Mihata
AI活用2026.08.19

リアルタイム音声AI比較|GPT-LiveとGemini 3.8 Live

「AIと音声で話す」は、長いあいだどこか作業的でした。話し終えるまで待って、少し間があって、それから答えが返ってくる。人間同士の会話とはテンポが違うので、結局キーボードに戻ってしまった方も多いはずです。その前提が、2026年9月の2週間で大きく動きました。OpenAI が GPT-Live-1 を API で一般提供(9月10日)し、Google が Gemini 3.8 Live を一般提供(9月15日)にしたことで、「聞きながら同時に話せる」リアルタイム音声AIが、実質2本立てになったからです。

結論から言うと、選び方は「自分が話し相手として使うのか」「自社の電話や受付に組み込むのか」で完全に分かれます。自分で使うなら、ChatGPT アプリの音声モード(Plus は GPT-Live-1 を1日最大3時間)か、Gemini アプリの Gemini Live(無料・Android / iOS にグローバル提供)。自社に組み込むなら、GPT-Live-1 が音声レイヤーだけで1分あたり0.05ドル、Gemini 3.8 Live が音声入出力で1分あたり約0.023ドルです。ただし両方とも、この数字は「会話する層」の値段でしかありません。裏側で考えるモデルの費用は別に乗ります。

「全二重」とは何か(ターン制との違い)

これまでの音声AIの多くは、内部的にはターン制でした。①発話が終わったことを検知する →②音声をテキストに変換する →③テキストで答えを作る →④音声に変換して読み上げる、という直列のパイプラインです。分かりやすい反面、各段でわずかな遅れが積み重なり、さらに段と段の間で情報が落ちます。声の抑揚、ためらい、語尾の上がり方といった「テキストにならない情報」は、②の時点で消えてしまうからです。

全二重(full-duplex)では、入力の受け取りと出力の生成が同時に走ります。モデルは「いま話すべきか、聞き続けるべきか、黙っているべきか」を判断し続けます。OpenAI は GPT-Live-1 について、単一モデルで入力音声と出力音声を同時に推論すると説明しており、語学アプリ Speak の初期評価では割り込みの失敗が従来のターン制比でおよそ80%削減されたとしています。Gemini 3.8 Live も同じく、音声を入れて音声を返す audio-to-audio のモデルとして提供されています。

実務でいちばん体感が変わるのは、この「黙っていられる」性質かもしれません。こちらが考え込んで数秒黙っても処理待ちにならず、説明の途中で「そこはもういいです」と被せれば言い切るのを待たずに切り替わる。ターン制のAIが電話や打合せに入れられなかったのは、まさにここができなかったからです。

GPT-Live-1 と Gemini 3.8 Live を並べて比べる

同じ「リアルタイム音声AI」でも、届いている場所と値段の構造が違います。2026年9月16日時点で公式に確認できた内容だけを並べます。

項目

GPT-Live-1(OpenAI)

Gemini 3.8 Live(Google)

一般提供の開始

2026年9月10日(API)

2026年9月15日(Gemini API)

自分がすぐ触れる場所

ChatGPT アプリ/chatgpt.com の音声モード、API

Gemini API と Google AI Studio。Gemini アプリに載ったという発表は無い

個人の無料枠・上限

ChatGPT のプラン料金に含まれる。Plus は1日最大3時間

Gemini API に無料枠あり。消費者が今日使えるのは Gemini アプリの Gemini Live(無料・グローバル)

組み込み時の単価

音声レイヤーのみ1分0.05ドル(裏側の推論モデルとツールは別課金)

音声入力0.005ドル/分+音声出力0.018ドル/分=約0.023ドル/分

電話(テレフォニー)

対応を公式に明記

公式ドキュメントに電話対応の記載は無い

検索での裏取り

推論とツール実行は裏側のモデルへ委譲する設計

Google 検索グラウンディング対応。月5,000回まで無料、以降1,000回14ドル

まだできないこと

音声レイヤー単体では調べ物も判断もしない

キャッシュ/コード実行/ファイル検索/構造化出力/URLコンテキストが非対応

表で見ると分かりやすいのは、単価では Gemini 3.8 Live が半額以下である一方、「今日そのまま話し相手として使える」度合いでは ChatGPT が一歩先という非対称です。どちらが優れているという話ではなく、届き方が違います。料金の考え方そのものを先に整理したい方は、音声AIエージェントの月額費用を分解した記事もあわせてご覧ください。

