結論:GPT-Live-1とgpt-realtimeは「課金軸」そのものが違う
OpenAIは2026年9月10日、gpt-live-1をAPIで一般提供(GA)にしました。料金は1分あたり0.05ドルの分課金で、秒単位で計算され分未満を切り上げません。対して従来のgpt-realtime系は、オーディオ入力が100万トークンあたり32ドル、オーディオ出力が同64ドルというトークン課金です。
つまりこの2つは、単価表を並べても比較になりません。「1分いくら」と「1トークンいくら」は別の物差しだからです。比べられる形にする唯一の方法は、自社の通話が1分あたり何オーディオトークンを消費するかを実測し、同じ単位に揃えることです。本記事はその揃え方と、揃えた後にどちらへ倒れるかの分岐点を扱います。
先に結論を置きます。会話が長い・同時通話が多い・電話(テレフォニー)で使うならGPT-Live-1。既存のRealtime実装を活かしたい・構造化出力(structured outputs)が要る・音声モデル自身に推論までさせたいならgpt-realtime系。判断はこの2行でほぼ決まります。
何が課金され、何が別課金になるか
先に押さえるべきは、GPT-Live-1の0.05ドル/分が音声セッションの料金だけだという点です。公式の料金ページには、GPT-Liveセッションについて「バックエンドのモデル利用とツール利用は別途課金される」と明記されています。推論やツール呼び出しはGPT-Live-1自身が行わず、Responses経由の推論モデル(GPT-6 Astra等)やクライアント側へ委譲する設計だからです。
項目 | gpt-live-1 | gpt-realtime系 |
|---|---|---|
課金軸 | セッション時間(分) | オーディオトークン |
公開単価 | 0.05ドル/分(秒課金・切り上げなし) | 入力32ドル/100万トークン、出力64ドル/100万トークン |
推論・ツールの費用 | 別課金(委譲先のモデル料金が上乗せ) | 同一モデルのトークン料金に含まれる |
利用できるエンドポイント | v1/live/sessions のみ | Realtime系のエンドポイント |
Responses / Chat Completions | 非対応 | — |
Batch / Fine-tuning | 非対応 | — |
入出力 | 音声・テキストのみ(画像・動画は不可) | 音声・テキスト |
structured outputs | 非対応 | 対応 |
レート制限の単位 | 同時セッション数 | トークン/リクエスト数 |
知識のカットオフ | 2025年7月31日 | モデルごとに異なる |
この表で実務上いちばん効くのは、下から3行です。エンドポイントの縛りとstructured outputs非対応とレート制限の単位は、金額の話をする前に選択肢そのものを消してしまうことがあります。
なぜ単純比較ができないのか:分課金とトークン課金の性質差
分課金とトークン課金は、コストの伸び方が違います。ここを理解しないまま単価だけを見ると、試算が実額から大きく外れます。
分課金は「沈黙」もコストになる
0.05ドル/分はセッションが開いている時間に対する課金です。したがって、相手が黙っている時間、保留の時間、こちらがバックエンドの応答を待っている時間も、そのまま金額になります。逆に言えば誰が何をしゃべっても1分は1分なので、金額が読みやすいという長所と裏表の関係です。
トークン課金は会話が進むほど1分あたりが高くなる
トークン課金は話した量に比例します。ただし音声対話では会話履歴が文脈として積み上がるため、ターンが進むほど1回あたりの入力トークンが増えます。結果として「通話の後半ほど1分あたりの単価が上がる」という挙動になり、平均単価を短い通話で測って長い通話に当てはめると過小に見積もることになります。
この非線形さこそが、両者を単価表で比べられない実体です。同じことは音声以外の乗り換えでも起きるので、AIモデル移行のコスト見積もりを内訳5項目で整理した記事もあわせて確認すると全体像がつかめます。
損益分岐点:合計およそ1,040トークン/分がひとつの目安
公開単価だけから、音声レイヤーの分岐点は計算できます。入力と出力が半々で、1分あたりそれぞれ T トークン消費すると仮定します。
