血圧計の日時がずれていても、測定された血圧の数値そのものは変わりません。腕を加圧して脈波を読み取る仕組みに、内蔵時計は関与していないからです。ただし記録としては話が別で、日時は「朝の血圧か、晩の血圧か」の振り分けと、その平均値の計算に使われます。家庭血圧は朝と晩を分けて見るものなので、日時が合っていないと診療の場で使いにくい記録になってしまいます。
どのくらい効くのかは、取扱説明書に数字で書かれています。オムロンの手首式 HEM-6311 の取扱説明書では、朝の血圧は「午前4時から午前11時59分の間で、最も早い時刻の測定から10分以内で、最初から3回までの測定記録の『平均値』」、晩の血圧は「午後7時から翌日午前1時59分の間で、最も遅い時刻の測定記録より前10分以内で、最後から3回までの測定記録の『平均値』」と定義されています。時計が数時間ずれていれば、朝に測った値が朝の平均に入らないという事態が、普通に起こります。
日時がずれると何が崩れるのか|数値ではなく「記録」が崩れる
血圧計の日時は、測定の精度とは無関係です。ですから「時刻がずれていたから今日の数値は信用できない」と考える必要はありません。崩れるのは、その値がいつの、どちらの測定だったかという情報のほうです。
家庭血圧は1回の値ではなく、同じ時間帯の値を並べて傾向を見るものです。日本高血圧学会は家庭血圧測定を推奨しており、同学会の資料では「週に5日以上測定した結果を主治医にお見せ下さい」とされています。その並びの軸が日時なので、軸がずれると並べ直せなくなります。
朝平均・晩平均は「時刻」で機械的に振り分けられている
多くの家庭用血圧計には、朝と晩の平均を別々に出す機能があります。この振り分けは、測定時に本体が持っていた時刻だけで決まります。前述のオムロン HEM-6311 の例では、午前4時から午前11時59分の測定が朝、午後7時から翌日午前1時59分の測定が晩です。
同機の取扱説明書には、朝の週平均が「最高血圧135 mmHg以上、または最低血圧85 mmHg以上」のときに早朝高血圧マークが点灯する、という機能も書かれています。つまり本体の時計がずれていると、こうした判定機能が本来とは違う測定を拾ってしまいます。表示されたマークの意味を確かめたいときは、まず時計が合っているかを見てください。
時計を合わせないと、日時がまったく記録されない機種もある
「設定していないだけ」で済まない機種があります。オムロンの上腕式 HEM-8721 の取扱説明書には「時計を合わせないと、測定した日時は記録されません」と明記され、時計を設定せずに使った場合の時計表示は「—」になるとされています。さらに「最新の測定が、時計設定をしないでおこなわれた場合、平均値は表示されません」とも書かれています。
テルモ電子血圧計 T3200 の取扱説明書も「日付・時刻・高さガイドの設定を行わなくても血圧計は使用できますが、測定後に表示される日付・時刻は実際に測定した日付・時刻と異なります(設定がされていない場合は - -:- - と表示されます)」としています。測定はできるのに、後から見返すと時刻が無い、という状態です。
この「記録だけが抜ける」挙動は、血圧計に限った話ではありません。日付が入らないまま撮り続けた写真をどう救うかは撮影日時が間違った写真の直し方に、そもそも最初に合わせておく手順はデジカメの日付・時刻設定に書いています。
症状別の早見表|どこを疑えばいいか
表示の出方で、原因の当たりが付きます。手元の症状に近い行から確認してください。
症状 | 考えられる原因 | 確認すること |
|---|---|---|
日時が「- -:- -」や「—」になっている | 時計をまだ設定していない。または設定前に電源が入った | 取扱説明書の時計設定手順で設定する。設定しないと日時が記録されない機種がある |
電池交換のあと日時が初期値に戻った | 電池を外した時間が長い、または電池を抜くとリセットされる仕様 | 機種ごとの仕様を確認する(後述の表)。交換後は毎回設定し直す前提で扱う |
年が「2009年」など古い年から始まっている | 設定途中で放置し、初期値に自動確定した | パナソニック EW-BU30・EW-BU10 は設定中に30秒放置すると「2009年1月1日0:00」に自動設定される |