自分が今日から使うなら、どちらか

手元のスマホで今日から使うだけなら、判断はシンプルです。

ChatGPT を契約しているなら、そのまま音声モードを使えます。2026年9月9日の改定で GPT-Live の1日の上限が整理され、Go は GPT-Live-1 mini で最大3時間、Plus は GPT-Live-1 で最大3時間、Pro(月額100ドル)は15時間、Pro(月額200ドル)は無制限になりました。Plus と Pro は上限に達しても mini へ切り替わらない扱いに変わっています。ChatGPT Voice は、検索や難しい推論が必要な場面では GPT-5.6 / GPT-6 Astra を使える設計です。

Google 側は、消費者が触れる入口が Gemini アプリの Gemini Live です。こちらは無料で、Android と iOS にグローバル提供されています。ここで正直に書いておきたいことが1つあります。Gemini 3.8 Live は Gemini API(開発者向け)の一般提供であって、Gemini アプリの Gemini Live に載ったという発表はありません。Gemini のリリースノートを2026年9月16日時点で確認しても、最新は9月10日の Windows 版アプリで、3.8 Live の記載は見つかりませんでした。「Gemini の音声が新しくなった」と読める見出しを見かけても、それはアプリの話ではなく API の話である可能性が高い、と考えたほうが安全です。アプリ側で何が使えるかは、Gemini 3.8 Live の料金と日本で使えるかを整理した記事で詳しく扱っています。

なお、ChatGPT 側は2026年9月14日に Plus / Pro で Instant から Thinking への自動切り替えが廃止されており、「もっとよく考えて」と頼んでも思考レベルは上がらなくなりました。テキスト側の変更ですが、同じアカウントの挙動が変わる話なので、ChatGPT の自動思考切り替え廃止でどう変わるかをまとめた記事も確認しておくと混乱しません。

自社の電話・受付に入れると、月いくらか

組み込みを検討するときは、分単価から月額に直すのがいちばん早い判断材料になります。仮に1日20分ぶんの通話を、月20営業日ぶん受けるとします。合計400分です。

  • GPT-Live-1:0.05ドル × 400分 = 約20ドル/月(音声レイヤーのみ)
  • Gemini 3.8 Live:0.023ドル × 400分 = 約9.2ドル/月(音声入出力のみ)

桁で言えば「月に数千円」の世界です。ただし、ここで止めて見積を出すと必ず外れます。この金額は会話のリズムを保つ層の値段でしかなく、実際に調べたり判断したりする処理の費用は別勘定だからです。GPT-Live-1 は推論とツール実行を裏側のモデル(GPT-6 Astra 等)へ委譲する設計なので、委譲を何回呼ぶかで総額が変わります。Gemini 3.8 Live も、Google 検索グラウンディングを使えば月5,000回までは無料ですが、それを超えると1,000回あたり14ドルが乗ります。

つまり実務の見積で効くのは単価差ではなく、「1本の電話で何回、外を調べに行くのか」という設計です。ここを決めないと費用は読めません。API 単価の比較をもう一段細かく見たい場合はGPT-Live-1 と gpt-realtime の料金差を検証した記事を、自社の電話受けを内製する手順はGPT-Live で電話一次受けを内製する進め方の記事をご覧ください。実装でつまずいたときの切り分けはGPT-Live-1 API の移行手順をまとめた記事にあります。

私たちMihataでも、こうした音声窓口や社内ナレッジAIを業務に合わせて作るお手伝いをしております。記事の途中で恐縮ですが、もし「自社の電話や問い合わせをAIで受けられないか」と考えたことがあれば、よろしければ合わせてご覧いただけたら嬉しいです。

まだできないこと・注意点(正直なところ)

2強になったとはいえ、どちらも「置けばうまくいく」段階ではありません。実務に持ち込む前に引っかかるのは、次の3点だと感じています。

1. 会話から確実にデータを取り出す設計が、音声モデル単体では組めない。Gemini 3.8 Live は構造化出力(structured outputs)が非対応で、キャッシュ・コード実行・ファイル検索・URLコンテキストも使えません。GPT-Live-1 も推論やツール実行は委譲する前提です。「電話で聞いた要件をそのまま JSON にして基幹システムへ」という絵は、音声レイヤーの外側にもう一段の仕組みを作って初めて成立します。

