Mihata
仕事効率化(DX)2026.09.18

陸上タイム計測|ストップウォッチの使い方と手動計時+0.24秒

結論から言うと、ストップウォッチによる手動計時は、電気計時(写真判定システム)より必ず速いタイムが出ます。World Athletics の公式得点表は、手動計時の記録を電気計時と同じ土俵に載せるとき、200mまでの短距離・ハードルに0.24秒、300m・400m・400mHに0.14秒を加えると定めています。だから部内のストップウォッチ記録を公認記録と並べて一喜一憂するのは、始める前から筋の悪い比較です。手動計時は手動計時どうしで比べる。ここが計測担当の出発点になります。

その上で、日本陸連の競技規則は押し方まで決めています。時計はピストルの音ではなく「閃光または煙」から始動する(TR19.7)。トラックでの記録は0.1秒単位に切り上げる(TR19.10.1)。この2つを守るだけで、部活やスクールの計測は一気に公式のやり方へ近づきます。

結論:手動計時と電気計時は、別の土俵として扱う

日本陸連の競技規則(TR19 計時)は、公式の計時方法として「手動計時」「写真判定システムによる全自動計時(電気計時)」「トランスポンダーシステム」の三つを認めています。つまり手動計時そのものは正式な計時方法です。ただし扱いは電気計時と同じではありません。

項目

手動計時(ストップウォッチ)

電気計時(写真判定システム)

何で時計を始動するか

スタート信号器の閃光または煙(TR19.7)

信号器の合図で自動的に始動

トラック競技の記録の丸め

ちょうど0.1秒で終わる以外は次のより長い0.1秒へ切り上げ(例 10.11→10.2)

0.01秒単位

競技場外(道路など)の丸め

0.1秒の位が「.0」でなければ次のより長い1秒へ切り上げ(例 2:09:44.3→2:09:45)

0.01秒単位

世界記録での扱い

800m(4×200mリレー・4×400mリレーを含む)までは認められない

写真判定システムの記録のみ承認

得点表に載せるときの換算

200mまでの短距離・ハードルは+0.24秒、300m・400m・400mHは+0.14秒

換算なし

つまり、手動計時が速く出るのは腕前の問題ではなく仕組み上そうなるということです。世界記録の公認でも、競技会規則 CR31.14.2 が「800m(4×200mリレー・4×400mリレーを含む)までの種目の世界記録は、写真判定システムによって記録された時間のみが承認される」と定めています(World Athletics の競技規則も同じ内容です)。手動計時の世界記録が認められるのは1,000m以上の種目です。距離が長いほど、始動と停止のズレが記録全体に占める割合が小さくなるからです。

ラップタイムとスプリットタイムの違い

計測担当が最初につまずくのがこの2語です。日本では一般に、ラップタイム=直前の区切りからの区間タイムスプリットタイム=スタートからの累計タイムとして使い分けます。ストップウォッチのラップボタンは1回押すと、多くの機種でこの両方を1行に記録します。

地点

スプリットタイム(スタートからの累計)

ラップタイム(前の区間から)

読み取れること

100m

12.8

12.8

入りの速さ

200m

25.9

13.1

加速の維持

300m

39.6

13.7

失速の始まり

400m

53.8

14.2

最後の落ち幅(+1.4秒)

同じ「53.8」でも、区間が「12.8/13.1/13.7/14.2」なのか「13.4/13.4/13.5/13.5」なのかで練習の処方は変わります。累計だけメモしていると、この差が後から復元できません。記録用紙には累計と区間の両方の列を作るのが安全です。

なお競技規則の表現はまた別で、TR19.3 は「800m以上のレースのラップタイム」「3,000m以上では1,000mごとの途中時間」を可能な限り計時するよう求めています。規則上の用語と現場の言い回しは必ずしも一致しないので、チーム内ではどちらを記録するのかを最初に決めて用紙の見出しに書いておくのが確実です。

手動計時の手順:誤差を小さくする押し方

立つ場所を先に決める

規則では、計時員はフィニッシュラインの延長線上に位置し、できれば外側のレーンから少なくとも5mのところに1列に並びます(TR19.4)。フィニッシュラインがよく見えるよう階段式の審判台を用意するとも書かれています。斜めから見るとラインの通過が見えにくく、それがそのまま誤差になるからです。学校のグラウンドでも、ゴールラインの真横(延長線上)に立ち、少し高い位置から見るだけで再現性が変わります。

止めるタイミングは、競技者の胴体(トルソー)がフィニッシュラインの手前の端の垂直面に到達した瞬間です(TR19.2)。頭・首・腕・脚・手・足は含みません。手や足の突っ込みで押してしまうと、その分だけ速く出ます。

