Mihata
AI活用2026.10.13

Muse Wonder 料金は出力$20、Spark比4.7倍で試算

Meta が 2026年10月12日に発表した Muse Wonder の料金は、100万トークンあたり入力 $4.00・キャッシュ入力 $0.20・出力 $20.00 です。単価表だけ見ると分かりにくいので、この記事では「自社の月間トークン数を入れると請求額が出る式」と、よくある3つの使い方での実際の金額をそのまま置きます。発表の背景から押さえたい場合は、提供範囲と機能の全体像を押さえた発表のまとめを先に読んでください。

結論を先に書きます。同じ Muse Code の表に載っている muse-spark-1.3(入力 $1.25・出力 $4.25)と比べると、入力は3.2倍・出力は4.7倍です。そのため 出力が重い用途ほど乗り換えコストが跳ね上がり、後述の実装エージェントのケースでは月額が $264.50 から $1,116.00 へ、約4.2倍になりました。逆にキャッシュ入力をどれだけ当てられるかで請求額は半分以下まで動きます。そして上位版の Muse Wonder Full は従量単価が公開されていないため、そもそも単価で比較できません。

公式に出ている単価(1Mトークンあたり)

まず元になる数字です。いずれも Meta の開発者向けページに載っているもので、通貨は米ドル、単位は100万トークンあたりです。コンテキスト長はどちらも1Mトークンです。

モデルID

入力

キャッシュ入力

出力

学習への利用

muse-wonder-1.0

$4.00

$0.20

$20.00

記載なし

muse-wonder-full-1.0

非公開

非公開

非公開

記載なし

muse-spark-1.3

$1.25

$0.15

$4.25

使われない

muse-spark-1.3-contributor

$0.10

$0.002

$0.20

使われる

ここで目を引くのは、Muse Wonder のキャッシュ入力 $0.20 が通常入力 $4.00 の20分の1だという点です。muse-spark-1.3 のキャッシュ比率($0.15 対 $1.25 で約8分の1)より割引が深く、実務ではこの1項目が請求額をいちばん大きく動かします。

自社の請求額を出す試算式

月額は3つの項目の足し算です。入力トークンは「毎回新しく読ませる分」と「前のやりとりやシステムプロンプトを使い回す分(キャッシュ入力)」に分かれるので、まずそこを割ります。

  • 月額(USD) = 入力トークン数 ÷ 1,000,000 × 入力単価 + キャッシュ入力トークン数 ÷ 1,000,000 × キャッシュ単価 + 出力トークン数 ÷ 1,000,000 × 出力単価

実務で使うときは、入力の総量と「キャッシュヒット率」の2つで持つほうが見積もりやすくなります。月間入力の総量を I、キャッシュが当たる割合を h とすると、キャッシュ入力は I × h、通常入力は I ×(1 − h)です。Muse Wonder の単価を入れると次のようになります。

  • 月額(USD) = I ÷ 1,000,000 ×(4.00 ×(1 − h)+ 0.20 × h)+ 出力トークン数 ÷ 1,000,000 × 20.00

キャッシュヒット率 h がどれだけ効くかを、入力5,000万トークン・出力500万トークンの前提(いずれも仮定の値です)で並べると下のとおりです。出力ぶんの $100.00 は h では変わらないので、入力側だけが動きます。

キャッシュヒット率

通常入力の料金

キャッシュ入力の料金

出力の料金

月額合計

0%

$200.00

$0.00

$100.00

$300.00

50%

$100.00

$5.00

$100.00

$205.00

80%

$40.00

$8.00

$100.00

$148.00

95%

$10.00

$9.50

$100.00

$119.50

同じトークン量でも $300.00 と $119.50 で2.5倍違います。見積もりを取るときに「月に何トークン使うか」だけ聞いて終わらせると、ここが丸ごと抜け落ちます。システムプロンプトと参照資料を固定して使い回せる作りにしてあるかを先に確認してください。

3つのケースで実際に計算する

以下のトークン量はすべてこちらで置いた仮定の数値です。公式が示したものではありません。自社の値に差し替えて使ってください。Muse Wonder と muse-spark-1.3 の両方で計算し、金額差と倍率を出します。

ケース1:社内問い合わせボット(短い入出力・高頻度)

就業規則や経費精算のルールを答えるタイプです。同じ社内規程を毎回読ませるのでキャッシュがよく当たります。仮定は月間入力5,000万トークン・キャッシュヒット率80%・月間出力500万トークンとします。

