先に結論です。防犯カメラ・ネットワークカメラの録画時刻がずれる原因は、ほぼ4つに絞れます。①NTP(時刻同期)が設定されていない、②タイムゾーンや夏時間の設定違い、③カメラ側とレコーダー(NVR)側で時刻源が分かれている、④電源が落ちたときに時刻を保持できない機種である、です。まずレコーダーとカメラの両方で「NTPサーバーと同期する」を有効にし、サーバーに ntp.nict.jp を、タイムゾーンに UTC+9(日本)を設定する——ここで大半は解決します。i-PRO のレコーダーは、NTP を有効にすると通常運用中はずれ幅に応じて64秒〜1024秒間隔で同期しますが、NTPサーバーとの時刻差が±1000秒(16分40秒)以上あると、あえて時刻合わせを行いません(i-PRO FAQ ja115241)。つまり「大きくずれたまま放置した機器は、NTPを入れても自動では戻らない」ことがあります。
ずれ方を見れば原因はほぼ絞れる
設定画面を片っ端から触る前に、「何分・何時間ずれているか」と「いつずれたか」を見てください。ずれ幅そのものが原因の指紋になります。ちょうど9時間、ちょうど1時間、数分、過去の日付——この4つはまったく別の問題です。
ずれ方 | 考えられる原因 | 最初に見る場所 |
|---|---|---|
ちょうど9時間ずれている(または9時間進んでいる) | タイムゾーンが UTC のまま。日本時間(UTC+9)になっていない | レコーダー/カメラのタイムゾーン設定 |
ちょうど1時間ずれている | 夏時間(DST)が有効、または海外都市のタイムゾーン | DST(サマータイム)設定をオフ |
数分〜数十分、月単位でじわじわ広がる | NTP が未設定。内蔵の水晶発振子の誤差が積み上がっている | NTPサーバーと同期する設定をオン |
停電・ブレーカー操作のあと、日付が初期値や過去に戻る | 時刻保持用のバックアップ電源を持たない機種、または内蔵電池の消耗 | 電源復旧後にNTPで自動取得される設定か |
ライブ映像は正しいのに録画のタイムスタンプだけずれる | カメラ側とレコーダー側で時刻源が別になっている | 両方のNTP設定、またはレコーダーからの時刻配信 |
NTPを入れたのに一向に合わない | ずれが大きすぎて補正対象外(±1000秒以上)/UDP 123 が遮断されている | 一度手動で時刻を合わせてからNTPを再有効化 |
パソコンでも同じように「9時間」「1時間」で切り分けられます。社内のPCも一緒にずれているなら、機器ではなくネットワーク側の時刻配信を疑う段階です。切り分けの型はパソコンの時計がずれる原因と直し方にまとめています。
NTPを設定して自動で合わせる
防犯カメラやレコーダーの内蔵時計は、水晶発振子で時間を数えているだけで、放っておけば必ずずれます。これを外部の正しい時刻に合わせ続ける仕組みが NTP(Network Time Protocol)です。現行仕様は RFC 5905(Network Time Protocol Version 4)で定義され、通信は UDP ポート123 を使います。RFC 自身は「最新のワークステーションと高速なLANでは数十マイクロ秒の精度に到達しうる」としており、防犯カメラの用途には十分な精度です。
i-PRO(旧パナソニックの監視カメラ事業)は、複数台のカメラの時刻を一致させる方法として、各カメラの設定画面で[ネットワーク]-[アドバンス]-[NTP]タブの時刻調整を「NTPサーバーに同期」にすることを公式に案内しています(i-PRO FAQ ja113221)。メーカーが違っても考え方は同じで、Reolink は「Settings > System > Date & Time」でタイムゾーンを選び、NTP の Auto-Synchronize を有効にする手順を公開しています(How to Set Date/Time for Reolink Products)。
同期先は ntp.nict.jp が無難
国内で使うなら、情報通信研究機構(NICT)が公開している ntp.nict.jp が第一候補です。日本標準時の同期所に設置され標準時に直接同期した stratum 1 のサーバーで、サーバー自体は標準時と10ナノ秒程度の精度を持つとされています。ただし NICT 自身が「現在のインターネットでは利用者の接続精度の保証ができない」と明記しているとおり、手元に届く時刻の精度は経路次第です(公開NTPサービス - NICT)。秒単位で合っていれば十分という防犯カメラの用途では問題になりません。
