ |
.co.jp | 900円 | 4,378円 | 1年契約のみ |
ここで押さえておきたいのは取得と更新の金額差です。.com は初年度750円でも更新は1,728円、.jp は初年度990円でも更新は3,344円になります。「ドメイン代」として聞いた金額が初年度の価格だと、2年目以降の実費と合わなくなります。請求書の金額を照合するときは、必ず更新料の列と比べてください。
レンタルサーバー
エックスサーバーの公開価格(税込・2026年10月2日時点)は、初期費用0円で、12か月一括払いの場合「スタンダード」が月1,100円、「プレミアム」が月2,200円、「ビジネス」が月4,400円です。36か月一括にすると「スタンダード」は月990円になります。年額に直すと、スタンダードの12か月一括で13,200円です。
同社の機能一覧では、無料独自SSLが「無料・無制限」で使えること、自動バックアップがWeb・メールデータとMySQLデータベースのそれぞれ「過去14日分」保持されること、メールアカウントが無制限に作れることが明記されています。つまり中小企業の一般的なコーポレートサイトであれば、サーバーとSSLとバックアップの基礎部分は、この月1,100円の中に入っていることになります。
ロリポップは初期費用0円で「ライト」が月330円から、「ハイスピード」が月660円からと公開されています(同時点)。さくらのレンタルサーバも初期費用無料で、無料SSL(Let's Encrypt)とバックアップ&ステージング機能が提供プランに含まれると記載されています(金額は同社の料金シミュレーションで算出する形式のため、ここでは数値を挙げません)。
SSL証明書
Let's Encryptは公式のFAQに「We do not charge a fee for our certificates.」(証明書に料金はかからない)と明記している非営利の認証局です。証明書の有効期間は既定で90日で、公式のFAQでは「90日の証明書は60日ごとに更新することを推奨」としています。6日間だけ有効な短期証明書も選択できます。
ここから分かるのは2つです。1つは、SSLそれ自体の実費は多くの場合0円だということ。もう1つは、90日で切れるものを自動で更新し続ける仕組みが必要だということです。主要なレンタルサーバーはこの自動更新を内蔵しているので手間はかかりませんが、独自に構築したサーバーで動かしている場合は、更新の仕組みを誰が面倒を見るのかという話になります。保守費用の中に「SSL管理費」として年1〜2万円が立っている場合、どちらの前提なのかを聞く価値があります。
実費の合計を出してみる
一般的な構成(.com ドメイン+エックスサーバー スタンダード 12か月一括+無料SSL)で足し上げると、年間14,928円です(1,728円+13,200円+0円/2026年10月2日時点の公開価格)。.co.jp を使っている場合は 4,378円+13,200円で年間17,578円になります。
この数字を手元の保守費用と比べてください。月1万円=年12万円を払っているなら、実費は約1.5万円、残り約10.5万円が定期作業と保険の費用です。ここで「10.5万円は高い」と即断しないのが大事なところで、月あたりに直すと8,750円です。何を含むかによって、妥当にも割高にもなります。判断するために、次は「含まれる定期作業」が実際にどれだけの手間なのかを公式仕様で測ります。
更新作業は本当に自動で済むのか:WordPress公式の仕様で測る
「WordPressは自動更新されるのだから、更新作業で月額を取るのはおかしい」という声を聞きます。これは半分当たっていて、半分外れています。公式ドキュメントの記述で切り分けます。
自動更新の既定の範囲は、思っているより狭い
WordPress公式の自動更新の解説には、こう書かれています。「デフォルトでは、自動更新はコアのマイナー更新及び翻訳ファイルの更新に対してのみ適用されます。」そして「プラグインとテーマの自動更新はデフォルトでは無効化されています。」