  • Muse Wonder:通常入力1,000万 × $4.00 = $40.00 / キャッシュ入力4,000万 × $0.20 = $8.00 / 出力500万 × $20.00 = $100.00 → 合計 $148.00
  • muse-spark-1.3:$12.50 + $6.00 + $21.25 → 合計 $39.75
  • 差額 $108.25・約3.7倍。総額のうち出力が占めるのは $100.00 で約68%です。

ケース2:長文の資料要約・議事録(入力が重い)

毎回ちがう資料を投げるので、キャッシュはシステムプロンプトぶんくらいしか当たりません。仮定は月間入力3億トークン・キャッシュヒット率20%・月間出力2,000万トークンとします。

  • Muse Wonder:通常入力2億4,000万 × $4.00 = $960.00 / キャッシュ入力6,000万 × $0.20 = $12.00 / 出力2,000万 × $20.00 = $400.00 → 合計 $1,372.00
  • muse-spark-1.3:$300.00 + $9.00 + $85.00 → 合計 $394.00
  • 差額 $978.00・約3.5倍。出力の比率は約29%にとどまり、3ケースの中で倍率がもっとも小さいです。

ケース3:長時間走る実装エージェント(出力が重い・ツール往復が多い)

何時間も走って差分を書き続ける使い方です。同じリポジトリの文脈を繰り返し読むのでキャッシュは当たりますが、出力が膨らみます。仮定は月間入力2億トークン・キャッシュヒット率90%・月間出力5,000万トークンとします。

  • Muse Wonder:通常入力2,000万 × $4.00 = $80.00 / キャッシュ入力1億8,000万 × $0.20 = $36.00 / 出力5,000万 × $20.00 = $1,000.00 → 合計 $1,116.00
  • muse-spark-1.3:$25.00 + $27.00 + $212.50 → 合計 $264.50
  • 差額 $851.50・約4.2倍。総額の約90%が出力ぶんです。キャッシュを捨てて h を0%にすると $1,800.00 まで膨らみます。

出力が重い用途ほど Muse Wonder は不利になる

3ケースを並べると、倍率の順番がきれいに出力比率と一致します。入力の倍率が3.2倍($1.25→$4.00)、出力の倍率が4.7倍($4.25→$20.00)なので、総額に占める出力の割合が高いほど、全体の倍率が4.7倍のほうへ引っ張られるという単純な理屈です。

ケース

出力が総額に占める割合

muse-spark-1.3

Muse Wonder

倍率

ケース2 資料要約

約29%

$394.00

$1,372.00

約3.5倍

ケース1 問い合わせボット

約68%

$39.75

$148.00

約3.7倍

ケース3 実装エージェント

約90%

$264.50

$1,116.00

約4.2倍

つまり「モデルを上げると3倍くらいか」と丸めて考えるのは危ないということです。Muse Wonder が得意だと公式が言っているのは長時間走るエージェントですが、その得意分野こそ単価の上がり方がもっとも大きいという組み合わせになっています。導入前に見るべき数字は使用量の合計ではなく、出力トークンの比率です。どの処理にどのモデルを当てるかで迷うなら、用途ごとにどのモデルを当てるかの判断表を横に置くと決めやすくなります。

単価の読み方は他社のモデルでも同じです。安いモデルを下敷きに置いて比べたい場合は、Claude Haiku 5.5 の単価を同じ式に当てた試算もあわせて見てください。従量課金そのものを前提から外す選択肢を検討するなら、社内に置いたローカルLLMで業務が回るかどうかの判断材料のほうが参考になります。

どのモデルにいくら払うかは、結局「その処理を人がやったら何時間か」との比較になります。試算の前提づくりから一緒に整理したい場合は、下のご案内もご覧ください。

Muse Wonder Full は従量単価が公開されていない

上位版の Muse Wonder Full は、モデルページに "Access: Muse Code subscription only" と書かれており、Meta Model API からは買えません。利用できるのは Power Usage $50.00/月 と Maximum Usage $200.00/月 の2つのプランだけです。Muse Code にはこの下にさらに2段のプランがありますが、金額を確認できなかったのでここでは触れません。

プラン

月額

公式が書いている内容

Power Usage

$50.00

Muse Wonder Full を含む最上位モデルへのアクセス・下位プラン比20倍の使用量・新機能の早期アクセス・ファイルアップロード上限の増加

Maximum Usage

$200.00

Power Usage の内容すべて・下位プラン比80倍の使用量

ここで従量とサブスクを同じ表に並べて単価を比べるのは、やってはいけない計算です。サブスク側は「下位プランの20倍・80倍」という相対値しか示されておらず、何トークンまで使えるのかが公開されていないからです。上の試算式に当てはめる分母がありません。契約したのに上位版が選べない場合は、サブスク限定で上位版が見えない場合の確認どころを先に見てください。