- gpt-realtimeの1分あたり費用 = T × 32ドル ÷ 1,000,000 + T × 64ドル ÷ 1,000,000 = T × 96 ÷ 1,000,000
- これがGPT-Live-1の0.05ドルと等しくなるのは T ≒ 521(入力521・出力521=合計およそ1,040トークン/分)
つまり、通話ログの実測で1分あたりの合計オーディオトークンが約1,040を超えるなら、音声レイヤーだけを見ればGPT-Live-1の分課金のほうが安くなります。下回るならgpt-realtime側が安い、という読み方になります。
ただしこれは音声レイヤーだけの分岐点です。GPT-Live-1はバックエンドの推論モデルが別課金なので、実際の分岐点はこれより上(=より多くのトークンを消費する会話でないとGPT-Liveが有利にならない)へ動きます。どれだけ上へ動くかは、委譲先のモデルと1通話あたりの推論回数しだいです。委譲先にGPT-6 Astraを想定する場合の単価感はGPT-6 Astraの料金を3ケースで試算した記事が目安になります。
実務での順番はこうです。まず既存の通話ログ(または短期の試験運用)から1分あたりのオーディオトークン数を実測する。次に上の式で音声レイヤーの差を出す。最後にバックエンドの想定回数を掛けて上乗せする。この3手順を飛ばして「0.05ドル/分は安い/高い」と判断すると、ほぼ外れます。金額そのものの組み立て方は音声AIエージェントの月額をAPI従量で試算した記事で3ケースに分けて具体化しています。
見落とされがちな分岐点:レート制限の単位が違う
もうひとつ、金額より先に選択肢を決めてしまう要素があります。GPT-Live-1のレート制限はトークンではなく同時セッション数で切られており、しかもFreeティアでは利用できません。
ティア | gpt-live-1の同時セッション数 |
|---|---|
Free | 利用不可 |
Tier 1 | 25 |
Tier 2 | 50 |
Tier 3 | 200 |
Tier 4 | 300 |
Tier 5 | 500 |
この表は「同時に何本の通話を受けられるか」を直接決めます。トークン課金のモデルでは同時実行数は間接的にしか効きませんが、GPT-Live-1ではピーク時の同時通話数が上限を超えた瞬間に、超過分がつながらないという形で表面化します。したがって選定時には、料金の前に「自社のピーク同時通話数は何本か」を出しておく必要があります。
使い分けの判断フレーム(4つの問い)
ここまでを、発注前に答えられる4問に畳みます。上から順に見て、最初に「はい」が付いたところで決めて構いません。
Q1. 電話(テレフォニー)で使うか
使うならGPT-Live-1が本命です。GA時点でテレフォニー対応が公式に明記されており、割り込み処理(相手が話し始めたときに話すのをやめる挙動)の誤判定がSpeakの評価で従来比およそ80%削減されたとされています。電話の一次対応は割り込みの品質がそのまま体験の質になるため、ここは大きな差になります。電話応対そのものの設計はAI電話自動応答(ボイスボット)の選び方を整理した記事が土台になります。
Q2. 既存のResponses / Chat Completions実装を流用したいか
流用したいならgpt-realtime系です。GPT-Live-1はv1/live/sessions専用で、Responses・Chat Completions・Realtime・Batch・Fine-tuningはいずれも非対応です。これは設定で回避できる種類の制約ではなく、選定の前提条件として扱うべきものです。エンドポイントの違いが実装にどう跳ね返るかはGPT-Live-1 APIのResponses非対応と移行手順の記事で詳しく扱われています。
Q3. 構造化されたJSONを音声モデル自身に出させたいか
出させたいならgpt-realtime系です。GPT-Live-1はstructured outputsに対応していません。構造化データが要る場合は、委譲先の推論モデル側でJSONを組み立てる構成になります。設計としては妥当ですが、「音声モデルが直接フォームを埋める」形は取れません。
Q4. 1通話が長く、同時通話が多いか