つまり既定で自動なのは、セキュリティとメンテナンスのためのマイナーリリースと、翻訳ファイルだけです。メジャーリリース(バージョンの数字が大きく上がるもの)、プラグイン、テーマは、初期状態では自動更新されません。一般的なコーポレートサイトでもプラグインは10〜20個入っていることが多く、それぞれが独自の頻度で更新を出します。ここが手動で残っている以上、誰かが毎月ログインして更新を当てる必要があります。
なお、管理画面からプラグインの自動更新を有効にすることはできます。ではそれで保守が不要になるかというと、そうなりません。理由は次の点です。
自動更新にすると、壊れたことに気づくのが遅れる
自動更新を有効にすると、更新そのものは人手なしで進みます。問題は、更新によってテーマやプラグインの相性が崩れたとき、誰も見ていない時間に壊れることです。WordPress公式の更新手順のページでも、冒頭で「始める前にサイトをバックアップすることをおすすめします。そうすれば、何か問題が発生しても簡単にサイトを元に戻せるからです。」と案内しており、手動更新の手順では「すべてのプラグインを停止します。」→更新→「ログインしてプラグインを再有効化しましょう。」という順序を示しています。更新が止まった場合の対処として、FTPで WordPress ディレクトリから .maintenance ファイルを削除する手順まで書かれています。
この手順が公式に載っているという事実が、そのまま答えになっています。更新は「当てる」作業ではなく、「当てて、確認して、崩れていたら戻す」作業です。保守費用のうち定期作業の部分は、この確認と戻しに対して払っているものです。自動更新をオンにして放置する運用は、手間は減りますが、崩れを見つけるのが「お客様からの問い合わせ」になるという交換をしています。
PHPのバージョンには期限がある
もう一つ、更新作業に期限を持ち込むのがPHPです。PHP公式のサポート状況ページ(2026年10月2日時点)では、PHP 8.2 はアクティブサポートが2024年12月31日に終了し、セキュリティ修正のみの期間が2026年12月31日で終了します。PHP 8.3 はセキュリティ修正のみで2027年12月31日まで、PHP 8.4 はアクティブサポートが2026年12月31日まで、PHP 8.5 は2027年12月31日までです。
そしてWordPress公式の動作要件では、推奨環境が「PHP version 8.3 or greater」、データベースは「MariaDB version 10.11 or greater OR MySQL version 8.0 or greater」、加えて「HTTPS support」が挙げられています。PHP 7.4以降とMySQL 5.5.5以降でも動作はするものの、それらは公式のサポート終了に達しており脆弱性にさらされる可能性があると注意されています。
これが意味するのは、サイトを何も変えなくても、数年ごとにPHPを上げる作業が必ず発生するということです。PHPを上げると古いプラグインやテーマの関数が動かなくなることがあり、ここは自動更新では処理されません。保守契約の「含まれるもの」にPHPのバージョン移行が入っているかどうかは、金額を比べるときに効く差です。入っていなければ、数年後に別途数万円から十数万円の見積が出てきます。
下げる・やめる前に確かめる4つ
ここからが本題です。保守を減額する、あるいは解約する前に、必ず確認してほしいことが4つあります。順番にも意味があります。先に確認せずに解約すると、戻せなくなるものがあるからです。
① 更新が自動で済む構成か、手動が必要な構成か
まず、自分のサイトがWordPressなどのCMSで動いているのか、それともHTMLの静的なサイトなのかを確定します。判定の手がかりは、サイトのURLの末尾に /wp-login.php を付けてログイン画面が出るか、ページのソースに wp-content という文字列が含まれるかです。
