Mihata
AI活用2026.09.11

音声AIエージェントは月いくら?API従量の試算3ケース

結論:音声AIエージェントの月額は「通話分数 × 0.05ドル + 別課金」で決まる

音声AIエージェントをAPIで自前構築した場合、月額は3つの層の足し算になります。2026年9月10日にAPIで一般提供(GA)となったgpt-live-1の場合、音声セッションは1分あたり0.05ドル(秒課金・分未満の切り上げなし)です。ここにバックエンドの推論モデルツール利用別課金で乗ります。

目安を先に示すと、1日30件×平均5分の電話一次対応(月20営業日)で月およそ167ドル=約25,000円(1ドル150円換算)。24時間受付で1日1,000件×平均4分なら月およそ7,050ドル=約106万円です。以下、この金額の出し方を式とケースで分解します。

月額(API従量)= ①通話分数 × 0.05ドル + ②通話数 × 1通話あたりのバックエンド費 + ③ツール利用料

本記事の円換算はすべて1ドル150円換算です(レートは変動するため、実際の請求額は上下します)。また②のバックエンド費は委譲先のモデルと1通話あたりの推論回数で変わるため、以下では仮定値として置き、必ず自社の試験運用で実測する前提で読んでください。

なぜ二段構造になるのか:GPT-Live-1は推論を自分でやらない

単価表を転記しただけの試算が外れる最大の理由がここです。GPT-Live-1は音声の入出力と会話の流れ(フルデュプレックス)だけを担当し、推論とツール呼び出しは別モデルへ委譲する設計になっています。公式の料金ページにも、GPT-Liveセッションについて「バックエンドのモデル利用とツール利用は別途課金される」と明記されています。

何の費用か

課金の単位

効いてくる変数

①音声レイヤー

gpt-live-1のセッション

0.05ドル/分

通話分数の合計

②バックエンドレイヤー

推論モデル(Responses経由のGPT-6 Astra等)

トークン従量

通話数 × 1通話あたりの推論回数

③ツールレイヤー

検索・社内DB照会・外部API

呼び出し回数など

1通話あたりのツール呼び出し数

ポイントは、①が分数で伸びるのに対し、②③は件数で伸びることです。「長い通話が少ない」業務と「短い通話が大量」の業務では、どの層が支配的になるかが逆転します。ここを分けずに合計だけを見ていると、削るべき場所を間違えます。

なお、音声レイヤーそのものの選択肢(分課金のgpt-live-1か、トークン課金のgpt-realtime系か)についてはGPT-Live-1とgpt-realtimeの料金比較と分岐点をまとめた記事で扱っています。GPT-Live-1で何ができるのかを先に押さえたい場合はGPT-Live音声AIの概要記事が入口になります。

ケース1:小規模事業者の電話一次対応(1日30件×平均5分)

予約・営業時間・在庫の問い合わせなど、定型的な一次対応をAIに任せる想定です。平日20営業日で計算します。

項目

計算

月額(ドル)

月額(円・150円換算)

通話分数

30件 × 5分 × 20日

3,000分

①音声レイヤー

3,000分 × 0.05ドル

150.00

22,500円

②バックエンド(仮定0.02ドル/通話)

600通話 × 0.02ドル

12.00

1,800円

③ツール(仮定)

予約DB照会など

5.00

750円

合計

167.00

約25,000円

1通話あたりに直すと約42円です。この規模では①音声レイヤーが全体の約9割を占めます。つまりコストを下げたいなら、モデルを安くする話ではなく「通話時間を短くする」「不要な保留や沈黙を作らない」ほうが効きます。分課金はセッションが開いている時間に対する課金なので、沈黙もそのまま金額になるためです。

この規模ならクラウド型のボイスボットサービスを契約したほうが早いこともあります。内製と外部サービスの分かれ目についてはAI電話自動応答(ボイスボット)の選び方を整理した記事で判断軸を出しています。

ケース2:24時間受付のコールセンター(1日1,000件×平均4分)

夜間・休日も含めて受け付ける規模です。月30日で計算します。

項目

計算

月額(ドル)

月額(円・150円換算)

通話分数

1,000件 × 4分 × 30日

120,000分

①音声レイヤー

120,000分 × 0.05ドル

6,000.00

900,000円

②バックエンド(仮定0.03ドル/通話)