両方に当てはまるならGPT-Live-1が有利に傾きます。長い会話ほどトークン課金は非線形に伸びる一方、分課金は線形のままだからです。加えて、同時セッション数で上限が明示されているぶん、キャパシティ設計が読みやすくなります。逆に「1通話30秒・1日数十件」のような短く少ない用途では分課金のうまみは薄く、gpt-realtime側で足りることが多くなります。
選定に迷ったときの現実的な進め方
実務では、机上で決め切らずに2週間だけ両方で同じシナリオを流すのがいちばん速い決着法です。1分あたりのトークン実測値、割り込みの誤判定率、ピーク同時通話数の3つが取れれば、上の分岐点にそのまま当てはめられます。逆にこの3つが無いまま比較表だけで決めた案件は、稼働後に金額が想定の2〜3倍になりがちです。
私たちMihataでも、こうした「どのモデルをどの構成で使うか」の切り分けからご一緒するAI導入支援を行っています。記事の途中で恐縮ですが、社内だけで比較検討を回すのが重たいときの選択肢として、よろしければ合わせてご覧いただけたら嬉しいです。
まとめ
- gpt-live-1は0.05ドル/分の分課金、gpt-realtime系はオーディオトークン課金(入力32ドル・出力64ドル/100万トークン)。物差しが違うので単価比較は成立しない
- 音声レイヤーの分岐点は合計およそ1,040トークン/分。これを超えるとGPT-Live-1が有利に傾く(入出力半々の仮定)
- ただしGPT-Live-1はバックエンドのモデル・ツールが別課金なので、実際の分岐点はさらに上へ動く
- 金額より先に、エンドポイントの縛り・structured outputs非対応・同時セッション数の上限が選択肢を消すことがある
- 電話用途・長い会話・多い同時通話ならGPT-Live-1、既存実装の流用・構造化出力ならgpt-realtime系
GPT-Live-1そのものの位置づけや対応プランについてはGPT-Live音声AIの概要をまとめた記事を、月額の具体的な金額感は音声AIエージェントの料金試算記事をご覧ください。
よくある質問
GPT-Live-1とgpt-realtime、結局どちらが安いですか?
通話の内容によって逆転します。入力と出力が半々と仮定すると、1分あたりの合計オーディオトークンが約1,040を超えるとGPT-Live-1の0.05ドル/分が有利になり、下回るとgpt-realtimeのトークン課金が有利です。ただしGPT-Live-1はバックエンドのモデル利用が別課金なので、実際の分岐点はこれより上に動きます。
なぜ単純に単価を比べられないのですか?
課金軸が違うためです。GPT-Live-1はセッション時間に対する分課金、gpt-realtimeはオーディオトークンに対する従量課金です。さらにトークン課金は会話が進むほど文脈が積み上がって1分あたりの費用が上がるため、短い通話で測った平均単価を長い通話に当てはめると過小評価になります。
GPT-Live-1はResponses APIやChat Completionsで使えますか?
使えません。GPT-Live-1はv1/live/sessionsエンドポイント専用で、Responses・Chat Completions・Realtime・Batch・Fine-tuningはいずれも非対応です。推論やツール呼び出しはResponses経由の別モデルやクライアント側へ委譲する設計になっています。
同時に何本の通話を受けられますか?
利用ティアで決まります。Freeティアは利用不可で、Tier 1が25、Tier 2が50、Tier 3が200、Tier 4が300、Tier 5が500の同時セッションです。GPT-Live-1のレート制限はトークンではなく同時セッション数で切られているため、ピーク時の同時通話数から必要なティアを逆算しておく必要があります。
構造化されたJSONを出力させたい場合はどうすればよいですか?
GPT-Live-1はstructured outputsに非対応のため、音声モデル自身にJSONを組み立てさせることはできません。バックエンドへ委譲した推論モデル側で構造化出力を担当させる構成にするか、structured outputsに対応したgpt-realtime系を選ぶことになります。