「Gemini 3.5 Proを使いたいのに、どこにも見当たらない」——2026年7月末の時点で、この検索をしている方がとても多いはずです。結論から言うと、探しても見つからないのは設定の問題ではなく、まだ一般には公開されていないからです。この記事では、なぜここまで遅れているのか、その裏で何が起きているのか、そして今日から実際に使えるものは何かを、公式発表と一次報道だけを根拠に整理します。
最終更新: 2026年7月27日|提供状況が変わるたびに更新します。
結論:Gemini 3.5 Proは2026年7月27日時点でまだ一般提供されていない
Gemini(ジェミニ)3.5 Proは、2026年5月19日のGoogle I/Oで予告されたGeminiシリーズの次期フラッグシップですが、2026年7月27日時点で一般提供(GA)されていません。Google DeepMindの公式モデルページでも「3.5 Pro coming soon(近日公開)」の表記のままで、Geminiアプリ・Google AI Studio・一般公開APIのいずれにも載っていません。
Googleの公式見解も同じです。2026年7月22日のAlphabet 2026年第2四半期決算で、CEOのSundar Pichai氏は「Gemini 3.5 Pro is currently in testing.(Gemini 3.5 Proは現在テスト中)」とだけ述べ、提供日には触れませんでした(Alphabet Q2 2026 決算にあたるCEOメッセージ(Google公式ブログ))。当初の目標だった6月、報道で伝えられた7月17日という2つの節目は、いずれも過ぎています。
つまり「使えない」のは正常な状態です。今できる現実的な選択は、2026年7月21日に一般提供が始まったGemini 3.6 Flash(無料枠あり)で先に進めることです。以下、遅延の経緯・その裏で起きているねじれ・今すぐ使えるモデルの順に見ていきます。
そもそもGemini 3.5 Proとは:番号の混乱を先に解いておく
本題に入る前に、多くの人がつまずくポイントを片付けておきます。Geminiのバージョン番号は「大きい=新しくて上位」ではありません。ここを取り違えたまま比較記事を読むと、話が噛み合わなくなります。
Geminiには大きくPro系(品質重視の上位ライン)とFlash系(速度とコスト重視のライン)があり、この2つは別々のペースで世代更新されています。そのため「3.6 Flash(最新のFlash)」と「3.1 Pro(現行のPro)」が同時に存在し、番号だけ見ると3.6のほうが新しいのに、上位ラインは3.1という状態になります。3.5 Proは「Pro系の次の世代」にあたり、まだそのラインが更新されていない、というのが正確な理解です。
そのうえで、Gemini 3.5 ProがGoogle I/Oで予告された内容を整理すると、狙いは2つでした。ひとつは深い推論——時間をかけて考え、複雑な問題を解く力。もうひとつはエージェント能力——人が1手ずつ指示しなくても、調査から実行まで手順を自分で進める力です。3.5世代はこの「賢さ×実際に行動する力」を組み合わせたモデル群として発表され、その上位版が3.5 Proという位置づけでした。
ちなみに、Ultraプランの目玉として知られる推論モード「Deep Think」は、現在「Gemini 3.1 Deep Think」として独立したモデルとして提供されています。「3.5 ProにDeep Thinkが載る」という記述をよく見かけますが、これはGoogleが公式に明言したものではありません。
なぜ出ていないのか:遅延の経緯を時系列で
3.5 Proは「発表されてから2か月以上、公開目標を3回外している」という状態です。まず経緯を時系列で押さえます。
時期 | 何が起きたか | 結果 |
|---|---|---|
2026年5月19日 | Google I/Oで3.5 Pro・3.5 Flashを発表。当日GAしたのはFlashのみ。Pichai氏は壇上で「Give us until next month to get it to you(お届けまで、あと1か月ください)」と説明 | 6月GAが公式目標に |
2026年6月 | 6月中のGAは実現せず。6月下旬、Googleはコーディング性能を上げるため学習データを刷新 | 1回目の未達。データ刷新の結果も期待外れと報じられる |
2026年7月16〜17日 | Bloombergが遅延の内情を報道。報道で目標とされた7月17日も通過 | 2〜3回目の未達 |
2026年7月21日 | Gemini 3.6 Flash・3.5 Flash-Lite・3.5 Flash Cyberを発表(3.5 Proではない) | Flash系だけが前進 |