朝に測ったのに朝平均に入らない | 本体の時刻が朝の時間帯からずれている | 本体の時刻を実際の時刻に合わせる。朝・晩の時間帯は機種ごとに定義が決まっている |
アプリ側の時刻が実際の測定時刻と違う | 機器側の時刻が正しくない | 一度データ転送する(機器の時刻がスマートフォンの時刻に合わせられる機種がある) |
転送しても時刻がずれたまま | スマートフォン側の時刻がずれている、または電池残量が少ない | スマートフォンの日付と時刻の自動設定を確認し、電池を交換する |
時計が毎回のように遅れる・止まる | 電池の残量低下 | 新しい電池に交換する。交換後は日時を設定し直す |
メーカー別の日時設定手順(公式の取扱説明書で確認できたもの)
ボタン名と押し方はメーカーどころか機種ごとに違います。ここでは各社の公式取扱説明書に記載がある機種だけを挙げます。公式資料で手順を確認できなかった機種は、誤操作につながるため割愛しました。お手元の型番(HEM-◯◯◯◯、ES-◯◯◯◯、UA-◯◯◯、EW-BU◯◯ など)で各社サイトの取扱説明書を開くのが、結局いちばん早い道です。
オムロン 上腕式 HEM-8721|電源を切ってから時計設定スイッチ
取扱説明書の手順はこうです。電源の切れた状態で時計設定スイッチを押すと時計設定モードになり、西暦年が点滅します。戻る/進むスイッチで西暦年を合わせ、時計設定スイッチで確定します。以降は月、日、時、分の順に同じ操作を繰り返します。
注意書きとして「長期間使用せず、時計が合っていないときは、正しく設定し直してください。その際、記録をすべて消去してからご使用ください」とあります。時刻を大きく動かすと記録の並びが壊れるため、作り直しを促している書き方です。
オムロン 手首式 HEM-6311|本体底面の2つのスイッチ
手首式は時計設定スイッチと時計進むスイッチが本体の底部にあります。時計設定スイッチで項目を確定し、時計進むスイッチで数値を進める形で、西暦年から月、日、時、分まで順に合わせます。こちらも「時計設定していないと、平均値は表示されません」「時計設定していないと、日時表示は『−:−−』となります」と明記されています。
オムロン HCR-1901T2・HCR-1902T2|アプリを使うなら設定不要
Bluetooth 対応機では前提が変わります。取扱説明書には「時計はあらかじめ設定されています。進んだり遅れたりしている場合のみ、手動で設定してください」「アプリを使用している場合は、時計設定の必要はありません」とあります。手動で合わせたいときは〔通信〕ボタンを押すと西暦年が点滅し、〔戻る/進む〕ボタンで各項目を変更していきます。
テルモ T3200|メモリ2ボタンの長押しから
テルモ電子血圧計 T3200 は、電源が切れた状態で[メモリ2]ボタンを1.5秒ほど長押しすると西暦が点滅して設定画面になります。数字の変更は[メモリ1]ボタン、決定は[メモリ2]ボタンです。時刻設定画面のまま3分以上操作しないと自動的に電源が切れる、という注意も書かれています。
パナソニック EW-BU30・EW-BU10|設定ボタン3秒以上
日時を設定し直すときは、電源が切れている状態で設定ボタンを3秒以上押し続けます。設定した年が点滅したら、変更ボタンで数字を合わせ、設定ボタンで決定し、月、日、時、分へ進みます。年の設定範囲は2009年から2040年で、2040年で変更ボタンを押すと2009年に戻ります。
この機種で覚えておきたいのが初期値の挙動です。取扱説明書には「設定中に開始/終了ボタンを押すもしくはボタンを押さずに30秒経過すると『2009年1月1日0:00』に自動的に設定されます」とあります。妙に古い年が表示されているときは、故障ではなく設定を途中でやめた結果かもしれません。
エー・アンド・デイ UA-1200BLE|本体にボタン操作での時計合わせが無い
エー・アンド・デイの UA-1200BLE は考え方が違います。取扱説明書には「本製品は時計を内蔵しています。測定データは測定日時を含んでいます。時刻は、受信機器側の時計の時刻に同期させるように設計されています」とあり、注意として「本製品に内蔵されている時計は、受信機器側の機能により、合わせられます。測定中に時刻合わせが行われますが、この時刻は次回測定から反映されます」と書かれています。つまり本体だけでは時刻を直せず、直した効果は次の測定からになります。
