「Gemini 3.8 Live が来た」と聞いて、スマホの Gemini アプリを開いた方もいると思います。結論から言うと、2026年9月15日に一般提供(GA)になったのは開発者向けの API のモデルで、Gemini アプリの「Gemini Live」がこれに置き換わったという発表は、現時点では出ていません。
そのうえで押さえておきたいのは3点です。第一に、GA したのは Live API 用の音声モデル「gemini-3.8-live」と「gemini-3.8-live-extended-thinking」の2本(Gemini API changelog)。第二に、Google AI Studio の無料枠(Free Tier)があるので、触るだけならお金はかかりません。第三に、自社のサービスに組み込んで有料で使うと、音声を入れて音声で返す素の構成で1分あたり約 0.023 ドル(音声入力 $0.005/分+音声出力 $0.018/分)が目安です。
何が GA したのか(3行)
Gemini API の changelog の「September 15, 2026」節に、Gemini 3.8 Live と Gemini 3.8 Live Extended Thinking が generally available(GA)になったと書かれています。どちらも Live API 用の、音声を入れて音声で返すモデルです。
「gemini-3.8-live」は低遅延の音声エージェントやリアルタイム対話の既定モデルで、推論を会話の合間に挟む interleaved reasoning、既定で非同期の function calling、セッション全体の client content 更新に対応します。「gemini-3.8-live-extended-thinking」は、音声で話している最中に裏側で長めの推論を走らせる高推論版です。
入力はテキスト・画像・音声・動画、出力はテキストと音声。入力トークン上限は 131,072、出力は 65,536 です(モデルページ)。要するに「電話口で話すような AI を作るための部品」が正式版になった、という発表です。
日本で使えるのか
changelog とモデルページを読んだ限り、提供地域を限定するような記載は見当たりませんでした。国別の制限について何も書かれていない、というのが正確なところです。裏返すと「日本では使えない」という公式情報も確認できていません。ここは断定せず、実際に Google AI Studio を開いてモデル一覧に出るかどうかで確かめるのが確実です。
試す入口は Google AI Studio です。無料枠(Free Tier)が用意されているので、アカウントがあれば費用ゼロで 3.8 Live を選んで話しかけられます。日本語で話せるかどうかについては、公式ドキュメントに対応言語の明記を見つけられなかったため、ここも「確認できていない」とだけ書いておきます。実際に日本語で一度話してみるのが一番早い検証です。
なお、スマホの Gemini アプリ側は別の話です。Gemini アプリのリリースノートの最新は 2026年9月10日の Windows 版アプリで、3.8 Live に関する記載はありません。アプリの Gemini Live は 2026年5月19日に通常のチャットへ統合され、Android と iOS にグローバル提供されている無料の機能で、こちらは今日からそのまま使えます。
いくらかかるのか
まず、無料枠の範囲で触る分は無料です。お金が発生するのは、自分のサービスやツールに組み込んで有料枠で回し始めてからになります。公式の料金ページには、1分あたりの単価も併記されています。
項目 | 100万トークンあたり | 1分あたり |
|---|---|---|
入力:音声 | $3.00 | $0.005 |
入力:画像・動画 | $1.00 | $0.002 |
入力:テキスト | $0.75 | — |
出力:テキスト(思考分を含む) | $4.50 | — |
出力:音声(思考分を含む) | $12.00 | $0.018 |
音声で話しかけて音声で返してもらう、という素の使い方だと、$0.005 + $0.018 = 約 $0.023/分です。ここから財布の感覚に翻訳してみます。1日20分の通話を20営業日ぶん流すと 20分 × 20日 = 400分。400分 × $0.023 = 約 $9.2、つまり月1,000円台の後半という計算になります。
ただしこれは「話して返すだけ」の素の値段です。会話の中で Google 検索を使わせる(Search grounding)なら、月5,000回までは無料で、それを超えると1,000回あたり $14 が乗ります。自社データベースの参照や外部ツールの呼び出しを足せば、そのぶんの費用も別に積み上がります。音声AIの費用全体をどう見積もるかは音声AIエージェントの月額費用を分解した記事にまとめています。
自社の受付や電話対応にどう組み込むと現実的な金額に収まるのか、社内の業務に合わせて一度試算してみたい場合は、こちらもご覧ください。
GPT-Live-1 といくら違うか