代わりに損益分岐の考え方だけ示します。Power Usage の $50.00 を Muse Wonder の出力単価 $20.00 で割ると、従量で出力250万トークンを買える額です(Maximum Usage なら1,000万トークン)。あとは自社の1案件でどれだけ時間が浮くかを置いて、月に何本こなすなら月額を回収できるかを見ます。時給換算で2,000円の作業が月に数時間でも消えるなら $50.00 の判断は難しくありません。見るべきは単価ではなく案件数です。

muse-spark-1.3-contributor の「安さの正体」

同じ料金表の中に、入力 $0.10・出力 $0.20 という桁違いに安い行があります。muse-spark-1.3-contributor です。ケース1と同じ前提で計算すると月額 $2.08 で、Muse Wonder の $148.00 の約71分の1です。数字だけ見れば即決したくなります。

ところが公式の注記には "Used to improve our products." と書かれています。送ったデータが製品改善、つまり学習に使われるという意味です。非 contributor の muse-spark-1.3 には "Not used to improve our products." と明記されているので、この差が価格差の正体だと読めます。安いのではなく、データで払っているということです。

したがって顧客データ・見積書・人事情報・未公開の社内資料を通す用途では contributor は選べません。公開情報の下調べや、自社サイトの一般公開テキストの整形など、外に出ても困らないものに限って使う判断になります。社内で使い分けるなら、モデルIDを環境変数で切り替えられるようにして、どの処理がどちらに流れているかを一覧で持っておくのが安全です。

中小企業はどう決めればいいか

ここまでの数字を踏まえると、判断は3つに分かれます。順番に当てはめていくと迷いが減ります。

  1. 出力が軽く、同じ資料を使い回す処理(社内問い合わせ・定型の文書作成)… キャッシュを効かせれば差額は月100ドル前後に収まります。精度が上がるなら Muse Wonder へ寄せる価値があります。
  2. 出力が重い処理(長時間のエージェント・コード生成)… 倍率が4倍を超えるので、全部を上位モデルで回さず、難所だけ Muse Wonder に投げて残りは安いモデルに任せる設計にします。
  3. 外に出せないデータを扱う処理… contributor は除外し、non-contributor か社内設置を前提に考えます。

もう一点、公式ページ上の記載として押さえておきたいのが、消費者向けの Muse では "will soon power experiences in Muse, and will roll out first to subscribers" とされていてまだ使えないこと、そして完全な安全性レポートが "available soon"=未公開であることです。社内規程の整備まで含めて考えるなら、ここが固まるのを待つ判断も十分合理的です。各社の新モデルがどう並んでいるかは、2026年下期に出たAIモデルの一覧で確認できます。

Mihata では中小企業向けに、どの処理をどのモデルに割り振るかの設計から、実際の社内導入とコスト試算までお手伝いしています。自社のトークン量が分からない段階からでも構いませんので、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Muse Wonder の料金はいくらですか?

公式の開発者向けページでは、100万トークンあたり入力 $4.00・キャッシュ入力 $0.20・出力 $20.00 と記載されています。コンテキスト長は1Mトークンです。

muse-spark-1.3 から乗り換えると何倍になりますか?

単価では入力が3.2倍、出力が4.7倍です。実際の請求額の倍率は出力の比率で変わり、記事内の仮定では資料要約で約3.5倍、社内問い合わせボットで約3.7倍、実装エージェントで約4.2倍になりました。

Muse Wonder Full はAPIで使えますか?

使えません。公式ページには Muse Code のサブスク限定と記載されており、Power Usage $50.00/月 または Maximum Usage $200.00/月 のプランでのみ利用できます。従量単価は公開されていません。

キャッシュ入力はどれくらい効きますか?

Muse Wonder のキャッシュ入力は通常入力の20分の1です。入力5,000万・出力500万トークンの仮定では、キャッシュヒット率0%で月 $300.00、95%で $119.50 と2.5倍の差が出ました。

いちばん安い muse-spark-1.3-contributor を使ってよいですか?

用途を限る必要があります。公式に Used to improve our products. と注記されており、送ったデータが製品改善に使われます。顧客データや未公開の社内資料を通す処理には選べません。

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