なお同社の UA-651MR のように、取扱説明書に日付・時刻の設定項目が無く、記録をメモリ番号の新しい順で管理する機種もあります。この手の機種では日時のずれは起きませんが、代わりに「いつ測ったか」は自分で血圧手帳に書き写す必要があります。
電池交換で日時が消える機種・消えない機種
同じ「血圧計の電池交換」でも、日時の扱いは機種によってはっきり分かれます。公式の取扱説明書で確認できた範囲を並べます。
機種 | 電池を外したときの日時 | 公式の記載(要旨) |
|---|---|---|
オムロン HEM-8721 | 30秒以内の交換なら保持 | 電池交換の際は必ず電源を切る。設定済みの場合は30秒以内に交換する。30秒以上外すと時計が止まり、再設定が必要(測定値は消えない) |
オムロン HCR-1901T2・HCR-1902T2 | 維持される | 時計はあらかじめ設定されており、電池を抜いても時計情報は維持される |
テルモ T3200 | リセットされる | 電池を抜く(交換する)と、日付・時刻・高さガイドの設定はリセットされる |
パナソニック EW-BU30・EW-BU10 | 設定し直しが必要 | 乾電池を交換したときは日付・時刻を設定する。乾電池を入れずにACアダプターを抜くと設定した日付と時刻がリセットされる(記憶データは残る) |
エー・アンド・デイ UA-1200BLE | アプリ側から合わせる | 内蔵時計は受信機器側の機能で合わせられ、測定中に行われた時刻合わせは次回測定から反映される |
実務的な結論はひとつです。電池を交換したら、測る前に日時を確認する。保持される機種かどうかを覚えておくより、毎回見るほうが確実で早いです。交換の前に表示されている日時を写真に撮っておくと、設定し直すときに迷いません。
時計が入っている機器の多くが同じ性質を持っています。電池や電源の切れ目で時刻を失う挙動は、プリンターの時刻がずれる原因と直し方でも整理しています。
スマホ連携(Bluetooth)機種の時刻は、アプリ側で決まる
Bluetooth で転送する機種では、日時を手で合わせるという作業自体が前提から外れます。オムロンの公式FAQは、アプリに表示される測定データの時刻が実際と異なる場合について「機器に設定されている時刻が正しくない可能性があります。一度データ転送をすることで、スマートフォンの時刻が機器に設定されます」と案内しています。
それでも直らないときの原因も示されていて、「スマートフォンの時刻がずれているか、機器の電池残量が少なくなっている可能性があります」とされています。連携機で時刻が合わないときは、血圧計ではなくスマートフォン側の日付と時刻の自動設定から見るのが順序です。
二重記録を作らないために
連携機で気をつけたいのは、記録が二重になることです。アプリに自動で入る測定と、紙の血圧手帳や別のアプリへ自分で書き写した測定が、違う時刻で並んでしまう形です。本体の時刻がずれていた期間のデータは、特にこうなりやすくなります。
エー・アンド・デイ UA-1200BLE の取扱説明書によれば、受信機器が受け取れなかったデータは測定時刻とともに本体に最大で各ID100件まで一時保管され、次回接続時にまとめて送信されます。つまり時刻がずれたまま測った分は、ずれた時刻のまま後からまとめて届きます。同機の時刻合わせが次回測定から反映される仕様とあわせると、ずれに気づいた日のデータは直らない前提で扱うのが安全です。
対処は単純です。手で書き写すのはアプリに入らない測定だけにとどめ、どちらを正にするかを最初に決めておくこと。そして診療に持っていくときは、どちらか一方を選んで見せることです。時刻がずれていた期間があるなら、そのことを医師に一言伝えてください。記録を自分で書き換えて辻褄を合わせるより、はるかに役に立ちます。
測定時刻の目安|公的資料に書かれている範囲
では何時に測ればいいのか。日本高血圧学会の啓発資料「家庭で血圧を測定しましょう」には、次の条件が示されています。
- 上腕血圧計を選ぶ
- 朝と晩に測定する
- 朝の測定は、起床後1時間以内・朝食前・服薬前
- 晩の測定は、就寝直前
- トイレを済ませ、1〜2分椅子に座ってから測定する