2. Gemini 側は挙動の前提が変わっている。3.1 Flash Live から移行する場合、モデル名の変更に加えて、thinking_level が使えない、非同期の関数呼び出しが既定になる、proactive audio(AIが自分から話し出す挙動)が常時オンで false にするとエラーになる、感情に寄り添う affective dialogue が API から削除された、といった差があります。つまり「黙って待つ度合い」を細かく調整していた実装は、そのままでは同じ体験になりません。

3. 数字と固有名詞は、音声で完結させない。金額の確定、口座番号の読み合わせ、契約可否の判断は、テンポの良さで得た時間を聞き間違いのリスクが軽く上回ります。しかも音声は、テキストなら「あれ?」と気づく誤りが、滑らかに読み上げられると疑わずに通ってしまいます。検証できる事実は必ず画面のテキストで確認する運用にしてください。顧客との通話に使うなら、録音とAI利用の告知・同意、保存期間、ログを誰が見られるかも先に決めます。音声の一次受けそのものの向き不向きは、AIボイスボットで電話対応を自動化する範囲を整理した記事が参考になります。

それで、どう向き合えばいいか

2026年9月時点でおすすめできる順番は3つです。第一に、個人のアカウントで1〜2週間、通勤や移動中の口述メモとして使い倒すこと。使えるかどうかは机上ではなく耳で判断するのが早いです。第二に、自社の電話・問い合わせを1週間分だけ棚卸しし、「用件の仕分けで終わるもの」の割合を数えること。ここが3割を超えるなら、音声窓口の投資対効果が見えてきます。第三に、外を調べに行く回数と、録音・同意・ログ保管のルールを先に文章にしておくこと。技術より、ここが遅れて止まる会社のほうが圧倒的に多いのが実情です。

リアルタイム音声AIは、1社の独走から2社の選択肢へ変わりました。どちらを選ぶかより、どの業務を音声にするかのほうが難しい問いです。自社のどこから手をつけるべきか迷われている場合は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

GPT-Live-1 と Gemini 3.8 Live はどちらが安いですか?

単価だけで比べると Gemini 3.8 Live のほうが安く、音声入力0.005ドル/分と音声出力0.018ドル/分で合計およそ0.023ドル/分です。GPT-Live-1 は音声レイヤーのみで1分0.05ドルです。ただしどちらも裏側で推論するモデルやツールの費用は別に発生するため、単価差だけで総額は決まりません。

Gemini 3.8 Live はスマホの Gemini アプリで使えますか?

2026年9月16日時点で、Gemini 3.8 Live が Gemini アプリの Gemini Live に載ったという発表はありません。一般提供されたのは開発者向けの Gemini API と Google AI Studio です。消費者が今日使えるのは、従来どおり Gemini アプリの Gemini Live(無料・Android / iOS にグローバル提供)です。

ChatGPT の音声は1日どれくらい使えますか?

2026年9月9日の改定後の1日上限は、Go が GPT-Live-1 mini で最大3時間、Plus が GPT-Live-1 で最大3時間、Pro(月額100ドル)が15時間、Pro(月額200ドル)が無制限です。Plus と Pro は上限に達しても mini へ切り替わらなくなりました。

月400分の電話対応に使うと、いくらかかりますか?

音声レイヤーだけで計算すると、GPT-Live-1 は0.05ドル×400分で約20ドル、Gemini 3.8 Live は0.023ドル×400分で約9.2ドルです。これに裏側の推論モデルの費用と、Gemini なら月5,000回を超えた分の検索グラウンディング(1,000回14ドル)が加わります。

電話回線につなぐならどちらですか?

OpenAI は GPT-Live-1 の紹介でテレフォニー(電話網)への対応を明記しています。Gemini 3.8 Live のモデルページには電話対応の記載がありません。電話に載せる前提なら GPT-Live-1 のほうが情報が揃っていますが、実際の接続は電話基盤側の構成にも左右されます。

その場で会話するのではなく「用意した原稿を読み上げる」用途なら、リアルタイム系より安い専用の TTS モデルがあります。2026年9月22日にGAしたGemini 3.8 Flash TTS の料金と使い方と、Gemini TTS と OpenAI TTS のどちらを選ぶかに分けてまとめています。

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