30,000通話 × 0.03ドル

900.00

135,000円

③ツール(仮定)

顧客照会・チケット起票

150.00

22,500円

合計

約7,050

約106万円

1通話あたり約35円。人のオペレーターが24時間3交代で対応する体制と比べれば桁が違いますが、月100万円規模のAPI費用は「試しに入れてみる」金額ではありません。この規模では平均通話時間を1分縮めるだけで月22.5万円(150,000円+α)動くので、シナリオの短縮が最大の原価改善になります。

また、この規模になると②のバックエンド費が月13万円以上になり、無視できません。どのモデルへ委譲するかで数十万円が動くため、GPT-6 Astraの料金と移行コストを3ケースで試算した記事のような単価前提を押さえたうえで見積もる必要があります。トークン消費そのものの可視化についてはAIトークン管理とコスト可視化の実務をまとめた記事も参考になります。

ケース3:短時間・大量のアウトバウンド(1日500件×平均1.5分)

予約リマインド、督促前の確認連絡、アンケートなど「短く大量に」かける用途です。平日20営業日で計算します。

項目

計算

月額(ドル)

月額(円・150円換算)

通話分数

500件 × 1.5分 × 20日

15,000分

①音声レイヤー

15,000分 × 0.05ドル

750.00

112,500円

②バックエンド(仮定0.01ドル/通話)

10,000通話 × 0.01ドル

100.00

15,000円

③ツール(仮定)

予約システム更新

50.00

7,500円

合計

900.00

約135,000円

1通話あたり約13.5円。秒課金で分未満が切り上げられないため、短時間の通話ほど従量課金の恩恵が大きいのがこのケースの特徴です。1分未満で終わる通話が多いなら、1件あたりの単価はさらに下がります。

ただしアウトバウンドでは、コストより先に同時セッション数の上限がスループットの天井になります。次章で逆算します。

同時セッション数から必要ティアを逆算する

GPT-Live-1のレート制限はトークンではなく同時セッション数で切られています。Freeティアでは利用できないため、最低でもTier 1に到達している必要があります

ティア

同時セッション数

1.5分通話なら理論上の処理能力

Free

利用不可

Tier 1

25

約1,000件/時

Tier 2

50

約2,000件/時

Tier 3

200

約8,000件/時

Tier 4

300

約12,000件/時

Tier 5

500

約20,000件/時

インバウンドの逆算式

必要な同時セッション数 ≒ ピーク時間帯の着信件数/時 × 平均通話分数 ÷ 60 × 安全係数(1.5〜2)

  • ケース1:ピーク10件/時 × 5分 ÷ 60 = 0.83 → 安全係数2で2セッション。Tier 1で十分
  • ケース2:ピーク150件/時 × 4分 ÷ 60 = 10 → 安全係数2で20セッション。Tier 1(25)は綱渡りで、Tier 2(50)が現実的

安全係数を掛けるのは、着信が均等に来ないからです。平均で足りていても、数分単位のバーストで上限に当たるとその分がつながりません。人のオペレーターなら待たせて済むところが、API上限では即座に失敗として跳ね返る点が違います。

アウトバウンドは上限がそのまま発信ペースになる

発信は自分でペースを決められるため、同時セッション数の上限=1時間に何件かけられるかの天井になります。Tier 1(25セッション)で平均1.5分の通話なら、1枠あたり1時間に40件回せるので25 × 40 = 約1,000件/時が理論上限です。ケース3の「1日500件」なら、Tier 1でも30分程度で撒き切れる計算になります。逆に「1日1万件を朝の2時間で」といった要件なら、金額より先にティアの引き上げが必要です。

API費用以外に必ず乗るコスト(見落としがちな6項目)

ここまでの試算はAPIの従量課金だけです。実際の請求書には次が加わります。見積もりの段階でこれを落とすと、稼働後に「聞いていた金額の2倍」になります。

  • 電話番号・回線費用:SIPトランクやクラウドPBXの月額と通話料。OpenAI側の課金とは完全に別です
  • 録音・保存・文字起こし:通話ログを残すなら保存費と、必要に応じて文字起こしAPIの費用
  • 失敗・再接続分の課金:切断や取り直しで発生したセッション時間も課金対象です
  • 人へのエスカレーション:AIで完結しない分は結局人が受けます。完結率70%なら人件費が30%残る前提で見積もります
  • 初期構築とシナリオ調整:一度作って終わりではなく、最初の1〜2か月は毎週チューニングが要ります
  • 監視とログ基盤:どの通話がなぜ失敗したかを追える仕組みがないと、改善が止まります