静的サイト(更新する仕組みが入っていない、HTMLだけのサイト)なら、更新作業は構造的にほとんど発生しません。この場合、保守費用の定期作業部分はかなり小さくできます。CMSが入っている場合は、プラグインの数と、テーマが市販品か独自制作かを確認します。独自制作のテーマは、作った会社以外が触ると当たりを付けるのに時間がかかるため、乗り換え時の見積が高くなりやすい部分です。
② バックアップがどこに、何世代あるか
これを確認せずに解約すると、復旧手段がゼロになることがあります。確認するのは3つです。バックアップの保存先(サーバー会社の自動バックアップか、プラグインか、制作会社の環境か)、世代数(何日前まで戻せるか)、そして復旧の操作を自社でできるかです。
前述のとおりエックスサーバーの自動バックアップは過去14日分を保持しますが、WordPress公式が指摘するように、サーバー会社のバックアップからの復元は時間がかかります。制作会社の環境にだけバックアップがある場合は、解約と同時に消える可能性があります。解約の相談をする前に、最新のバックアップ一式(データベースのダンプとファイル一式)を自社に受け取っておくのが確実です。これは契約が続いているうちなら、たいていの会社が応じてくれます。
③ メールが同じサーバーに同居していないか
解約の事故で実務上いちばん多いのがこれです。独自ドメインのメール(info@自社ドメイン など)は、ホームページと同じレンタルサーバーで動いていることが珍しくありません。エックスサーバーの機能一覧でもメールアカウントは無制限に作成でき、自動バックアップの対象に「Web・メールデータ」と並記されています。つまり、Webとメールが同じ契約の上に乗っている構成が標準的なのです。
この構成でサーバー契約を止めると、サイトが消えるのと同時に、会社のメールが受信できなくなります。しかも過去のメールがサーバー側にしか無い設定(IMAPで端末にダウンロードしていない場合)だと、過去のやり取りも一緒に失われます。見積のやり取りや契約の記録がメールにしかない会社にとっては、サイトが止まるよりはるかに重い事故です。
確認方法は、メールソフトのアカウント設定を開いて、受信サーバー名を見ることです。そこに表示されるホスト名が、サイトを置いているサーバー会社のものであれば同居しています。同居していた場合、移行の順番は「メールを先に移す、サイトは後」です。逆にすると、ドメインの設定(DNS)を切り替えた瞬間にメールが止まります。
④ ドメインの名義が誰になっているか
ドメインが制作会社の名義で登録されていると、自社では移管も更新もできません。確認は whois 検索(JPRSや各レジストラの検索ページ)で登録者名を見ます。
属性型のJPドメインには固有の制約もあります。JPRSの説明では、.co.jp は「一つの組織が登録できるドメイン名は一つだけです。」とされています(汎用JPドメイン名である .jp は「個人でも組織でも、日本に住所があれば誰でも登録できる」「登録できるドメイン名の数に制限はありません」とされています)。.co.jp を制作会社名義で取られているケースは本来の登録要件からは想定しづらいものですが、管理の代行(登録者は自社、管理連絡先は制作会社)になっていると、更新の通知が自社に届かないという形で問題が出ます。更新の通知先が誰のメールアドレスになっているかまで確認してください。
ドメインが失効すると、サイトもメールも同時に止まり、第三者に取得されると取り戻せません。名義と更新通知先の確認は、保守の見直し以前に、今日やっておく価値がある作業です。制作会社と連絡が取れなくなった場合の取り戻し手順は、制作会社と連絡が取れない時にサイトとドメインを取り戻す手順にまとめています。
4択の判断表:交渉/減額/自社で引き取る/乗り換える
4点チェックと4つの確認が終わったら、進む道は4つに絞られます。どれが向いているかは、サイトの種類・更新頻度・社内にできる人がいるかの3条件で決まります。
選択肢 | 向いている条件 | 先に用意するもの | 費用の動き方 | 主なリスク |
|---|---|---|---|---|
