結論:解約でもめるのは料金ではなく「持ち出せるか」
AIブログの運用代行を解約するときにトラブルになるのは、多くの場合、最終月の請求額ではありません。これまで作った記事・データ・権限を、自社の手元に残せるかどうかです。
記事がツール側のCMSに保存されていて書き出せない。画像の利用許諾が契約終了と同時に切れる。Search Console の所有権が代行会社のままで、解約後に自社が数値を見られない。こうした事態は、どれも解約を申し出た日に初めて発覚します。契約時には誰も出口の話をしないからです。
この記事では、AIブログ運用代行の解約・引き継ぎで実際に詰まる7項目を挙げ、それぞれ契約書のどの条項を見ればよいかを対応させました。契約前のチェックリストとしても、いま解約を検討している段階の確認表としても使える形にしています。月額の妥当性そのものはAIブログ運用代行の月額相場|料金の内訳と契約前チェック10項目で扱っているので、この記事は出口の話に絞ります。
解約・引き継ぎで詰まる7項目
先に一覧です。左から「項目」「よくある実態」「契約書で見る条項」「解約前にやること」です。
項目 | よくある実態 | 契約書で見る条項 | 解約前にやること |
|---|---|---|---|
① 記事の原稿データ | 代行側のCMS・ツール内にしかない | 納品物の定義/契約終了時の措置 | HTMLまたはMarkdownでの一括書き出しを依頼 |
② 記事の著作権 | 「利用許諾」止まりで譲渡されていない | 知的財産権の帰属(27条・28条の記載有無) | 譲渡か許諾かを条文で確認 |
③ ドメイン・サーバー | 代行会社名義で登録されている | ドメイン名義/再委託/契約終了時の措置 | 登録者名義を確認し、移管手順を先に握る |
④ GA4・Search Console | 代行会社のアカウントが所有者・管理者 | アカウント管理/貸与物の返還 | 自社アカウントを管理者・所有者として先に追加 |
⑤ 画像・素材の利用許諾 | 代行会社の素材サイト契約に紐づく | 第三者の権利・素材の利用条件 | 素材の出所一覧をもらい、継続可否を確認 |
⑥ CMS・ツール依存 | 専用CMSからの退去で記事が消える | システム利用条件/データの返還・消去 | 自社サイト側に実体があるかを確認 |
⑦ 解約予告と最終月の成果物 | 予告期間が長く、最終月の納品が曖昧 | 契約期間・更新/解約予告/中途解約金 | 予告日と最終納品日をカレンダーに置く |
以下、それぞれ何が起きるのかを具体的に見ていきます。
① 記事の原稿データ:公開されている=手元にある、ではない
いちばん多い誤解です。自社サイトに記事が公開されていても、その原稿の元データが自社の管理下にあるとは限りません。代行会社が独自のCMSや記事管理ツールで原稿を作り、APIで自社サイトへ流し込んでいる場合、契約が終わると流し込みが止まるだけでなく、原稿の履歴・構成案・キーワード設計のシートごと見られなくなることがあります。
確認すべきは「納品物の定義」です。納品物が「公開された記事」と書かれているのか、「記事本文データ(HTML等)一式」と書かれているのかで、解約時に受け取れるものが変わります。前者だと、代行側は公開作業までを納品と考えているので、データの書き出しは契約上の義務ではありません。
解約前にやるべきことは1つで、形式を指定して一括書き出しを依頼することです。PDFやスクリーンショットではなく、そのまま別のCMSに入れられる形式(HTML/Markdown)で受け取ります。画像も本文とは別に、元ファイルでまとめてもらってください。
② 記事の著作権:譲渡と利用許諾はまったく別のもの
「うちが料金を払ったのだから著作権は自社にある」とは限りません。著作権が自社に移るのは、契約書で譲渡すると定めた場合です。「本件成果物を甲が自由に利用できる」という書き方は、譲渡ではなく利用許諾にすぎないことがあります。
さらに条文レベルで注意が要る点が2つあります。
- 翻案権などの扱い:著作権法第61条第2項は「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する」と定めています。第27条は翻訳・翻案の権利です。つまり「著作権のすべてを譲渡する」とだけ書いてあると、記事を後から書き換える権利が相手に残っていると推定されうるということです。「第27条および第28条の権利を含む」と明記されているかを見てください。
- 著作者人格権:同法第59条により「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない」と定められています。譲渡できないので、実務では「著作者人格権を行使しない」旨の合意を契約書に置くのが一般的です。
AIが下書きした記事についても、著作権の話がなくなるわけではありません。文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」は、AI生成物が著作物に該当するかは「生成に当たってAI利用者が有していた『創作意図』とAI利用者の『創作的寄与』の程度によって判断される」としています。人が構成を組み、加筆し、事実確認をしている記事ほど著作物として扱いやすくなり、その分だけ帰属の取り決めが効いてくる、という関係です。