2026年7月22日 | Alphabet Q2決算でPichai氏「3.5 Proは現在テスト中」。同時にGemini 4の事前学習開始を公表 | 提供日は依然として未定 |
2026年7月27日(現在) | 公式ページは「coming soon」のまま。報道ベースでは一部のVertex AIエンタープライズ顧客の限定プレビューにとどまる | 一般提供なし |
理由は「コーディング性能が社内目標に届いていない」こと
遅延の理由は、Googleの気まぐれではなく明確です。Bloombergが2026年7月16日に報じ、9to5GoogleとeWeekが詳報した内容によれば、Googleは3.5 Proのコーディング能力を高めるために時間を使っており、6月下旬に学習データを差し替えたものの「結果は期待外れ(the results were disappointing)」だったとされます(Gemini 3.5 Proの遅延を伝える9to5Googleの記事/同じくeWeekによる続報)。元記事のBloombergの報道(有料記事)も併せて挙げておきます。
Googleの広報コメントとして両紙が伝えているのは、「We're currently testing 3.5 Pro, an upgraded Flash model, and other models with partners(3.5 Pro、アップグレード版Flash、その他のモデルをパートナーとテスト中)」という一文です。ここで言う「アップグレード版Flash」が、7月21日に出た3.6 Flashにあたると読むのが自然です。
なぜコーディングでそこまで粘るのか。理由は競争環境にあります。2026年前半はOpenAI・Anthropicが相次いでコーディング特化の改良版を投入しており、フラッグシップがコーディングで見劣りすると評価そのものが決まってしまう、という力学が働いています。中途半端な状態で出すより遅らせる、という判断は、ユーザー側から見れば不便でも、モデルの完成度としては合理的です。
「延期」という公式発表は、実は一度も出ていない
ここは誤解が多いポイントです。Googleは「延期します」という公式アナウンスを出していません。出しているのは「テスト中」「準備ができ次第」というコメントだけで、そもそも6月以降は公式に日付をコミットしていないのです。
そのため、ネット上で見かける「◯月◯日に延期」という表現は、ほぼすべて報道・観測にもとづくものです。業務の予定を組む際は、「Googleが日付を約束していない」という前提で考えるのが安全です。
「GA目前」「ついに公開」という記事の見分け方
この2か月、3.5 Proについては「まもなく公開」「GA目前」といった見出しの記事が繰り返し出ては外れるという状態が続いています。検索して混乱するのはそのためで、読者側に落ち度はありません。
見分け方はシンプルで、次の3点のどれかを満たしていなければ「まだ出ていない」と判断して構いません。
- Gemini APIのリリースノートに載っているか:Googleがモデルを一般提供するときは必ずここに追記されます。3.6 Flashと3.5 Flash-Liteは2026年7月21日付で記載されましたが、3.5 Proの記載はありません。
- 公式の料金ページに行があるか:APIで使えるモデルには必ず価格が載ります。3.5 Proの行はまだ存在しません。
- DeepMindのモデルページの表記:「coming soon」が外れているかどうかが、最も分かりやすい判定基準です。
逆に言えば、この3つを自分で見に行けば、どんな記事より早く正確に状況を確認できます。ブックマークしておくべきなのは解説記事ではなく、この3ページです。
参考:予測市場は「8月中」に傾いている
公式発表がない以上、時期の目安として使えるのは予測市場くらいです。Polymarketの「Next Google Gemini Pro Model released by...?」市場(2026年7月10日開設)を2026年7月27日時点で確認したところ、「8月7日までに公開」が約23%、「8月31日までに公開」が約82%、総取引額は約329,199ドルでした(Polymarket「Next Google Gemini Pro Model released by...?」市場)。
ただしこれは賭けの市場であって、Googleの計画ではありません。「7月中はほぼ望み薄、8月中の可能性が高いと市場は見ている」という程度の温度感として扱ってください。数値は日々変動します。
⚠️ 3.5 Proより先に「Gemini 4」の話が出ているというねじれ
ここが、この状況でいちばん見落とされている点です。3.5 Proがまだ出ていないのに、Googleはすでにその次の世代であるGemini 4に言及しました。