誤差はどこから生まれるか

手動計時の誤差は、大きく3つに分けて考えると対処できます。

  • スタート側の反応:音で押すと、音が届くまでの時間と反応時間の両方が乗ります。だから規則は閃光または煙から計測すると決めています(TR19.7)。スターターの手元を見続け、煙が見えた瞬間に押す。「バン」を待たないのが鉄則です。
  • フィニッシュ側の反応:World Athletics の計時員向け手引きは、フィニッシュを先読みして押してはいけない、競技者がラインに到達したのを「見てから」止めると明記しています。先読みはそのまま速すぎる記録になります。
  • 目視のズレ:立ち位置が斜め、ラインが見えない、隣の選手と重なる。同じ手引きは、0.2秒未満の差で並んだ2人を1人の計時員が正確に計ることはできないと述べ、短距離では1人の計時員が1つの記録だけを取ることを推奨しています。

この3つのうち、道具で減らせるのは最後の1つだけです。残り2つは人の配置と合図の決め方でしか縮みません。だから「良いストップウォッチを買う」より先に、立ち位置と押す合図を揃えるほうが効きます。

3台で計って、決まった手順で1つに決める

公式のレースでは、1着の時間は必ず3個の時計で記録します(TR19.8)。各計時員は他の計時員と相談せず自分の計時を用紙に書いて署名し、計時員主任に提出します(TR19.9)。「お互いの数字を見て合わせる」のは規則が禁じている行為です。そして3つの値の採用方法まで決まっています。競泳とは決め方が違うので、両方を並べておきます。

状況

陸上競技(日本陸連 TR19.11)

競泳(日本水泳連盟 11.3)

3台のうち2台が一致

一致した2台の時間を公式記録に

一致した2台の時間を公式時間に

3台とも異なる

中間の時間を公式記録に

中間の時間を公式時間に

2台しか計れなかった

遅い方の時間を公式記録に

平均の時間を公式時間に(1/1000秒の位は切り捨て)

記録の細かさ

0.1秒へ切り上げ(トラック)

1/100秒まで記録

部活で3人そろわない日もあります。そのときは「今日は2台なので遅い方を採る」と先に宣言してから計ると、記録の意味がぶれません。後から決めると、都合のいい方を選んだように見えてしまいます。

ブラウザで使える無料ストップウォッチ。1/100秒まで計測でき、ラップ記録にも対応。

1台で複数の選手を計る現実的な手順

本来は人数分の計時員を置くのが正解です。World Athletics の手引きは、6レーンで各選手を3個の時計で計るなら計時員は最低9名、8レーンなら12名(2つの時間を記録できる時計を持っている前提)としています。学校の部活でこの人数は現実的ではありません。そこで実務では、1台のストップウォッチでラップを連打する形になります。

  1. スタートで時計を始動する(煙・閃光を見て押す)。
  2. 1人ゴールするたびにラップを1回押す。押すことに専念し、誰が何番目かは別の人が声に出して読み上げる。
  3. レース後、ラップ一覧の累計(スプリット)をそのまま各選手のタイムとして書き写す。ラップ一覧の「区間」の列は、この使い方では着順どうしの差を表す数字になります。
  4. 着順メモと突き合わせて名前を入れる。ここを後回しにすると必ず混ざります。

この方法の限界もはっきりしています。0.2秒より接近した2人は、1人・1台では計り分けられません(前述の手引き)。接戦が予想される組だけは人を増やす、あるいは順位だけ着順審判に任せてタイムは1着だけ計る、と割り切るほうが正確です。長距離のように選手が十分に離れてゴールする種目では、1台の連打でも実用に足ります。手引き自身も、長距離では複数記録できる時計や読み上げ役と記入役の分担で全員の記録を取る方法を紹介しています。

ラップを何本も積む使い方そのものに慣れておきたい場合は、ラップ記録に対応した無料Webストップウォッチを比較した記事で、記録の保存や書き出しの有無を確認しておくと当日あわてずに済みます。

特別な道具がなくても、ブラウザのストップウォッチで今日の練習から始められます。Mihata の集中時計のストップウォッチは、インストールもアカウント登録もなく、URLを開くだけで使えます。ラップを押すと区間タイムと累計タイムが1行に並んで残り、いちばん速い区間と遅い区間に色が付きます。表示は1/100秒まで、記録は端末のブラウザ内にだけ保存され、リロードしても経過時間は時刻の差分から計算し直すので途中で消えません。公式計時の代わりになるものではありませんが、練習の計測と記録づくりには十分使えます。

種目別の計測設計:どこに人を置くか

同じ「タイム計測」でも、種目によって難所が違います。設計の勘どころを並べます。

種目

いちばんの難所

人の置き方

記録の粒度

陸上・短距離(〜400m)

スタートの合図と接戦のゴール

1人1記録が原則。1着は3台で計る(TR19.8)

0.1秒へ切り上げ。比較用に+0.24秒/+0.14秒の換算を併記

陸上・中長距離(800m〜)