③ ドメインとサーバー:名義が誰かで、出ていけるかが決まる
代行会社がサイトの立ち上げから担当した場合、ドメインが代行会社名義で登録されていることがあります。この状態だと、解約後にサイトを別の会社へ引き継ぐにも、自社で運用するにも、まず名義変更と移管が必要になります。
移管には時間の制約もあります。.com や .net などの gTLD は ICANN の移管ポリシーが適用され、登録から60日以内、移管から60日以内、そして登録者情報の変更後60日以内は、レジストラ間の移管が制限されうると定められています。移管には AuthInfo コード(移管認証コード)も必要です。「解約したのでドメインもすぐ移してください」と当日に言っても、制度上そう動かないことがあります。なお .jp ドメインは ICANN の移管ポリシーではなく国内の登録ルールに従うため、手順と所要日数は登録事業者に確認してください。
確認するのは、登録者(Registrant)が自社になっているか、管理用のアカウント情報を受け取れるか、更新料を誰が払っているか、の3点です。
④ GA4・Search Console:権限は「あとで移す」が一番効かない
解約後に困る率がとても高いのがここです。理由は、権限の付与も削除もその階層で管理権限を持っている側にしかできないからです。
Google アナリティクス(GA4)では、ユーザーの追加・削除と役割の割り当てができるのは管理者の役割を持つユーザーです。編集者にもできません。代行会社のアカウントだけが管理者になっている状態で関係が切れると、自社は自分を管理者として追加することすらできません。
Search Console はさらに構造的です。公式ヘルプによれば、プロパティのユーザーを追加・削除できるのは所有者のみです。そして確認済み所有者を外すには、その所有者の確認に使われた確認トークン(HTMLファイル、HTMLタグ、DNSレコード、アナリティクスとの紐づけなど)を削除する必要があります。DNSレコードで所有権を取っている場合、DNSを触れる人が誰かという話に戻ってきます。
やることは単純で、契約中の平常時に、自社のGoogleアカウントを GA4 の管理者、Search Console の確認済み所有者として登録しておくことです。解約の話が出てからでは遅い、というより、相手の協力なしには実行できません。
⑤ 画像・素材の利用許諾:契約終了と同時に切れることがある
記事に入っている写真やイラストが、代行会社が契約しているストックフォトのサブスクリプションから取得したものである場合、その利用許諾は代行会社に対して与えられています。制作物に組み込んで納品することが認められている素材もあれば、再配布や第三者への譲渡が禁じられている素材もあり、条件は提供元ごとに違います。
解約後も記事をそのまま公開し続けたいなら、素材の出所一覧(提供元・素材ID・許諾範囲)をもらってください。継続できないものが混ざっていた場合、差し替えの工数が想定外に発生します。AI生成画像を使っている場合も、生成に使ったサービスの利用規約で商用利用と権利の帰属がどうなっているかを確認しておくのが安全です。
⑥ CMS・ツール依存:出られない構造になっていないか
「記事はツール側のCMSに閉じ込められて出せない」というのは、悪意があって起きるとは限りません。サービスの構造として、記事の実体が代行会社のドメイン配下にあり、自社サイトにはサブドメインや iframe で見せているだけ、という設計はありえます。この場合、解約するとURLごと消えるため、蓄積したSEO資産がまるごと失われます。
見分け方は簡単です。記事のURLが自社ドメイン配下か、ページのソースに自社サイト側の本文HTMLが入っているか、この2つを見ます。判断に迷う場合は、契約前に「解約したらこのURLはどうなりますか」と一文で聞くのが確実です。
⑦ 解約予告と最終月の成果物:日付を先に決めておく
自動更新の契約では、更新日の1〜3か月前までに書面で通知する、という予告期間が置かれていることがよくあります。気づいたときには次の1年が始まっていた、というのはこれが原因です。
あわせて詰めておきたいのが最終月の扱いです。最終月に着手済みの記事はどこまで納品されるのか、公開まで行うのか、下書きのまま渡されるのか。ここが書かれていない契約は多く、実際の揉めどころになります。契約期間・更新条件・解約予告期限・中途解約時の精算の4点を、契約書から抜き出してカレンダーに置いておくだけで、かなり防げます。
契約書のどこを見るか(読み替え表)
契約書の条項名は会社ごとに違いますが、見るべき中身は共通です。以下の言葉を目次から探してください。
探す条項名の例 | そこで確認すること |
|---|---|
成果物/納品物の定義 | 受け取れるのは「公開された記事」か「データ一式」か |
