2026年11月1日時点の情報です。Google は2026年10月26日、Gemini API の Generate Content API(generateContent・streamGenerateContent・batchGenerateContent)について、有料枠の新しいプロジェクトではリクエストを既定で保存する(store=true)ように変えました(Gemini API changelog)。保存されるのはプロンプトと応答の中身で、Google AI Studio のログ画面から見えるようになります。社内の情報を API に流している会社は、「10月26日以降に作ったプロジェクトかどうか」をまず確かめてください。
結論:10月26日以降に作ったプロジェクトは既定で保存。止めるなら設定かstore=false
公式ドキュメントの記載をまとめると、影響は次のとおりです(Logs and datasets)。
プロジェクト/API | 既定の保存 | 補足 |
|---|---|---|
Generate Content API・2026年10月26日以降に作成したプロジェクト | 保存する( | 今回の変更の対象 |
Generate Content API・10月25日以前に作成したプロジェクト | 保存しない( | AI Studio でログを有効にしていた場合を除き、設定は変わらない |
Interactions API | 保存する | 以前から既定でオン。会話履歴をサーバー側で持つ機能に使われる |
無料枠のプロジェクト | — | ログの保存は有料枠のプロジェクトだけの機能 |
止め方は2つあります。プロジェクト単位なら AI Studio のログ画面の「Settings」で Generate Content API のログをオフにする、リクエスト単位なら呼び出しの設定に store=false を付ける、です。リクエスト単位の指定はプロジェクトの設定より優先されます。
保存されたログはGoogleの学習に使われるのか
ここがいちばん誤解されやすい点です。Google のログの方針ページは、ログは有料枠のプロジェクトでしか保存されないため、ログの中のプロンプトと応答は既定では製品の改善や開発に使われないと書いています(Gemini API logs policy)。
学習に回る可能性があるのは、自分でログを「データセット」にまとめて Google に共有した場合と、ログに付けた評価(高評価・低評価やコメント)を送った場合です。共有したデータセットは無料サービス(Unpaid Services)のデータ利用条件で扱われ、モデルの改善や学習に使われることがあります。Google 自身が「個人情報・機密情報を含めないでください」と注意書きしており、共有できるかどうかは地域によって変わるとも書かれています。
状態 | Google の学習に使われるか(公式の記載) |
|---|---|
ログを保存しているだけ | 既定では使われない |
ログからデータセットを作り、Google に共有した | 使われることがある(無料サービスの条件で処理) |
ログに評価やコメントを付けて送った | 製品改善のための提供データとして扱われる |
つまり「保存=学習」ではありません。ただし、プロンプトの中身が自社のプロジェクトのログ画面に残り、権限のある人が読めるのは事実です。顧客の個人情報や社外秘の資料を API に渡している場合は、誰がログを見られるかの管理が新しく必要になります。サービスごとの学習の扱いの違いはAI学習オプトアウト設定(ChatGPT・Gemini・Claude)にもまとめています。
ログは何日残るか:既定55日、7・14・28日に短縮できる
保存されたログは、既定で55日たつと削除の対象になります。プロジェクトごとに7日・14日・28日・55日から選べます(Logs and datasets)。ただし、ログを「データセット」に保存すると、そのデータセットには保持期間がありません。デバッグのために取っておいたデータセットが、いつの間にか一番長く残る場所になる点は覚えておくと安全です。
なお、このログとは別に、Google が不正利用の監視(abuse monitoring)のためだけに持つログがあり、ログの方針ページは両者を分けて説明しています。今回の設定で止められるのは、自社のプロジェクトに残るほうのログです。
ログ保存をオフにする手順
プロジェクト単位でオフにする(AI Studio)
- Google AI Studio のログ画面(Logs and Datasets)を開く。
- 対象のプロジェクトを選ぶ。
- 「Settings」パネルで、Generate Content API のログをオフにする。Generate Content API と Interactions API は別々にオン・オフできます。
注意:Interactions API のログをオフにすると、リクエストごとに上書きしない限り、会話履歴の自動保存・取り出しが働かなくなります(公式ドキュメントの警告)。Interactions API で会話の続きを API 側に持たせている場合は、オフにする前に影響を確かめてください。
リクエスト単位で止める(store=false)