周回の数え間違いとラップの取りこぼし

ラップ係と記入係を分ける。周回係と連携(3,000m以上は1,000mごとの途中時間)

ラップは0.1秒単位。ペース表を先に作っておく

競泳

タッチの瞬間の見え方とレーンの担当割り

1レーン最低1名+時計の不具合に備えた補助計時員1名。各レーン3名が望ましい

1/100秒まで。200m以上は途中時間を記録(2.9.2)

自転車・持久系(周回・ロング)

集団通過の同時多発と長時間の集中維持

通過ポイントごとに読み上げ役と記入役を分ける。交代要員を置く

累計(スプリット)を主に、区間は後から差で算出

競泳では、日本水泳連盟の競泳競技規則が「全自動装置の記録は計時員の記録より優先する」と定めたうえで、装置が故障した場合に備えて計時員を置くよう求めています。リレーでは先頭を泳ぐ泳者の50mごと・100mごとの途中時間を公表することになっており、ラップは記録係の仕事として最初から組み込まれています。スクールの記録会でも、レーンごとの担当と補助を先に決めておけば同じ形で回せます。

記録の残し方:その場でラップ、あとで表計算

計測当日にやることと、後からやることを分けるのがコツです。現場で集計まで済ませようとすると、必ずどこかを取りこぼします。

  1. その場:ラップを刻む。押すことと着順メモだけに集中する。数字の清書はしない。
  2. レース直後:ラップ一覧を見ながら、用紙に「選手名・累計・区間」を書き写す。時計をリセットするのはこの後。リセットは全部書き終えてからが鉄則です。
  3. その日のうち:表計算に転記する。1行=1人×1区間にすると、後から平均や前回比が出せます。日付・種目・風・路面・計時方法(手動/電気)の列も作っておきます。
  4. 次に活かす:手動計時どうしで前回と比べる。公認記録と比べたいときだけ、+0.24秒/+0.14秒の換算を使う。

World Athletics の手引きも、長距離ではあらかじめ目標タイムからの通過表(progress chart)を作っておくことを勧めています。「13分25秒で5,000mなら1,000mは2分41秒」といった表を手元に置くと、その場で速い遅いが判断でき、記録係の迷いも減ります。この準備は紙1枚でできます。

計測そのものではなく経過時間だけを淡々と数えたい場面なら、経過時間を数え上げるカウントアップタイマーの使い方のほうが画面が素直です。インターバル走やサーキットで休憩を管理したいならセット間の休憩を計るレストタイマー、複数のグループを並行して回すなら複数のタイマーを同時に走らせる方法が近道になります。

まとめ:押す合図と土俵を先に決める

手動計時は「正確さで電気計時に勝てない道具」ではなく、ズレ方が分かっている道具です。煙で押す、延長線上に立つ、3台で計って決まった手順で1つに決める、0.1秒へ切り上げる。規則が決めている手順をそのまま真似るだけで、部活やスクールの記録は比較に耐えるものになります。そして公認記録と並べるときは、+0.24秒/+0.14秒という換算があることを思い出してください。

練習の記録づくりやチームの運用について相談したいことがあれば、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

手動計時と電気計時では、どのくらいタイムが違いますか?

World Athletics の得点表では、手動計時の記録を得点表に載せる前に、200mまでの短距離・ハードルには0.24秒、300m・400m・400mハードルには0.14秒を加えると定められています。手動計時のほうが速い数字が出るため、公認記録と直接比べるときはこの換算を使います。

ストップウォッチはピストルの音で押してよいですか?

日本陸連の競技規則TR19.7では、計時はスタート信号器の閃光または煙から計測すると定められています。音で押すと音が届くまでの時間が加わるため、スターターの手元を見て煙や光が見えた瞬間に押します。

ラップタイムとスプリットタイムはどう違いますか?

一般にラップタイムは直前の区切りからの区間タイム、スプリットタイムはスタートからの累計タイムを指します。多くのストップウォッチはラップを1回押すと両方を記録します。用紙にも累計と区間の両方の列を作ると、後からペース配分を復元できます。

ストップウォッチ1台で複数の選手を計れますか?

ゴールするたびにラップを押し、後から累計を各選手のタイムとして書き写せば可能です。ただしWorld Athletics の計時員向け手引きは、0.2秒未満の差で並んだ2人を1人の計時員が正確に計ることはできないとしています。接戦が予想される組は人を増やすか、1着だけを計るほうが確実です。

3人で計ってタイムが割れたときはどうしますか?

陸上では、2台が一致すればその時間、3台とも違えば中間の時間、2台しか計れなかった場合は遅い方を公式記録とします(TR19.11)。競泳では2台だけの場合は平均を公式時間とし、1/1000秒の位を切り捨てます(11.3)。計時員どうしで数字を見せ合って相談することは規則で禁じられています。

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