交渉して続ける | CMSサイト/更新は年数回/社内に触れる人がいない。4点チェックで空欄があっただけで、金額自体は相場内 | 4点の明文化の依頼文。過去1年の依頼実績(件数と内容) | 金額は変わらないことも多いが、含まれるものが確定して納得感が出る | 関係が悪くなるのを恐れて曖昧なまま終わる |
減額プランへ落とす | CMSサイト/依頼は年1〜3件/即時対応は不要(翌営業日で足りる) | 必要なSLAの水準(受付時間・着手の目安)と、月あたりの作業上限の希望 | 更新と監視だけ残して作業枠を外す形。月額が下がり、作業は都度見積に移る | 都度見積が高く設定され、年間では変わらない |
自社で引き取る | 静的サイト、またはプラグインが少なく市販テーマのCMSサイト/社内にサーバー管理を学べる担当者がいて、その時間が確保されている | バックアップ一式の受領。サーバーとドメインの管理画面のID。復旧手順のメモ | 実費(年1.5〜2万円前後)だけになる。代わりに担当者の時間が毎月かかる | 担当者が辞めると誰も分からなくなる。更新が止まったまま年単位で放置される |
別の会社へ乗り換える | 独自テーマで依頼が通らない/連絡が取りにくい/機能追加の予定があり、作る力のある相手に変えたい | 現契約の解約予告期間の確認。ドメイン名義。バックアップ一式。メールの同居状況 | 初期の引き継ぎ費用(数万円〜)が発生し、以後の月額は新しい条件になる | 引き継ぎの手間を読み違えて、移行途中でサイトやメールが止まる |
経験上、いちばん多く当てはまるのは「減額プランへ落とす」です。年に1〜3件しか依頼していない会社が、月3件分の作業枠と即時対応を含むプランを買っていることが多いからです。この場合、更新と監視とバックアップだけを残し、作業は都度見積にする組み替えが成立します。
逆に、「自社で引き取る」を選ぶ条件はかなり限定的です。静的サイトなら現実的ですが、CMSサイトを自社で維持する場合、更新を当てて崩れを確認する作業が毎月発生します。担当者の時間を月1時間と見ても、年12時間です。その人の時間単価を掛けたときに、保守費用より安くなるかを計算してから決めてください。自社と外注の分担をどう切るかは、ホームページ運用を自社でやる場合と外注する場合の分担と費用相場で具体的な線引きを整理しています。
私たちもホームページの制作と保守を受けている側なので、こう書くのは少し気が引けるのですが、Mihataでも「更新と見張りだけを小さく持つ」形の保守から、作る部分を都度見積にする形までお引き受けしています。いまの契約を続けるべきか見直すべきかの判断だけでも構いませんので、必要なときに思い出していただければ十分です。
制作会社への聞き方:そのまま使える質問の形
交渉というと構えてしまいますが、やることは「書かれていないことを書いてもらう」依頼です。値下げを求める言い方よりも、内容を確定させる言い方のほうが話が進みます。金額が妥当だと分かれば納得できますし、使い方に対して大きすぎると分かれば、相手からプランの提案が出てきます。
依頼文の骨組み
次の形で送ると、相手も回答しやすくなります。
いつもお世話になっております。保守契約について、社内で予算の確認をしており、内容を整理させていただきたくご連絡しました。恐れ入りますが、下記4点について現在の契約内容をお教えいただけますでしょうか。
1. 保守に含まれる対応の範囲(CMSとプラグインの更新、更新で表示が崩れた場合の修復、改ざん時の復旧、フォームの不具合調査が含まれるかどうか)
2. ご連絡の受付時間と、一次回答までの目安
3. 月に含まれる作業の上限(件数または時間)と、超過した場合の単価
4. 保守に含まれないもの
あわせて、当社の直近1年の依頼実績に対して、より小さいプランのご提案が可能かどうかもお伺いできますと助かります。
この文のポイントは3つです。値下げではなく「整理」として聞いていること。4点を具体的な例まで書いて、抽象的な回答を防いでいること。そして最後に減額プランの可否を自分から聞いていることです。相手にとっても、使っていない枠を抱えたまま不満を持たれるより、小さいプランで続いたほうが良いことが多いので、ここは意外とすぐ通ります。
あわせて聞いておくと後で効く2つ