知的財産権の帰属 | 譲渡か利用許諾か。27条・28条の明記、著作者人格権不行使の有無 |
契約終了後の措置 | データの返還・引き渡し・消去のどれを行うか、期限はいつまでか |
秘密保持 | 返還・消去の対象に原稿や分析データが含まれるか |
アカウント・貸与物 | 誰の名義で何を作り、終了時に何を返すか |
再委託 | 実際に書いているのが誰か、その先まで権利が通っているか |
契約期間・更新・解約 | 予告期限、中途解約の可否と精算、最低契約期間 |
「契約終了後の措置」が空白の契約書は珍しくありません。空白なら、そこに1行足してもらうだけで出口が確保できます。解約時にデータを渡してもらうより、契約時に1行入れるほうが圧倒的に簡単です。
これから代行会社を選ぶ段階であれば、選定時に見る項目をAI記事作成代行の選び方|発注前チェックリストにまとめています。
Mihata で運用代行をお引き受けする場合も、記事データ・権限・素材の扱いは契約時に文書で決めています。どこまでを納品物としているかはAIブログ運用代行のサービス内容に書いていますので、比較検討の材料にしていただければと思います。
解約が決まってからの段取り
すでに解約を決めている場合の順序です。権限まわりを先に片付けるのがコツで、理由は相手の協力が要る作業だからです。
- 解約予告の期限を確認する。書面か、メールでよいか、宛先は誰かまで見る。
- GA4・Search Console に自社アカウントを追加してもらう。GA4は管理者、Search Console は所有者。追加されたことを自分のアカウントでログインして確かめる。
- ドメインの登録者名義と管理アカウントを確認する。移管が必要なら、必要日数を先に聞く。
- 記事データの一括書き出しを依頼する。形式を指定し、画像も別途もらう。受け取ったら本数を数えて突き合わせる。
- 素材の出所一覧をもらう。継続できないものがあれば差し替え計画を立てる。
- 最終月の納品範囲を文面で確認する。着手済み記事の扱いを明確にする。
- 解約後に、代行会社のアカウントを権限から外す。自社が所有者・管理者になった後に実施する。
順番が大事で、7番を先にやると、それ以降は何も頼めなくなります。
引き継いだ後、記事はどうすればよいか
引き継いだ記事をそのまま置いておくだけでも、しばらくは検索流入が続きます。ただし、情報が古くなった記事は徐々に順位を落とします。引き継ぎ後に最低限やることは、公開日と内容の鮮度を見て、事実が変わった箇所を直すことです。
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よくある質問
よくある質問
解約したら記事は削除しなければいけませんか?
契約次第です。著作権が自社に譲渡されている、または解約後も継続して利用できる許諾がある場合は、そのまま公開し続けられます。利用許諾が契約期間中に限られている契約だと、公開の継続に別途の合意が必要になります。知的財産権の帰属と契約終了後の措置の条項を確認してください。
記事のデータをもらえないと言われたら、どうすればよいですか?
まず契約書の納品物の定義を確認します。納品物がデータ一式と書かれていれば引き渡しを求められますが、公開作業までを納品としている契約では義務とは言い切れません。その場合は有償での書き出し対応を打診するのが現実的です。次の契約では、契約終了時のデータ引き渡しを条項に入れておくことをおすすめします。
著作権を譲渡してもらう場合、契約書には何と書けばよいですか?
著作権法第61条第2項により、第27条または第28条の権利が譲渡の目的として特掲されていないと、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されます。そのため、第27条および第28条の権利を含めて譲渡する旨を明記します。あわせて著作者人格権は譲渡できないため、行使しない旨の合意を置くのが一般的です。文言の最終確認は弁護士にご相談ください。
Search Console の所有権を代行会社から取り戻せますか?
自社が所有者になっていれば可能です。ユーザーの追加・削除ができるのは所有者のみで、確認済み所有者を外すには、その所有者の確認に使われた確認トークンの削除が必要です。DNSレコードやHTMLファイルなど、確認方法によって手順が変わります。契約中に自社を所有者として登録しておくのが最も確実です。
AIが書いた記事の著作権は誰のものになりますか?
文化庁のガイダンスでは、AI生成物が著作物に該当するかは、生成にあたって利用者が有していた創作意図と創作的寄与の程度によって判断されるとされています。人の構成設計や加筆が加わっているほど著作物として扱いやすくなります。いずれにしても、誰にどこまでの権利があるかは契約書で明確にしておくのが実務上の対応です。
解約や引き継ぎの条件をどう書いておけばよいか、いま手元にある契約書で判断がつかない場合は、条項を一緒に読むところからでも構いません。売り込みの前に、出口が塞がっていないかだけでも確認しておくと安心かと思います。