個人情報を含む処理だけ保存したくない、という使い分けならリクエスト単位の指定が向いています。Python なら config={'store': False}、JavaScript なら config: { store: false } を generate_content/generateContent に渡します。Generate Content API でこの指定を使うには、SDK が次の版以上である必要があります。
言語 | SDK | 必要な版 |
|---|---|---|
Python | google-genai | 2.33.0 以降 |
JavaScript | @google/genai | 2.31.0 以降 |
Java | google-genai | 1.79.0 以降 |
Go | google.golang.org/genai | 1.76.0 以降 |
古い SDK のまま store を書いても効かない可能性があるので、指定を足すときは SDK の更新もセットで行ってください。OpenAI 互換のエンドポイント経由の呼び出しもログの対象に含まれる、と公式ドキュメントに書かれています。
そもそもログに残らないもの
公式ドキュメントでは、次のものはログの対象外とされています。
- Imagen と Veo(画像・動画の生成モデル)
- Gemini の埋め込み(embedding)モデル
- Gemini Robotics のモデル
- 動画・GIF・PDF を含む入力
- Gemini API のパブリックプレビュー中のエージェント
また、プロジェクトの API キーを全部削除すると(漏えいしたキーを消した場合など)、新しいキーを作るまでログ画面でログが見えなくなります。見えなくなるだけで、保存が止まったわけではない点に注意してください。
中小企業がいま確認すること5つ
実務で問題になりやすいのは、「去年作ったプロジェクトは保存されていないのに、先週作った検証用のプロジェクトだけ保存されている」という混在です。次の順で確認すると漏れがありません。
- プロジェクトの作成日:10月26日以降に作ったものがあるか。外注先が作ったプロジェクトも含めて洗い出す。
- 流しているデータ:顧客名・連絡先・契約書・社外秘の数字が入るか。入るなら保存を止めるか、
store=falseの対象にする。 - 保持期間:保存を続けるなら 55日のままでよいか。デバッグ用なら 7日や 14日で足りることが多い。
- 見られる人:プロジェクトの権限を持つ人がログを読める。退職者や外注先のアカウントが残っていないか。
- データセットの共有:Google に共有したデータセットは学習に使われうる。共有しない運用を社内ルールに書いておく。
同じ「API のデータをどこまで残すか」という論点は、OpenAI ではゼロデータ保持(ZDR)として整理されています。データを学習に使わせる代わりに単価が下がる Google の別の枠についてはGemini API Contributor Tierの記事で、入れてよい業務・いけない業務を判断表にしています。
社内の AI ツールを自前で組んでいる会社ほど、こうした既定値の変更に気づきにくいものです。私たちは、社内データを扱う AI の仕組みを、ログや権限の設計まで含めて組み立てるお手伝いもしています。記事の途中で恐縮ですが、自社の使い方で大丈夫か気になる方は、よろしければ合わせてご覧いただけたら嬉しいです。
まとめ
2026年10月26日から、有料枠で新しく作った Gemini API プロジェクトでは Generate Content API のリクエストが既定で保存されます。保存されるだけで既定では学習には使われませんが、プロンプトの中身が最長55日(既定)ログ画面に残ります。社外秘や個人情報を流すなら、AI Studio の設定でオフにするか、store=false と SDK の更新で止め、保持期間と閲覧権限を決めておきましょう。
よくある質問
Gemini APIのリクエストは保存されるようになったのですか?
2026年10月26日以降に有料枠で作成したプロジェクトでは、Generate Content APIのリクエストが既定で保存されます(store=true)。それ以前に作成したプロジェクトは、AI Studioでログを有効にしていない限り保存されない設定のままです。Interactions APIは以前から既定で保存されます。
保存されたログはGoogleのAI学習に使われますか?
Googleのログの方針では、ログは有料枠のプロジェクトでのみ保存されるため、既定ではプロンプトと応答は製品の改善や開発に使われません。ログからデータセットを作ってGoogleに共有した場合は、無料サービスの条件で扱われ、学習に使われることがあります。
Gemini APIのログ保存をオフにする方法は?
Google AI Studioのログ画面のSettingsでGenerate Content APIのログをオフにするか、リクエストごとにstore=falseを指定します。リクエスト単位の指定はプロジェクトの設定より優先されます。Pythonのgoogle-genaiは2.33.0以降、JavaScriptの@google/genaiは2.31.0以降が必要です。
ログは何日間残りますか?
既定では55日で削除の対象になります。プロジェクトごとに7日・14日・28日・55日から選べます。データセットに保存したログには保持期間がありません。