上の4点に加えて、次の2つを聞いておくと、将来どの選択肢を取る場合でも手が早くなります。1つは「バックアップの保存先と世代数、および最新のバックアップ一式を当社でも保管したいので、受け取る方法」。もう1つは「ドメインとサーバーの契約名義、および更新通知の送付先アドレス」です。
どちらも、今の契約を続ける前提でも聞いて問題のない内容です。解約を決めてから聞くと身構えられますが、平時に聞けば単なる管理情報の確認として処理されます。これを平時に押さえておくことが、いざ乗り換えるときの交渉力になります。
複数社から見積を取って比べる段になったら、金額の総額ではなく内訳の粒度で比べてください。比較の着眼点はホームページ制作会社の見積を比較するときの着眼点に整理しています。
自社で引き取る場合に、実際にかかる手間と費用
「保守を切って自社でやる」を選べる条件と、そのとき本当に発生することを書きます。Mihataは保守を受ける側ですが、ここは正直に書く価値があると思っています。条件が合えば、自社で持つのは合理的な選択です。
静的サイトなら、現実的に成立する
HTMLだけで作られたサイト(管理画面が無く、更新は制作会社に依頼する形のサイト)は、更新すべきソフトウェアが載っていません。この場合、継続して必要なのは、サーバーの契約とドメインの更新、SSLの自動更新が効いていることの確認だけです。実費は前述のとおり年15,000〜18,000円程度に収まります。
自社で持つ場合の作業は、年に1回、ドメインの更新が通ったかとサーバーの支払いが通ったかを確認する程度です。注意点は、クレジットカードの有効期限切れで更新に失敗する事故で、これは実際によく起きます。更新通知のメールが届くアドレスを、退職した個人のアドレスではなく、複数人が見る代表アドレスにしておいてください。
CMSサイトを自社で持つと、毎月の作業が残る
WordPressなどのCMSが載っている場合、自社で持つと次の作業が毎月発生します。管理画面にログインして本体・プラグイン・テーマの更新を当てる。当てた後に、トップページ・フォーム・一覧ページの表示を目で確認する。崩れていたらバックアップから戻す。年に一度はPHPのバージョンを確認して、サポート終了が近ければ上げる判断をする。
慣れていれば月15〜30分の作業ですが、「崩れたときに戻せる」までを含めると、覚えることが一段増えます。具体的には、バックアップの取り方(データベースとファイルの両方)、戻し方、そしてサイトが表示されなくなったときにFTPでファイルを操作する方法です。WordPress公式が更新失敗時の対処としてFTPでの .maintenance ファイル削除を案内しているのは、まさにこの場面です。
判断の目安を1つ挙げます。「この担当者が来月いなくなっても、別の人が同じことをできるか」に、はいと答えられるなら自社で持てます。手順書が無く、1人の頭の中にしかない状態なら、その人が離れた時点で更新が止まり、数年後に脆弱性を抱えた古いサイトが残ります。この状態からの復旧は、保守を続けていた場合の費用を上回ることが多いです。
中間の形:更新と監視だけを外に出す
実務でよく収まるのが、この中間です。原稿や画像の差し替えは自社で行い(CMSが入っていれば管理画面からできます)、更新作業と、崩れたときの復旧の責任だけを外部に残す形です。作業枠が無くなるぶん月額は下がり、万一のときに連絡できる相手は残ります。
この形にするときに決めておくべきことは1つだけで、「自社が管理画面で触った結果として崩れた場合も、復旧は含まれるのか」です。ここを決めずに始めると、崩れた日に責任の所在から話が始まります。多くの場合は「含まれるが、原因調査の時間は超過作業として扱う」あたりが落ち着く線です。Mihataがお引き受けする場合の考え方はホームページ制作・運用のサービス内容にまとめてあります。
同じように「保守の月額で何を払っているか」を切り分ける考え方は、GAS(Google Apps Script)など業務自動化ツールの保守費用でも使えます。詳しくはGASの保守運用費は月額いくら?3ケース試算と算式で出すにまとめています。