2026年7月22日のAlphabet Q2決算で、Pichai氏は「We have started our most ambitious pre-training run yet, for Gemini 4, and are excited by the progress we are seeing at the frontier.(Gemini 4について、これまでで最も野心的な事前学習を開始した。フロンティアで見えている進捗に期待している)」と公式に述べています。つまり、未提供の3.5 Proと、事前学習が始まったGemini 4が同じ決算資料の中に並んでいるわけです。
この決算では、Geminiアプリの月間アクティブユーザーが9.5億人、モデルの処理量が毎分およそ220億トークン(前四半期の160億から増加)といった数字も示されました。需要は明確に伸びており、遅れているのは需要不足ではなく品質側の事情であることが読み取れます。
このねじれをどう読むか
「3.5 Proは飛ばされてGemini 4になるのでは」と考える方もいますが、それは早計です。事前学習(pre-training)はモデル開発の最初の工程で、そこから調整・安全性評価・提供準備を経て公開に至るため、事前学習開始から一般提供までは通常数か月かかります。3.5 Proとは時間軸がまったく違います。
むしろ現実的な読み方は次の3つです。
- 3.5 Proは「出す」前提で調整が続いている:Googleは決算で明確に「テスト中」と言っており、開発中止を示す発言はありません。
- Gemini 4の言及は投資家向けのメッセージでもある:フラッグシップが遅れている状況で「次世代はすでに動いている」と示すことには、競争上の意味があります。
- 3.5 Proが出ても、旬は長くない可能性がある:Gemini 4が視野に入っている以上、3.5 Proの導入計画を長期前提で組むのはリスクがあります。
この読み方は、導入計画にそのまま効いてきます。「3.5 Proが出たら本格導入する」という前提で年間の予算や体制を組むのは、現時点では危険です。出る日が約束されていないうえ、出たとしても数か月後には次世代が視野に入っているからです。少なくとも、AIツールの年間契約や長期のライセンス購入を「3.5 Proありき」で決めるのは避けてください。
もうひとつ押さえておきたいのは、Googleが「出さない」とは一言も言っていないことです。開発中止であれば決算という場でわざわざ「テスト中」とは言いません。過度に悲観する必要はなく、「出るが、日程は読めない」という中間の構えが実態に合っています。
Gemini 4そのものの時期や見込み機能については、Gemini 4はいつ出るのか(公式言及と時期の整理)で詳しく扱っています。この記事では深入りせず、「3.5 Proはどうなるのか」に話を戻します。
じゃあ今なにを使えばいい?
実務的にはここが本題です。3.5 Proを待つ間、2026年7月21日に一般提供が始まったGemini 3.6 Flashが、事実上の「今の主力」になっています。Gemini APIのリリースノートでも、同日に3.6 Flashと3.5 Flash-Liteが一般提供(GA)になったことが明記されています。
今日から使えるモデルと料金(API・100万トークンあたり)
モデル | 入力 | 出力 | 無料枠 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
Gemini 3.6 Flash(2026/7/21 GA) | 1.50米ドル | 7.50米ドル | あり | いま新規に始めるならまずこれ。コーディング・エージェント計画性が改善 |
Gemini 3.5 Flash | 1.50米ドル | 9.00米ドル | あり | 引き続き利用可。出力単価は3.6 Flashのほうが安い |
Gemini 3.5 Flash-Lite(2026/7/21 GA) | 0.30米ドル | 2.50米ドル | あり | 大量処理・自動化のサブエージェント用。毎秒約350トークンの高速動作 |
Gemini 3.1 Pro(プレビュー) | 2.00〜4.00米ドル | 12.00〜18.00米ドル | なし | 現行の上位版。難しい分析・長文横断・品質重視 |
Gemini 3.5 Flash Cyber | 非公開 | 非公開 | — | 脆弱性の発見・検証・修正に特化。政府機関と信頼できるパートナー限定のパイロット |
Gemini 3.5 Pro | 未公表 | 未公表 | — | 未提供(coming soon) |