とくに4つ目の完結率は金額インパクトが大きい変数です。導入判断では「AIの月額」ではなく「AI+残る人件費」の合計で、現行体制と比べてください。電話業務全体の組み立て方はAIで電話応対を自動化する方法と始め方の記事に整理しています。内製と外注のどちらで組むかを迷っている段階なら、GPT-Live-1でAI電話応対を自作する判断軸の記事が近い論点を扱っています。

試算を自社の数字に置き換えるとき

ここまでの式に入れるべき数字は4つだけです。月間の通話件数・平均通話分数・ピーク時間帯の件数・AIで完結できそうな割合。この4つが手元にあれば、上のケース表の数字を差し替えるだけで自社の月額が出ます。逆にこの4つが取れていない状態で見積もりを依頼しても、返ってくるのは幅の広いレンジだけになります。

私たちMihataでは、この4つを既存の通話記録から洗い出すところから、月1回のAIミーティングで一緒に進めるAI導入支援を行っています。数字の作り方から相談したい、社内だけで試算を回すのが重たい、という段階でしたら、よろしければ合わせてご覧いただけたら嬉しいです。

まとめ

  • 月額=通話分数 × 0.05ドル + 通話数 × バックエンド費 + ツール費の三層構造。単価表の転記だけでは出ない
  • 1日30件×5分なら月約167ドル(約25,000円)、1日1,000件×4分の24時間受付なら月約7,050ドル(約106万円)(1ドル150円換算)
  • 小規模では音声レイヤーが約9割。コスト改善は「モデルを安くする」より「通話時間を短くする」が効く
  • レート制限は同時セッション数。Free不可、Tier 1は25、Tier 5は500。ピーク件数×平均分数÷60×安全係数で必要ティアを逆算する
  • API費用以外に回線費・録音保存・エスカレーション人件費・構築費が必ず乗る。判断は「AI+残る人件費」の合計で行う

よくある質問

音声AIエージェントの月額はいくらぐらいになりますか?

通話分数で決まります。gpt-live-1の音声セッションは1分あたり0.05ドルなので、1日30件×平均5分×月20営業日(3,000分)なら音声レイヤーだけで月150ドル、バックエンドとツールを含めて月およそ167ドル(1ドル150円換算で約25,000円)が目安です。24時間受付で1日1,000件×平均4分なら月およそ7,050ドル(約106万円)になります。

0.05ドル/分のほかに費用はかかりますか?

かかります。GPT-Live-1は推論とツール呼び出しを別モデルへ委譲する設計で、公式の料金ページにもバックエンドのモデル利用とツール利用は別途課金と明記されています。さらにAPI以外にも、電話番号やSIPトランクの回線費、録音の保存費、AIで完結しなかった分の人件費、初期構築とシナリオ調整の費用が乗ります。

分未満の通話も1分として課金されますか?

されません。GPT-Liveセッションは秒単位で計算され、分未満を切り上げない課金です。そのため、予約リマインドのような1分前後で終わる短い通話を大量にかける用途では、1件あたりの単価が下がりやすくなります。

同時に何本の通話を受けられますか。必要なティアはどう決めますか?

gpt-live-1のレート制限は同時セッション数で、Freeティアは利用不可、Tier 1が25、Tier 2が50、Tier 3が200、Tier 4が300、Tier 5が500です。必要数は「ピーク時間帯の着信件数/時 × 平均通話分数 ÷ 60 × 安全係数1.5〜2」で逆算します。ピーク150件/時・平均4分ならおよそ20セッションとなり、Tier 2が現実的です。

コストを下げるにはどこから手を付けるべきですか?

小規模では音声レイヤーが全体の約9割を占めるため、モデルを安いものに替えるより平均通話時間を短くするほうが効きます。分課金はセッションが開いている時間に対する課金なので、沈黙や保留の時間もそのまま金額になります。24時間受付規模では平均通話時間を1分縮めるだけで月20万円以上動きます。

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