乗り換える場合の段取りと、やってはいけない順番
乗り換えを選ぶ場合、順番を間違えるとサイトかメールが止まります。安全な順番は次のとおりです。
- 現契約の解約予告期間を確認する。「1か月前までに書面で」などの条項があります。これを見ずに新しい会社と契約すると、二重払いの期間が出ます。
- バックアップ一式を受け取る。データベースのダンプとファイル一式です。解約を伝える前に受け取っておきます。
- ドメインの名義と管理画面のID・パスワードを確認する。名義が制作会社なら、移管できる状態にしてもらうところから始まります。
- メールの同居状況を確認する。同居していれば、メールの移行計画を先に立てます。
- 新しいサーバーにサイトを複製して、動作を確認する。この時点では、まだDNSを切り替えません。
- メールを先に移す。過去のメールの引き継ぎを含めて完了させます。
- DNSを切り替える。切り替えは浸透に時間がかかるので、営業時間外に行い、翌営業日まで旧サーバーを残します。
- 旧契約を解約する。新環境で1〜2週間問題がないことを確認してからにします。
やってはいけないのは、先に解約を伝えてしまうことです。解約後はバックアップの提供も管理情報の確認も、好意に頼ることになります。もう1つは、DNSの切り替えをメールの移行より先にやることです。これをやると、切り替えた瞬間から新しいサーバーにメールが届き始め、旧サーバーに残った未読が取り出せなくなります。
相場をどう見るか:単一の数字で比べない
保守費用の相場を「月額○円」という1つの数字で示す記事は多いのですが、ここでは幅でしか書きません。理由は、含まれる内容が各社で違いすぎて、金額だけを並べると比較にならないからです。月3,000円で更新だけを当てる契約と、月3万円で即日対応と月5件の作業枠を持つ契約は、どちらも「保守費用」と呼ばれます。
比べるべき軸は3つです。
- 実費が含まれているか。ドメインとサーバーが月額に含まれているのか、別請求なのか。含まれている場合、前述の公開価格を引いた残りが、実際の作業と保険の費用です。
- SLAの水準。平日日中の受付で翌営業日着手なのか、24時間の即時対応なのか。ここで数倍の差が出ます。
- 作業枠の有無と大きさ。月何件・何時間まで含まれ、超過はいくらか。枠が無い契約は、監視と更新だけの契約です。
この3軸をそろえてから、2〜3社の金額を並べてください。そろえた結果、各社の金額が近い値に収束することがよくあります。その場合、元の契約は高かったのではなく、自社の使い方に対して大きかった、ということになります。
そして、どうしても3軸がそろわない(相手が答えてくれない)場合は、金額の比較は諦めて、「内訳を書いてくれる会社を選ぶ」という基準に切り替えるのが現実的です。内訳を書けない契約は、1年後も同じ疑問を抱えたままになります。
よくある誤解を3つ
「何もしていないのに毎月取られている」
CMSサイトであれば、本体やプラグインの更新が毎月のように出ているので、何も起きていない月はほとんどありません。ただし「更新を当てているのに、その記録が共有されていない」ことは非常によくあります。これは作業していないのではなく、報告していないという問題です。月次の作業報告(当てた更新の一覧、表示確認の結果、バックアップの取得状況)を出してもらうよう頼むと、納得感は大きく変わります。
「サーバーに自動バックアップがあるから保守は不要」
データが残っていることと、戻せることは別です。WordPress公式が「そのバックアップからサイトのコピーをリクエストするには時間がかかるので、すばやい復元は無理です」と書いているとおりで、戻す作業を誰がやるのかが決まっていなければ、バックアップは備えとして完成していません。自社でできるなら不要、できないなら誰かに頼む必要がある、という単純な話です。
「自動更新にしておけば安全」
公式の既定では、自動更新の対象はコアのマイナー更新と翻訳ファイルだけで、プラグインとテーマは無効です。手動で有効にすることはできますが、その場合は更新で崩れたことを誰かが見つける仕組みが必要になります。自動更新は作業を減らす手段であって、確認を無くす手段ではありません。