料金はいずれもGemini API 料金ページ(Google公式)の公表値です。注意したいのは3.5 Flash Cyberは誰でも使えるモデルではない点で、デュアルユース(攻撃にも使える)への配慮から提供先が絞られています。「7月に3つ出た」という報道を見て自社で使えると誤解しないようにしてください。
3.6 Flashは3.5 Flashから何が良くなったのか
「Proが出ないから仕方なくFlash」ではありません。3.6 Flashは値下げと性能向上が同時に起きているアップデートです。ITmediaの報道によれば、Artificial Analysis Indexで3.5 Flash比の出力トークン使用量が約17%減少し、一部のベンチマークでは最大65%削減されたとされています(Google「Gemini 3.6 Flash」など3モデルを発表(ITmedia AI+))。
ベンチマークの数値では、コーディング系のDeepSWEが37%から49%へ、機械学習タスクのMLE Benchが49.7%から63.9%へ、PC操作系のOSWorld-Verifiedが78%から83%へ改善しています。入力コンテキストは約100万トークン(1,048,576トークン)です。
ここで実務的に効くのは「出力トークンが減って、しかも出力単価が9.00米ドルから7.50米ドルに下がった」という二重の効果です。同じ仕事をさせたときのAPI費用は、単価の差以上に下がる可能性があります。大量処理をAPIで回している場合、3.5 Flashのまま放置せず3.6 Flashに切り替えるだけでコストが改善するケースがあります。
Vertex AIの限定プレビューには申し込めるのか
報道ベースでは、3.5 Proは一部のVertex AIエンタープライズ顧客向け限定プレビューで動いているとされます。ただしこれはGoogleが選定した承認済み顧客に限られる枠組みで、一般の申し込み窓口が公開されているわけではありません。
すでにGoogle Cloudの担当者がついている規模の企業であれば、営業経由で早期アクセスの可否を確認する価値はあります。一方で、そうした接点がない中小企業が「限定プレビューに入る方法」を探すのは、現実的に時間の使い方として得策ではありません。素直に3.6 Flashで進めるほうが早く成果が出ます。
個人・法人向けプラン(Geminiアプリ)
アプリ側の有料プランで割り当てられる最上位モデルは、現時点でも3.5 Proではなく3.1 Proです。プランを上げても3.5 Proは使えません。
プラン | 月額(税込・公式表記) | 使える上位モデル | 備考 |
|---|---|---|---|
無料 | 0円 | Gemini 3.6 Flash+3.1 Proへの制限付きアクセス | まずはここで十分なケースが多い |
Google AI Plus | 725円 | Gemini 3.1 Pro | 無料版の約2倍の利用量上限 |
Google AI Pro | 2,900円 | Gemini 3.1 Pro | 無料版の約4倍の利用量上限 |
Google AI Ultra | 14,500円(上位枠は32,000円) | Gemini 3.1 Pro+Deep Think・Gemini Spark等 | 無料版の5倍/20倍の利用量上限 |
「3.5 Proを使いたくてUltraに入る」という判断は、現時点では意味がありません。Ultraで得られるのは利用量の上限と、Deep Think・Gemini Sparkといった先行機能へのアクセスであって、3.5 Proではないからです。ここは課金前に必ず確認してください。
今すぐ始める手順(3ステップ)
3.6 Flashを試すのに、申し込みや順番待ちは要りません。
- Geminiアプリ/Webで使う:ブラウザまたはアプリでGoogleアカウントにログインすれば、無料でGemini 3.6 Flashが使えます。文章作成・要約・アイデア出しはこれで十分カバーできます。
- Google検索のAIモードで使う:調べものの延長でそのままAIに聞けます。まず社内で「AIに慣れる」段階なら、この入口がいちばん摩擦が小さいです。
- APIで自社ツールに組み込む:Google AI StudioでAPIキーを取得すれば、無料枠の範囲で試せます。社内チャットボットや定型処理の自動化はここから始めます。
使い始めのコツは、いきなり難しい依頼をせず「読み込ませる資料」と「してほしいこと」を分けて伝えることです。3.6 Flashの詳しい仕様・3.5 Flashとの違いはGemini 3.6 Flashの料金と使い方にまとめています。
Gemini 3.5 Proで「分かっていること」と「分かっていないこと」
この記事で最も気をつけたのがここです。3.5 Proについてネット上に出回っている数値の多くはGoogle公式ではなく報道・リークで、日本語記事では両者が混ざったまま書かれていることが少なくありません。分けて整理します。