比較対象としてよく並べられるのが、2026年9月10日に API で提供が始まった OpenAI の GPT-Live-1 です。公式発表には「フロントの音声レイヤーとして1分 $0.05」と書かれています(OpenAI の発表)。単価だけを並べれば、Gemini 3.8 Live の約 $0.023/分のほうが安く見えます。
ただし、この2つは値段の数え方そのものが違います。GPT-Live-1 の $0.05/分は音声の入出力を担うフロント部分の料金で、裏側で考える推論モデル(GPT-6 Astra など)やツールの利用料は別勘定です。一方の Gemini 側は入力トークンと出力トークンの従量課金を分あたりに換算した数字なので、同じ土俵の数字として引き算しないほうが安全です。
機能面でも性格が違います。GPT-Live-1 は割り込み処理や電話(telephony)対応が前面に出ています。どちらを選ぶかは単価表ではなく用途で決める話なので、2つの音声モデルの中身の違いはGPT-Live-1 で何ができるのかを整理した記事で詳しく扱っています。
今日あなたができること
「3.8 Live を体験したい」という目的なら、Google AI Studio を開いて無料枠でモデルを選び、話しかけるのが最短です。アカウント以外に用意するものはありません。
「スマホで音声AIと話したい」だけなら、Gemini アプリの Gemini Live で十分です。無料で、Android と iOS にグローバル提供されています。3.8 Live が載っているという発表はありませんが、日常的な音声のやりとりならこちらで体験できます。ChatGPT の音声とどちらが自分に合うかはGemini Live と ChatGPT 音声モードを比べた記事が参考になります。
「自社の受付・予約電話・問い合わせ一次対応に入れたい」場合は、残念ながらアプリを入れれば済む話ではなく、Live API を使った開発が必要になります。電話回線との接続、会話ログの保存、担当者への引き継ぎといった周辺も含めて設計することになります。Gemini を業務で使う入口を広く知りたい方はGemini のビジネス活用ガイドもどうぞ。
まだできないこと
1つめ:よく使う機能がいくつか使えません。 キャッシュ、コード実行、ファイル検索、構造化出力、URL コンテキストは非対応です。たとえば「社内マニュアルのPDFを読ませて、決まった JSON 形式で結果を返させる」といった作り方はこのモデル単体ではできず、別のモデルや仕組みと組み合わせる前提になります。
2つめ:AI が自分から話し出す挙動をオフにできません。 proactive audio が常時オンで、false を指定するとエラーになります。「聞かれたときだけ答えてほしい」という静かな設計にしたい用途では、この仕様が邪魔になる場面があります。
3つめ:3.1 Flash Live からの乗り換えは単なる文字列の差し替えでは済みません。 モデル名の変更に加えて、thinking_level が使えなくなり、function calling は非同期が既定になり、声の感情を扱う affective dialogue は API から削除されました。既存の音声機能を持っている場合は、動作確認をやり直す前提で計画したほうがよいです。
音声AIを自社の業務に入れると、費用よりも「どの業務のどこを任せるか」の切り分けで詰まることが多いと感じています。もし判断に迷っている段階でしたら、現状をうかがったうえで一緒に整理するところからお手伝いできます。
よくある質問
Gemini 3.8 Live はスマホの Gemini アプリで使えますか?
2026年9月15日にGAしたのは開発者向けAPIのモデルで、Gemini アプリの Gemini Live に搭載されたという発表は出ていません。Gemini アプリのリリースノートの最新は2026年9月10日のWindows版アプリで、3.8 Live の記載はありません。アプリの Gemini Live 自体は無料でAndroid・iOSに提供されています。
日本から使えますか?
公式のchangelogとモデルページに地域を限定する記載は見当たりませんでした。ただし『日本で使える』と明記されているわけでもないため、断定はできません。Google AI Studio を開いてモデル一覧に表示されるかで確認するのが確実です。
無料で試せますか?
Google AI Studio の無料枠(Free Tier)が用意されており、その範囲では費用はかかりません。有料の従量課金が発生するのは、自分のサービスに組み込んで有料枠で使い始めてからです。
有料で使うと月いくらぐらいですか?
音声で入力して音声で返す素の構成なら、音声入力$0.005/分と音声出力$0.018/分で合計およそ$0.023/分です。1日20分を20営業日ぶん使うと400分で約$9.2になります。会話中にGoogle検索を使わせる場合は月5,000回まで無料、超過分は1,000回あたり$14が別に加わります。
GPT-Live-1 より安いのですか?
単価表だけを見ると、GPT-Live-1の$0.05/分に対しGemini側は約$0.023/分です。ただしGPT-Live-1の価格はフロントの音声レイヤーのみで裏側の推論モデルは別課金、Gemini側は入出力トークンの従量課金を分あたりに換算した数字なので、数え方が違います。単純な比較はできません。