- 1機会に原則2回測定し、その平均を取る
- 週に5日以上測定した結果を主治医に見せる
同資料では、家庭血圧135/85 mmHg以上が脳卒中や心筋梗塞にかかる率を2〜3倍に増やす危険な高血圧だとし、「高血圧は症状がなくても危険です。必ず医師の診断を受けましょう」と呼びかけています。数値の意味づけや治療の判断は医師の領域です。この記事は記録の整え方までを扱い、医学的な判断には踏み込みません。気になる値が続くなら、自己判断せず受診してください。
この条件を読むと、血圧計の時計を合わせる意味もはっきりします。起床後1時間以内と就寝直前という指定は、測定を時刻に紐づけて管理する前提で書かれています。本体の時計が合っていれば、あとは同じ時間帯に測り続けるだけで記録の形が整います。
毎日同じ時刻に測る側の仕掛け
続けるうえでの難所は、血圧計の設定より測り忘れです。起床後1時間以内という窓は、支度を始めると案外すぐ過ぎてしまいます。洗面所やダイニングに時計を出しておいて、「この時刻に測る」と決めた帯を目で見えるようにしておくと、思い出す確率が上がります。
手元の端末で間に合わせたい方へ。私たちはブラウザで動く全画面の時計集中時計を公開していて、使っていないタブレットやスマホを置き時計にする用途でも使われています。安静にして待つ1〜2分を計るだけならブラウザのタイマーでも足ります。どちらも無料で、インストールは要りません。
スマートウォッチで測定の通知を受けている方は、腕時計側の時刻がずれていないかもあわせて見ておくと安心です。原因と直し方はスマートウォッチの時刻がずれるときの対処にまとめています。
まとめ
血圧計の日時は、測定値そのものには影響しません。影響するのは朝・晩の振り分けと平均値の算出で、そこが崩れると家庭血圧の記録として診療で使いにくくなります。設定手順はメーカーごとに違い、電池交換でリセットされるかどうかも機種差があるため、交換のたびに日時を確認する運用にしてしまうのが結局いちばん楽です。
Bluetooth 対応機ならアプリとの転送で時刻が合う一方、ずれた時刻のまま送られたデータは後から直せません。気づいた時点でのずれは正直に医師へ伝えるのが、記録を書き換えるよりずっと確実です。
記録の整え方や、機器まわりの運用でお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
よくある質問
血圧計の日時がずれていると、測った血圧の数値も間違っているのですか?
いいえ、測定値そのものには影響しません。影響するのは記録のほうで、日時は朝の血圧か晩の血圧かの振り分けと、その平均値の算出に使われます。家庭血圧は朝と晩を分けて見るものなので、日時が合っていないと診療で使いにくい記録になります。
血圧計の朝と晩は、何時から何時までで分けられているのですか?
機種ごとに定義が決まっています。オムロンの手首式HEM-6311の取扱説明書では、朝の血圧は午前4時から午前11時59分の間の測定、晩の血圧は午後7時から翌日午前1時59分の間の測定とされています。お手元の機種の定義は取扱説明書で確認してください。
電池を交換すると血圧計の日時は必ず消えますか?
機種によって違います。オムロンHEM-8721は電源を切って30秒以内に交換すれば保持され、30秒以上外すと時計が止まります。オムロンHCR-1901T2は電池を抜いても時計情報が維持され、テルモT3200は電池を抜くとリセットされます。交換のたびに日時を確認するのが確実です。
時計を合わせないまま測定するとどうなりますか?
機種によっては日時がまったく記録されません。オムロンHEM-8721の取扱説明書には時計を合わせないと測定した日時は記録されないと明記され、平均値も表示されないとされています。テルモT3200では日付・時刻が未設定のとき表示が - -:- - になります。
Bluetooth対応の血圧計で日時がずれたときはどうすればいいですか?
オムロンの公式FAQでは、一度データ転送をすることでスマートフォンの時刻が機器に設定されると案内されています。それでもずれる場合はスマートフォン側の時刻がずれているか、機器の電池残量が少ない可能性があるとされています。なお、ずれた時刻のまま転送されたデータは後から直せない前提で扱ってください。