項目 | 状態 | 内容 |
|---|---|---|
提供状況 | 確定 | 2026年7月27日時点で一般提供なし。DeepMind公式ページは「coming soon」 |
Googleの姿勢 | 確定 | 7月22日の決算で「現在テスト中」。パートナーとのテスト段階と公式コメント |
遅延の理由 | 報道(複数紙が一致) | コーディング性能が社内目標に未達。6月下旬の学習データ刷新も結果は期待外れ |
提供日 | 未確定 | Googleは日付を公表していない。予測市場は8月中を織り込む |
200万トークンのコンテキスト | 未確認 | 報道ベース。公式ページに記載なし。公式に確認できるのは3.1 Proの100万トークンまで |
Deep Think搭載 | 未確認 | Deep Thinkは現在「Gemini 3.1 Deep Think」として別モデル扱い。3.5 Proへの搭載は公式に明言されていない |
API料金 | 未公表 | 公式の価格表に3.5 Proの行はまだない |
現在の利用範囲 | 報道 | 一部のVertex AIエンタープライズ顧客の限定プレビューにとどまるとされる |
実務的な結論はシンプルです。3.5 Proについて確実に頼れるのは「まだ出ていない・仕様は未発表」という点まで。それ以外の数値を前提に社内資料や見積もりを作ると、公開時に前提ごと崩れます。
他社の同格モデルと比べてどうか
3.5 Proを待っている間にも、他社のフラッグシップは提供済みです。ここが「待つべきか」の判断材料になります。以下は各社の最上位クラスを横並びにしたものです(API価格・100万トークンあたり)。
モデル | 入力/出力 | コンテキスト | 提供状況(2026/7/27) |
|---|---|---|---|
Gemini 3.5 Pro(Google) | 未公表 | 未公表(報道では200万) | 未提供 |
Gemini 3.1 Pro(Google・現行上位) | 2.00〜4.00/12.00〜18.00米ドル | 100万トークン | 提供中(APIはプレビュー) |
GPT-5.6 Sol(OpenAI) | 5.00/30.00米ドル | 約100万トークン | 提供中(2026年7月9日GA) |
Claude Opus 5(Anthropic) | 5.00/25.00米ドル | 100万トークン | 提供中(2026年7月24日公開) |
GPT-5.6の価格・提供状況はOpenAI API料金の集計ページ(2026年7月27日更新)、Claude Opus 5の価格とコンテキストはAnthropic公式のClaude Opusページにもとづきます。Opus 5はClaude Pro/Max/Team/Enterpriseと各社クラウド経由で提供されています。
ここから読み取れる構図は明快です。「最上位クラスを今すぐAPIで使いたい」なら、選択肢はGoogle以外にすでにあるということ。逆に言えば、Google純正にこだわる理由(Workspace連携、既存のGoogle Cloud環境、日本語での使い勝手など)がなければ、待つ必然性は高くありません。それぞれの詳細はGPT-5.6は日本でいつ使えるかとClaude Opus 5の料金とプランで扱っています。
乗り換えるべきか:判断軸は「データがどこにあるか」
「3.5 Proを待つくらいなら他社へ」と考える前に、確認すべきことがひとつあります。普段の業務データがどこに置かれているかです。ここが乗り換えコストの大半を決めます。
Googleドライブ・スプレッドシート・Gmailで日々の業務が回っているなら、Geminiは同じアカウントの延長で使えます。資料をいちいち書き出して別サービスに貼り直す手間が発生しないぶん、モデル単体の性能差より、この運びやすさのほうが実務では効くことが多いです。逆に、開発やコード生成が中心で、すでにAPI経由の自動化を組んでいるなら、モデルを差し替えるコストは小さく、他社を選ぶ判断も十分現実的です。
要するに、比較すべきは「ベンチマークの点数」ではなく「自社の作業導線に何本の余計な手順が増えるか」です。この観点で見れば、多くの中小企業にとって答えは「Geminiを軸に置きつつ、重い仕事だけ他社を併用する」に落ち着きます。
中小企業はどう構えるか:3つの選択肢と判断軸
「3.5 Proを待つべきか」という質問には、一律の答えはありません。判断軸は「今の業務が上位モデルを本当に必要としているか」の一点です。次の表で自社の位置を確認してください。
選択肢 | こんな場合に | 具体的な動き | 注意点 |
|---|---|---|---|