国内メーカー機器では、初期値としてこのサーバーが入っていることもあります。アイ・オー・データのネットワークカメラでは、時刻設定の自動同期を選ぶと設定した間隔でNTPサーバーへ更新を取りに行く仕様が公式マニュアルに記載されています(時刻設定 - アイ・オー・データ機器)。
NTPを入れたのに合わないとき
ここが一番つまずく場所です。前述のとおり i-PRO のレコーダーはNTPサーバーとの時刻差が±1000秒(16分40秒)以上あると時刻合わせを行いません。NTPサーバー側の異常でシステム全体が誤った時刻に引きずられるのを防ぐための安全装置です。何か月も放置して20分以上ずれた機器は、この閾値を超えているので、一度手動でおおよその時刻に合わせてからNTPを有効にするのが正しい順番になります。
それでも同期しない場合は、ネットワーク側で UDP 123 が外向きに遮断されている可能性があります。防犯カメラは閉域ネットワークに置かれることが多く、外部NTPへ出られない構成はごく普通です。この場合は社内の時刻サーバーを同期先に指定するか、インターネットに出られるレコーダーを時刻の親にする設計にします。どちらの時刻サーバーを見るべきかは、ネットワークを組んだ業者か情報システム担当に確認するのが早いです。
カメラとレコーダーで時刻源が分かれている
「モニターの時計は合っているのに、録画ファイルのタイムスタンプだけずれている」——これは設定ミスではなく構成の問題です。ネットワークカメラは1台1台が自分の時計を持っていて、レコーダー(NVR)もまた別の時計を持っています。どちらか片方にだけNTPを設定すると、両者は静かに離れていきます。
i-PRO が複数カメラの時刻一致の方法として「全カメラをNTPサーバーに同期させる」と案内しているのは、まさにこの食い違いを潰すためです。実務上は、レコーダーとすべてのカメラを同じNTPサーバーに向けるか、レコーダーを時刻の親にしてカメラへ配信するかのどちらかに統一します。混在させると、あとで「どちらの時刻が正しいのか」を誰も答えられなくなります。
ずれは1秒単位でも積み上がります。時計の誤差がどこから生まれるのかという仕組みの話は時計が1秒ずれる原因と時刻の精度で解説しています。カメラが複数台ある現場では、1秒のずれが「どのカメラの映像が先か」の判断を曇らせます。
タイムゾーンと夏時間(9時間・1時間のずれ)
ちょうど9時間ずれているなら、ほぼ確実にタイムゾーンが UTC(協定世界時)のままです。海外メーカーの機器は初期値が UTC や現地時間になっていることがあり、日本標準時は UTC+9 なので差がそのまま9時間として現れます。レコーダーとカメラの両方でタイムゾーンを日本(UTC+9)に設定してください。
ちょうど1時間なら夏時間(DST)です。日本に夏時間はないので、DST は無効が正解です。Reolink は公式サポートで、1時間だけ進む/遅れる症状について「DST(夏時間)に起因する可能性がある」として、タイムゾーンとDST設定の見直しと手動再同期を案内しています(Reolink Time Wrong)。同ページでは、サードパーティ機器やソフトが接続されている場合はいったん切り離して切り分けることも挙げられています。
なお、同じ1時間・9時間のずれはテレビやレコーダーでも起きます。家庭用機器側の確認箇所はテレビの時刻がずれる原因と時刻合わせにまとめているので、建物内で複数の機器が同時にずれている場合の比較に使えます。
停電で時刻が消える機種がある
停電やブレーカー操作のあと日付が初期値に戻る場合、設定ではなくハードの仕様です。アイ・オー・データはネットワークカメラの公式マニュアルに「本製品は、タイマー用バックアップ電源を搭載しておりません。そのため、電源を落とすと、すべての時刻情報がリセットされますので、『NTPサーバーと同期する』設定でのご利用をお勧めします」と明記しています(時刻設定 - アイ・オー・データ機器)。つまり、この手の機器ではNTPが唯一の時刻源であり、ネットワークが切れていれば時刻も失われます。
レコーダー側は内蔵電池で電源オフ中の時刻を保持する設計のものが多く、電池が消耗すると同じ症状が出ます。交換可否と手順は機種ごとに違い、分解が保証対象外になる場合もあるため、型番で公式マニュアルを確認するか、設置業者・メーカー窓口に問い合わせてください。いずれにしても、停電のたびに時刻が飛ぶ環境では、復電後に自動でNTP取得が走る設定にしておくことが対策になります。Reolink の公式手順には、バッテリー駆動のカメラには NTP 設定そのものが無い旨の注記もあり、電源方式によって打てる手が変わります。
直したあとに時刻を見比べる