まとめ:金額を動かす前に、中身を書かせる
保守費用が高いと感じたときの進め方を、もう一度並べます。
- 契約書の4点を確認する。対応範囲・対応時間・含まれる作業量・含まれないもの。空欄があれば、金額の話より先に埋めてもらう。
- 実費を計算する。ドメイン・サーバー・SSLの公開価格を足す。一般的な構成で年15,000〜18,000円程度(2026年10月2日時点の公開価格)。
- 残りが定期作業と保険であることを確認する。年に数回しか依頼していないなら、不満の対象は保険部分である可能性が高い。
- 4つを確かめる。更新は自動か手動か、バックアップの所在と世代数、メールの同居、ドメインの名義と更新通知先。
- 4択から選ぶ。交渉して続ける/減額プランへ落とす/自社で引き取る/乗り換える。多くの場合は減額プランが収まる。
最後に一つだけ。この記事で扱っていないのは「あなたの契約が妥当かどうか」という結論です。それは契約書の4点が埋まった時点で、ご自身で判断できます。判断できる状態を作ることが、保守費用の見直しの本体です。
契約書を見ても判断に迷う、または減額の相談の仕方に自信がないという場合は、お気軽にご相談ください。他社との契約についてのご相談でも構いません。
よくある質問
ホームページの保守費用が高いかどうかは、何を見れば判断できますか。
契約書に、①対応範囲 ②対応時間と一次回答の目安 ③月に含まれる作業量(件数または時間)と超過単価 ④含まれないもの の4点が書かれているかを見てください。この4点が書かれていなければ、金額の妥当性は原理的に判断できません。書かれていれば、自社の使い方(年に何件依頼しているか、即時対応が必要か)と照らして大きすぎるかどうかが分かります。
保守費用のうち、ドメインやサーバーの実費はいくらくらいですか。
2026年10月2日時点の公開価格で計算すると、.comドメインの更新が年1,728円(ムームードメイン)、エックスサーバー「スタンダード」の12か月一括が月1,100円=年13,200円、SSLはLet's Encryptなどの無料SSLなら0円です。合計すると年間約14,900円になります。.co.jpを使っている場合は更新料が年4,378円なので約17,600円です。価格は改定されるため、必ず各社の公式ページで最新の金額を確認してください。
年に1回しか修正を頼んでいないのに月額を払うのは無駄ではないですか。
払っているものが作業代ではなく、更新作業と、事故が起きたときに連絡できる相手がいる状態への費用(保険に近い性質の費用)だからです。WordPressは既定ではコアのマイナー更新と翻訳ファイルだけが自動更新で、プラグインとテーマは自動更新が無効なので、更新を当てる作業自体は毎月のように発生します。ただし依頼が年1〜3件なら、作業枠を外して更新と監視だけを残す減額プランに組み替えられることが多いので、まず現在のプランより小さいものがあるかを聞いてみてください。
保守契約を解約する前に、必ず確認すべきことは何ですか。
4つあります。1つめは更新が自動で済む構成か手動が必要な構成か。2つめはバックアップがどこに何世代あり、復旧の操作を自社でできるか。3つめは独自ドメインのメールがホームページと同じサーバーに同居していないか(同居しているとサーバー解約でメールが止まります)。4つめはドメインの登録名義と更新通知の送付先です。とくにバックアップ一式の受領と管理情報の確認は、解約を伝える前に済ませてください。
保守を自社で引き取るのは現実的ですか。
HTMLだけの静的サイトであれば現実的です。更新すべきソフトウェアが載っていないため、年1回ドメインとサーバーの支払いが通ったかを確認する程度で済みます。一方でWordPressなどのCMSが載っている場合は、毎月の更新作業と表示確認、崩れたときの復旧、数年ごとのPHPバージョン移行が必要になります。判断の目安は「担当者が来月いなくなっても別の人が同じことをできるか」で、手順書がなく1人の頭の中にしかない状態なら、外部に残したほうが安全です。