A. 待つ | Google Workspace中心で、社内標準をGeminiに寄せると決めている。急ぎの案件がない | いまは3.6 Flashで業務の型(プロンプト・手順・チェック体制)だけ作っておく | 提供日は約束されていない。「◯月に入る前提」で稟議や予算を組まない |
B. 今のFlashで進める | 要約・下書き・分類・問い合わせ一次対応など、大半が定型業務 | 3.6 Flash(無料枠あり)で本番運用まで持っていく。量が多い処理は3.5 Flash-Liteに寄せる | Flashで足りるのに上位モデルを待って着手が止まるのが最大の損失 |
C. 併用する | 難しい分析・長文横断・コーディング支援が業務の中心にある | 日常はGemini 3.6 Flash、重い仕事はGPT-5.6やClaude Opus 5を併用 | アカウント管理と情報の入力ルールが二重になる。社内ルールを先に決める |
多くの中小企業に当てはまるのはBです。実際、日々の業務で本当に最上位モデルでなければ解けない仕事は、体感よりずっと少ないというのが正直なところです。まず3.6 Flashで運用を回し、「Flashだと明らかに品質が足りない業務」が具体的に3つ以上挙がってから上位モデルを検討する、という順番が失敗しにくい進め方です。
上位モデルが本当に効く業務・そうでない業務
「どこで上位モデルが効くのか」を業務レベルで分けると、判断が一気に楽になります。
- 上位モデルが効く:契約書・仕様書など長い資料を横断して矛盾を洗い出す/複数条件がからむ事業計画や価格設計の壁打ち/調査から下書き・整理までを複数ステップで任せる作業。
- Flashで十分:問い合わせメールの下書き、議事録の要約、商品説明文の量産、社内文書の表記統一、FAQの分類。件数が多く1件が軽い作業は、むしろ速いFlashのほうが実務では強いです。
- どちらでも慎重に:法務・税務・労務の判断、最新の出来事の事実確認。モデルの賢さに関係なく、一次情報と専門家の確認が必要です。
この状況でありがちな落とし穴
実際に相談を受けていて多いのが、次の3つです。
- プランを上げれば使えると思って課金する:前述のとおり、Google AI Ultra(月14,500円〜)に入っても3.5 Proは使えません。上がるのは利用量の上限と先行機能へのアクセスです。
- 「3.5 Pro前提」で見積もりや稟議を作ってしまう:料金もコンテキスト長も未公表です。数値が確定していないものを前提に計算した資料は、公開時に必ず作り直しになります。
- 導入そのものを止めてしまう:いちばん多く、いちばんもったいないパターンです。モデルが変わっても「どの業務に、どう組み込むか」の設計は資産として残ります。むしろモデル待ちの時期こそ、業務側の整理を進める好機です。
これらを避ける一番の方法は、モデルの名前に依存しない使い方をあらかじめ作っておくことです。
モデルが変わっても崩れない使い方をつくる4ステップ
3.5 Proが出ても、Gemini 4が出ても、やり直しにならない進め方があります。ポイントは「モデルを選ぶ」より先に「業務を切り出す」ことです。
- 業務を「入力・処理・出力」で分解する:たとえば問い合わせ対応なら、入力=受信メール本文と過去のFAQ、処理=分類と回答案作成、出力=下書きメール、と書き出します。この分解はモデルが変わっても不変です。
- 合格ラインを先に決める:「そのまま送れる品質」なのか「人が3割直す前提」なのかを数字で決めます。ここが曖昧だと、モデルを乗り換えたときに良くなったのか悪くなったのか判断できません。
- 同じ入力例を10件、固定して持っておく:この10件を新しいモデルに毎回通せば、乗り換え判断が15分で終わります。実際、上位モデルを試したのに「なんとなく良さそう」で止まってしまう会社の多くは、この比較用セットを持っていません。
- まず3.6 Flashで本番まで通す:完成度が7割でも運用に乗せると、必要な精度の実態が見えます。「上位モデルが要る業務」と「Flashで十分な業務」の切り分けは、机上ではなく運用してからでないと分かりません。
この4ステップを踏んでおけば、3.5 Proが公開された日に、その場で「自社に必要か」を判断できます。逆にこれをやらずに待っていると、公開されても評価に数週間かかり、結局さらに次のモデルを待つことになります。
3.5 Proが公開されたら、最初に確認すべき5つのこと
公開時はスペック記事が大量に出ますが、中小企業の判断に必要な情報はごく限られます。次の5点だけ確認すれば十分です。
- API料金(入力・出力)と無料枠の有無:3.1 Proに無料枠がない点から見て、Pro系に無料枠が付くかは確認が要ります。
- Geminiアプリの有料プランに含まれるか:APIだけの提供なのか、Google AI Proでも使えるのかで、社内展開のしやすさが大きく変わります。