設定を変えたら、モニターのタイムスタンプと「正しい時刻」を並べて確認します。このとき手元に秒まで出る大きな時計があると、カメラ映像の焼き込み時刻と目で突き合わせられて早いです。Mihata の無料Webアプリ集中時計は、ブラウザで開くだけで全画面のデジタル時計として秒まで表示できます。インストールは不要です。
ただし正直にお伝えしておくと、集中時計が表示しているのは開いた端末のOS時刻で、NTPから正しい時刻を配信しているわけではありません。端末側がずれていれば同じようにずれて表示されます。厳密な答え合わせには NICT の日本標準時ページなど時刻配信を目的としたサービスを使い、集中時計は「作業中に秒を見続ける道具」としてお使いください。
録画の時刻を証拠として扱うとき
防犯カメラの映像が意味を持つのは、「いつ起きたか」が言える場合です。タイムスタンプが20分ずれていれば、入退室記録・POSのレシート・勤怠打刻といった他の記録と突き合わせたときに矛盾が生まれ、説明に手間がかかります。法的な評価はケースごとの判断になるためここでは断定しませんが、実務上は「他の記録と時刻が整合しているか」が常に問われます。
参考になるのが、電子データの時刻の信頼性を国が制度として扱っている例です。総務省はタイムスタンプを「ある時点において、その電子データが存在していたこと、および、それ以降変更されていないことを確保する技術」と定義し、2021年から時刻認証業務の認定制度を運用しています(タイムスタンプについて - 総務省)。そこで信頼の根拠になっているのは、ほかでもなく日本標準時に同期していることです。防犯カメラの時刻も、NICT の公開NTP経由で日本標準時に揃えておけば、同じ考え方で説明しやすくなります。
運用としては、①NTP同期を全機器で有効にする、②設置時と定期点検時にタイムスタンプを実時刻と見比べて記録に残す、③停電のたびに復電後の時刻を確認する、の3点を決めておけば十分です。点検の記録自体が「その期間は時刻が合っていた」という裏付けになります。
まとめ:上から順に潰す
順番は決まっています。①ずれ幅で原因を当てる(9時間=タイムゾーン、1時間=夏時間、数分=NTP未設定、過去日付=電源断)、②タイムゾーンを UTC+9 に、夏時間を無効に、③レコーダーとカメラの両方に ntp.nict.jp などのNTPサーバーを設定、④20分以上ずれているなら手動で合わせてからNTPを有効化、⑤それでも合わないなら UDP 123 の遮断と機器の電源保持を確認——これで原因が残るケースはほとんどありません。
時刻のずれは、気づいたときには「いつからずれていたのか」が分からなくなっているのが厄介なところです。Mihata では中小企業向けに、こうした社内機器・業務システムまわりの困りごとのご相談も承っています。機器構成が複雑で切り分けが進まない場合は、状況を伺ったうえで一緒に整理いたします。
よくある質問
防犯カメラの時刻がちょうど9時間ずれています。原因は何ですか?
タイムゾーンがUTC(協定世界時)のままになっている可能性が高いです。日本標準時はUTC+9なので、その差がそのまま9時間のずれとして出ます。レコーダーとカメラの両方でタイムゾーンを日本(UTC+9)に設定してください。
NTPを設定したのに時刻が合いません。
ずれが大きすぎて補正対象外になっていることがあります。i-PROのレコーダーは、NTPサーバーとの時刻差が±1000秒(16分40秒)以上あると、サーバー側の異常を疑って時刻合わせを行いません。一度手動でおおよその時刻に合わせてからNTPを有効にしてください。それでも合わない場合はUDP 123が遮断されていないかを確認します。
NTPサーバーには何を指定すればよいですか?
国内なら情報通信研究機構(NICT)が公開しているntp.nict.jpが無難です。日本標準時に直接同期したstratum 1のサーバーです。ただしNICT自身が利用者側の接続精度は保証できないとしているため、ミリ秒単位の精度が必要な用途には向きません。防犯カメラの用途には十分です。
ライブ映像の時計は合っているのに、録画のタイムスタンプだけずれます。
カメラ側とレコーダー側で時刻源が分かれているためです。ネットワークカメラは1台ごとに自分の時計を持ち、レコーダーも別の時計を持っています。レコーダーとすべてのカメラを同じNTPサーバーに向けるか、レコーダーを時刻の親にして配信するか、どちらかに統一してください。
停電のあとに日付が初期値に戻ってしまいます。
時刻保持用のバックアップ電源を持たない機種か、内蔵電池が消耗している可能性があります。アイ・オー・データのネットワークカメラは公式マニュアルでバックアップ電源を搭載せず電源を落とすと時刻情報がリセットされると明記し、NTPサーバーと同期する設定での利用を推奨しています。復電後に自動でNTP取得が走る設定にしておいてください。