- 実際のコンテキスト長:報道の200万トークンが本当かどうか。長い資料を扱う業務では、ここが選定の決め手になります。
- 日本語での品質:ベンチマークは英語中心です。自社の実データ10件を通して確かめるほうが確実です。
- 3.6 Flashとの実コスト差:品質が上でも、費用が数倍なら日常業務には向きません。「どの業務だけ上位に回すか」で考えます。
私たちMihataも、こうしたモデル選定から社内での運用ルールづくりまでを、月1回のミーティング形式でご一緒することがあります。「どのモデルを待つべきか」より「どの業務から始めるか」で迷っている段階でしたら、独自AI開発とあわせてお役に立てるかもしれません。
まとめ:待つより、今あるモデルで業務の型をつくる
2026年7月27日時点の事実を、もう一度整理します。Gemini 3.5 Proは未提供で、公式ページは「coming soon」のまま。遅延の理由はコーディング性能が社内目標に届いていないことで、Googleは提供日を約束していません。その一方で、7月22日の決算では次世代のGemini 4の事前学習開始が公表されるというねじれた状況にあります。
実務としての答えはひとつです。7月21日に一般提供が始まったGemini 3.6 Flash(無料枠あり・出力7.50米ドル/100万トークン)で、今日から業務の型をつくること。3.5 Proが出たら、そこで初めて実際の性能と料金を見て乗り換えを検討すれば十分間に合います。2026年後半に控えるモデル全体の動きは2026年後半に来る新モデルの一覧にまとめていますので、全体像を押さえたい方はあわせてご覧ください。
この記事は提供状況が変わり次第、随時更新します。「自社のどの業務からAIを組み込むか」「モデルが変わっても崩れない使い方をどう設計するか」でお悩みでしたら、Mihataまでお気軽にご相談ください。
よくある質問
Gemini 3.5 Proはいつ使えるようになりますか?
2026年7月27日時点で一般提供はされておらず、Googleは提供日を公表していません。2026年5月19日のGoogle I/Oで示された6月の目標、報道で伝えられた7月17日の目標はいずれも過ぎ、7月22日のAlphabet決算でもPichai氏は「現在テスト中」と述べるにとどまりました。予測市場のPolymarketでは7月27日時点で「8月31日までに公開」が約82%となっていますが、これは市場の見立てであってGoogleの計画ではありません。
なぜGemini 3.5 Proはこんなに遅れているのですか?
Bloombergが2026年7月16日に報じ、9to5GoogleとeWeekが詳報した内容によれば、コーディング性能が社内目標に届いていないことが理由です。Googleは6月下旬にコーディング能力を高めるため学習データを刷新しましたが、結果は期待外れだったとされています。Googleの公式コメントは「3.5 Pro、アップグレード版Flash、その他のモデルをパートナーとテスト中」というもので、正式な延期発表は出ていません。
Gemini 3.5 Proの料金はいくらですか?
未提供のため公式の価格は発表されていません。今使えるモデルの公式価格は、Gemini 3.6 Flashが100万トークンあたり入力1.50米ドル・出力7.50米ドル(無料枠あり)、Gemini 3.5 Flash-Liteが入力0.30米ドル・出力2.50米ドル、Gemini 3.1 Proが入力2.00〜4.00米ドル・出力12.00〜18.00米ドルです。アプリのプランは無料、Google AI Plus月725円、Google AI Pro月2,900円、Google AI Ultra月14,500円〜となっています。
有料プランに入ればGemini 3.5 Proを使えますか?
使えません。Google AI Plus・Pro・Ultraのいずれでも、割り当てられる上位モデルは2026年7月27日時点でGemini 3.1 Proです。Ultra(月14,500円〜)で増えるのは利用量の上限と、Deep ThinkやGemini Sparkといった先行機能へのアクセスであり、3.5 Proは含まれていません。課金前に必ず公式のプラン内容を確認してください。
3.5 Proを待たずに今から進めても大丈夫ですか?
多くの中小企業では、待たずに進めるほうが合理的です。2026年7月21日に一般提供が始まったGemini 3.6 Flashは無料枠でも試せ、要約・下書き・分類・問い合わせの一次対応といった日常業務の大半をカバーできます。上位モデルが本当に必要になるのは、長い資料を横断して矛盾を洗い出す作業や、複数条件がからむ計画立案などです。まずFlashで運用の型をつくり、足りない業務が具体的に見えてから上位モデルを検討する順番が失敗しにくい進め方です。